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カストール編
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「っ、だぁあ!!んなもん使ってくんじゃねえ!!!」
ザイークから飛び出した触手が、捩れるようにエルマーへと向かってくる。
一打を御見舞すれば、触手は打撃無効だったらしい。まさか己が逃げに回るとは。エルマーの表情はわかりやすく不満に染まっていた。
横目でレイガンを見やる、纏う空気が冷気を帯びていた。不本意な時間稼ぎによって、魔力の質は無事に変えることができたらしい。紫の瞳がエルマーに向けられると、にい、と笑って宣った。
「エルマー、飛べ」
「ああ!?っ、」
レイガンの一言に、エルマーはすぐさま飛び上がった。
触手は後を追うようにエルマーへと体を伸ばす。そのうちの一本が足を絡め取ろうとした瞬間。
空気が弾ける音とともに噴き上げた冷気によって、氷の彫像が出来上がった。
「っしゃあ喰らえエロトラップやろおおおお!!!」
その好機を逃すはずもない。エルマーはにたりと治安の悪い笑みを浮かべるなり、体をひねるようにして遠心力をくわえた。
拳が氷漬けの触手を捉える。強化を加えた一打が、思い切り氷の先端へと打ち付けられた。
「あア!!俺のショくしゅ!!」
「やべっ、」
雷が走るように縦に割れた触手は、氷の粒を散らすようにして倒された。
目の前でどす黒く縮まりながら地べたへと落ちた触手を前に、
ザイークがその身に紫の炎を纏う。
着地と同時にザイークへと肉薄したエルマーが鎧の腹に拳をねじ込む。ぐわんと響いた音に反応を示すかのように、ユミルの瞼がぴくんと動いた。
「っと、レイガン!触手殺るだけじゃ意味ねえぞ!」
「きついな、全く泣けてくる。」
レイガンの手のひらの上で、氷の粒が輝いた。指し示すようにザイークへと振り下ろせば、それらは真っ直ぐに鎧へと張り付いた。
「燃やせ、バイイだろウ!」
「燃やす前にやんだよ!」
「ッウわ」
空気が弾けるように、氷の粒が鎧の表面を侵食する。体がみるみるうちに動かなくなっていく様子に、ザイークはわずかに狼狽えた。エルマーはその一瞬の隙を見逃さなかった。
結界でさらに強化した拳は、氷を叩き割るような渾身の一打を繰り出した。ザイークの炎が氷の表面を舐める前に腹に捩じ込んだ。それは体がくの字に曲がるほどの威力であった。
鎧の隙間から、ごぱりと赤黒い触手が溢れる。ユミルの体にまとわりつく触手が緩んだのを前に、エルマーは衿元を掴むようにしてザイークの鎧から引き摺り出そうとした。
「ぐあ、や、ヤメろおおお!!」
「っあ、ぢぃっ」
エルマーの身体に炎が回る。紫の火炎がユミルへと燃え移る前に手を離すと、慌ててザイークから跳びのいた。
「レイガン!!!!」
「まかせろ。」
レイガンが、指を弾くようにしてエルマーの頭上に水をかぶせる。衣服は所々焦げはしたが、髪の毛に燃え広がるようなことはなかった。
体から煙をあげて火傷を負ったエルマーの元へとナナシが飛んでくる。燃え滓になったシャツを体から剥がすエルマーは、かすかに燃えた髪の匂いに顔を顰めていた。
「える!!へーき!?」
「んで毛が燃える匂いってこんなクッセェんだあ……」
晒された上半身に手を添えるように、ナナシが治癒を施す。
あと少しでユミルを取り返すことができたのに、触手と炎が酷く厄介だ。会場を見渡すと、命知らずがチラホラと席に残っている。その中に見知った顔を見つけると、エルマーの額に血管が浮かんだ。
「傍観してンじゃねえぞサジぃ!!!」
「おっと、サジは無理だぞ。火属性は相性が最悪だからな。」
客席から移動してきたらしい。エルマーの真横にサジが降り立つと、腕を組むようにしてふんぞり返る。エルマーだってサジの術に火炎の相性が悪いことなど知っている。
単純に高みの見物をされているようで腹が立っただけである。
「アロンダートは。」
「探っている。おそらくザイークとやらをああいうふうにした黒幕がいるだろう。サジもこうみえて真面目に仕事中なんだがなあ、うわっ」
会話の途中で伸びてきた触手をエルマーが払う。サジは心底気持ちが悪いといった顔でナナシの後ろに隠れると、レイガンに向けて言い放った。
「おい!おまえは氷が使えるんだから早くなんとかしろ!デュラハンの戦い方など、一つしかないのだから!」
「なら教えてくれ!あいにく俺にはお前のような知識が、ないものでな!」
襲いかかる触手をいなすようにして、レイガンが毒針を放った。針が突き刺さり、毒が侵食した部分を壊死させて毒の状態異常を防ぐ姿からは知能が見受けられた。
ごぽ、とユミルの口から血が溢れる。時間はあまりない。レイガンは小さく舌打ちをすると、再び両手に冷気を纏った。
「コンプレックスを刺激しろ!嫌なとこを突け!こんなやつの泣き所などひとつしかないだろう!」
「レイガン!鎧に張り付いたときの氷にビビってた!俺はわかんねえけどなんとかしろ!!」
なんだそのヒント!といわんばかりに、サジとエルマーの雑な指示に苛立った。眉間にシワを寄せて真っ直ぐにザイークを睨みつければ、ようやく目覚めたらしいニアがあくびを見せつけるように懐から顔を出した。
「ふあー……騒がしくていけない。さむいし、レイガンが氷なんて、随分珍しいなー」
「ニア、悪いが知恵をくれ。あいつを倒したい。」
触手を手足のように操り、ザイークが体を持ち上げた。
じわじわと広がろうとするそれが波のようにうねったかと思えば、面の上を滑るようにして接近した。
サジとナナシを小脇に抱えたエルマーが、逃げるように飛び上がる。
レイガンへと狙いを定めた触手の一打を、ニアが水膜で弾き返した。
「首無し騎士かー。馬がいないなら、決着は直ぐだろー。なんで映さないんだー。」
「映す……あ、コンプレックス……って、そういう……」
触手の一本が落ちていた剣を絡めとる。遠心力のままに振り回す攻撃に、エルマーの表情が切羽詰まったものになる。二人を抱えたまま逃げに徹する姿を前に、レイガンはようやく時間稼ぎをしているのだと理解した。
「距離を取れエルマー!ナナシ、結界で引き離せ!」
「はぁい!」
「っおせえ!!はやく仕込めレイガン!!」
ナナシの両手がザイークに向けられた。体を引き剥がすように膨らませた結界は、触手ごとザイークを引き離す。
エルマーの体が崩れるように地べたへと転がった。無防備に身を投げ出す姿は、レイガンへとあとは任せたと言っているようなものだった。
紫の瞳が輝く。久しぶりの共同戦線になることを理解したらしい。ニアが嬉しそうに鎌首を擡げると、闘技場一面に霧雨を降らせる。
「俺のヒは消えナイ!悪アが、きだ!」
「消すつもりなんてないさ。」
炎を纏うザイークは、降り出した細かな雨に気狂いじみた笑い声をあげた。振り払う手の動きに合わせるように、扇状に広がった触手がレイガンに襲いかかる。
ニアはぶわりと体躯をふくらませると、レイガンを守るように触手へと噛みついた。触手を辿るように伸びた炎は、ニアには効かない。
白い大蛇が体で締め上げるように触手へと絡みつくと、ザイークは戸惑ったように動きを止めた。
レイガンの冷気を纏った両手が、ザイークの体を収めるように指先で円を作る。鏡のように形成された氷が、ザイークの体を手の中に閉じ込めた。
「水鏡、氷結。」
「な、ナンだ……っ」
ザイークの目の前に現れたのは、蛇のように己を囲う水のうねりだ。形をなさない水流が、その質量を広げるようにザイークを覆っていく。
水の檻のように四方に作られた水面へと映し出されたのは、首を失ったザイークの姿であった。
「ひ、い……!!や、やめ、やめろおおお!!うつ、スなあ、ああア!!」
水面はみるみるうちに氷の鏡へと姿を変えた。それらはゆっくりとザイークをとらえたまま回転し始める。四方の鏡の中に映り込んだザイークはもう逃れられない。鏡に映り込んだ真実では、すでにザイークは死んでいるのだから。
体を貫かれるように、ザイークを映した氷鏡に罅が入る。蜘蛛の巣上に広がった氷の鏡が、ザイークの魂を解き放つように細かく砕け散る。
もがき苦しむように聞こえていた断末魔の叫びは、糸が切れたように崩れ落ちた鎧とともに消えていた。
「なるほど、魔物になった自分を見たくなかったのだな。」
両手を下げたレイガンが、疲れたようにつぶやいた。崩れた鎧に歩み寄るレイガンの背後で鎌首をもたげた触手を、重そうなエルマーのブーツがゴシャリと踏み潰した。
「覚えた。デュラハンは鏡が弱点な。俺ぁ手鏡しかねえけどいけるもんなんか?」
「それは流石には無理だと思うぞ。……ユミル、起きれるか」
鎧を退けるようにしてレイガンの腕に抱かれたユミルへと、ナナシが駆け寄った。
小さな体を労わるように施された治癒術は、乳白色の柔らかな光でユミルの体を包み込んだ。
「ユミル、すまない…守れなかったな。」
「レ……、ガン……」
レイガンの腕の中で、ユミルがゆっくりと目を覚ました。
エルマーが手渡したポーションをユミルに飲ませようとする。そんなレイガンの手を制するように、ユミルは気力を振り絞るように声を出した。
「聞いて、……っ……」
「とりあえず、飲めユミル。」
「み、ゅくし……るが、……っ……あいつ、が…よびだし…たん、だ…」
「よびだした…?」
「ぐー、ルが…っ…ひと、が…」
ひゅうひゅうと肺がなる。ユミルの魔力の摩耗は激しく体に影響を及ぼしていた。紡がれた言葉に、レイガンは眉を寄せる。そのまま半開きのユミルの口にポーションを含ませると、触手が現れた闘技場の入り口へと目を向けた。
「……」
ザイークから拾い上げた聖石を取り込んだナナシが、怯えるようにエルマーの服を握る。大きなお耳はへたりとしおれ、警戒をするように尾は膨らんでいた。
薄い肩を抱き寄せるようにエルマーが手を添える。三人が見つめる暗闇の先で、何かが蠢いた気がした。
「える、くる……」
「おう、臭え匂いがぷんぷんしてらあ。」
エルマーの隣にいたサジが、一歩前に出るようにして足元から蔦を出現させる。白い手に現れた錫杖を振り抜く動きに堪えるように、夥しい量の蔦がぶわりと地べたを覆っていった。
エルマーはインベントリからもう一本のポーションを取り出すと、腕にユミルを抱いたまま警戒するレイガンの体にバシャリとかけた。
「っ何する!」
「ちっと休んでろや。ユミルとどうぞごゆっくり。」
「お前……」
じわじわと体に浸透していったのは、体力を一時的に回復させるためのポーションだ。濡れた髪を煩わしそうにかきあげれば、レイガンの背後にアロンダートが降り立った。
「エルマー、闘技場の観客を外に出すのは危険だ。だから守りやすいようにひと塊になってもらった。悪いがナナシは結界でそこを守ってもらいたい。良いだろうか。」
「ナナシ、俺ちっと暴れてえからいい子にしてられるか?」
「うん、まもれるよう。はやくむかえにきてね」
ナナシの耳を巻き込むようにしてエルマーが頭を撫でる。その背後では不服そうにエルマーを見つめるレイガンが、ユミルを抱き上げたまま立ちすくんでいた。
「俺も出れるが。」
「やばくなったら助けてくれえ。サジがやる気出してる今のうちしか楽できねえ。気が変わらねえうちにいきな」
「さっきのは準備運動だろうエルマー」
「ものは言いようだぁな。」
揶揄い混じりのサジの言葉に、エルマーはくはりと笑う。インベントリから取り出したのは、愛用の大鎌である。湾曲した刃先を地べたに向けるように担ぎ上げると、首を鳴らすように凝りをほぐした。
「治癒布やるから、やばくなったらユミルに使え。おらルキーノ起きろ!アンデットきたらてめえも聖歌歌いやがれ」
ーええ!?アンデット!?いま昼ですが!!
「知らんのか。術者に召喚されたアンデットは昼夜問わずだぞ。死霊術に長けた魔女は嫌なものだ。ふふ、ない頭に知識として蓄えるが良い」
にい、と口元を釣り上げるようにして笑みを浮かべたサジの瞳が、一点へと向けられた。闘技場の入り口の奥。張り巡らされた蔦を乗り越えたのは病魔系アンデット種の中でも厄介なグールだ。歪な人型の魔物が、まるで這い上がるかのように姿を現した。
エルマーに言われるままに、ナナシがギンイロを呼び出した。ユミルを抱えたレイガンと共に、ナナシをこの場から遠ざけようと思ったのだ。
「お前もいけってば。」
「病魔系なら聖水が聞く。ニアなら大盤振る舞いできるが、いいのか。」
「おー、出血大サービスというやつだなあー。」
アンデット系には、レイガンのいう通りニアの聖水が最も有効なのはわかっている。しかしザイークとの戦闘で疲弊しているだろう体を考えると、無理はさせられない。
悩むエルマーの背後から、アロンダートが飛び出した。瞬く間に魔物の姿へと転化すると、咆哮を放つかのように火炎を放つ。地べたを滑るように燃え広がった炎は、サジの蔦に絡められるように動きを鈍らせるグール達を一掃する。
「……ぜってえむりすんなよ。倒れたら構いきれねえからな。」
「お前はたまに優しい。いいと思うぞ、そういうところだけは。」
「雑談している場合ではない!足元にも何かいる!さっきから地べたがしなるんだ、どうにかしろ!」
悲鳴混じりのサジが、気持ち悪がるように足元の蔦へと目を向ける。何かが一定の間隔で弾むように、確かに地べたは揺れていた。ギンイロが慌てたようにナナシとユミルを背に乗せ飛び立つと、足元の蔦が解けるように這い出したグールが、サジの足首をガシリと掴んだ。
「触るな無礼者ーー!!」
「おま、元気だなあおい!!」
情けない声を上げたサジの錫杖が、グールの頭を勢いよく貫いた。蔦で絞め殺すよりも容赦のないサジの攻撃に引き攣り笑みを浮かべたエルマーが、大鎌を回転させるようにして這い上がるグールの頭を落とした。
地響きが次第に大きくなる。不快なにおいが一帯に充満したかと思えば、入り口の闇が破裂するように姿を現したのは異形のグールであった。
「これがまじの、定員オーバーだろうがァ!!」
唾液を撒き散らしながら、大口を開けるように飛びかかるグールの頭を一線で切り落とす。崩れた体を跨ぐように次から次へと現れるグール達は、みなトカゲのような頭をしていた。
「だああむりだ!!蔦を剥がせサジ!!レイガン、聖水!!」
「ニア、思い切り吐き出せ。」
「くそお、戻れ!!」
サジの錫杖が澄んだ音を立てた。地べたを覆っていた夥しい量の蔦は、その音に応えるように消えていく。剥き出しになった地面からは、まるで土から生まれるかのように地べたを突き破るグールたちの姿があった。
大蛇に姿を変えたニアが、闘技場を見下ろすようにして体を伸ばす。
吐き出した聖水がグール達を消滅させる中、アロンダートの鉤爪に捕まる形で空へと避難したエルマーは、眼下に広がった闘技場の地面を前に目を見開いた。
「この闘技場全体が陣になってやがる!!生贄はさっきの触手とザイークだあ!!」
その時、ボコボコと土の中が沸き立つようにして大地が震えた。
ザイークから飛び出した触手が、捩れるようにエルマーへと向かってくる。
一打を御見舞すれば、触手は打撃無効だったらしい。まさか己が逃げに回るとは。エルマーの表情はわかりやすく不満に染まっていた。
横目でレイガンを見やる、纏う空気が冷気を帯びていた。不本意な時間稼ぎによって、魔力の質は無事に変えることができたらしい。紫の瞳がエルマーに向けられると、にい、と笑って宣った。
「エルマー、飛べ」
「ああ!?っ、」
レイガンの一言に、エルマーはすぐさま飛び上がった。
触手は後を追うようにエルマーへと体を伸ばす。そのうちの一本が足を絡め取ろうとした瞬間。
空気が弾ける音とともに噴き上げた冷気によって、氷の彫像が出来上がった。
「っしゃあ喰らえエロトラップやろおおおお!!!」
その好機を逃すはずもない。エルマーはにたりと治安の悪い笑みを浮かべるなり、体をひねるようにして遠心力をくわえた。
拳が氷漬けの触手を捉える。強化を加えた一打が、思い切り氷の先端へと打ち付けられた。
「あア!!俺のショくしゅ!!」
「やべっ、」
雷が走るように縦に割れた触手は、氷の粒を散らすようにして倒された。
目の前でどす黒く縮まりながら地べたへと落ちた触手を前に、
ザイークがその身に紫の炎を纏う。
着地と同時にザイークへと肉薄したエルマーが鎧の腹に拳をねじ込む。ぐわんと響いた音に反応を示すかのように、ユミルの瞼がぴくんと動いた。
「っと、レイガン!触手殺るだけじゃ意味ねえぞ!」
「きついな、全く泣けてくる。」
レイガンの手のひらの上で、氷の粒が輝いた。指し示すようにザイークへと振り下ろせば、それらは真っ直ぐに鎧へと張り付いた。
「燃やせ、バイイだろウ!」
「燃やす前にやんだよ!」
「ッウわ」
空気が弾けるように、氷の粒が鎧の表面を侵食する。体がみるみるうちに動かなくなっていく様子に、ザイークはわずかに狼狽えた。エルマーはその一瞬の隙を見逃さなかった。
結界でさらに強化した拳は、氷を叩き割るような渾身の一打を繰り出した。ザイークの炎が氷の表面を舐める前に腹に捩じ込んだ。それは体がくの字に曲がるほどの威力であった。
鎧の隙間から、ごぱりと赤黒い触手が溢れる。ユミルの体にまとわりつく触手が緩んだのを前に、エルマーは衿元を掴むようにしてザイークの鎧から引き摺り出そうとした。
「ぐあ、や、ヤメろおおお!!」
「っあ、ぢぃっ」
エルマーの身体に炎が回る。紫の火炎がユミルへと燃え移る前に手を離すと、慌ててザイークから跳びのいた。
「レイガン!!!!」
「まかせろ。」
レイガンが、指を弾くようにしてエルマーの頭上に水をかぶせる。衣服は所々焦げはしたが、髪の毛に燃え広がるようなことはなかった。
体から煙をあげて火傷を負ったエルマーの元へとナナシが飛んでくる。燃え滓になったシャツを体から剥がすエルマーは、かすかに燃えた髪の匂いに顔を顰めていた。
「える!!へーき!?」
「んで毛が燃える匂いってこんなクッセェんだあ……」
晒された上半身に手を添えるように、ナナシが治癒を施す。
あと少しでユミルを取り返すことができたのに、触手と炎が酷く厄介だ。会場を見渡すと、命知らずがチラホラと席に残っている。その中に見知った顔を見つけると、エルマーの額に血管が浮かんだ。
「傍観してンじゃねえぞサジぃ!!!」
「おっと、サジは無理だぞ。火属性は相性が最悪だからな。」
客席から移動してきたらしい。エルマーの真横にサジが降り立つと、腕を組むようにしてふんぞり返る。エルマーだってサジの術に火炎の相性が悪いことなど知っている。
単純に高みの見物をされているようで腹が立っただけである。
「アロンダートは。」
「探っている。おそらくザイークとやらをああいうふうにした黒幕がいるだろう。サジもこうみえて真面目に仕事中なんだがなあ、うわっ」
会話の途中で伸びてきた触手をエルマーが払う。サジは心底気持ちが悪いといった顔でナナシの後ろに隠れると、レイガンに向けて言い放った。
「おい!おまえは氷が使えるんだから早くなんとかしろ!デュラハンの戦い方など、一つしかないのだから!」
「なら教えてくれ!あいにく俺にはお前のような知識が、ないものでな!」
襲いかかる触手をいなすようにして、レイガンが毒針を放った。針が突き刺さり、毒が侵食した部分を壊死させて毒の状態異常を防ぐ姿からは知能が見受けられた。
ごぽ、とユミルの口から血が溢れる。時間はあまりない。レイガンは小さく舌打ちをすると、再び両手に冷気を纏った。
「コンプレックスを刺激しろ!嫌なとこを突け!こんなやつの泣き所などひとつしかないだろう!」
「レイガン!鎧に張り付いたときの氷にビビってた!俺はわかんねえけどなんとかしろ!!」
なんだそのヒント!といわんばかりに、サジとエルマーの雑な指示に苛立った。眉間にシワを寄せて真っ直ぐにザイークを睨みつければ、ようやく目覚めたらしいニアがあくびを見せつけるように懐から顔を出した。
「ふあー……騒がしくていけない。さむいし、レイガンが氷なんて、随分珍しいなー」
「ニア、悪いが知恵をくれ。あいつを倒したい。」
触手を手足のように操り、ザイークが体を持ち上げた。
じわじわと広がろうとするそれが波のようにうねったかと思えば、面の上を滑るようにして接近した。
サジとナナシを小脇に抱えたエルマーが、逃げるように飛び上がる。
レイガンへと狙いを定めた触手の一打を、ニアが水膜で弾き返した。
「首無し騎士かー。馬がいないなら、決着は直ぐだろー。なんで映さないんだー。」
「映す……あ、コンプレックス……って、そういう……」
触手の一本が落ちていた剣を絡めとる。遠心力のままに振り回す攻撃に、エルマーの表情が切羽詰まったものになる。二人を抱えたまま逃げに徹する姿を前に、レイガンはようやく時間稼ぎをしているのだと理解した。
「距離を取れエルマー!ナナシ、結界で引き離せ!」
「はぁい!」
「っおせえ!!はやく仕込めレイガン!!」
ナナシの両手がザイークに向けられた。体を引き剥がすように膨らませた結界は、触手ごとザイークを引き離す。
エルマーの体が崩れるように地べたへと転がった。無防備に身を投げ出す姿は、レイガンへとあとは任せたと言っているようなものだった。
紫の瞳が輝く。久しぶりの共同戦線になることを理解したらしい。ニアが嬉しそうに鎌首を擡げると、闘技場一面に霧雨を降らせる。
「俺のヒは消えナイ!悪アが、きだ!」
「消すつもりなんてないさ。」
炎を纏うザイークは、降り出した細かな雨に気狂いじみた笑い声をあげた。振り払う手の動きに合わせるように、扇状に広がった触手がレイガンに襲いかかる。
ニアはぶわりと体躯をふくらませると、レイガンを守るように触手へと噛みついた。触手を辿るように伸びた炎は、ニアには効かない。
白い大蛇が体で締め上げるように触手へと絡みつくと、ザイークは戸惑ったように動きを止めた。
レイガンの冷気を纏った両手が、ザイークの体を収めるように指先で円を作る。鏡のように形成された氷が、ザイークの体を手の中に閉じ込めた。
「水鏡、氷結。」
「な、ナンだ……っ」
ザイークの目の前に現れたのは、蛇のように己を囲う水のうねりだ。形をなさない水流が、その質量を広げるようにザイークを覆っていく。
水の檻のように四方に作られた水面へと映し出されたのは、首を失ったザイークの姿であった。
「ひ、い……!!や、やめ、やめろおおお!!うつ、スなあ、ああア!!」
水面はみるみるうちに氷の鏡へと姿を変えた。それらはゆっくりとザイークをとらえたまま回転し始める。四方の鏡の中に映り込んだザイークはもう逃れられない。鏡に映り込んだ真実では、すでにザイークは死んでいるのだから。
体を貫かれるように、ザイークを映した氷鏡に罅が入る。蜘蛛の巣上に広がった氷の鏡が、ザイークの魂を解き放つように細かく砕け散る。
もがき苦しむように聞こえていた断末魔の叫びは、糸が切れたように崩れ落ちた鎧とともに消えていた。
「なるほど、魔物になった自分を見たくなかったのだな。」
両手を下げたレイガンが、疲れたようにつぶやいた。崩れた鎧に歩み寄るレイガンの背後で鎌首をもたげた触手を、重そうなエルマーのブーツがゴシャリと踏み潰した。
「覚えた。デュラハンは鏡が弱点な。俺ぁ手鏡しかねえけどいけるもんなんか?」
「それは流石には無理だと思うぞ。……ユミル、起きれるか」
鎧を退けるようにしてレイガンの腕に抱かれたユミルへと、ナナシが駆け寄った。
小さな体を労わるように施された治癒術は、乳白色の柔らかな光でユミルの体を包み込んだ。
「ユミル、すまない…守れなかったな。」
「レ……、ガン……」
レイガンの腕の中で、ユミルがゆっくりと目を覚ました。
エルマーが手渡したポーションをユミルに飲ませようとする。そんなレイガンの手を制するように、ユミルは気力を振り絞るように声を出した。
「聞いて、……っ……」
「とりあえず、飲めユミル。」
「み、ゅくし……るが、……っ……あいつ、が…よびだし…たん、だ…」
「よびだした…?」
「ぐー、ルが…っ…ひと、が…」
ひゅうひゅうと肺がなる。ユミルの魔力の摩耗は激しく体に影響を及ぼしていた。紡がれた言葉に、レイガンは眉を寄せる。そのまま半開きのユミルの口にポーションを含ませると、触手が現れた闘技場の入り口へと目を向けた。
「……」
ザイークから拾い上げた聖石を取り込んだナナシが、怯えるようにエルマーの服を握る。大きなお耳はへたりとしおれ、警戒をするように尾は膨らんでいた。
薄い肩を抱き寄せるようにエルマーが手を添える。三人が見つめる暗闇の先で、何かが蠢いた気がした。
「える、くる……」
「おう、臭え匂いがぷんぷんしてらあ。」
エルマーの隣にいたサジが、一歩前に出るようにして足元から蔦を出現させる。白い手に現れた錫杖を振り抜く動きに堪えるように、夥しい量の蔦がぶわりと地べたを覆っていった。
エルマーはインベントリからもう一本のポーションを取り出すと、腕にユミルを抱いたまま警戒するレイガンの体にバシャリとかけた。
「っ何する!」
「ちっと休んでろや。ユミルとどうぞごゆっくり。」
「お前……」
じわじわと体に浸透していったのは、体力を一時的に回復させるためのポーションだ。濡れた髪を煩わしそうにかきあげれば、レイガンの背後にアロンダートが降り立った。
「エルマー、闘技場の観客を外に出すのは危険だ。だから守りやすいようにひと塊になってもらった。悪いがナナシは結界でそこを守ってもらいたい。良いだろうか。」
「ナナシ、俺ちっと暴れてえからいい子にしてられるか?」
「うん、まもれるよう。はやくむかえにきてね」
ナナシの耳を巻き込むようにしてエルマーが頭を撫でる。その背後では不服そうにエルマーを見つめるレイガンが、ユミルを抱き上げたまま立ちすくんでいた。
「俺も出れるが。」
「やばくなったら助けてくれえ。サジがやる気出してる今のうちしか楽できねえ。気が変わらねえうちにいきな」
「さっきのは準備運動だろうエルマー」
「ものは言いようだぁな。」
揶揄い混じりのサジの言葉に、エルマーはくはりと笑う。インベントリから取り出したのは、愛用の大鎌である。湾曲した刃先を地べたに向けるように担ぎ上げると、首を鳴らすように凝りをほぐした。
「治癒布やるから、やばくなったらユミルに使え。おらルキーノ起きろ!アンデットきたらてめえも聖歌歌いやがれ」
ーええ!?アンデット!?いま昼ですが!!
「知らんのか。術者に召喚されたアンデットは昼夜問わずだぞ。死霊術に長けた魔女は嫌なものだ。ふふ、ない頭に知識として蓄えるが良い」
にい、と口元を釣り上げるようにして笑みを浮かべたサジの瞳が、一点へと向けられた。闘技場の入り口の奥。張り巡らされた蔦を乗り越えたのは病魔系アンデット種の中でも厄介なグールだ。歪な人型の魔物が、まるで這い上がるかのように姿を現した。
エルマーに言われるままに、ナナシがギンイロを呼び出した。ユミルを抱えたレイガンと共に、ナナシをこの場から遠ざけようと思ったのだ。
「お前もいけってば。」
「病魔系なら聖水が聞く。ニアなら大盤振る舞いできるが、いいのか。」
「おー、出血大サービスというやつだなあー。」
アンデット系には、レイガンのいう通りニアの聖水が最も有効なのはわかっている。しかしザイークとの戦闘で疲弊しているだろう体を考えると、無理はさせられない。
悩むエルマーの背後から、アロンダートが飛び出した。瞬く間に魔物の姿へと転化すると、咆哮を放つかのように火炎を放つ。地べたを滑るように燃え広がった炎は、サジの蔦に絡められるように動きを鈍らせるグール達を一掃する。
「……ぜってえむりすんなよ。倒れたら構いきれねえからな。」
「お前はたまに優しい。いいと思うぞ、そういうところだけは。」
「雑談している場合ではない!足元にも何かいる!さっきから地べたがしなるんだ、どうにかしろ!」
悲鳴混じりのサジが、気持ち悪がるように足元の蔦へと目を向ける。何かが一定の間隔で弾むように、確かに地べたは揺れていた。ギンイロが慌てたようにナナシとユミルを背に乗せ飛び立つと、足元の蔦が解けるように這い出したグールが、サジの足首をガシリと掴んだ。
「触るな無礼者ーー!!」
「おま、元気だなあおい!!」
情けない声を上げたサジの錫杖が、グールの頭を勢いよく貫いた。蔦で絞め殺すよりも容赦のないサジの攻撃に引き攣り笑みを浮かべたエルマーが、大鎌を回転させるようにして這い上がるグールの頭を落とした。
地響きが次第に大きくなる。不快なにおいが一帯に充満したかと思えば、入り口の闇が破裂するように姿を現したのは異形のグールであった。
「これがまじの、定員オーバーだろうがァ!!」
唾液を撒き散らしながら、大口を開けるように飛びかかるグールの頭を一線で切り落とす。崩れた体を跨ぐように次から次へと現れるグール達は、みなトカゲのような頭をしていた。
「だああむりだ!!蔦を剥がせサジ!!レイガン、聖水!!」
「ニア、思い切り吐き出せ。」
「くそお、戻れ!!」
サジの錫杖が澄んだ音を立てた。地べたを覆っていた夥しい量の蔦は、その音に応えるように消えていく。剥き出しになった地面からは、まるで土から生まれるかのように地べたを突き破るグールたちの姿があった。
大蛇に姿を変えたニアが、闘技場を見下ろすようにして体を伸ばす。
吐き出した聖水がグール達を消滅させる中、アロンダートの鉤爪に捕まる形で空へと避難したエルマーは、眼下に広がった闘技場の地面を前に目を見開いた。
「この闘技場全体が陣になってやがる!!生贄はさっきの触手とザイークだあ!!」
その時、ボコボコと土の中が沸き立つようにして大地が震えた。
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