俺、きのこです。

禎祥

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きのことホルン

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きのこになって二日目の昼。
今俺は、湖から現れた謎の怒れる美女からリターンされた足を埋めるべく、湖の畔で穴掘り中。
素手だと掘り難いので、拾ってきた平たい石をスコップ代わりに使っている。

いくら小さいとはいえ、アンティークドールより一回り以上大きな足を埋めようと思えばそれなりの大きさが要る。
きのこボディは疲れを感じないから良いのだが、腕は生身だ。既にプルプルし始めていた。シャベルが欲しい。

「まるで証拠隠滅を図る殺人犯のようだ。」
「いや、殺したの俺じゃねぇけど。」
ちび俺とやいのやいの良いながら掘り続ける。と。

カツンッ

固い物に当たった。
「ん?石にでも当たったか?」
両手でその何かの上の土を払い除ける。
木箱だ。
「宝箱か?」
ワクワクした感情を隠さないちび俺がカパッと蓋を取る。
中には金色の渦巻いた楽器が入っていた。何だっけ、これ?

「えーっと、パ●ーが屋根の上で吹いてた…」
「それはトランペットな。これはホルン。」
「何で俺が覚えてないものをちび俺が知ってるん?」
俺と同一存在じゃない説が浮上したよ?!

「どんな音がするんだっけ?」
よし、吹いてみよう。
持ち上げたら意外と重くてよろめいてしまった。

「え、こんな重いのを持って吹いてるん?」
奏者どんだけ腕ムキムキなの?!
「ベルの中に右手入れて支えんだよ。」
「だから何故知ってる?!」

ベルって何?え、この朝顔の花みたいな部分?だから何で知ってんの?
まぁ良いや。先端の音が出る部分に手を入れて、と。

スーッ

息が抜ける音しかしない。

「…下手くそ。」

もう1回!
ちび俺の言葉に腹立ちながらも再チャレンジ。

スーッ

息が抜ける音しかしない。

「これ壊れてるよ?」
「んなわけあるかぃ。こんだけしっかり仕舞ってあって。唇を震わせるような感じで吹くんじゃなかったか?」
よし、もう1回!

ブブブブブブブッ

「汚い、やめぃっ」
唾を飛ばしているような音になってしまった。うん、コレジャナイ。

「やめやめっ!どっちみち、音出せたところでドレミの押さえも分からんもん!」
何て無駄な時間。さ、穴掘り再開!
と、石に再び手を伸ばして、驚愕。

「手が、きのこに戻ってる、だと…?!」

WHY?!

「今回は何にもキスしてないよ?」
「ホルン吹いたじゃん?」
「え、だって楽器吹くのとキスは違うよね?!」
と、ここで一つだけ思いついてしまった。

「「間接キス!!」」

ホルンは誰かの使用済み。
まぁ、ここまでは良いよ。わかるよ。新品埋める方が意味わからんもん。

「そっかぁ、間接キスもアウトか~…。」

どうせアウト判定取られるなら、せめてマドンナの縦笛を舐めるくらいの変態行為をした時にして欲しい。
というか意図的に間接キスした時に判定して欲しい。

大丈夫。泣いてないよ?ぐすん。
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