月下美人は甘露に濡れる

禎祥

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28 猫は花に蜜を求む(カーク視点)*

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 サクヤに血を流させるなんて嫌だったのに、俺の心配を余所にサクヤはあっさりと自分で指を切ってしまった。
 途端に、神殿の淀んだ空気が和らいだ。
 使徒化が進んだ魚人が多数いるこの神殿は、魔力と瘴気が満ちて息苦しいくらいだった。
 こんな所に長時間いたら、それこそ使徒化が進むだろう。

 使徒化した魚人の放つ瘴気と、自決した時に流される血。
 そういったもので、ここはもはや神域とは言えないレベルに穢れていた。
 それがどうだ。
 佳人は瘴気を浄化する――。
 どうやって浄化するのかと思っていたが、どうやら体液がその役割を果たすようだ。

 しかし、浄化はサクヤの体に負担がかかるのか、サクヤの顔色が見る見る悪くなっていく。
 初めはこの神殿の空気のせいかと思ったが、浄化の反作用で魔力不足を起こしたようだ。
 呼気にだって体液が混ざる。
 サクヤはそこにいるだけで常に世界を浄化しているのだろう。
 だから、夜には具合が悪くなる。
 佳人が一晩と生きられないのは、浄化の魔力を常に放出して、放出量を補う体内魔力を自分で作れないからじゃないだろうか。

「カーク、何で勃って……」

 サクヤが顔を真っ赤にしている。
 何でって、お前の香りのせいだが?
 全く、無自覚なのにも困ったものだ。

「御子様、どうぞお部屋に」
「ああ、すまない」

 カシは、サクヤを俺から奪わないという最初の宣言を守るためか、鼻を抑えて耐えてくれている。
 短く謝意を告げると、急いで与えられていた部屋へと戻った。
 今は意識があるが、匂いが出てくるのがいつもより早い。
 きっと血を流したせいだろう。
 カシには悪いが、明日以降血を使う方法には賛同できない。

「サクヤ、抱くぞ」

 そっと布団に下ろし、キョトンとした顔をしているサクヤの服を脱がしていく。
 香りが俺の理性を飛ばそうとしてくるが、俺は獣人であってケダモノではない。
 自分の欲望のままサクヤに襲い掛かるなんてもっての外だ。

「あっ、ん……かぁ、く……」
「サクヤ、ここ、気持ち良いか?」
「ん、いい、よ……んあっ!?」

 そういえば、ここに着いた時に発作を起こしていたな。せっかく慣れてきたと思ったのに。
 カイルたちに乱暴された出来事は、サクヤの心の傷になっていることは間違いない。
 怖がらせないよう、サクヤの反応を見ながらいつもより前戯に時間をかけサクヤの快楽を高めていく。

 ささやかな胸の突起をそっと撫で、その先端を爪で弾くと甘い吐息が漏れる。
 片方を舐めたり、吸ったり舌先で転がしながら、もう片方を指で愛撫する。
 サクヤの体はその度にぴくりと跳ね、可愛らしい声が吐息に混じる。

「も、カーク、そこばっかり、しつこい……」
「ふふ、サクヤがあんまり可愛いから」
「やぁ、も、イきたい」
「まだダメ」
「ぁあっ!?」

 気付けばサクヤの中心がへそにつきそうなほど反り、切なげに先走りを流しながら震えている。
 赤く熟れた先端に伸ばそうとしていたサクヤの指を絡め取り、寸止めする。
 快楽を拾っているうちに、後ろをほぐしてしまいたい。
 カイルたちの行為によって、サクヤの中は奥まで傷がついていて、無理すればまた血が出てしまう。
 先ほど薬を塗る際に弄ったからまだ柔らかいが、念には念を入れて。

「サクヤ、大丈夫。俺に任せて」
「や、あぁ、んっ……」

 閉じた蕾に触れると、ビクリと震える。
 入口を宥めるようにくるくると撫で、同時に前も触れる。
 一瞬だけ身を固くしたが、前の刺激に集中しているようだ。
 潤んだ黒水晶の瞳が、イかせてくれと懇願する。

「ん、いいよ、イって。何回でもイかせてあげる」
「んあああああっ!」

 指を後孔に入れ、精嚢と前立腺を中から刺激し、同時に鈴口を擦る。
 サクヤは大きく体を反らせて、蜜を噴いた。
 痙攣するように収縮する内側を、ゆっくりとほぐし拡げていく。

「あっ……イった、もうイったからぁ……ぅあっ」
「まだだよ。サクヤは、ここに俺のを出さないと、死んじゃうでしょ?」
「や、そんな、あっ、んぅっ……っ」

 サクヤが悶えている間に、2本、3本と指を増やしていく。
 正直、俺の方も破裂寸前なんだけど。
 どうせ出すならサクヤの中に。
 サクヤの入口に、俺の先端を当てる。
 まるで呼吸をするかのように、先端に吸い付き奥へと誘おうとする。

「ね、サクヤ。挿入れたい。俺が欲しいって言って」
「何で、そんな」
「言わないと、このままイかせてあげない」
「や、ああっ……いじわ、るっ……んぅっ」

 サクヤの気持ちが俺と同じでないのは知っている。
 それでも、俺が欲しいと、サクヤの口から聞きたい。
 サクヤの根元を強く握って射精を止めると、サクヤがいやいやと首を横に振る。
 しばらく焦らしてみたけれど、どうやら言ってはくれないようだ。
 その前に、先端に刺激を受け続けている俺の方が限界だ。

「仕方ない、今回は」
「……て」
「ん?」
「カークの、挿入れて……っ」

 諦めかけた時、サクヤがそう言った。
 顔を真っ赤にして、瞳に涙をたっぷり溜めて。
 俺が入れやすいようなのにか、自分で入口を広げるようにし、腰を上げている。
 もう、この姿だけでイけそうなんだが……!

「ふふ、いいよ。挿入れてあげる」
「ああああっ!!」

 奥まで一息に突くと、その刺激だけでサクヤは達した。
 サクヤの中が収縮し、限界だった俺も精を放つ。
 棘皮が落ち着くまで、サクヤの背に口付けを落としながら待っていると、サクヤの腰がモジモジと揺れる。

「ん、っ……」
「こら、我慢して。怪我をさせたくない」
「ぁ、んっ……はっ、あん」

 達する時に出る棘皮は、猫族の女性に排卵を促して確実に子を孕ませるためのもの。
 サクヤは佳人だ。猫族の女性とはそもそも性器の作りが違う。
 猫族の陰茎を受け入れるようにはできていない。
 だから大事にしたいのに。

「愛してる。サクヤ……」
「……ん、あっ」

 最初に抱いた時よりも、確実にサクヤの感度が上がっている。
 腕の中で乱れるサクヤは妖艶で、美しい。
 羞恥に悶えるサクヤも可愛らしいけれど、このまま俺の腕の中でずっと快楽に堕としたいとも思ってしまう。
 今回は無理やり言わせてしまったけれど、いつかはサクヤ自身に俺を求めて欲しい。
 愛していると言って欲しい。

「サクヤの美しい肌に、もう傷をつけたくないんだ」

 だから……。
 サクヤが何度果てても、刺激を続ける。
 過ぎた快楽に悲鳴じみた嬌声が上がっても、意識を飛ばしても。
 何度も精を放ち、何も出なくなるまで一晩中サクヤを愛した。
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