月下美人は甘露に濡れる

禎祥

文字の大きさ
上 下
3 / 36

3 蕾は開く、艶やかに(カーク視点) *

しおりを挟む
 男相手の経験はないが、どうやら女と同じでいいようだ。
 小さな突起を愛でてやる度に、甘い吐息が零れる。
 ここまでしても意識がないのが心配ではあるが、性急にしてこの白磁の如き肌を傷つけてしまいたくはない。

 時間をかけて愛撫していると、ささやかだった突起は固く立ち上がってきた。
 始めは薄い桃色だったが、刺激で腫れ今は熟した果実のようだ。
 脳を焼くような芳香はもう出てはいないが、舌を這わせると花のような甘い香りが鼻腔をくすぐる。

「……ん、ぅ……」

 男の体を見れば萎えるかもしれないと不安に思ったが、そんなことは全くなかった。
 僅かについた筋肉がかえって彼の肢体を艶めかしく魅せる。
 仄かに鼻腔をくすぐる花の香も、吐息に混ざる小さな声も、触れる度に小さく震えるその反応も。
 何もかもが扇情的で、俺の体を熱くする。

「さすがに、ここは濡れないか」

 前戯に時間をかけてみたが、その蕾は固く閉ざしたまま指の侵入を拒んでいる。
 女ではないのだから、当然だろう。
 彼の体を横向きにし、自分も横になると彼の白い双丘に舌を這わせる。
 本来排泄に使う場所まで甘い花の香で。そこを舐めることに何の抵抗もなかった。
 仄かに苦みがあるが、香りも味も植物のようで。もしかしたら佳人とは花の精霊の仲間なのかもしれない。

 ぴっちりと閉じた蕾を、時間をかけて舌で開いていく。
 花弁を一枚一枚めくるように、丁寧に、丁寧に。
 舌先で入口をつつき、奥へと侵入することを繰り返す。

 そうして唾液を少しずつ送り込み内側を濡らしていくと、固かった入口がすんなりと舌を受け入れるようになった。
 意識がないながらに異物を感知しているのか、時折内部が舌を押し返そうと動く。
 舌先を握られるような痛みを堪え、入口を念入りにほぐす。

「……そろそろいいか?」

 体勢を変え、彼の顔にキスを落としながら指を挿し入れる。
 舌が届かない位置を指でゆっくりと捏ね、広げていく。
 傷つけないよう、しっかり慣らしてやりたい。
 けれど同時に、今すぐここに俺のをぶち込みたいとも思う。
 相反する感情を煽るように、彼の吐息から出る甘い香りが俺の思考を揺らす。
 堪らず彼の口に貪り付いた。

「……はっ、ぁ……」

 一度佳人を手に入れた人間が、狂ったように佳人を求めるというのも理解できる気がする。
 吐息も、声も、体も、どこもかも甘く、本能を刺激する。
 もっと欲しい、もっと繋がりたい。そう渇望して止まない。
 一度これを経験しては、もう普通の相手では物足りないだろう。
 それだけでなく、蜜のような佳人の体液を味わうほどに、何でもできそうな万能感が高まってくる。

「ん……や、ぁ……」

 後ろをほぐし始めてどれほど経っただろうか。
 唇を貪り、味を楽しんでいると彼の眼が薄っすらと開いた。
 黒水晶のような、美しい瞳だ。
 この状況に驚いたのか、すぐにパッチリと開く。
 キスだけでここまで回復させてやれたことに安堵した。

「……ん、ぅんん~……」

 やめて、と言ったのだろうか?
 吸われた状態でもごもごと必死に舌は動き、俺を押しのけようとしてきた。
 細い腕から予想した通り、あまりにも弱い力だ。
 幼い弟妹達の方が、よほど腕力がある。
 悪いが、やめてやれない。ここでやめてしまえば、お前は弱って死んでしまうんだろう?

 泣かせるつもりはなかったが、涙を湛える瞳は更に美しさを増して、目を逸らせない。
 見つめ合ったまま舌を絡め、後ろをほぐす指を増やしていく。
 反応があった場所をトントンと何度か押してやると、指の動きに合わせて体がびくびくと大きく跳ねた。
 感じてくれているのだ。
 その反応が可愛くて、思わず頬が緩む。

 逃れようとしているのか、俺の腕を掴んでいる。
 が、何の抵抗にもなっていないところが愛おしい。
 更に指を増やす。
 濡れた瞳が不安げに揺れる。

「……ん、……っふ、ぁ……」

 指で押していた部分が、だんだん固くしこりのようになってきた。
 分かりやすくなったそこを押してやると、彼の腰が大きく跳ねる。
 いつの間にか彼のものが、俺の腹に当たるほどに反り上がっていた。
 後ろでも快楽を拾えるようになったのだ。
 俺の愛撫に反応してくれたのが嬉しくなり、もっと善がらせたいという気持ちが沸き起こる。

「アッ……ん、ぅん……」

 塞いでいる口から甘い声が漏れる。
 もうそろそろ大丈夫だろうか?
 指を抜くと、ヒクヒクと痙攣している小さな穴を俺の昂りで穿った。

「あぁっ! いやあああ!」
「……すまない、もう少しだけ我慢してくれ。いい子だから」

 十分に慣らしたつもりだったが、やはりこの小さすぎる身体にはきつかったらしい。
 挿入するやいなや、絶叫し身をよじりながらボロボロと涙を流している。
 可哀そうだが、ここでやめるわけにはいかない。夜が明ける前に、彼の中に俺の精を注がなければ。
 せめて気が紛れるように、細い体を抱きしめ再び口付ける。
 片手で彼の体を支え、もう片方の手で彼のものを撫で、先端を指で捏ねるように動かす。

「や、あっ……んぅっ……」

 亀頭から透明な蜜が溢れ、同時に彼の内部がキュウ、と蠢いた。
 どうやら快感を拾ってくれたようだ。
 抵抗が少なくなり、俺はゆっくりと腰を動かしながら先ほどのしこりを探る。

「や、あっ、はっ……ぁ、ん」

 見つけたしこりを先端で何度も押してやると、ビクビクと内部が痙攣する。
 その刺激だけで俺も達してしまいそうだ。
 甘い香りに包まれて、愛らしさを残しながらも花が咲いたように妖艶さを纏う佳人。
 俺が、開花させた。その考えは俺を酷く昂らせた。

「……ふっ、ぁ……も、やぁ、かぁ、く……」
「!!」
「アッ――!」

 初対面の彼が、突如俺の名を呼んだ。
 情けないことに、俺はそれで達してしまった。
 同時に、彼も白濁を放つ。

「……気を失っているだけか」

 力なく横たわる彼の呼吸を確認し、ホッとする。
 いつの間にか空は白み始めていた。
 浅いところで出してしまったが、それでも彼の命を繋ぐことができたらしい。

「責任を取るよ」

 俺の名を知っていた佳人。
 この出逢いは、運命だったのではないか。
 瘴気を祓うためにこの世界に喚ばれ、俺のもとへ寄越された。
 神なんて信じてはいなかったが、死なせるなと、そういうことなのだろう。
 だから。

「お前は、俺が守る」

 美しい寝顔に、俺はそう誓った。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——?

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

愛人少年は王に寵愛される

時枝蓮夜
BL
女性なら、三年夫婦の生活がなければ白い結婚として離縁ができる。 僕には三年待っても、白い結婚は訪れない。この国では、王の愛人は男と定められており、白い結婚であっても離婚は認められていないためだ。 初めから要らぬ子供を増やさないために、男を愛人にと定められているのだ。子ができなくて当然なのだから、離婚を論じるられる事もなかった。 そして若い間に抱き潰されたあと、修道院に幽閉されて一生を終える。 僕はもうすぐ王の愛人に召し出され、2年になる。夜のお召もあるが、ただ抱きしめられて眠るだけのお召だ。 そんな生活に変化があったのは、僕に遅い精通があってからだった。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

俺は勇者のお友だち

むぎごはん
BL
俺は王都の隅にある宿屋でバイトをして暮らしている。たまに訪ねてきてくれる騎士のイゼルさんに会えることが、唯一の心の支えとなっている。 2年前、突然この世界に転移してきてしまった主人公が、頑張って生きていくお話。

処理中です...