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運命の人は案外近くに

9 あなたが欲しい

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「……葉月、このまま入れていい?」
 欲望に掠れた声でそっと囁かれたのはそんな時だ。
 すぐには意味が頭に入って来なくて、葉月はとろんとした目で言葉の主を見返す。
「…………な、に……?」
「葉月を直接感じたい。……駄目?」
 ――――それ、って。
「…………でも……それは……んぁッ!」
 言葉を発しようとした矢先、ぬるぬると動いていたペニスがぐっと先端を埋めた。
 なんと返事をするべきか、まとまりかけていた思考が霧散し、入り口の肉襞がぐぅっと引き伸ばされる。
 彼がその気になれば、今すぐにでも強引に貫ける体勢。
 最も敏感な部分への刺激に息を詰めた葉月に、熱っぽい目をした圭吾が追い打ちを掛けた。

「葉月。答えないなら、俺の好きにするぞ」
「それは……ぁんっ!」
 葉月が答えるのを邪魔するようなタイミングで、ぐぷ、と亀頭が雁首まで埋まる。
 それはまたすぐに引かれ、なんともいえない空虚感に泣きそうになった。
 早く彼自身でいっぱいにしてもらいたいのに。
 こんな風に焦らされて、もう少しというところでお預けを食らって、今更やめてなんて言えない。
 強気なセリフを吐いて葉月を追い詰める圭吾は、言葉とは裏腹にあまり余裕がなさそうな目をしていた。そんな彼が、無性に愛おしいと思ってしまったりして。

 絶頂後の倦怠感が残る中、腕をのろのろと持ち上げる。
 こんな時、経験豊富なデキる女なら気の利いた誘い文句でも思いつくのだろうか。
 残念ながら葉月は大した知識も経験もないため、情事の最中の官能的な駆け引きもできそうにない。差し出せるのはこの身体だけ。
 だからせめてその気持ちを伝えようと、彼の首に腕を絡ませた。
 恥じらいから目を伏せ、勇気を振り絞って。
「いいよ。……今日、たぶん、大丈夫な日……だから」

 その言葉を紡いだ途端、ぴた、と彼の動きが止まった。
 え? と不思議に思って見上げれば、みるみるうちに圭吾の目の色が変わる。
 本能的な危険を感じ取った葉月が逃げの姿勢に入る前に、噛み付くようなキスが襲ってきた。

「っ?! んぅっ、ぅ、あ……っ!」
「葉月……っ!!」
 荒々しく唇をこじ開けられ、びちゃびちゃと乱暴に咥内をかき混ぜられる。
 感情を爆発させたみたいな激しさだった。
 同時に腰にぐっと体重を掛け、燃え滾る男根を一気に突き立てられる。
「――――……っっ!!」
 敏感な粘膜に直接触れる熱。
 上げそうになった悲鳴は圭吾の口の中に飲み込まれた。
 内側から押し広げる圧倒的な存在感で、脳天へと快感が突き抜ける。
 全身で押さえつけられ、食い締めるように膣壁が収縮した。

「……く、あっ……締まる……!」
 汗ばんだ身体が重なり、密着した肌からは硬く引き締まった筋肉の緊張が伝わる。
 一番深いところへ辿り着いた彼はきつい締め付けに耐えているのか、無言でぐりぐりと腰を押しつけてくる。
 もう、これ以上は入らないのに。
 内臓を押し上げる屹立に震えながら呼吸を整えようとしていると、圭吾は大きく息を吐き出した。
「なぁ、入れただけで軽くイった?」
「……っ!」
 吐息交じりの声に背筋がぞくっと震える。
 おそらく葉月を恥じらわせようとする質問。
 しかしそれに答える前に彼が腰を大きく動かしたせいで、葉月は派手な声を上げることになった。

「ああんっ!」
「やば……ぬるぬるした襞がすげー絡み付いてくる。葉月……この中、自分で触ったことあるか?」
「っ……そんなの、あっ、な、ない……っ」
「そっか。じゃあ今度触り方を教えてやるよ。あったかくて、ぐちゃぐちゃに濡れてるのに死ぬほどキツくて……ほら、このザラザラしてるとこなんか、先っぽで擦ったら意識飛びそうになる……」
「あぅっ?! あ、ああ……ッ!」
 意識が飛びそうだというのは葉月も同じだった。
 太く張り出した雁首がズルズルと膣壁を擦り上げ、甘い蜜を掻き出すように行き来する衝撃。
 みっちりと詰まった膣内には1ミリの隙間もなくて、凶悪なくらいの快感に支配されている。
 最初はペニスの凹凸まで感じられそうなくらいだったのに、それは次第に激しさを増していった。

「葉月、苦しくなったら爪立ててもいいからな」
「ぃあっ、だめっ、はげし……っ!」
「は、ぁ……っ!」
 白い太ももが小刻みに震え、ばつんばつんと打ち付けられる。
 その合間に葉月の口から零れたのは泣き言だったくせに、それには妙に媚びた色が混ざっていた。
 気持ちよすぎて苦しい。もう無理。
 そう思っているのに、理性の効かない身体はもっともっとと貪欲に彼を欲している。一度ハマれば抜け出せない麻薬のようだ。
 そんな矛盾を抱えつつ、唇を乱暴に重ねられた。
 下半身は彼の分身で貫かれ、ベッドの上で囲い込まれて。
 完全に主導権を握られて抗えないことに、葉月は倒錯的な快感を覚え始めていた。
 まるで彼に生殺与奪の全てを握られているみたいな――――。

 圭吾とはずっと対等なはずだった。
 同い年で、同期で、学歴も同じくらいで。
 グループ研修の時は彼がリーダーで葉月はサポートに回ることが多かったが、それはあくまでも適性があったからだ。そういう役割があっても忌憚なく意見を交わし、フラットな立場でいることに変わりはなかった。
 それぞれ違う部署に配属されてからは、頼ることもあれば、頼られることもあった。
 性別なんて超えて、気を許し合った互角な関係だったのだ。

 ところが今の彼は、葉月の力では全く敵わない『男』の顔をしている。
 もちろん今夜の彼の言い分を聞くと、性別なんて関係ない友人だと思っていたのは葉月だけだったようなのだが。
 あられもない姿で組み敷かれ、対等彼にただただ屈服させられているという事実に、ひどく陶然とした。
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