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第二章 俺様、ダンジョンを出る
13、貴様!よくも俺様とルシアちゃんの時間を邪魔したな!
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俺は、ルシアちゃんに打ち明けた。前世の記憶があること、元は人間だったこと、前世の世界のこと、聖竜ではないこと。流石に暗黒破壊神であることは言えなかったけど。
「そんな……いえ、そうでなければ説明がつかないことですね……」
『それで? 俺様が聖竜でないとわかって幻滅したか?』
それならそれでも良い。いずれは敵対する関係だった。
けれど、ルシアちゃんの答えは予想と違っていた。
「いいえ、リージェ様はリージェ様です。ダンジョンの奥底で一人になった私が耐えられたのはリージェ様がいたからですわ。リージェ様は大切な私の家族です」
そう言って綺麗に微笑んだルシアちゃんは俺をぎゅっと抱き締めた。年齢にそぐわないたわわなメロンが俺を押し包む。
その幸せな感触に思わず変な声が出てしまいそうだ。
グルルルルルゥ
そうそう、こんな風に……って、え?グルルルルルゥ?
「リージェ様!!」
音の正体を確認しようと首を上げた瞬間、ルシアちゃんが俺を更に強く抱き締めて地面に伏せる。僅かに視界に映ったのは降り下ろされる四本の鋭い爪。マズいーー!
俺は咄嗟にルシアちゃんの腕から抜け出すと彼女を突き飛ばした。襲いかかる衝撃に地面を転がる。
どこを怪我したのかもわからないほど全身が熱い。
仰向けに転がった俺は、ようやく襲ってきたものの正体を見た。
虎だ。
真っ白い虎の顔が身動きの取れない俺にとどめを刺そうと牙を剥いて迫ってきていた。
「リージェ様ぁぁ!!」
ルシアちゃんの泣き叫ぶ声が聞こえる。
ダメだ。彼女を泣かせたら男じゃない。いや、それ以前に、暗黒破壊神たるもの、ここで終わるわけにはいかない。
俺は自分に喝を入れるため、そして虎を怯ませるために力を振り絞って叫んだ。
「貴様!よくも俺様とルシアちゃんの時間を邪魔したな!」
貴様はカップルぶち壊し隊か?!他人の恋路を邪魔する者は馬に蹴られて死んでしまえという言葉を知らんのか!……いや、恋人じゃないけどさ。
「血飛沫と共に踊れ!!」
目には目を。歯には歯を。爪には爪でお返ししよう。
俺の怒りを込めて我武者羅に連続で放った斬撃は、一撃目で虎の左顔面を切り裂き、反射的に仰け反った喉を綺麗に裂いた。
フギャッという短い悲鳴は喉を裂かれた事で消され、地面に倒れた後は荒い呼吸と共に血がゴポゴポと溢れていた。
即死ではなかったものの既に身動きが取れないようで、恨めしそうな目でこちらを睨んできている。
とどめを刺してやりたいが、情けないかな。俺もお前にやられた傷で動けねぇよ。
「リージェ様! しっかりしてください。主よ、お力をお貸しください。かの者を癒す力を、ここに」
ルシアちゃんから温かい光が降りそそぐ。
だんだんと傷が治り……なお……
「痛ってぇぇぇぇぇ! 痛い! いいいいいたああああああいいいいいいいい!!」
「リージェ様、暴れないでください!」
痛みが強すぎると感じないって本当だったんだな。傷が治りかけた途端痛みが襲ってきやがった。
じたばたする俺を片手で押さえつけて片手で回復魔法をかけるルシアちゃん。おう、ワイルド……。
(しばらくお待ちください)
回復魔法を重ねがけしてもらうこと数回。ようやく動けるようになった。
俺は未だにゼヒュぜヒュと苦しげな虎の前に仁王立ちする。
「ふはははは! 不意打ちしたくせに傷一つ負わせられずに返り討ちとは情けない! 所詮貴様も俺様の敵ではないということだな!」
怪我? 怪我なんてしてないよ? 泣き叫んでみっともなくゴロゴロ暴れまわるなんて俺してないよ?
あ、そうだ。鑑定するの忘れてた。
「全てを見通す神の眼!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ティグレビアンカ】〔裂傷(小)〕
HP:45/1020
MP:15/100
強靭な牙と爪を持つモンスター。用心深く格下相手でも全力で狩りをする。その巨体からは驚くほどの俊敏さも持つ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
おおぅ……。HP1000越えとか。よくあの一撃で勝てたな。急所に入ってなかったら俺の方がヤバかったかも……。
こうして見ている間にもどんどんと虎のHPは減っていき、とうとう0になった。その身体がシャラシャラと光の粒子になって消える。
あとに残されたのは牙と皮、そして肉。え? 虎の肉ってどうやって食べんの?
『――≪リージェ≫がティグレビアンカを倒しました。経験値2520を入手しました――』
経験値がやたら入ったのは、称号ドMの効果か。これでだいぶレベルアップに近づいたな。
怪我を負えば経験値がその分入るなんてけっこうおいし……ヤバイヤバイ、思考がドMになりつつある。いくらルシアちゃんに治してもらえるからって、怪我をするのは違うな。最強たる者、無傷で勝つから格好良いのだ。
『さて、野営地に帰ろうか』
「はい!」
ルシアちゃんの鞄に掘りたてのタケノコと虎のドロップアイテムを詰め込むと、心配して抱っこしてくるルシアちゃんに身を任せて戻るのだった。
「そんな……いえ、そうでなければ説明がつかないことですね……」
『それで? 俺様が聖竜でないとわかって幻滅したか?』
それならそれでも良い。いずれは敵対する関係だった。
けれど、ルシアちゃんの答えは予想と違っていた。
「いいえ、リージェ様はリージェ様です。ダンジョンの奥底で一人になった私が耐えられたのはリージェ様がいたからですわ。リージェ様は大切な私の家族です」
そう言って綺麗に微笑んだルシアちゃんは俺をぎゅっと抱き締めた。年齢にそぐわないたわわなメロンが俺を押し包む。
その幸せな感触に思わず変な声が出てしまいそうだ。
グルルルルルゥ
そうそう、こんな風に……って、え?グルルルルルゥ?
「リージェ様!!」
音の正体を確認しようと首を上げた瞬間、ルシアちゃんが俺を更に強く抱き締めて地面に伏せる。僅かに視界に映ったのは降り下ろされる四本の鋭い爪。マズいーー!
俺は咄嗟にルシアちゃんの腕から抜け出すと彼女を突き飛ばした。襲いかかる衝撃に地面を転がる。
どこを怪我したのかもわからないほど全身が熱い。
仰向けに転がった俺は、ようやく襲ってきたものの正体を見た。
虎だ。
真っ白い虎の顔が身動きの取れない俺にとどめを刺そうと牙を剥いて迫ってきていた。
「リージェ様ぁぁ!!」
ルシアちゃんの泣き叫ぶ声が聞こえる。
ダメだ。彼女を泣かせたら男じゃない。いや、それ以前に、暗黒破壊神たるもの、ここで終わるわけにはいかない。
俺は自分に喝を入れるため、そして虎を怯ませるために力を振り絞って叫んだ。
「貴様!よくも俺様とルシアちゃんの時間を邪魔したな!」
貴様はカップルぶち壊し隊か?!他人の恋路を邪魔する者は馬に蹴られて死んでしまえという言葉を知らんのか!……いや、恋人じゃないけどさ。
「血飛沫と共に踊れ!!」
目には目を。歯には歯を。爪には爪でお返ししよう。
俺の怒りを込めて我武者羅に連続で放った斬撃は、一撃目で虎の左顔面を切り裂き、反射的に仰け反った喉を綺麗に裂いた。
フギャッという短い悲鳴は喉を裂かれた事で消され、地面に倒れた後は荒い呼吸と共に血がゴポゴポと溢れていた。
即死ではなかったものの既に身動きが取れないようで、恨めしそうな目でこちらを睨んできている。
とどめを刺してやりたいが、情けないかな。俺もお前にやられた傷で動けねぇよ。
「リージェ様! しっかりしてください。主よ、お力をお貸しください。かの者を癒す力を、ここに」
ルシアちゃんから温かい光が降りそそぐ。
だんだんと傷が治り……なお……
「痛ってぇぇぇぇぇ! 痛い! いいいいいたああああああいいいいいいいい!!」
「リージェ様、暴れないでください!」
痛みが強すぎると感じないって本当だったんだな。傷が治りかけた途端痛みが襲ってきやがった。
じたばたする俺を片手で押さえつけて片手で回復魔法をかけるルシアちゃん。おう、ワイルド……。
(しばらくお待ちください)
回復魔法を重ねがけしてもらうこと数回。ようやく動けるようになった。
俺は未だにゼヒュぜヒュと苦しげな虎の前に仁王立ちする。
「ふはははは! 不意打ちしたくせに傷一つ負わせられずに返り討ちとは情けない! 所詮貴様も俺様の敵ではないということだな!」
怪我? 怪我なんてしてないよ? 泣き叫んでみっともなくゴロゴロ暴れまわるなんて俺してないよ?
あ、そうだ。鑑定するの忘れてた。
「全てを見通す神の眼!」
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【ティグレビアンカ】〔裂傷(小)〕
HP:45/1020
MP:15/100
強靭な牙と爪を持つモンスター。用心深く格下相手でも全力で狩りをする。その巨体からは驚くほどの俊敏さも持つ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
おおぅ……。HP1000越えとか。よくあの一撃で勝てたな。急所に入ってなかったら俺の方がヤバかったかも……。
こうして見ている間にもどんどんと虎のHPは減っていき、とうとう0になった。その身体がシャラシャラと光の粒子になって消える。
あとに残されたのは牙と皮、そして肉。え? 虎の肉ってどうやって食べんの?
『――≪リージェ≫がティグレビアンカを倒しました。経験値2520を入手しました――』
経験値がやたら入ったのは、称号ドMの効果か。これでだいぶレベルアップに近づいたな。
怪我を負えば経験値がその分入るなんてけっこうおいし……ヤバイヤバイ、思考がドMになりつつある。いくらルシアちゃんに治してもらえるからって、怪我をするのは違うな。最強たる者、無傷で勝つから格好良いのだ。
『さて、野営地に帰ろうか』
「はい!」
ルシアちゃんの鞄に掘りたてのタケノコと虎のドロップアイテムを詰め込むと、心配して抱っこしてくるルシアちゃんに身を任せて戻るのだった。
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