俺、きのこです。

禎祥

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きのことBBA

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朝起きたらきのこでした。しかもエリンギ。
石突回りから松茸が生えるという謎現象も一段落し、今は湖の畔で松茸の山に囲まれ休憩中。

「おやおや、美味しそうなきのこだこと。」
突然背後からしわがれた女性の声がかけられた。
同時に、ぶちぃ、と俺のお尻部分から何かが引き千切られる音。
振り返ると、ひょろ長い松茸を持った老婆が立っていた。

「ちょっ、婆ちゃんそれ食うの?」
生えてた場所アレだよ?!
「普通に立派なきのこじゃないか」
ひひひ、と笑う婆ちゃん。
ハッ!そうじゃない!第一村人発見だ!!

「なぁなぁ、婆ちゃん、ここどこなん?人はどの辺に住んでるん?」
「おや?あんた変わった喋り方だねぇ。どこから来なさったんだい?」
ここはレポッカという山の麓さ、と婆ちゃん。人は山のずっと向こうに住んでるんだと教えてくれた。
レポッカ。れぽっかねぇ。れぽっかって言ったら月刊随筆ぐ●まの別名だよな?俺が小学校低学年の頃には廃刊してたけど。
あれ?じゃぁ俺いつの間にか群馬帰ってきた?いやいや、群馬こんなでけぇ湖ないから!レポッカなんて山もないから!明らかに日本じゃねぇ!!

「俺は群馬出身だよ。日本ってどっち行ったら帰れる?」
「グンマ?ニホン?さあ、聞いたこともないねぇ。」
詰んだ!涙がちょちょ切れそうだよ!
「そこはあんたみたいな珍妙なきのこがいっぱいいるのかい?」
珍妙って!いや自分でもそう思ったけど!

「婆ちゃん、俺、本当はきのこじゃなくて人間って言ったら信じる?」
「ああ、信じるよ。」
即答!
「あたしゃ魔女だからね。」
魔女!もう何でもありか、この夢。
「元に戻すことできる?」
俺もう雀に襲われるとか嫌だ!

「そりゃあんた、魔法を解く方法って言ったらねぇ。」
唇に指を添えて片目をバチバチさせる婆ちゃん。ま、まさか…。
突然口をムチューっと吸われた。
「%■●#△£<″*♀!?」
長い長い!
いきなりかよBBAババア!!

「け、汚された…。」
ヨヨヨ、と泣き崩れる俺。
「生娘みたいな反応するんじゃないよ。」
いや、俺生娘じゃなくて童貞チェリーだから。キスに夢見て何が悪いのさ。
ん?何か声が艶っぽくなってない?と思って見たら、思わず誰?!と突っ込みたくなる美女が立っていた。
「おや、あたしの方が若返っちまったよ。」
ごちそうさま、とウィンクする元婆ちゃん。お前が変身してどうする!?
「ああ、でもほれ。少しだけ戻ったんじゃないかい?」
愛がないとやっぱり全部は無理だったねぇ、と元婆ちゃん。なら完全に愛がないキスで全身整形レベルで変身したのはどういうことさ?
と思いつつもその言葉に湖面に姿を映して確認。


「……うわ、キッモ!!」

腕だけリアルな人間に戻っていた。体とミスマッチでめちゃキモかった。
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