俺、きのこです。

禎祥

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きのこと実験

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きのこになって二日目の早朝。今回は真面目な話をしようか。

何故かマスコットのような足と顔のついたエリンギに人間の腕が生えた化け物になった俺。頭には胞子から生まれたちび俺が乗っている。
色々あって生き物とキスすれば人間の姿に戻れるということが分かった。逆に、自分や無機物にキスするとペナルティできのこに戻るようだ。
人間に戻る頃には、人間として大事な何かを失っている予感がする。
人としての尊厳を守って人間捨てるか、人間の姿を取って変態になるか。…どっちも嫌だなぁ。

今俺は、朝霧の薄れつつある森の中に座り込み思案中。
「疑問がいくつかある。」
「いくつかどころか疑問だらけだろ。」
ちび俺の混ぜっ返しは無視!

「無機物にキスしたときは俺からで、生き物とのキスは全部受け身だったけど、俺からしたらどうなんの?」
「おお、俺が一見まともそうな事を言っている。」
ちび俺がわざとらしくびっくりして俺の頭から転がり落ちた。阿保だ。

「だが敢えて言おう、俺よ。子豚の時は自分からだったぞ。」
何事もなかったかのように俺の対面に座るちび俺。
「え、あれもカウントするの?あれはちび俺が蹴ったからじゃん。」
「いや、あれも有効だろ。豚からされたわけじゃないのに元に戻ってんだし。はい、解決。あとは?」

「じゃ、俺について。どこまでやられて平気なん?」
「…俺で実験する気か…?」
「良いじゃん、痛覚無いんだし。」
ジリジリと後ろに下がる俺をパッと捕まえる。

「えいっ!」
「ぎゃあっ!」
頭から真っ二つにしようとしたが、大きな悲鳴にびっくりして半分しか裂けなかった。

「やめぃ!」
ぷりぷり怒るちび俺。見る見る戻って…
「っておい、頭増えてんぞ。」
プラナリアか!

キショいので真っ二つにしてみたが、片方は回復せずに死んでしまった。
「こういう増え方はしないわけね。」
「こういう実験はやめろ。死んだらどうする。」
本体おれは平気だから大丈夫。」
「鬼か。」
ちび俺に猛抗議されたので実験はここまで。

「あとは、よく聞く転生ものみたく、スキルとか、魔法とか使えないかなって。」
「ああ、魔女がいたくらいだしな。」
そう。こんなファンタジーな世界だから、俺にもきっと特別な力が!?

「例えば?」
「えっと、じゃあ、『ステータス、オープン』」

シーン…

「何も起きんな。」

「ステータス!」「オープン!」「メニュー!」
ハァハァハァ

シーン…

「諦めろ。」
「ま、まだまだ!」
じゃあ、今度は魔法だ!

「ファイアー!」

シーン…

「発音が悪いとか?」
「ファイア~(巻き舌)」
「ブフォッ!おまっ笑わせんな!」

シーン…

「…何も起きんな。」
「ちっくしょぉぉぉぉぉおおおおおおお!」

結論。
俺には特別な力など無いようです。

魔法使ってみたかった。ぐすん。
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