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第二章 俺様、ダンジョンを出る
14、どんだけ食い意地張ってんだよこのおっちゃん
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野営地に着くと、バルトヴィーノが何やらもくもくと煙を出していた。あ、因みに一人あぶれたバルトヴィーノが野営地の守番だ。他の四人は、ドナートとアルベルト、チェーザーレとベルナルド先生でペアを組んで食料調達に行っている。
「おう、お帰り!」
俺達に気付いたバルトヴィーノが片手を上げて声をかけてくる。
「それは何をしているのですか?」
ルシアちゃんが荷物を下ろしながら聞く。かなり煙い。
「これか? ドナート達が鳥を獲ってきたんでな。羽を毟って燻製にしている所だ」
「燻製、ですか?」
そう言って煙を上げている地面から鉄板をどかし、薪を足している。
バルトヴィーノの話によると、天日干しするには時間が足りないが、燻製なら一夜燻していればできて正味4日の行軍ぐらいなら日保ちするとのこと。
燻製自体は知っていたけれど、こうして作るのは初めて知った。アウトドア系の番組とか、ホームセンターだと専用のオーブンとか使っていたからな。
なんでも、地面に穴を二つ掘り、その二つを管で繋げるというものらしく。パイプは竹を伐採して穴を開けたものを使っているとのこと。凄すぎる。兄貴と呼ぼう。
「そろそろ昼飯だし、他の連中も戻ってくるんじゃねぇか?」
「では、私達はお昼の用意をしましょうか、リージェ様」
ルシアちゃんはテントから鍋を持ってきて川の水を汲む。俺はルシアちゃんの荷物から虎肉を取り出すと、バルトヴィーノに渡した。
『虎の肉って食える?』
「おう、極上の肉じゃねぇか! 脂身が少ないところだけくれ。他は今日明日で焼いて食おうぜ」
なんでも、燻製にするには脂身が多すぎるとうまくいかないようで。バルトヴィーノは大雑把に肉を切り分けると、霜の入った部分を返してきて残りを燻製用の穴に放り込んでいた。
「あ~腹減ったぁ」
「何だか良い匂いがしますね」
タケノコが煮える頃チェーザーレとベルナルド先生が匂いにつられたかのように戻ってきた。
「良いタイミングですね。今できますので休んでいてください」
ベルナルド先生は薬草などをたくさん採ってきたらしい。同行していたチェーザーレもたくさんのきのこや野草を寄越してくれた。ついでに岩塩も見つけたとかで、馬鹿でかいのを寄越してきた。
昼食はもう作り終えるので、夕食に回すとのこと。
「おおっ、良い匂いだな」
「兎いっぱい獲ってきたぞ」
アルベルトとドナートが戻ってきた。二人は肉か。と言うことは、今バルトヴィーノが燻している肉も二人の獲物か。
腹っ減らしのチェーザーレが催促し、すぐに昼食になった。
「美味いな! これは何だ?」
チェーザーレが目を輝かせてルシアちゃんに詰め寄る。
「バンブーと虎の肉を煮詰めた物です。味付けは塩だけですけど……」
「「バンブーだって?!」」
ルシアちゃんの言葉に、おっちゃん達が目を丸くする。
あんな固い物が、煮詰めるとこんな柔らかくなるのか。こんなに旨いならもう何本か切り出してくるか。という声がぼそぼそ聞こえる。
どうやら、ルシアちゃんだけじゃなく、この世界の人は筍を食ったことが無いらしい。
『あー、チェーザーレ? バンブーはバンブーでも、地面から生えるか生えないかくらいの若芽しか食えんぞ?』
未知の場所、未知の食材! これぞ冒険者の醍醐味! と食い意地を見せたチェーザーレ。激しく同感だが放っておいたら普通に伸びた竹を切り出して食おうとしそうだから釘を刺しておいた。どんだけ食い意地張ってんだよこのおっちゃん。
俺は虎肉の串焼きのほうが好みだな。チェーザーレが持ってきた岩塩をかけたらさらに旨い。
昼食後は保存食作り。ベルナルド先生は薬草をすり鉢で潰して何かを作っている。この香りは……スパイス? 何だかとても食欲をそそる香りがする。
俺はひたすらチェーザーレが持ってきた岩塩を削って肉に刷り込む。肉が多くて燻製が間に合わないらしく、後から持ってきた分はこうやって水分を飛ばすことで保存するみたいだ。
夕食は鳥とタケノコを煮詰めたものと、虎肉ときのこを炒めたもの、野草のスープだった。白米が恋しい。
おっちゃん達は食べ足りないみたいで固パンを出して食べていた。
因みに補足すると、携行食には固パンと堅パンの二種類がある。どちらも「かたパン」と言うそうなのだが、固パンは日保ちしない代わりにスープに浸せば食べられる硬さ。堅パンはビスケットみたいな形で、とにかく硬い。ドラゴンである俺の牙をもってしても歯が立たなかった。釘が打てるんじゃないかってほど。どろどろに煮詰めてパン粥にして食べる。
固パンはこれで終わりで、残るは堅パンのみ。明日からパン粥の日々になるのか。
ルシアちゃんが料理上手だからそこまで不味くはないのだが、特別美味しくもない。燻製肉が大量に作れたのが不幸中の幸いか。
一通り保存食にした所で就寝。これで明日からはまた駆け足での強行軍になるな。
「おう、お帰り!」
俺達に気付いたバルトヴィーノが片手を上げて声をかけてくる。
「それは何をしているのですか?」
ルシアちゃんが荷物を下ろしながら聞く。かなり煙い。
「これか? ドナート達が鳥を獲ってきたんでな。羽を毟って燻製にしている所だ」
「燻製、ですか?」
そう言って煙を上げている地面から鉄板をどかし、薪を足している。
バルトヴィーノの話によると、天日干しするには時間が足りないが、燻製なら一夜燻していればできて正味4日の行軍ぐらいなら日保ちするとのこと。
燻製自体は知っていたけれど、こうして作るのは初めて知った。アウトドア系の番組とか、ホームセンターだと専用のオーブンとか使っていたからな。
なんでも、地面に穴を二つ掘り、その二つを管で繋げるというものらしく。パイプは竹を伐採して穴を開けたものを使っているとのこと。凄すぎる。兄貴と呼ぼう。
「そろそろ昼飯だし、他の連中も戻ってくるんじゃねぇか?」
「では、私達はお昼の用意をしましょうか、リージェ様」
ルシアちゃんはテントから鍋を持ってきて川の水を汲む。俺はルシアちゃんの荷物から虎肉を取り出すと、バルトヴィーノに渡した。
『虎の肉って食える?』
「おう、極上の肉じゃねぇか! 脂身が少ないところだけくれ。他は今日明日で焼いて食おうぜ」
なんでも、燻製にするには脂身が多すぎるとうまくいかないようで。バルトヴィーノは大雑把に肉を切り分けると、霜の入った部分を返してきて残りを燻製用の穴に放り込んでいた。
「あ~腹減ったぁ」
「何だか良い匂いがしますね」
タケノコが煮える頃チェーザーレとベルナルド先生が匂いにつられたかのように戻ってきた。
「良いタイミングですね。今できますので休んでいてください」
ベルナルド先生は薬草などをたくさん採ってきたらしい。同行していたチェーザーレもたくさんのきのこや野草を寄越してくれた。ついでに岩塩も見つけたとかで、馬鹿でかいのを寄越してきた。
昼食はもう作り終えるので、夕食に回すとのこと。
「おおっ、良い匂いだな」
「兎いっぱい獲ってきたぞ」
アルベルトとドナートが戻ってきた。二人は肉か。と言うことは、今バルトヴィーノが燻している肉も二人の獲物か。
腹っ減らしのチェーザーレが催促し、すぐに昼食になった。
「美味いな! これは何だ?」
チェーザーレが目を輝かせてルシアちゃんに詰め寄る。
「バンブーと虎の肉を煮詰めた物です。味付けは塩だけですけど……」
「「バンブーだって?!」」
ルシアちゃんの言葉に、おっちゃん達が目を丸くする。
あんな固い物が、煮詰めるとこんな柔らかくなるのか。こんなに旨いならもう何本か切り出してくるか。という声がぼそぼそ聞こえる。
どうやら、ルシアちゃんだけじゃなく、この世界の人は筍を食ったことが無いらしい。
『あー、チェーザーレ? バンブーはバンブーでも、地面から生えるか生えないかくらいの若芽しか食えんぞ?』
未知の場所、未知の食材! これぞ冒険者の醍醐味! と食い意地を見せたチェーザーレ。激しく同感だが放っておいたら普通に伸びた竹を切り出して食おうとしそうだから釘を刺しておいた。どんだけ食い意地張ってんだよこのおっちゃん。
俺は虎肉の串焼きのほうが好みだな。チェーザーレが持ってきた岩塩をかけたらさらに旨い。
昼食後は保存食作り。ベルナルド先生は薬草をすり鉢で潰して何かを作っている。この香りは……スパイス? 何だかとても食欲をそそる香りがする。
俺はひたすらチェーザーレが持ってきた岩塩を削って肉に刷り込む。肉が多くて燻製が間に合わないらしく、後から持ってきた分はこうやって水分を飛ばすことで保存するみたいだ。
夕食は鳥とタケノコを煮詰めたものと、虎肉ときのこを炒めたもの、野草のスープだった。白米が恋しい。
おっちゃん達は食べ足りないみたいで固パンを出して食べていた。
因みに補足すると、携行食には固パンと堅パンの二種類がある。どちらも「かたパン」と言うそうなのだが、固パンは日保ちしない代わりにスープに浸せば食べられる硬さ。堅パンはビスケットみたいな形で、とにかく硬い。ドラゴンである俺の牙をもってしても歯が立たなかった。釘が打てるんじゃないかってほど。どろどろに煮詰めてパン粥にして食べる。
固パンはこれで終わりで、残るは堅パンのみ。明日からパン粥の日々になるのか。
ルシアちゃんが料理上手だからそこまで不味くはないのだが、特別美味しくもない。燻製肉が大量に作れたのが不幸中の幸いか。
一通り保存食にした所で就寝。これで明日からはまた駆け足での強行軍になるな。
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