33 / 228
第三章 俺様、王都へ行く
3、……あ? 聖竜……だと?
しおりを挟む
倒れるまで回復魔法をかけ続ける修道女。息を引き取ったらしい、顔に白布を被せられた人々。遺体に縋り付いて泣き叫ぶ人々。苦痛に呻く人々。
目を覆いたくなる光景がそこにはあった。
「主よ、お力をお貸しください」
ルシアちゃんはまだ息のある人からどんどん回復魔法をかけて行く。一度の術では回復しきれないが、とにかく人数が多い。
重篤から重傷まで回復させたら次の重篤者へと施術して行く。そんなルシアちゃんに、遺族らしい人が摑みかかる。
何故もっと早く来てくれなかったのだと。そんな力があるならうちの人を生き返らせてくれと。自分の家族は見捨てるのに何故その人は助けるのだと。
そんな怨嗟の声をまるで無視して、MP切れで倒れるまで次々と術をかけ続けた。
『お疲れ様』
「リージェ様……私、もっと力が欲しいですわ」
倒れたルシアちゃんが宿屋で目覚めたので声をかける。すると、涙ながらに自分にはまだ救えない命があると唇を噛む。
救護院では掴みかかる人達を歯牙にもかけていない様子だったのに、本当はずっと気にしていたのだろう。
『アホか。全てを救うのなんてそれこそ女神でなければできないことだ。死者は助からない。お前は自分にできる最善のことをしたんだ。もっと胸を張っていろ』
MPが回復しきっていないだろうに、まだ治療を待っている人がいると立ち上がろうとする。俺は無理やり押しとどめた。
同じ回復魔法でも、救護院にいたシスターとルシアちゃんでは回復の度合いが全然違う。その差はルシアちゃんが聖女だからなのかもしれない。それでも人間である以上休息は必要なのだ。
次の日も次の日も、ルシアちゃんは救護院へと通う。
結界の核となる岩の手配は実はもうできているのだが、届くまではあと三日はかかるらしい。届いたらベルナルド先生が呼びに来てくれることになっている。
その間自分にできることを、と治療にあたっているのだ。
連日襲撃してくるモンスターの討伐に繰り出しているからか、怪我人は絶えることがない。それでも、確実に重篤者は少なくなった。
アルベルト達はモンスター討伐、ルシアちゃんが治療という状況で俺が何をしていたかというと。
ルシアちゃんの真似事である。
少しでもルシアちゃんの負担を減らそうと、ルシアちゃんの詠唱を復唱してみたり。熱のある人の額に濡らしたタオルを運んだり。
そうこうしているうちに、俺は念話の応用で詠唱にMPを乗せることを思いつき実践してみた。すると。
『――≪リージェ≫がスキル《治癒・Lv.1》を獲得しました――』
おお! 思った通りだ。回復魔法に必要なスキルをゲットした。
Lv.1じゃ回復度合いは期待できないが、軽傷者を直すくらいならできるだろう。
「反転せよ」
治癒魔法は女神の祝福だと言うが、暗黒破壊神たる者女神に祈ってはいけない気がする。
だから、状態異常や傷を克復する、なかった状態にまで戻ることをイメージする。女神に祈るのではなく己の中の回復力を活性化すると言った方が正しいか。
『――スキル≪治癒≫がスキル《反転せよ》に改名されました――』
実験は成功。やはり詠唱よりもイメージの方が大事なようだ。いや、決め台詞決めポーズ有りの方が効果が上がるぶっ壊れスキルもあるけどさ。
翳した手の先から光の球が出て、痛みで泣き叫ぶ少女を包み込む。見る見る傷が塞がり、少女はキョトンとした顔をしていた。
「ドラゴン偉いねぇ」
少女はそう言って笑うと母親に抱かれて帰っていった。
いつまでもブンブンと手を振っているから、こちらも見えなくなるまで振ってやった。全く、子供の相手は疲れるから嫌だ。
その後も、あり余るMPを使ってひたすら回復魔法をかけ続けた。
気づけばスキルレベルも上がり、沢山の治してやった人間に拝まれている。
「ふふふ、良いぞ。もっと暗黒破壊神たる俺様を崇め奉るが良い!」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます、聖竜様」
……あ? 聖竜……だと?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ステータス】
名前 : リージェ
レベル : 13
EXP : 52/ 89867
HP : 1702/ 1702
MP : 220/ 1320
Atk : 2939
Def : 936
スキル : タリ―語 Lv.2
我が劫火に焼かれよ Lv.4
血飛沫と共に踊れ Lv.5
全てを見通す神の眼 Lv.2
念話 Lv.1
我を害さんとする者よ、姿を現せ Lv.1
反転せよ Lv.1
称号 : 中二病(笑)
害虫キラー
農家
ドM
聖竜(仮)
目を覆いたくなる光景がそこにはあった。
「主よ、お力をお貸しください」
ルシアちゃんはまだ息のある人からどんどん回復魔法をかけて行く。一度の術では回復しきれないが、とにかく人数が多い。
重篤から重傷まで回復させたら次の重篤者へと施術して行く。そんなルシアちゃんに、遺族らしい人が摑みかかる。
何故もっと早く来てくれなかったのだと。そんな力があるならうちの人を生き返らせてくれと。自分の家族は見捨てるのに何故その人は助けるのだと。
そんな怨嗟の声をまるで無視して、MP切れで倒れるまで次々と術をかけ続けた。
『お疲れ様』
「リージェ様……私、もっと力が欲しいですわ」
倒れたルシアちゃんが宿屋で目覚めたので声をかける。すると、涙ながらに自分にはまだ救えない命があると唇を噛む。
救護院では掴みかかる人達を歯牙にもかけていない様子だったのに、本当はずっと気にしていたのだろう。
『アホか。全てを救うのなんてそれこそ女神でなければできないことだ。死者は助からない。お前は自分にできる最善のことをしたんだ。もっと胸を張っていろ』
MPが回復しきっていないだろうに、まだ治療を待っている人がいると立ち上がろうとする。俺は無理やり押しとどめた。
同じ回復魔法でも、救護院にいたシスターとルシアちゃんでは回復の度合いが全然違う。その差はルシアちゃんが聖女だからなのかもしれない。それでも人間である以上休息は必要なのだ。
次の日も次の日も、ルシアちゃんは救護院へと通う。
結界の核となる岩の手配は実はもうできているのだが、届くまではあと三日はかかるらしい。届いたらベルナルド先生が呼びに来てくれることになっている。
その間自分にできることを、と治療にあたっているのだ。
連日襲撃してくるモンスターの討伐に繰り出しているからか、怪我人は絶えることがない。それでも、確実に重篤者は少なくなった。
アルベルト達はモンスター討伐、ルシアちゃんが治療という状況で俺が何をしていたかというと。
ルシアちゃんの真似事である。
少しでもルシアちゃんの負担を減らそうと、ルシアちゃんの詠唱を復唱してみたり。熱のある人の額に濡らしたタオルを運んだり。
そうこうしているうちに、俺は念話の応用で詠唱にMPを乗せることを思いつき実践してみた。すると。
『――≪リージェ≫がスキル《治癒・Lv.1》を獲得しました――』
おお! 思った通りだ。回復魔法に必要なスキルをゲットした。
Lv.1じゃ回復度合いは期待できないが、軽傷者を直すくらいならできるだろう。
「反転せよ」
治癒魔法は女神の祝福だと言うが、暗黒破壊神たる者女神に祈ってはいけない気がする。
だから、状態異常や傷を克復する、なかった状態にまで戻ることをイメージする。女神に祈るのではなく己の中の回復力を活性化すると言った方が正しいか。
『――スキル≪治癒≫がスキル《反転せよ》に改名されました――』
実験は成功。やはり詠唱よりもイメージの方が大事なようだ。いや、決め台詞決めポーズ有りの方が効果が上がるぶっ壊れスキルもあるけどさ。
翳した手の先から光の球が出て、痛みで泣き叫ぶ少女を包み込む。見る見る傷が塞がり、少女はキョトンとした顔をしていた。
「ドラゴン偉いねぇ」
少女はそう言って笑うと母親に抱かれて帰っていった。
いつまでもブンブンと手を振っているから、こちらも見えなくなるまで振ってやった。全く、子供の相手は疲れるから嫌だ。
その後も、あり余るMPを使ってひたすら回復魔法をかけ続けた。
気づけばスキルレベルも上がり、沢山の治してやった人間に拝まれている。
「ふふふ、良いぞ。もっと暗黒破壊神たる俺様を崇め奉るが良い!」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます、聖竜様」
……あ? 聖竜……だと?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ステータス】
名前 : リージェ
レベル : 13
EXP : 52/ 89867
HP : 1702/ 1702
MP : 220/ 1320
Atk : 2939
Def : 936
スキル : タリ―語 Lv.2
我が劫火に焼かれよ Lv.4
血飛沫と共に踊れ Lv.5
全てを見通す神の眼 Lv.2
念話 Lv.1
我を害さんとする者よ、姿を現せ Lv.1
反転せよ Lv.1
称号 : 中二病(笑)
害虫キラー
農家
ドM
聖竜(仮)
0
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。


【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる