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9 花はしとどに蜜を溢す *
しおりを挟む「あの、カークさん……ほ、本当にここで、するんですか……?」
「あぁ。サクヤの香りが強くなってきている。このまま町に入るのはまずい」
街道から少し外れた茂みで、僕はカークさんに押し倒されていた。
手を繋ぐことに慣れてからステップアップし、怖くても耐えろと強制的に抱っこ状態で移動すること数時間。
何を思ったのかカークさんが突然道を逸れて森へ分け入ったのだ。
「香り……?」
「自分ではわからないのか。嗅ぐだけで理性を失わせる甘い花の香だ」
理性を失わせる、という単語に、背筋がぞくりと粟立った。
僕を襲った人たちは、僕の臭いを嗅いでから明らかに様子がおかしくなったからだ。
このまま町に入ったら、通りすがりの人たちがあんな風になってしまうのだろうか。
「あの、僕……」
「大丈夫だ。乱暴にはしない」
恐怖が蘇り震える僕を安心させるようにカークさんが微笑む。
移動中ずっと抱きしめられていたから、カークさん自身には少し慣れたと思ったのに。
そういう行為をすると想像しただけで、怖くて仕方がない。
「サクヤ、体調が悪いのを隠そうとしないでくれ」
「!」
「サクヤの香りが強まるにつれ、顔色が悪くなってる。辛いんだろう? すまなかった」
「いえ、僕は、座っていただけですし……」
正直、身体が震えるのは、カークさんに抱きしめられていたからだと思っていた。
けれど、こうして地面に下ろされて、それ以上に自分が消耗していると自覚した。
頭が割れそうに痛いし、今にも吐いてしまいそうだ。
そのことにカークさんは気づいていて、匂いが強まっているから佳人特有の体調変化だと考えたらしい。
つまり、このままでは僕が死んでしまう、と。
「あの、カークさん」
「もう黙って」
チュ、と軽いリップ音を立て、口を塞がれた。
そのまま、唇を割り開き、ぬるりと舌が侵入してくる。
ぞわぞわと背筋が粟立ち、思わずカークさんを押し反しそうになるのを、必死に堪える。
カークさんは、僕を助けるために善意でやってくれているんだと自分に言い聞かせて。
「んっ……ふ、ぁ……」
息ができなくて、空気を求めて口を大きく開けると、余計に口付けが深くなった。
まるで噛みつかれているかのような、貪り喰われるかのようなキス。
舌が絡み合い、クチュクチュと濡れた音が耳の奥に響く。
顔が熱くなり、くらくらする。
「……! や、あっ」
「……サクヤ……っ!」
不意に太ももに当たったカークさんの膨らみが、熱を帯びて固くなっていた。
頬に当たるカークさんの息が荒い。
怖い。
けれど、カークさんは乱暴にしないという宣言どおり、ただ挿入して自分の欲望を放つような真似はしてこない。
幾度もキスを落としながら、僕の様子を探るように抱きしめてくる。
大丈夫だと、僕の名を呼びながら、安心させるように頭を撫でてくれる。
ここまで張っていれば辛いだろうに。
「カーク、さん」
「うん、どうしたサクヤ?」
「あの、もう、大丈夫、です。僕が怖がっても、嫌がっても、止めないで……」
「サクヤ……!」
覚悟を決める。と言っても体の震えは止まらないけれど。
覆い被さってきたカークさんにビクリと身体が反応してしまう。
カークさんは再び舌を絡めてきて、その動きに必死に応えていると、いつの間にか服が脱がされていた。
「サクヤ、綺麗だ……」
「や、そんな……恥ずかしい、見ないでください……」
筋肉がつかない貧相な体がコンプレックスで。
彫刻のようなカークさんの体の方がよほど綺麗だと僕は思うのだけど。
褒められて、愛を囁かれて、思わず顔を覆ってしまう。
がら空きになった胸へ、カークさんがキスを落とした。
そのまま、チュ、チュ、と軽い音を立てながらおへその下まで唇が落ち……。
「アッ!? や、やめて……そんな、汚い……」
「嫌がってもやめるな、と言ったのはサクヤだろう」
「や、あ、あっ……んっ……ふ、ぅ……ああっ」
カークさんが、僕のちんちんを舐っている。
その刺激が強すぎて、一気に絶頂へと追い詰められる。
フラッシュバックした恐怖は、快感にどんどん塗り替えれていく。
僕はあっけなくカークさんの口へ精を放ってしまった。
「あ、僕……ご、ごめんなさい!」
「お前は精まで甘いな。もっと飲ませろ」
「えっ?! な、やっ、あっ、あぁああっ!」
急に、カークさんの舌が猫のようなザラリとした感触になり、先端部分に触れる。
達したばかりなのに強烈な快感を与えられて、悲鳴のような嬌声が出てしまう。
おまけに、いつの間にかカークさんの指がお尻に入れられていて、内側からも中心を押される。
中からも外からも強すぎる刺激を与えられて、僕は堪え切れずに二度目の精を放った。
「サクヤ、痛かったらすまない」
「や、待って、まだ……ああっ!」
息を整える隙もなく、熱を帯びた質量がゆっくりと侵入してくる。
不思議と痛くはない。
けれど、絶え間なく与えられる快楽に、身体が作り替えられていくような気がして。
「あぁっ、カーク、さ……やっ、こわ、い」
「大丈夫、サクヤ。気持ちいいことしかしない」
「や、ぁ、こわい。きもちい、の、こわいっ……まって、なにか、きちゃう」
体を気遣ってか、カークさんはゆっくりと動いてくれるのだけど。
その分、当たると気持ちいい箇所がはっきりとわかる。
ずりずりとゆっくり押され、もどかしさと気持ちよさで、精とは違う何かが中心に溜まっていくような。
待ってと懇願しても、カークさんは止めてくれなくて。
「や、あぁああああっ!!」
プシャ、と中心から透明な液体が噴射した。
精液とは違う液体、といえばアレしか。
僕は年甲斐もなくお漏らしをしてしまったのだ。
見ていたのはカークさんだけとはいえ、恥ずかしくて、消え去りたい。
「可愛い、サクヤ。もっと気持ちいい顔見せて」
「あっ、やあっ、まって……あっ、ああっ、やぁ、みないで……」
カークさんも限界が近いのだろう。
腰の動きが早くなる。
カークさんが腰を打ち付けるのに合わせて、僕の先端からプシャプシャと噴水のように漏れる液体。
奥を突かれる度にビクビクと身体が跳ね、絶頂を迎える。
「やっ、あぁ、ああっ」
「サクヤ、俺もそろそろ……っく、ふぅっ」
お腹の中でカークさんのものがドクンと脈打つと、奥がジワリと熱くなった。
そして、余韻を惜しむようにゆっくりと引き抜かれる。
休む間もない絶頂からようやく解放されて、僕はそのまま意識を手放した。
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