俺、きのこです。

禎祥

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きのことコッコ

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きのこになって二日目の午後。
エリンギにリアル人間の手足と顔が生えた超キモい姿の俺は、大増殖したちび俺を引き連れ大移動中。
案内するのはゴリとオネエ、そしてきのこから美女に戻ったエリス。
エリスはやっぱりベニオの婚約者だった。ベニオの本名ジャニスって言うんだって。どうでもいいけど。
魔女の嫉妬できのこに変えられた二人が俺のキス一つで人間に戻ったって事は、キスそのものが呪いを打ち消す行為で、運命の相手云々は関係ないのかもしれない。そうだったらいいな。

「あ、もしかして、村ってあれ?」
陽が傾く頃になってようやく、前方に塀のようなものが見えてきた。
「そうよ。」
「あ、そろそろアレが来る時間じゃない?」
「アレ?」
その言葉に不穏なものを感じ首を傾げた時だった。


バサバサバサバサッ

多数の羽音が響いたと思った瞬間、どこからともなく鶏が飛んできた。空から次々と舞い降りてくる。

「えぇぇぇええっ?!どこから?!」
「「「うわぁぁぁっ!」」」
驚く俺達の列をめがけて鶏がどんどんどんどん飛んでくる。
人間三人やそれより大きい俺には目もくれず、狙いはちび俺。
あっという間に茶色かった列が白と鶏冠とさかの赤に塗り替えられる。一体どんだけいるんだ。

つつかれないから既に傍観モードの俺。
「ああ、そういやこういう光景、中国で見たわー。」
あの時も大量の鶏が飛んできたんだっけ。そう、鶏って意外と飛ぶんだよ。びっくりする。
うんうん、と頷く俺の脇の下にちゃっかり潜り込んで隠れたちび俺が
「本体、それどころじゃないでしょ!食われてるから!」
と小声で叫ぶなんて器用な真似してまた潜る。こそばゆい。
「お前、よく男の脇に潜り込めるな。」
「俺だって嫌だよ。でも、出てたら食われるし。」

「おお、ニキとイワンにエリスじゃないか。」
鶏がすっかりちび俺達を食いつくした頃、おっとりした様子で白髪の爺様がやってきた。
つかお前らそんな名前だったんか。
「スエード爺さん、また鶏だけ先に来させたの。」
「もう!お爺さんってば。イワンじゃなくてハンナって呼んでって言ってるじゃない!」

「これ、コッコ達、あまり変なもの食ったらいかんよ。」
スエード爺さんは確かにゃんこの飼い主。鶏も飼ってるのか。
「おや、お前さんも魔女にやられたのか。可哀想に、変な姿になって。」
憐れまれた!
「村に呪いを解ける娘っ子がいるかもしれん。」
何となく流れでスエード爺さんや鶏の群れと同行する事になった。
きのこのパレードが鶏のパレードに変わったわけだ。

ところで一つ気になることが。
「ちび俺、俺匂い平気?」
「腐ってはいない。」
腐るの?ねぇ、俺腐るの?

「そういう事じゃなく。」
ワキガとかワキガとかワキガとかだよ。
「エリンギ臭い。」
まぁね、俺今、エリンギだからね…。ぐすん。
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