37 / 228
第三章 俺様、王都へ行く
6、もっと褒めても良いのだぞ?
しおりを挟む
「まったく、こんなドラゴンに勉強を教えろとか。こっちだって暇じゃないのに……」
じゃあ頼んだよ、と国王が去った後、ウェルナーとやらはブツブツと文句を言っている。感じ悪!
俺だってやる気のない奴から教わりたくなんてないね!
あ、そうだ。
『ふむ、ならば、文字の読み書きができて暇のある人物をつけてくれれば勝手にやろう』
「喋った!?」
『そのかわり、国王には貴様が王命に背いたと報告させてもらう』
驚いた後、一気に顔が青褪めるウェルナー。その後ワタワタと狼狽える様子が面白い。
「それは困……いや、俺が陛下に命じられたことだ、です。俺の知っている知識全てお教えしましょう」
ふ。勝った。
自分の立場を理解したかね、ウェルナー君。
『ならば、授業とやらに入る前に教えてもらおう』
ダンジョンを出てからずっと疑問に思っていたこと。
『俺様の使命は暗黒破壊神を倒すこと。なのに、何故貴様らは俺様をただのモンスターとして扱う?』
不本意ながら聖竜と呼ばれる俺に関して、こいつもだけど人々の対応がおかしい。
首輪をしているっていうのに怯えた態度をとる奴。武器を向ける奴。距離を開ける奴。
聖竜として崇めてきたのは救護院にいた奴らくらいだ。
それ以外は、良くて聖女のペット扱い。こいつのようにモンスターだから何言ってもわからないだろうって態度の方が多い。
『貴様に問おう。聖竜とは、何ぞや?』
「それは……聖竜とは……聖女に寄り添い、聖女を守る存在。聖女の盾であり牙であるとされています」
このように聖女以外の人間とも対話が可能とは思ってもいなかったようだ。
つまり、正真正銘ルシアちゃんのペット扱いだったわけね。
申し訳ありません、と初対面の印象は何処へやら。ウェルナーは素直に頭を下げて来た。
『許す。では、授業をしてもらおうか。まずは文字の読み書きからだ』
「は、はい。ではまずは母音から……」
何故最初に文字の読み書きなのか。それは、俺がここの書物を読みたいからだ。
もともと読書が好きだった俺からすると、ここは天国だ。
ファンタジー世界では、例えそれが辞書や辞典の類であってもファンタジーな読み物に感じるに違いない。
それに、本が読めるようになればウェルナー君がいなくても自力で調べ物ができるしね。
一通り教えてもらって、この世界の文字記号は日本語に近いことがわかった。
母音と子音のそれぞれでその音を示す記号があり、その組み合わせで意味を表す言葉になっている。
母音が5音で50音というのも一緒だ。漢字がなく表記はアルファベットに近い。
覚えてしまえば日本語より単純だな。ローマ字表記だと思えばいいのだ。
『ーー《タリー語》がLv.3になりましたーー』
お。表記の法則を理解したからか、スキルレベルが上がった。
試しに近くの本を開いて見る。
ローマ字表記って案外読みにくいのだが、スラスラ読める。内容が理解できるかは別だけどな。
『ふむ、文字は問題なく読めるな。単語の意味を知らないから内容は完全には理解できんが……』
「え、もう読めるのですか?!」
ウェルナー君が驚いている。
ふふ、そうだろう。俺は優秀だろう。もっと褒めても良いのだぞ?
「では、実際に書いて……」
『貴様はアホか。ペンも持てぬこの手でどうやって書けと?』
「あっ……」
まぁ、俺が「読み書き」って言ったから書く方もって思ったのだろう。素直というか真面目というか。
俺がウェルナー君に冷ややかな目を向けていると、書庫の扉がノックされた。
いつの間にか夕方になっており、ルシアちゃんが迎えに来たようだった。
「もうそんな時間ですか」
『ふむ、では今日の授業はここまでだな。ウェルナー殿、書庫の本は持ち出し可能かね?』
「いえ、ここの蔵書は全て陛下のものですから、俺の一存では」
「返してくれるのであれば問題ないぞ?」
タイミングよくにこやかな国王が現れた。
たぶん、目論見通りルシアちゃんにまた会えて嬉しいのであろう。
俺が来る=ルシアちゃんに会えるの図式が出来上がっているのだろうな。
『では、お言葉に甘えて。ウェルナー殿、子供でも読めるような易しい内容の本を1冊と、単語の意味を調べるのに辞典があれば頼む。適当に見繕ってくれ』
「はい!」
「ほう、この短時間でここまで喋れるようになるとは。流石ウェルナー君だねぇ」
は?
最初から喋ってましたけど?!
「いえ、あの、陛下。私が教えなくても、聖竜様は最初から話しておられましたよ。それに、お言葉を理解されていると陛下が仰ったのでは?」
「え? そうなの?」
まったく、このおっとり国王は!
……て、そういや俺国王とは話してなかったな。じゃあ仕方ないか。
「また明日もおいでね」
とおっとり国王が暢気に手を振って見送ってくれた。
最初は若干腹立つこともあったけど、結果としては上々だ。
スキルレベルが上がり文字がわかるようになった。本が読めれば情報収集もかなり進むだろう。
何より、あの書庫の本を自由に閲覧可能にしてもらったのがでかい。ふふ、王都にいる間に読破してやろう!
じゃあ頼んだよ、と国王が去った後、ウェルナーとやらはブツブツと文句を言っている。感じ悪!
俺だってやる気のない奴から教わりたくなんてないね!
あ、そうだ。
『ふむ、ならば、文字の読み書きができて暇のある人物をつけてくれれば勝手にやろう』
「喋った!?」
『そのかわり、国王には貴様が王命に背いたと報告させてもらう』
驚いた後、一気に顔が青褪めるウェルナー。その後ワタワタと狼狽える様子が面白い。
「それは困……いや、俺が陛下に命じられたことだ、です。俺の知っている知識全てお教えしましょう」
ふ。勝った。
自分の立場を理解したかね、ウェルナー君。
『ならば、授業とやらに入る前に教えてもらおう』
ダンジョンを出てからずっと疑問に思っていたこと。
『俺様の使命は暗黒破壊神を倒すこと。なのに、何故貴様らは俺様をただのモンスターとして扱う?』
不本意ながら聖竜と呼ばれる俺に関して、こいつもだけど人々の対応がおかしい。
首輪をしているっていうのに怯えた態度をとる奴。武器を向ける奴。距離を開ける奴。
聖竜として崇めてきたのは救護院にいた奴らくらいだ。
それ以外は、良くて聖女のペット扱い。こいつのようにモンスターだから何言ってもわからないだろうって態度の方が多い。
『貴様に問おう。聖竜とは、何ぞや?』
「それは……聖竜とは……聖女に寄り添い、聖女を守る存在。聖女の盾であり牙であるとされています」
このように聖女以外の人間とも対話が可能とは思ってもいなかったようだ。
つまり、正真正銘ルシアちゃんのペット扱いだったわけね。
申し訳ありません、と初対面の印象は何処へやら。ウェルナーは素直に頭を下げて来た。
『許す。では、授業をしてもらおうか。まずは文字の読み書きからだ』
「は、はい。ではまずは母音から……」
何故最初に文字の読み書きなのか。それは、俺がここの書物を読みたいからだ。
もともと読書が好きだった俺からすると、ここは天国だ。
ファンタジー世界では、例えそれが辞書や辞典の類であってもファンタジーな読み物に感じるに違いない。
それに、本が読めるようになればウェルナー君がいなくても自力で調べ物ができるしね。
一通り教えてもらって、この世界の文字記号は日本語に近いことがわかった。
母音と子音のそれぞれでその音を示す記号があり、その組み合わせで意味を表す言葉になっている。
母音が5音で50音というのも一緒だ。漢字がなく表記はアルファベットに近い。
覚えてしまえば日本語より単純だな。ローマ字表記だと思えばいいのだ。
『ーー《タリー語》がLv.3になりましたーー』
お。表記の法則を理解したからか、スキルレベルが上がった。
試しに近くの本を開いて見る。
ローマ字表記って案外読みにくいのだが、スラスラ読める。内容が理解できるかは別だけどな。
『ふむ、文字は問題なく読めるな。単語の意味を知らないから内容は完全には理解できんが……』
「え、もう読めるのですか?!」
ウェルナー君が驚いている。
ふふ、そうだろう。俺は優秀だろう。もっと褒めても良いのだぞ?
「では、実際に書いて……」
『貴様はアホか。ペンも持てぬこの手でどうやって書けと?』
「あっ……」
まぁ、俺が「読み書き」って言ったから書く方もって思ったのだろう。素直というか真面目というか。
俺がウェルナー君に冷ややかな目を向けていると、書庫の扉がノックされた。
いつの間にか夕方になっており、ルシアちゃんが迎えに来たようだった。
「もうそんな時間ですか」
『ふむ、では今日の授業はここまでだな。ウェルナー殿、書庫の本は持ち出し可能かね?』
「いえ、ここの蔵書は全て陛下のものですから、俺の一存では」
「返してくれるのであれば問題ないぞ?」
タイミングよくにこやかな国王が現れた。
たぶん、目論見通りルシアちゃんにまた会えて嬉しいのであろう。
俺が来る=ルシアちゃんに会えるの図式が出来上がっているのだろうな。
『では、お言葉に甘えて。ウェルナー殿、子供でも読めるような易しい内容の本を1冊と、単語の意味を調べるのに辞典があれば頼む。適当に見繕ってくれ』
「はい!」
「ほう、この短時間でここまで喋れるようになるとは。流石ウェルナー君だねぇ」
は?
最初から喋ってましたけど?!
「いえ、あの、陛下。私が教えなくても、聖竜様は最初から話しておられましたよ。それに、お言葉を理解されていると陛下が仰ったのでは?」
「え? そうなの?」
まったく、このおっとり国王は!
……て、そういや俺国王とは話してなかったな。じゃあ仕方ないか。
「また明日もおいでね」
とおっとり国王が暢気に手を振って見送ってくれた。
最初は若干腹立つこともあったけど、結果としては上々だ。
スキルレベルが上がり文字がわかるようになった。本が読めれば情報収集もかなり進むだろう。
何より、あの書庫の本を自由に閲覧可能にしてもらったのがでかい。ふふ、王都にいる間に読破してやろう!
0
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは


【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる