箱庭のエデン

だいきち

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気づきたくない気持ち

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「なんで無茶したんだお前。びっくりしたよ、死ぬんじゃねえかと思ったし」
「しにまへん……」
「藻武くん、今由比都の舌切れてるから、あんまり喋らせないでやって」

 廃墟と化した水族館での本業の方は、由比都の中で随分と苦いものになってしまった。いつもよりも冷たい夜見の声が、車内の空気を重くする。
 車体には、あやめがヒールで蹴り飛ばした凹みが残っていた。車内で惰眠を貪っていた藻武は驚きすぎて永遠の眠りにつくところだったという。しかし、夜見が由比都を抱えてくるまでに、近場の病院へのルートを調べたことは流石の気転といったところだろう。
 廃水族館での仕事ということもあり、近場といっても近くはない。車は静かに張り詰めた空気を纏いながら、海の上の道を滑っていた。
 
「なんか居心地わる」
「あやめちゃああん煙草吸っていいから窓開けてくれるかなあ⁉︎」
「声でっか」
 あやめの声を遮るように、藻武の声が上がった。
 居心地が悪く感じるのは、きっと己が原因だろうと由比都は思っていた。夜見はというと、ただ無言で由比都の口元にタオルを当てている。
 口の中が気持ち悪くて、もう腕すら一本もあげる気力すら起きない。由比都は大人しく黙りこくるほかはなかった。
 車がようやく病院に着く頃には、夜見が由比都を抱き上げても文句も出なかった。しばらくはあまり喋らないこと、そして柔らかいものを中心に食事をし、口の中を清潔に保つこと。おおよそ予測のつくことを医師から言われて終わったが、それよりも由比都の貧血体質の方が問題だと、別の指摘を受ける羽目になった。
 なんでこんな目に、という己への文句は飲み込まれた。由比都の中でなんとなくではあるが、理由の見当がついていたからだ。

「ゲロ吐かなくて良かったよ」
「…………」
 
 前科があるせいか、藻武に揶揄われる。由比都は落ち着いたのかしっかりと地べたに足をつけて立ってはいたが、未だ顔色は悪いままだった。
 無言の由比都の抗議はしかし、藻武へと目線が飛ばなければ怖くはないのだろう。夜見の背中越しから毛を逆立てている由比都が、猫のようで面白かったらしい。わざと由比都の視線が届かないところにいるあたり、藻武の性格の悪さが表れていた。
 
「今日はもう帰ってもいいかな。由比都もこんなんだし、掲示板の件は」
「ああ、いいっすよ。一応中の写真は全部撮ったし、なんもいなかったってスレ立てて流しときます。まあ、元心霊スポットってうたえば新しく施設建てた時も集客見込めんじゃねえかな」
「色つけてもらお。それ売り文句にして。私あの依頼者のハゲだぬき嫌いなのよね」
「それはそう」
 
 祓屋としての清掃依頼を受けた時点で、手付金はもらっている。廿六木からくる案件は規模によって値段が決まっているが、個人依頼は状況を見てからと決まっているのだ。普通の霊媒師よりは安い。しかし、慈善事業ではないから金額はそれなりにもらうが。
 
「あ、労災降りるから。領収書もらった?」
「ん」
「ん。じゃああとはよろしくね」
「ういっす」
 
 夜見の大きな手でわしりと頭を撫でられて、由比都の肩の力がわずかに抜けた。もう怒ってはいないのだろうか。なんとなく、触れられた髪を指で摘んで乱れを直す。
 
「本当に送んなくていいんすか?」
「うん。あやめちゃん送ってあげて。女の子一人で夜道返すのもね」
「できる男の気遣いを学びなさい藻武」
「いや、俺が心配してんのはお前を運ぶ俺への傍目だよ」
 
 こんなギャルのせて運転したら、送迎かと思われるじゃん。藻武のゲンナリとした言葉も、突然鈍い音が聞こえて途切れてしまった。場所がわからないから、どうやって帰宅するのかは夜見の判断待ちだろう。由比都は、しばらくはつまらない食事になりそうだと少しだけ気分が沈んでいた。
 
「タクシー呼んだから。ここら辺で座って待っていようか。ちょうどベンチあるし」
「ん」
 
 手を引かれるままに、備え付けのベンチへと腰掛けた。肩にはまだ夜見から借りた羽織を引っ掛けたままだ。指先で夜見を突けば、意図を察したのかそのままでいいと返された。まだ何も口にしていないのにだ。
 
「……なんで、あんな無茶したの」
「……むひゃ、ひへない」
「あーー、ごめん……今こんなこと聞くのずるいよな」
 
 深いため息が隣から聞こえて、由比都は膝に置いていた手を強く握り込んだ。ジンジンと痛む舌は、唾液を鉄錆の味にする。唾液には治癒力があると聞くが、それは傷ついた紋にまで有効なのだろうかと思った。
 
「喋らなくていいから、聞いてくれる」
「……ん」
「無理して欲しいわけじゃないんだよ。由比都が俺たちのことを知ろうとして、俺たちのためを考えて行動してくれるのはもちろん嬉しいけど。……焦って欲しいわけじゃないんだ」
「あせっへらんか、っ」
「由比都。……でも俺にはそう見えた」
 
 夜見の手が由比都の唇に触れて、思わず閉口する。穏やかな声色を努めてはいるが、夜見が参っているだろうことは、なんとなく見当がついた。
 夜見の言いたいことは、由比都にはよくわかる。京浜地区に来て分かったことは、神様がいない代わりに言葉を捧げる対象がいるということ。他者のために祈ることで、力を調整するのだ。
 あの時あやめが水槽の中で使っていた信仰文句。それは、夜見へと向けていたものだった。神へと祈りを捧げることができない故の、編み出した独自の力の増幅方法。力が波紋のように重なって広がっていくそれは、無駄が多いようにも見える。しかし、それを成功させるのはおそらく。己の適性を知らないからこその柔軟性だろう。
 あの巨大水槽の中で、由比都は不毛な焦りを感じていた。それは、あやめに負けるかもしれないという無意識の対抗意識だ。だからこそ、敷波区の土地神の力が届かぬこの場所で、無理に異能の力を増幅させて反動がきた。
 
(忘れていたわけじゃない、なのに)
 
 由比都の唇が、かすかに震えた。あやめに引き摺られて術を行使した、その自覚をもってしまった。
 京浜地区にきて、サルマネと戦ったあの日。由比都は敷浪区を離れてもなお、つつがなく術を行使することができた己を思い出していた。あの時は、信仰文句を詠唱はしなかった。それは、ニギハヤノササメの加護から抜けた今。京浜地区で敷浪区の神へと信仰を捧げることが罰になるからだ。
 それを、頭の中では理解していたはずなのに。
 
(まるで、張り合ってしまった、かのような)
 
 そんな愚かを演じることになるだなんて、由比都は思いもよらなかった。
 何を競うつもりだったというのだ。同じ仲間で、共闘していたはずのあやめと。
 
「次は、無茶しないで。とはいっても、由比都は舌が治るまでは、っ……」
「っ……」
 
夜見の言葉が、それ以上続くのが耐えられなかった。
 夜見の口から、あやめと由比都を比較される言葉が出るのが怖かったのだ。気がつけば、己の手よりも一回りおおきな手を掴んでいた。
 ハッとする。今までなら、弱さを見せるようなことはしなかった。意識して、気をつけていたはずだったのに。
 夜見は、今どんな顔をしている。夜見の手の温もりを感じるのに。由比都の体温は、じわじわと下がっていった。まるで、足元から少しずつ氷が這い上がってくるかのようだ。
 もうお前なんかいらないと、夜見に思われるのが怖かった。怪異と戦うには、力を宿した声と言葉が必要不可欠だ。目が見えないからこそ敷浪区を追われた由比都が、ようやく見つけられたひだまりのような男の隣。
 舌が使い物にならなくたって、まだ戦える。諦めを悪くさせたのはお前自身だろう。
 由比都の頭の中で、今まで経験したことのないような感覚がぐるぐると渦巻いている。それは、人へ向ける感情として、不要と決めつけていたもの。男の由比都が持つべきではないそれは、間違いなく悋気だ。
 それは由比都の自覚をきっかけに、少しずつ体温を奪うように喉元へと這い上がってくる。
 
「ゆ、……」
 
 夜見の目が、わずかに見張った。
 それほどまでに由比都の顔色は青褪めていたのだ。夜見の腕を掴む手に力が入る。まるで、置いて行かれるのが怖いと言わんばかりの様子は、普段の由比都からは想像もつかないものだった。
 その姿は、夜見から言葉を奪うのには実に適していた。今の由比都は危うい。言葉の選択を一つでも誤れば、由比都の心の扉は再び閉ざされるだろう。
 街灯に照らされた場所に二人。由比都は、灯りが切り取る狭い空間に二人きりであることすら気が付かない。
 夜見の手が、小さな顎にそっと触れた。無骨な指で唇を撫でられて、薄い体は僅かに緊張をした。
 先ほどとは違う、夜見の纏う空気が、わずかだが変わった気がしたのだ。
 
「よみ、」
「……あ、タクシー来たよ由比都! ほら、いこ! 待たせる前にさ」
 
 今、何をしようとした。そう聞く勇気を、由比都はもたなかった。掴んだ夜見の手を振り払われることもない。そのまま、いつも通りの様子でタクシーまで手を引かれる。
 
「さ、っき」
「口端に血がまだついてたんだ。ほら、無理して舌動かさないの」
「ち……」
「すんません、駅の北口まで」
 
 夜見は、それ以上は答えるつもりがないようだった。
 突き放されているわけではない、のだと思う。由比都の手を、大きな手が握っている。しかし、少しでも由比都が手を引けばするりと解かれてしまうほどの弱々しい力だ。
 車は夜見の住処の近くまで二人を運ぶ。たった十分程度の道のりのはずなのに、車内の酸素が薄く、そして長い時間車に乗っていたような心地になった。

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