27 / 228
第二章 俺様、ダンジョンを出る
13、貴様!よくも俺様とルシアちゃんの時間を邪魔したな!
しおりを挟む
俺は、ルシアちゃんに打ち明けた。前世の記憶があること、元は人間だったこと、前世の世界のこと、聖竜ではないこと。流石に暗黒破壊神であることは言えなかったけど。
「そんな……いえ、そうでなければ説明がつかないことですね……」
『それで? 俺様が聖竜でないとわかって幻滅したか?』
それならそれでも良い。いずれは敵対する関係だった。
けれど、ルシアちゃんの答えは予想と違っていた。
「いいえ、リージェ様はリージェ様です。ダンジョンの奥底で一人になった私が耐えられたのはリージェ様がいたからですわ。リージェ様は大切な私の家族です」
そう言って綺麗に微笑んだルシアちゃんは俺をぎゅっと抱き締めた。年齢にそぐわないたわわなメロンが俺を押し包む。
その幸せな感触に思わず変な声が出てしまいそうだ。
グルルルルルゥ
そうそう、こんな風に……って、え?グルルルルルゥ?
「リージェ様!!」
音の正体を確認しようと首を上げた瞬間、ルシアちゃんが俺を更に強く抱き締めて地面に伏せる。僅かに視界に映ったのは降り下ろされる四本の鋭い爪。マズいーー!
俺は咄嗟にルシアちゃんの腕から抜け出すと彼女を突き飛ばした。襲いかかる衝撃に地面を転がる。
どこを怪我したのかもわからないほど全身が熱い。
仰向けに転がった俺は、ようやく襲ってきたものの正体を見た。
虎だ。
真っ白い虎の顔が身動きの取れない俺にとどめを刺そうと牙を剥いて迫ってきていた。
「リージェ様ぁぁ!!」
ルシアちゃんの泣き叫ぶ声が聞こえる。
ダメだ。彼女を泣かせたら男じゃない。いや、それ以前に、暗黒破壊神たるもの、ここで終わるわけにはいかない。
俺は自分に喝を入れるため、そして虎を怯ませるために力を振り絞って叫んだ。
「貴様!よくも俺様とルシアちゃんの時間を邪魔したな!」
貴様はカップルぶち壊し隊か?!他人の恋路を邪魔する者は馬に蹴られて死んでしまえという言葉を知らんのか!……いや、恋人じゃないけどさ。
「血飛沫と共に踊れ!!」
目には目を。歯には歯を。爪には爪でお返ししよう。
俺の怒りを込めて我武者羅に連続で放った斬撃は、一撃目で虎の左顔面を切り裂き、反射的に仰け反った喉を綺麗に裂いた。
フギャッという短い悲鳴は喉を裂かれた事で消され、地面に倒れた後は荒い呼吸と共に血がゴポゴポと溢れていた。
即死ではなかったものの既に身動きが取れないようで、恨めしそうな目でこちらを睨んできている。
とどめを刺してやりたいが、情けないかな。俺もお前にやられた傷で動けねぇよ。
「リージェ様! しっかりしてください。主よ、お力をお貸しください。かの者を癒す力を、ここに」
ルシアちゃんから温かい光が降りそそぐ。
だんだんと傷が治り……なお……
「痛ってぇぇぇぇぇ! 痛い! いいいいいたああああああいいいいいいいい!!」
「リージェ様、暴れないでください!」
痛みが強すぎると感じないって本当だったんだな。傷が治りかけた途端痛みが襲ってきやがった。
じたばたする俺を片手で押さえつけて片手で回復魔法をかけるルシアちゃん。おう、ワイルド……。
(しばらくお待ちください)
回復魔法を重ねがけしてもらうこと数回。ようやく動けるようになった。
俺は未だにゼヒュぜヒュと苦しげな虎の前に仁王立ちする。
「ふはははは! 不意打ちしたくせに傷一つ負わせられずに返り討ちとは情けない! 所詮貴様も俺様の敵ではないということだな!」
怪我? 怪我なんてしてないよ? 泣き叫んでみっともなくゴロゴロ暴れまわるなんて俺してないよ?
あ、そうだ。鑑定するの忘れてた。
「全てを見通す神の眼!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ティグレビアンカ】〔裂傷(小)〕
HP:45/1020
MP:15/100
強靭な牙と爪を持つモンスター。用心深く格下相手でも全力で狩りをする。その巨体からは驚くほどの俊敏さも持つ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
おおぅ……。HP1000越えとか。よくあの一撃で勝てたな。急所に入ってなかったら俺の方がヤバかったかも……。
こうして見ている間にもどんどんと虎のHPは減っていき、とうとう0になった。その身体がシャラシャラと光の粒子になって消える。
あとに残されたのは牙と皮、そして肉。え? 虎の肉ってどうやって食べんの?
『――≪リージェ≫がティグレビアンカを倒しました。経験値2520を入手しました――』
経験値がやたら入ったのは、称号ドMの効果か。これでだいぶレベルアップに近づいたな。
怪我を負えば経験値がその分入るなんてけっこうおいし……ヤバイヤバイ、思考がドMになりつつある。いくらルシアちゃんに治してもらえるからって、怪我をするのは違うな。最強たる者、無傷で勝つから格好良いのだ。
『さて、野営地に帰ろうか』
「はい!」
ルシアちゃんの鞄に掘りたてのタケノコと虎のドロップアイテムを詰め込むと、心配して抱っこしてくるルシアちゃんに身を任せて戻るのだった。
「そんな……いえ、そうでなければ説明がつかないことですね……」
『それで? 俺様が聖竜でないとわかって幻滅したか?』
それならそれでも良い。いずれは敵対する関係だった。
けれど、ルシアちゃんの答えは予想と違っていた。
「いいえ、リージェ様はリージェ様です。ダンジョンの奥底で一人になった私が耐えられたのはリージェ様がいたからですわ。リージェ様は大切な私の家族です」
そう言って綺麗に微笑んだルシアちゃんは俺をぎゅっと抱き締めた。年齢にそぐわないたわわなメロンが俺を押し包む。
その幸せな感触に思わず変な声が出てしまいそうだ。
グルルルルルゥ
そうそう、こんな風に……って、え?グルルルルルゥ?
「リージェ様!!」
音の正体を確認しようと首を上げた瞬間、ルシアちゃんが俺を更に強く抱き締めて地面に伏せる。僅かに視界に映ったのは降り下ろされる四本の鋭い爪。マズいーー!
俺は咄嗟にルシアちゃんの腕から抜け出すと彼女を突き飛ばした。襲いかかる衝撃に地面を転がる。
どこを怪我したのかもわからないほど全身が熱い。
仰向けに転がった俺は、ようやく襲ってきたものの正体を見た。
虎だ。
真っ白い虎の顔が身動きの取れない俺にとどめを刺そうと牙を剥いて迫ってきていた。
「リージェ様ぁぁ!!」
ルシアちゃんの泣き叫ぶ声が聞こえる。
ダメだ。彼女を泣かせたら男じゃない。いや、それ以前に、暗黒破壊神たるもの、ここで終わるわけにはいかない。
俺は自分に喝を入れるため、そして虎を怯ませるために力を振り絞って叫んだ。
「貴様!よくも俺様とルシアちゃんの時間を邪魔したな!」
貴様はカップルぶち壊し隊か?!他人の恋路を邪魔する者は馬に蹴られて死んでしまえという言葉を知らんのか!……いや、恋人じゃないけどさ。
「血飛沫と共に踊れ!!」
目には目を。歯には歯を。爪には爪でお返ししよう。
俺の怒りを込めて我武者羅に連続で放った斬撃は、一撃目で虎の左顔面を切り裂き、反射的に仰け反った喉を綺麗に裂いた。
フギャッという短い悲鳴は喉を裂かれた事で消され、地面に倒れた後は荒い呼吸と共に血がゴポゴポと溢れていた。
即死ではなかったものの既に身動きが取れないようで、恨めしそうな目でこちらを睨んできている。
とどめを刺してやりたいが、情けないかな。俺もお前にやられた傷で動けねぇよ。
「リージェ様! しっかりしてください。主よ、お力をお貸しください。かの者を癒す力を、ここに」
ルシアちゃんから温かい光が降りそそぐ。
だんだんと傷が治り……なお……
「痛ってぇぇぇぇぇ! 痛い! いいいいいたああああああいいいいいいいい!!」
「リージェ様、暴れないでください!」
痛みが強すぎると感じないって本当だったんだな。傷が治りかけた途端痛みが襲ってきやがった。
じたばたする俺を片手で押さえつけて片手で回復魔法をかけるルシアちゃん。おう、ワイルド……。
(しばらくお待ちください)
回復魔法を重ねがけしてもらうこと数回。ようやく動けるようになった。
俺は未だにゼヒュぜヒュと苦しげな虎の前に仁王立ちする。
「ふはははは! 不意打ちしたくせに傷一つ負わせられずに返り討ちとは情けない! 所詮貴様も俺様の敵ではないということだな!」
怪我? 怪我なんてしてないよ? 泣き叫んでみっともなくゴロゴロ暴れまわるなんて俺してないよ?
あ、そうだ。鑑定するの忘れてた。
「全てを見通す神の眼!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ティグレビアンカ】〔裂傷(小)〕
HP:45/1020
MP:15/100
強靭な牙と爪を持つモンスター。用心深く格下相手でも全力で狩りをする。その巨体からは驚くほどの俊敏さも持つ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
おおぅ……。HP1000越えとか。よくあの一撃で勝てたな。急所に入ってなかったら俺の方がヤバかったかも……。
こうして見ている間にもどんどんと虎のHPは減っていき、とうとう0になった。その身体がシャラシャラと光の粒子になって消える。
あとに残されたのは牙と皮、そして肉。え? 虎の肉ってどうやって食べんの?
『――≪リージェ≫がティグレビアンカを倒しました。経験値2520を入手しました――』
経験値がやたら入ったのは、称号ドMの効果か。これでだいぶレベルアップに近づいたな。
怪我を負えば経験値がその分入るなんてけっこうおいし……ヤバイヤバイ、思考がドMになりつつある。いくらルシアちゃんに治してもらえるからって、怪我をするのは違うな。最強たる者、無傷で勝つから格好良いのだ。
『さて、野営地に帰ろうか』
「はい!」
ルシアちゃんの鞄に掘りたてのタケノコと虎のドロップアイテムを詰め込むと、心配して抱っこしてくるルシアちゃんに身を任せて戻るのだった。
0
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは


【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる