俺、きのこです。

禎祥

文字の大きさ
上 下
24 / 27

きのこと少女 *

しおりを挟む
きのこになって二日目の夕方。
温かなオレンジ色の夕日に照らされる中、ちび俺を投げたりわんこにじゃれつかれたりゴリとオネエに自分も構えと迫られたりと、わいわいキャッキャしながら歩いていたらあっという間に村に着いた。
着いた途端にエリスはジャニスを探して走っていってしまった。別れた方が良いと、俺は思うんだけどね。

高い木の塀に囲われている所を除けば、そんなに日本と違和感ない。
茅葺屋根の木造平屋が点在し、各家の近くには大きな畑が広がっている。古き良き時代の田舎って感じだ。
どことなく懐かしさを感じながらキョロキョロしていると、鶏とわんこを連れたスエード爺さんは去っていった。
何でわざわざ村の外に鶏出してるかって言うと、そうしないとあの大群が畑の苗を食い尽くしてしまうからなんだと。危険もあるだろうに、大変だなぁ。

「本体、しみじみ言ってるけど、本体の方が今大変だからね?」
うん、現実逃避失敗。
俺が今どうなっているかというと。両側からゴリとオネエに引っ張られ、胴体が裂けかけて中央に穴が開いている。
「あたしと一緒に帰るの!」
「いや、私だ!」
引っ張られるたびに裂け目はどんどん大きくなって、あのあほみたいな再生も間に合っていない。
そうして、ぴっ、と顎にまで裂け目が及ぶと…

「痛ってぇぇぇぇ!」
めちゃ痛い。なんだろう。例えるなら、アカギレ?それをミチミチとさらに指入れて裂いてるような。
「例えなくていいから!」
聞くだけで痛い、とちび俺が人間だったなら本来耳があるであろう位置を両手で塞ぐ。

「お帰り、お姉ちゃん。何してるの?」
「リブレ!い、いや、これはだな。」
ゴリが慌てて手を放すので、俺はオネェに引き倒されてしまった。
体勢的には俺がオネェを押し倒しているような…ちょ、顔を赤らめるのやめろ!

ゴリを姉と呼んだ声の方を見る。
栗毛の美少女がそこにいた。
わお!かっわいい~!あと数年もすればきっと出るとこ出た絶世の美女になるに違いない!

突然の美少女の出現に興奮していると。三人の視線が何故か俺の下の方に…って、えええぇぇぇ?!
ま、また松茸がニョッキしてやがる!!
「ち、違うんだ!これは、決してそういう意味では…!」
こんなものっ!とブチッと引き抜く。にゅっと生える。あ、これ前にもあった…。
抜いても抜いても生えてくる松茸。女性陣の白い眼が…ご褒美です!ありがとうございます!
「落ち着け、本体。」
ちょっ、そこのオネェ!引っこ抜いた松茸に頬ずりすんのやめて!
パニック状態になった時、険しい目つきのリブレたんが俺に金的を見舞ってきた。
「のおおおぉぉぉぉっ!って、あれ、痛くない。」
そういやボディはきのこのままだった。

見るも無惨になった松茸がポトリ、と取れてそれきり生えてこなくなった。
これ、人間に戻った時に女の子になっちゃったりしないよね?ね?
しおりを挟む

処理中です...