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名無しの龍は愛されたい番外編(これ以後は拙作ごった煮集です~)
年下の雄は僕のもの。(結婚編) レイガン×ユミル *
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「える!」
ようやく絡んできた二人の気配がなくなったことに気がついたナナシが、パタパタと尾を振りながら路地から飛び出してきた。むすくれた顔でユミルが後ろから続くと、ナナシを抱き止めるエルマーを背後に、レイガンがため息ひとつ。そっと引き寄せると、その小さな頭を撫でた。
「おかえり…」
「怪我はないか。」
「うん。」
俯いたまま、なんだか元気がない様子にレイガンが首を傾げた。よくよく見れば目元が微かに赤らんでいる。どうやらよほど驚いたらしい。怖かったのかと正しく理解すると、その小さな手を握りしめた。
「魔力酩酊させりゃあよかったろ?」
「だめだよう、ユミルいるもん。ぐあいわるくなっちゃうのやだだもん。」
ションもりとお耳をへこたれさせたナナシが、エルマーにぎゅうぎゅうと抱きついて甘える。ユミルもレイガンを目の前にして甘えたいのだが、なんだか気恥ずかしいのと年上としての矜持がそれを許さない。レイガンはそんなユミルの性格をわかっているので好きにさせているが、小さな手で服の裾をキツく握りしめている様子が可哀想で可愛い。
「エルマー。さっさと帰ろう。換金ももう終わっているしな。怖いことがあったんだ。少しユミルを落ち着かせたい。」
「…落ち着いてるもん。」
「だめだ。帰るぞ。ナナシ、今日はありがとな。明日はトッドが入国するから、昼過ぎにうちにくれば会えるぞ。」
「ふわあ…トッドくるのう?えるといくねえ…」
「おー、レイガンに癒してもらえユミル。またな。」
ナナシと手を繋いだエルマーが、少しだけ顔色の悪いユミルを見る。見た感じ知り合いだったのだろう。奔放な過去のご友人たちは切ったと言っていても、コックローチのようにしぶとくつきまとう奴もいるのである。
大方ナナシと一緒にいながら危険な目に合わせてしまったとか、そんな責任感を感じているのだろうが、ナナシ本人はいたって元気そのもので、もう明日のことで頭がいっぱいになっている。
レイガンに肩を抱かれながら、元気のない後ろ姿を見送る。我が幼馴染ながらなんとも不器用な男である。レイガンの服の裾を握るくらいなら抱きつきゃあいいのになあ。そんなことを思った。
歩き慣れた道をレイガンと並んで歩く。いつもなら腕に抱きつくか、手を繋ぐかをして歩きづらいくらいなのに、なんだか相当に参っている。
レイガンはずっと服の裾を握り締めながらとぼとぼ歩くユミルの様子に時折心配げな目線を向けながら帰路をゆく。
「…助けてくれて、ありがとう。」
「助けないわけないだろう。気分は悪くないか?」
「うん…、落ち込んでるだけ…。」
妊娠しているナナシを危ない目に合わせてしまったという罪悪感がユミルを苦しめる。迂闊だった。ナナシといるのだから、こういうことも想定しておけばよかったのだ。
くすんと鼻を啜る小柄な恋人の服の裾を握る手を解くと、レイガンは自分の手を這わせるようにして指を絡めた。
こんな小さな手のひらでも、男だ。だからユミルだってナナシを守りたかったのだろう。
黙って手を繋がれたまま、レイガンにひかれるようにして歩く。家について、部屋の中に入った途端にもうダメだった。
「っ…ぅう…、」
ヒック、とユミルの喉がなった。結婚してから知ったのだが、ユミルはよく泣く。しかも大抵が気にしなくてもいいようなことで自分を追い詰める自己嫌悪からくるもので、レイガンはその生真面目で不器用なところが好ましいと思っていた。
レイガンの手を離れ、パタパタと寝室にかけていく。決まってベッドと壁の隙間に入り込み、縮こまって泣くものだから、深夜にユミルがレイガンの帰宅を喜んで嬉し泣きをそこでしていた時には、部屋にゴーストが出たのかと思って思わず声を出して驚いた。
「ユミル。」
またそこにはまって泣くのか。レイガンはそっとベッドに腰掛けると、ユミルの頭を撫でた。年上のくせに、子供のようで可愛らしい。よくよく考えてみたら、ナナシも生まれ直しはしているが年齢的には最年長なのだ。どうも自分たちの年上の番は泣き虫が多いなあと思う。
「ユミル。膝が寒いんだが温めてくれないか。」
「…乗れってこと…?」
「ああ、俺の膝が寂しがっている。」
レイガンの妙な言い回しに、泣き顔のユミルが何言ってんだこいつと言った顔つきで見上げてくる。そんな目で見られてもなんとも思わないメンタルの強いレイガンは、ぽんぽんと膝をたたいて催促をする。
電気もつけていない薄暗い部屋で、照れて頬を染めたユミルがのそのそと膝に乗ってくる。正面を向くように座る癖は、セックスの時に対面座位で挿入することが多いからだ。
無意識とはいえ、ユミルが落ち着く座り方がそれなのかと理解すると、思わず顔がにやけそうになる。そんな情けない面を見せたくなくて、思わず顔の筋肉に力を入れると、何その顔、怖…と言われた。解せぬ。
「横か後ろ向きかと思ってな。」
「え…、あ。」
「正面が嬉しい。降りようとするなユミル。」
レイガンの指摘に顔を赤くすると、降りようとする細い体を抱き込んだ。今更そんなつれないことはしてほしくなかった。レイガンはユミルの腰に腕を回すと、空いている手で後頭部を引き寄せ肩口に顔を埋めさせた。
「何、あんなこと誰も予想だにしないさ。お前が気にすることじゃあない。」
「…でも、僕のせいだべ。」
「過去のお前がなんであろうと、今は俺のものだろう。触られて嫌だと感じたのなら、お前は悪くないよ。」
「…嫌だった。気持ち悪いって思ったんだ。」
「ならいい、報復は済んだ。もうあいつらはカストールには入国しないさ。」
レイガンの報復という言葉に小さく反応する。別に、脅しただけだと誤魔化すレイガンに、ユミルはその大きな手のひらを開くようにして手を添えた。
「ごめん、変なことさせて。」
戦いはもう終わったのに、自分のために手を汚させたのだ。心安らかにすごしてもらいたいと思っていたのに、過去の自分の行いがこうも苦しめる。
レイガンはくすぐったそうに口をモニョりと動かした。ユミルの自分に対する気遣いが嬉しかったのだ。
「俺だけがやったわけじゃない。エルマーだっていたさ。それに、自分のものに触れられて怒らない雄なんていないだろう。」
そっとユミルの前髪を撫でつけるように額を晒すと、その泣顔を頬を包むようにして見つめた。
カサついた親指で擦るように目元を撫でる。こうして遠慮することなくレイガンが触れてくれるようになったのがユミルは嬉しかった。
「僕もやだよ、レイガンが街のご婦人に色目使われるのも、カフェのウエイトレスに食事に誘われるのを見るのも。僕のなのにって思ってすごく嫌だ。」
「全部断っているだろう。」
「断ってるってか、あれは突き放しているだけどね。」
なぜ俺があんたと行かなくてはいけない。それは依頼か?そんなことを真顔で言うから、レイガンに色目を使う奴らはだいたい幻滅して去っていく。逆に男かあの株が上がって、男にもモテ出すのだから始末に追えないが。
ユミルにそんなことを言われ、渋顔をする。まさか引き合いに出されるとは思っていなかったからだ。
腕の中のユミルが、少しだけ楽しそうに笑う。レイガンの下手くそなコミュニケーションのしくじり話で笑ってくれるのならいいか。そう思ってそっと頬を撫でると、擽ったそうにしながらユミルが顔を上げた。
そっと鼻先を擦り合わせる。睫毛を震わしながら目を閉じたユミルの唇に己の唇を重ねると、キスの合間に唇から甘やかな吐息が漏れた。
「っ、ん…、」
背中に回った細い腕に力が入る。唇を数度啄み、割り開くかのようにして舌を差し込むと、小さな喉仏がコクリと唾液を飲み下す。
舌先に欲を孕んだ熱がやどり、そっとユミルの体を解いていく。微かな水音を立てながらレイガンが背後のベットに仰向けに倒れるようにしてユミルを己の上に乗せると、ゆっくりと唇が離れた。名残惜しげに繋がった銀糸が艶かしい。
「レイガン、したいの…?」
胸板に手をつき、気恥ずかしそうにユミルが見下ろす。蕩けた瞳は先程とは違う涙で濡れていた。
「したい、…だめか?」
「だって、明日トッドさんくる、」
「知ってる。」
「え、ぁ…っ」
ちゅ、ちゅ、と可愛らしいリップ音を立てながらユミルの襟元をくつろげながら肩口に口付ける。
「でも、したい。」
「だ、だめだって…お、怒られる…」
「ユミル、」
べろりと熱い舌が首筋を舐め上げる。静止をするユミルをまっすぐに見上げると、曇りなき眼で見つめた。
「一回だけだ。」
「ほ、ほんとに…一回だけ…?」
「うん。」
ユミルの大好きな綺麗な顔立ちのレイガンが、うん。と言う。こんなにかっこいいのに、急に年下を出してくるのだからずるい。
紫の綺麗な瞳が、ユミルの涙目をじっと見つめる。待てを言いつけられた犬のように忠実に、ユミルからのよしを待つ。
きゅうんと胸の奥が甘く鳴く。ユミルの可愛い年下の旦那さまは、若く正直な体の高ぶりを下肢に押し付けてくる。そっと尻に添えられた手のひらで柔らかく尻を揉みながらだが。
「い、一回だけ…、ぜ、絶対痕残すのだめだからね…、わかった?」
「うん。」
自信がないからわかったは言わないが。レイガンはそっとユミルに擦り寄ると、その体を抱きしめながら体制を入れ替える。
今度は組み敷かれる形になったユミルが、そっと甘やかすようにレイガンの髪を撫で梳くと、晒された鎖骨を甘噛みしながら胸元のボタンを全て外してしまったレイガンに小さく笑った。
帰ってきてすぐの時は、意識が戻るなりいきなり世話をしていたユミルを組み敷きシャツを引きちぎって犯された。それから考えれば、ユミルのレイガンへの躾は功を奏したようである。
きちんと丁寧にボタンを外し終えると、ユミルの臍に開けた揃いのピアスに口付ける。これがレイガンの今から美味しくいただきますの合図であった。
「ん、んン…っ…」
はぷりと口に含まれたのは、ユミルの薄桃色の胸の頂だ。
レイガンの唇で挟まれ、唾液をまとった舌で舐られながら、もう片方は指で愛撫される。時折ちゅる、とはしたない音を立てられ、溢れた唾液が胸の傍から伝って肌をなぞる感覚に下肢が熱を帯びる。
「れ、ぃが…ッ、ン…」
「ン…。」
「ひぁ、っ…」
ぢゅ、と一際強く吸われ、びくりと腰が跳ねた。レイガンは少し陥没気味のユミルのそこを外気に触れるように吸い出すだけでは飽きたらず、こうして甘噛みをするように歯で掠めるのだ。
赤い舌がねとりと見せつけるよう胸の突起を舐め上げるのが恥ずかしくて、思わず顔を逸らす。
熱い手のひらが薄い腹を撫でたかと思えば、まるで手品のような早技でまとっていたボトムスを脱がされた。
「ちょ、はや…っ、」
「ユミルが抱いていいって言った。」
「う、わ…」
むくりと起き上がったレイガンがベルトのバックルを外す。かちゃかちゃと金属が擦れ合う音が生々しい。ジッ、というファスナーが引き下げられる音がしたのち、下肢をくつろげ、熱く張り詰めた脈打つ性器をずるりと取り出した。
「ふー…、」
「でっ…、」
相変わらずに、でかい。じわりと耳の裏まで回った熱が、ユミルの頭を茹で上げる。
べちりと腹に乗せられたそれが、ユミルの臍の飾りを押し上げる。安定したので痛くはないのだが、容易に結腸までを殴るように攻めてくるその凶器が太い血管を走らせながら脈打つ。
「ほぐすぞ、力抜いてろ。」
「そ、ういうの…いう、ぁっ…」
肩足が担ぎ上げられ、唾液を纏ったレイガンの指がユミルの体の内側に侵入してくる。こなれた穴になっているのに、まるで気にせずに前戯を施してくるので、ユミルとしては大事にされているようで嬉しい反面、焦らされているような気がしてならない。
ぐぷりと飲み込んだ二本の指が、探るようにユミルの内壁をいじくり回す。ぬちぬちと卑猥な音を立てながらほぐすレイガンの瞳は、今にも食ってやりたいというような獰猛な瞳をしているのに、傷つけたくないという優しさが理性を繋ぎ止めていた。
紫の瞳の奥に灯る欲の炎が揺らぐのが好きだ。
こんな上等な男が、自分に執着して、早く腰を振りたいのに我慢をしている姿が可愛らしい。
張り詰めさせたそこに、細い指が絡まった。ぐう、と喉を鳴らしたレイガンを蕩けた瞳で見上げると、コクリと喉を鳴らした。
「入れて、焦らすのはもうやだ…」
「ユミル、…優しくする…。」
「やだ、激しくして。」
「お前な…。」
ぎゅう、と抱きこんだレイガンの頭を撫でてやる。理性など、そんなもん投げ捨てて仕舞えばいい。レイガンはユミルの可愛い年下の雄なのだから、我慢なんて野暮なことはしてほしくなかった。
ようやく絡んできた二人の気配がなくなったことに気がついたナナシが、パタパタと尾を振りながら路地から飛び出してきた。むすくれた顔でユミルが後ろから続くと、ナナシを抱き止めるエルマーを背後に、レイガンがため息ひとつ。そっと引き寄せると、その小さな頭を撫でた。
「おかえり…」
「怪我はないか。」
「うん。」
俯いたまま、なんだか元気がない様子にレイガンが首を傾げた。よくよく見れば目元が微かに赤らんでいる。どうやらよほど驚いたらしい。怖かったのかと正しく理解すると、その小さな手を握りしめた。
「魔力酩酊させりゃあよかったろ?」
「だめだよう、ユミルいるもん。ぐあいわるくなっちゃうのやだだもん。」
ションもりとお耳をへこたれさせたナナシが、エルマーにぎゅうぎゅうと抱きついて甘える。ユミルもレイガンを目の前にして甘えたいのだが、なんだか気恥ずかしいのと年上としての矜持がそれを許さない。レイガンはそんなユミルの性格をわかっているので好きにさせているが、小さな手で服の裾をキツく握りしめている様子が可哀想で可愛い。
「エルマー。さっさと帰ろう。換金ももう終わっているしな。怖いことがあったんだ。少しユミルを落ち着かせたい。」
「…落ち着いてるもん。」
「だめだ。帰るぞ。ナナシ、今日はありがとな。明日はトッドが入国するから、昼過ぎにうちにくれば会えるぞ。」
「ふわあ…トッドくるのう?えるといくねえ…」
「おー、レイガンに癒してもらえユミル。またな。」
ナナシと手を繋いだエルマーが、少しだけ顔色の悪いユミルを見る。見た感じ知り合いだったのだろう。奔放な過去のご友人たちは切ったと言っていても、コックローチのようにしぶとくつきまとう奴もいるのである。
大方ナナシと一緒にいながら危険な目に合わせてしまったとか、そんな責任感を感じているのだろうが、ナナシ本人はいたって元気そのもので、もう明日のことで頭がいっぱいになっている。
レイガンに肩を抱かれながら、元気のない後ろ姿を見送る。我が幼馴染ながらなんとも不器用な男である。レイガンの服の裾を握るくらいなら抱きつきゃあいいのになあ。そんなことを思った。
歩き慣れた道をレイガンと並んで歩く。いつもなら腕に抱きつくか、手を繋ぐかをして歩きづらいくらいなのに、なんだか相当に参っている。
レイガンはずっと服の裾を握り締めながらとぼとぼ歩くユミルの様子に時折心配げな目線を向けながら帰路をゆく。
「…助けてくれて、ありがとう。」
「助けないわけないだろう。気分は悪くないか?」
「うん…、落ち込んでるだけ…。」
妊娠しているナナシを危ない目に合わせてしまったという罪悪感がユミルを苦しめる。迂闊だった。ナナシといるのだから、こういうことも想定しておけばよかったのだ。
くすんと鼻を啜る小柄な恋人の服の裾を握る手を解くと、レイガンは自分の手を這わせるようにして指を絡めた。
こんな小さな手のひらでも、男だ。だからユミルだってナナシを守りたかったのだろう。
黙って手を繋がれたまま、レイガンにひかれるようにして歩く。家について、部屋の中に入った途端にもうダメだった。
「っ…ぅう…、」
ヒック、とユミルの喉がなった。結婚してから知ったのだが、ユミルはよく泣く。しかも大抵が気にしなくてもいいようなことで自分を追い詰める自己嫌悪からくるもので、レイガンはその生真面目で不器用なところが好ましいと思っていた。
レイガンの手を離れ、パタパタと寝室にかけていく。決まってベッドと壁の隙間に入り込み、縮こまって泣くものだから、深夜にユミルがレイガンの帰宅を喜んで嬉し泣きをそこでしていた時には、部屋にゴーストが出たのかと思って思わず声を出して驚いた。
「ユミル。」
またそこにはまって泣くのか。レイガンはそっとベッドに腰掛けると、ユミルの頭を撫でた。年上のくせに、子供のようで可愛らしい。よくよく考えてみたら、ナナシも生まれ直しはしているが年齢的には最年長なのだ。どうも自分たちの年上の番は泣き虫が多いなあと思う。
「ユミル。膝が寒いんだが温めてくれないか。」
「…乗れってこと…?」
「ああ、俺の膝が寂しがっている。」
レイガンの妙な言い回しに、泣き顔のユミルが何言ってんだこいつと言った顔つきで見上げてくる。そんな目で見られてもなんとも思わないメンタルの強いレイガンは、ぽんぽんと膝をたたいて催促をする。
電気もつけていない薄暗い部屋で、照れて頬を染めたユミルがのそのそと膝に乗ってくる。正面を向くように座る癖は、セックスの時に対面座位で挿入することが多いからだ。
無意識とはいえ、ユミルが落ち着く座り方がそれなのかと理解すると、思わず顔がにやけそうになる。そんな情けない面を見せたくなくて、思わず顔の筋肉に力を入れると、何その顔、怖…と言われた。解せぬ。
「横か後ろ向きかと思ってな。」
「え…、あ。」
「正面が嬉しい。降りようとするなユミル。」
レイガンの指摘に顔を赤くすると、降りようとする細い体を抱き込んだ。今更そんなつれないことはしてほしくなかった。レイガンはユミルの腰に腕を回すと、空いている手で後頭部を引き寄せ肩口に顔を埋めさせた。
「何、あんなこと誰も予想だにしないさ。お前が気にすることじゃあない。」
「…でも、僕のせいだべ。」
「過去のお前がなんであろうと、今は俺のものだろう。触られて嫌だと感じたのなら、お前は悪くないよ。」
「…嫌だった。気持ち悪いって思ったんだ。」
「ならいい、報復は済んだ。もうあいつらはカストールには入国しないさ。」
レイガンの報復という言葉に小さく反応する。別に、脅しただけだと誤魔化すレイガンに、ユミルはその大きな手のひらを開くようにして手を添えた。
「ごめん、変なことさせて。」
戦いはもう終わったのに、自分のために手を汚させたのだ。心安らかにすごしてもらいたいと思っていたのに、過去の自分の行いがこうも苦しめる。
レイガンはくすぐったそうに口をモニョりと動かした。ユミルの自分に対する気遣いが嬉しかったのだ。
「俺だけがやったわけじゃない。エルマーだっていたさ。それに、自分のものに触れられて怒らない雄なんていないだろう。」
そっとユミルの前髪を撫でつけるように額を晒すと、その泣顔を頬を包むようにして見つめた。
カサついた親指で擦るように目元を撫でる。こうして遠慮することなくレイガンが触れてくれるようになったのがユミルは嬉しかった。
「僕もやだよ、レイガンが街のご婦人に色目使われるのも、カフェのウエイトレスに食事に誘われるのを見るのも。僕のなのにって思ってすごく嫌だ。」
「全部断っているだろう。」
「断ってるってか、あれは突き放しているだけどね。」
なぜ俺があんたと行かなくてはいけない。それは依頼か?そんなことを真顔で言うから、レイガンに色目を使う奴らはだいたい幻滅して去っていく。逆に男かあの株が上がって、男にもモテ出すのだから始末に追えないが。
ユミルにそんなことを言われ、渋顔をする。まさか引き合いに出されるとは思っていなかったからだ。
腕の中のユミルが、少しだけ楽しそうに笑う。レイガンの下手くそなコミュニケーションのしくじり話で笑ってくれるのならいいか。そう思ってそっと頬を撫でると、擽ったそうにしながらユミルが顔を上げた。
そっと鼻先を擦り合わせる。睫毛を震わしながら目を閉じたユミルの唇に己の唇を重ねると、キスの合間に唇から甘やかな吐息が漏れた。
「っ、ん…、」
背中に回った細い腕に力が入る。唇を数度啄み、割り開くかのようにして舌を差し込むと、小さな喉仏がコクリと唾液を飲み下す。
舌先に欲を孕んだ熱がやどり、そっとユミルの体を解いていく。微かな水音を立てながらレイガンが背後のベットに仰向けに倒れるようにしてユミルを己の上に乗せると、ゆっくりと唇が離れた。名残惜しげに繋がった銀糸が艶かしい。
「レイガン、したいの…?」
胸板に手をつき、気恥ずかしそうにユミルが見下ろす。蕩けた瞳は先程とは違う涙で濡れていた。
「したい、…だめか?」
「だって、明日トッドさんくる、」
「知ってる。」
「え、ぁ…っ」
ちゅ、ちゅ、と可愛らしいリップ音を立てながらユミルの襟元をくつろげながら肩口に口付ける。
「でも、したい。」
「だ、だめだって…お、怒られる…」
「ユミル、」
べろりと熱い舌が首筋を舐め上げる。静止をするユミルをまっすぐに見上げると、曇りなき眼で見つめた。
「一回だけだ。」
「ほ、ほんとに…一回だけ…?」
「うん。」
ユミルの大好きな綺麗な顔立ちのレイガンが、うん。と言う。こんなにかっこいいのに、急に年下を出してくるのだからずるい。
紫の綺麗な瞳が、ユミルの涙目をじっと見つめる。待てを言いつけられた犬のように忠実に、ユミルからのよしを待つ。
きゅうんと胸の奥が甘く鳴く。ユミルの可愛い年下の旦那さまは、若く正直な体の高ぶりを下肢に押し付けてくる。そっと尻に添えられた手のひらで柔らかく尻を揉みながらだが。
「い、一回だけ…、ぜ、絶対痕残すのだめだからね…、わかった?」
「うん。」
自信がないからわかったは言わないが。レイガンはそっとユミルに擦り寄ると、その体を抱きしめながら体制を入れ替える。
今度は組み敷かれる形になったユミルが、そっと甘やかすようにレイガンの髪を撫で梳くと、晒された鎖骨を甘噛みしながら胸元のボタンを全て外してしまったレイガンに小さく笑った。
帰ってきてすぐの時は、意識が戻るなりいきなり世話をしていたユミルを組み敷きシャツを引きちぎって犯された。それから考えれば、ユミルのレイガンへの躾は功を奏したようである。
きちんと丁寧にボタンを外し終えると、ユミルの臍に開けた揃いのピアスに口付ける。これがレイガンの今から美味しくいただきますの合図であった。
「ん、んン…っ…」
はぷりと口に含まれたのは、ユミルの薄桃色の胸の頂だ。
レイガンの唇で挟まれ、唾液をまとった舌で舐られながら、もう片方は指で愛撫される。時折ちゅる、とはしたない音を立てられ、溢れた唾液が胸の傍から伝って肌をなぞる感覚に下肢が熱を帯びる。
「れ、ぃが…ッ、ン…」
「ン…。」
「ひぁ、っ…」
ぢゅ、と一際強く吸われ、びくりと腰が跳ねた。レイガンは少し陥没気味のユミルのそこを外気に触れるように吸い出すだけでは飽きたらず、こうして甘噛みをするように歯で掠めるのだ。
赤い舌がねとりと見せつけるよう胸の突起を舐め上げるのが恥ずかしくて、思わず顔を逸らす。
熱い手のひらが薄い腹を撫でたかと思えば、まるで手品のような早技でまとっていたボトムスを脱がされた。
「ちょ、はや…っ、」
「ユミルが抱いていいって言った。」
「う、わ…」
むくりと起き上がったレイガンがベルトのバックルを外す。かちゃかちゃと金属が擦れ合う音が生々しい。ジッ、というファスナーが引き下げられる音がしたのち、下肢をくつろげ、熱く張り詰めた脈打つ性器をずるりと取り出した。
「ふー…、」
「でっ…、」
相変わらずに、でかい。じわりと耳の裏まで回った熱が、ユミルの頭を茹で上げる。
べちりと腹に乗せられたそれが、ユミルの臍の飾りを押し上げる。安定したので痛くはないのだが、容易に結腸までを殴るように攻めてくるその凶器が太い血管を走らせながら脈打つ。
「ほぐすぞ、力抜いてろ。」
「そ、ういうの…いう、ぁっ…」
肩足が担ぎ上げられ、唾液を纏ったレイガンの指がユミルの体の内側に侵入してくる。こなれた穴になっているのに、まるで気にせずに前戯を施してくるので、ユミルとしては大事にされているようで嬉しい反面、焦らされているような気がしてならない。
ぐぷりと飲み込んだ二本の指が、探るようにユミルの内壁をいじくり回す。ぬちぬちと卑猥な音を立てながらほぐすレイガンの瞳は、今にも食ってやりたいというような獰猛な瞳をしているのに、傷つけたくないという優しさが理性を繋ぎ止めていた。
紫の瞳の奥に灯る欲の炎が揺らぐのが好きだ。
こんな上等な男が、自分に執着して、早く腰を振りたいのに我慢をしている姿が可愛らしい。
張り詰めさせたそこに、細い指が絡まった。ぐう、と喉を鳴らしたレイガンを蕩けた瞳で見上げると、コクリと喉を鳴らした。
「入れて、焦らすのはもうやだ…」
「ユミル、…優しくする…。」
「やだ、激しくして。」
「お前な…。」
ぎゅう、と抱きこんだレイガンの頭を撫でてやる。理性など、そんなもん投げ捨てて仕舞えばいい。レイガンはユミルの可愛い年下の雄なのだから、我慢なんて野暮なことはしてほしくなかった。
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