3 / 228
第一章 俺様、ドラゴンになる
3、喜べ! 俺様の下僕にしてやろう!(訳:助けてください、お願いします)
しおりを挟む
「ステータス」と書かれた、まるでゲームの表示のようなその半透明の板が気になることは気になるのだが、今はそれどころではない。
なおもGを食わせようとしてくる天使、いや小悪魔から逃れるべく、全身に力を入れる。
すると、ふわっ、と比喩ではなく体が中空に浮かび上がった。
「おぉっ?!」
俺、飛んでる?!
ついに俺の秘めたる力が目覚めたか!?
ああ、いや、いかん。今はそれどころではない。
パタパタと羽音を立てながら驚く小悪魔の頭上を飛び越える。
が、飛ぶことに慣れていないからか、ペショッと床に墜落してしまう。
「χοΘеИЙНИЛ!?」
慌てた様子で追いかけてくる美少女からさらに逃れるべく、今度は背中の翼に意識をして再び飛び上がる。
パタタタッ
ペショッ
パタパタッ
ペショッ
飛び上がっては落ち、飛び上がっては落ちを繰り返し、何とか外へと飛び出した。
美少女が追いかけてくるが、捕まったらアレを食べさせられてしまう。
何とか逃げ出して、自力で食べ物を確保しなければ。
と、辺りを見回すと、全く見覚えのない場所にいた。
言葉が通じない時点で何となく予想はしていたが。
今飛び出してきた、世界遺産にありそうな神殿風の白い建物の周囲は少しだけ拓けた場所で。更にその周りは三百六十度見渡す限り鬱蒼とした森がどこまでも広がっていた。
「マジで、どこだここ?」
こんな場所は知らない。山で囲まれた田舎町の実家周辺にだって、こんな深い森はない。
周囲を見渡した所で、また力尽きてペショッと地面に落ちた。
腹が空きすぎて力が出ないのだ。
「うぅ……お腹空いた……」
と、よく見ると目の前に、今度こそ正真正銘食べ物のメロンが! 建物の周囲の拓けた土地は畑だったのだ。
食欲を更に増幅する甘い香り。良く熟れているのだろう。
これ食べて良い? 食べて良いよね? うん、良いよ! いっただっきまーす!!
「ふははは! この俺様の糧となれること、光栄に思うが良い!」
大口を開けてかぶり付こうとした瞬間、ぐるんっと天地が逆さまになった。
「えっ? 何?!」
締め付けるような感覚に自分の足を見ると、メロンの蔓が巻き付いていて、俺は逆さ吊りになっていた。
そして、ポタポタと顔にかかる甘い汁。見上げるとそこには。
「ぎゃぁぁぁぁああああああああ!!!」
カパリ、と半分に割れたメロン。そこにはびっしりと牙が生えていた。
違う! こんなの俺の知っているメロンじゃない!
つか、俺食われる?!
「αζβρьпотШНБНИФОЁψ!!」
はっ! 天使!
タイミング現れた天使が、サッと小ぶりのナイフを取り出し振りかぶる。
うん、今どこから出したとか何にも見てないよ。そんな事より。
「喜べ! 俺様の下僕にしてやろう!(訳:助けてください、お願いします)」
俺の必死さが伝わったのか、ザシュッと俺に巻き付いた蔓の根本を切り、返す刀(ナイフだけど)でメロンの化物を真っ二つに。
わぁお。天使ちゃんこんなに強かったのか。俺、逆らわないほうが良い?
ポトリ、と地面に落ちた俺に巻き付いたままの蔓を、天使ちゃんは安心した顔でほどいてくれた。
笑顔が可愛いのなんのって。
「うむ、ご苦労であった! 褒めて遣わそう」
そして俺は切られて強烈な甘い匂いを放つメロンの残骸にたまらずむしゃぶりつく。
うん、この味は紛れもなく俺の知ってるメロンだ。牙がちょっと当たるけど。
半身を実にうずめるようにして食べていたら、天使に抱きかかえらえて持ち上げられた。
魅惑的な感触が当たってるけど、今は天使ちゃんのメロンよりも食べれるメロンのが大事!
ちょっと、苦しいから放してくれる?
メロンを被ったままジタジタと足で足掻くと、少しずれたメロンからジーッと見てくる天使ちゃんと目が合った。
ん? 何? 食べたいの? しょうがないなぁ。
抱きかかえられたことで手が届いた、残った半身のメロンを引き寄せて、牙をポイポイ抜いて天使ちゃんにあげる。俺って優しい。
「ん!」
でもいくら渡そうとしても受け取ろうとしない。いらないの? んじゃ俺食べちゃうよ?
結局また潜り込むようにして食べた。んまかった。メロンをこんな文字通り浴びるように食べるって、そうそうない経験だと思うよ。
お腹がぽっこりしてるけど気にしない。満足満足。
全身ベトベトになった俺を抱きかかえたまま、天使ちゃんは俺を神殿風の建物の中に連れていく。
背中にあたるポヨポヨした感触が実に至福である。
空腹が落ち着くと、頭が冷静になってくる。
外人風の美少女……は良いとして、見知らぬ土地……も良いとして、何度も聞こえた意味の解らない声……経験値とかレベルとかステータスとか。極めつけは現実世界じゃあり得ないほどでかい芋虫に俺を捕食しようとする牙の生えたメロン。
さっき落ちた時痛かったし、夢じゃない。
これはもしや、小説で読んでた異世界転生ってやつ?!
え? てことは俺、死んだの? 何で?
なおもGを食わせようとしてくる天使、いや小悪魔から逃れるべく、全身に力を入れる。
すると、ふわっ、と比喩ではなく体が中空に浮かび上がった。
「おぉっ?!」
俺、飛んでる?!
ついに俺の秘めたる力が目覚めたか!?
ああ、いや、いかん。今はそれどころではない。
パタパタと羽音を立てながら驚く小悪魔の頭上を飛び越える。
が、飛ぶことに慣れていないからか、ペショッと床に墜落してしまう。
「χοΘеИЙНИЛ!?」
慌てた様子で追いかけてくる美少女からさらに逃れるべく、今度は背中の翼に意識をして再び飛び上がる。
パタタタッ
ペショッ
パタパタッ
ペショッ
飛び上がっては落ち、飛び上がっては落ちを繰り返し、何とか外へと飛び出した。
美少女が追いかけてくるが、捕まったらアレを食べさせられてしまう。
何とか逃げ出して、自力で食べ物を確保しなければ。
と、辺りを見回すと、全く見覚えのない場所にいた。
言葉が通じない時点で何となく予想はしていたが。
今飛び出してきた、世界遺産にありそうな神殿風の白い建物の周囲は少しだけ拓けた場所で。更にその周りは三百六十度見渡す限り鬱蒼とした森がどこまでも広がっていた。
「マジで、どこだここ?」
こんな場所は知らない。山で囲まれた田舎町の実家周辺にだって、こんな深い森はない。
周囲を見渡した所で、また力尽きてペショッと地面に落ちた。
腹が空きすぎて力が出ないのだ。
「うぅ……お腹空いた……」
と、よく見ると目の前に、今度こそ正真正銘食べ物のメロンが! 建物の周囲の拓けた土地は畑だったのだ。
食欲を更に増幅する甘い香り。良く熟れているのだろう。
これ食べて良い? 食べて良いよね? うん、良いよ! いっただっきまーす!!
「ふははは! この俺様の糧となれること、光栄に思うが良い!」
大口を開けてかぶり付こうとした瞬間、ぐるんっと天地が逆さまになった。
「えっ? 何?!」
締め付けるような感覚に自分の足を見ると、メロンの蔓が巻き付いていて、俺は逆さ吊りになっていた。
そして、ポタポタと顔にかかる甘い汁。見上げるとそこには。
「ぎゃぁぁぁぁああああああああ!!!」
カパリ、と半分に割れたメロン。そこにはびっしりと牙が生えていた。
違う! こんなの俺の知っているメロンじゃない!
つか、俺食われる?!
「αζβρьпотШНБНИФОЁψ!!」
はっ! 天使!
タイミング現れた天使が、サッと小ぶりのナイフを取り出し振りかぶる。
うん、今どこから出したとか何にも見てないよ。そんな事より。
「喜べ! 俺様の下僕にしてやろう!(訳:助けてください、お願いします)」
俺の必死さが伝わったのか、ザシュッと俺に巻き付いた蔓の根本を切り、返す刀(ナイフだけど)でメロンの化物を真っ二つに。
わぁお。天使ちゃんこんなに強かったのか。俺、逆らわないほうが良い?
ポトリ、と地面に落ちた俺に巻き付いたままの蔓を、天使ちゃんは安心した顔でほどいてくれた。
笑顔が可愛いのなんのって。
「うむ、ご苦労であった! 褒めて遣わそう」
そして俺は切られて強烈な甘い匂いを放つメロンの残骸にたまらずむしゃぶりつく。
うん、この味は紛れもなく俺の知ってるメロンだ。牙がちょっと当たるけど。
半身を実にうずめるようにして食べていたら、天使に抱きかかえらえて持ち上げられた。
魅惑的な感触が当たってるけど、今は天使ちゃんのメロンよりも食べれるメロンのが大事!
ちょっと、苦しいから放してくれる?
メロンを被ったままジタジタと足で足掻くと、少しずれたメロンからジーッと見てくる天使ちゃんと目が合った。
ん? 何? 食べたいの? しょうがないなぁ。
抱きかかえられたことで手が届いた、残った半身のメロンを引き寄せて、牙をポイポイ抜いて天使ちゃんにあげる。俺って優しい。
「ん!」
でもいくら渡そうとしても受け取ろうとしない。いらないの? んじゃ俺食べちゃうよ?
結局また潜り込むようにして食べた。んまかった。メロンをこんな文字通り浴びるように食べるって、そうそうない経験だと思うよ。
お腹がぽっこりしてるけど気にしない。満足満足。
全身ベトベトになった俺を抱きかかえたまま、天使ちゃんは俺を神殿風の建物の中に連れていく。
背中にあたるポヨポヨした感触が実に至福である。
空腹が落ち着くと、頭が冷静になってくる。
外人風の美少女……は良いとして、見知らぬ土地……も良いとして、何度も聞こえた意味の解らない声……経験値とかレベルとかステータスとか。極めつけは現実世界じゃあり得ないほどでかい芋虫に俺を捕食しようとする牙の生えたメロン。
さっき落ちた時痛かったし、夢じゃない。
これはもしや、小説で読んでた異世界転生ってやつ?!
え? てことは俺、死んだの? 何で?
0
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。


【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる