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きのこと焚火
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朝起きたらきのこでした。
何だかんだ色々あって、俺は顔と足のついたエリンギの身体にリアル人間の腕が生えたキモイ姿。
夢だ夢だと思っていたら現実だったという現実に打ちのめされて夜を迎えた。
今は湖の畔で焚火をして野営中。
「しかし、世の中何が役に立つかわからんな。」
完全文系の俺が、いとも簡単に火を起こせる。錐揉み式でフンガーっと。その技術は学生時代に叩きこまれた。
小学生の時の課外授業、中学生の時の林間学校、そして大学生の時の博物館実習、単位と引き換えに参加させられた自然体験活動リーダー資格取得のための野外キャンプ。何故か事あるごとに摩擦熱で火を起こす実習をさせられたのだ。これもきっと群馬っ子あるあるだろう。
博物館実習でなぜ火起こしかって?体験学習を取り入れた博物館だったのだよ。石斧を使って木を伐採したり。黒曜石からナイフや鏃を作って弓で的を狙ったり。作った黒曜石ナイフだけで鹿の皮から服作ったり。猪調理したり。勿論パネル作ったり展示作ったりもあったよ。楽しかったなぁ。
「はっ、また現実逃避してしまった!」
どうにか人間に戻る方法を考えねば。
愛のない相手とのキスで腕だけ元に戻ったってことは、これからもいろんな人にキスかましていけば人間に戻るってこと?それじゃ俺ただのキス魔の変態じゃんっ!!引くわー。
それ以前に、こんなキモいナマモノが迫ってきたら?俺だったら逃げる。うん。
ぐるぐる考えこんでいたら、そこはかとなくいい匂いが漂ってきた。
お腹が空かない今の俺ですら食欲を刺激されるこの香りは何だろう?
「ん?いつの間にか、朝?」
空が紫色とオレンジのグラデーションになっている。もう間もなく夜が明けるのだろう。どんだけぼんやりしていたんだ。
焚火に間近でずっと当たっていたせいか、汗が滴り落ちてくる。
「きのこでも、汗ってかくんだなー。」
独り言で開いた口に、汗が入ってくる。
「って!これ汗じゃねぇ!出汁だ!」
流れ出ていたのは汗ではなく、汁。うまみ成分でした。
焚火にあぶられて、焼ききのこに…。いつの間にか自分で自分を調理してた。
そしてなかなか美味でした。さすがエリンギ。
チュンッ
チュンチュンッ
はっ!
恐怖、再来…!!!
「ちょっ、起きるの早くねぇ?!」
匂いにつられたのか、雀が集まってきていた。
ただ、様子が少しおかしい…。あ、もしかして、この腕?人間の腕に警戒?
昨日みたく襲ってくるでもなく遠巻きに様子を見られている。俺が食い物なのか人なのか考えあぐねているのだろう。
それなら。
「よしよし、お腹が空いているのかい?ならこの松茸をお食べ。」
いくらでも食っていいぞ、本体じゃなければ!
俺は松茸を餌にそっとその場から離脱したのだった。
何だかんだ色々あって、俺は顔と足のついたエリンギの身体にリアル人間の腕が生えたキモイ姿。
夢だ夢だと思っていたら現実だったという現実に打ちのめされて夜を迎えた。
今は湖の畔で焚火をして野営中。
「しかし、世の中何が役に立つかわからんな。」
完全文系の俺が、いとも簡単に火を起こせる。錐揉み式でフンガーっと。その技術は学生時代に叩きこまれた。
小学生の時の課外授業、中学生の時の林間学校、そして大学生の時の博物館実習、単位と引き換えに参加させられた自然体験活動リーダー資格取得のための野外キャンプ。何故か事あるごとに摩擦熱で火を起こす実習をさせられたのだ。これもきっと群馬っ子あるあるだろう。
博物館実習でなぜ火起こしかって?体験学習を取り入れた博物館だったのだよ。石斧を使って木を伐採したり。黒曜石からナイフや鏃を作って弓で的を狙ったり。作った黒曜石ナイフだけで鹿の皮から服作ったり。猪調理したり。勿論パネル作ったり展示作ったりもあったよ。楽しかったなぁ。
「はっ、また現実逃避してしまった!」
どうにか人間に戻る方法を考えねば。
愛のない相手とのキスで腕だけ元に戻ったってことは、これからもいろんな人にキスかましていけば人間に戻るってこと?それじゃ俺ただのキス魔の変態じゃんっ!!引くわー。
それ以前に、こんなキモいナマモノが迫ってきたら?俺だったら逃げる。うん。
ぐるぐる考えこんでいたら、そこはかとなくいい匂いが漂ってきた。
お腹が空かない今の俺ですら食欲を刺激されるこの香りは何だろう?
「ん?いつの間にか、朝?」
空が紫色とオレンジのグラデーションになっている。もう間もなく夜が明けるのだろう。どんだけぼんやりしていたんだ。
焚火に間近でずっと当たっていたせいか、汗が滴り落ちてくる。
「きのこでも、汗ってかくんだなー。」
独り言で開いた口に、汗が入ってくる。
「って!これ汗じゃねぇ!出汁だ!」
流れ出ていたのは汗ではなく、汁。うまみ成分でした。
焚火にあぶられて、焼ききのこに…。いつの間にか自分で自分を調理してた。
そしてなかなか美味でした。さすがエリンギ。
チュンッ
チュンチュンッ
はっ!
恐怖、再来…!!!
「ちょっ、起きるの早くねぇ?!」
匂いにつられたのか、雀が集まってきていた。
ただ、様子が少しおかしい…。あ、もしかして、この腕?人間の腕に警戒?
昨日みたく襲ってくるでもなく遠巻きに様子を見られている。俺が食い物なのか人なのか考えあぐねているのだろう。
それなら。
「よしよし、お腹が空いているのかい?ならこの松茸をお食べ。」
いくらでも食っていいぞ、本体じゃなければ!
俺は松茸を餌にそっとその場から離脱したのだった。
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