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シュマギナール皇国陰謀編
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「ふぉ……すごい、サジこれなにい?」
「む?これか。これはマンドラゴラだなあ。」
「また新しく育てたのか……」
エルマー達が城でジルバに会っている頃、ナナシ達はアロンダートの隠れ家で穏やかな時間を過ごしていた。
サジはというと、アロンダートの庭で勝手にマンドラゴラを育てていたようだ。
シロと名付けられた魔物を部屋に連れて来きたかとおもえば、ナナシの相手をさせることにしたらしい。
ナナシの周りには、マイコにシロ、そして吸血花のシンディが侍り、なんとも豪華な顔ぶれが揃い踏みである。
アロンダートも、ナナシからねだられて腰から下だけ転化していた。
どんどん自分の体を使いこなすアロンダートは、器用になっていくたびに人間離れしていく。
獣の体をナナシの背もたれ代わりにしながら、今も片手間に相手をしつつ読書をする。
「はぅ、」
「何だ、また気持ち悪いのか。」
「うー……」
ナナシがなぜこんなに甘やかされているかというと、悪阻だ。
小さな手で口を抑えながら、ぐぬ……という難しい顔で眉を寄せる。腹で受けとったエルマーの魔力が多い為、腹の子が取り込むまで、ナナシは魔力酔いを起こしていた。
トッドの店を出た後、ふらふらと路地に入ったナナシか急に吐いたのだ。
あの時のエルマーときたら、まるでこの世の終わりかのように顔を青褪めさせて、ナナシの背中に下手くそな治癒をかけていた。
しかしそれが悪手で、ナナシは更に酔ってぐったりしてしまったのだ。
レイガンが魔力視を使って腹の子が育っていることを見なければ、それが過度の魔力摂取による魔力酔い……まあ、サジは悪阻と言っているが。それだとは思い至らなかった。
まったくもって、こういうときに旦那というのは気が回らない。
ナナシは吐いてビックリしたというのに、エルマーの真っ青な顔を見てさらに驚いて、ちょっとだけ泣いた。
「える、だいじょうぶかなあ」
「大丈夫だろう。というか、お前が大丈夫なのか。」
「ナナシ、吐くのは構わないが僕の腹の上だけはやめてくれ。」
「うー……はかない……」
ナナシはまだ膨らみもない腹を撫でながら、アロンダートの体で暖を取る。なんとも豪華な背もたれで寛ぎながらも、具合は悪いままらしい。
母性本能を擽られたのか、シンディはそそそ、とナナシに近づくと、花を咲かせてリラックスする香りを漂わせる。獲物の血を抜くときに暴れないようにする為の香りだが、今は純粋な好意である。ナナシのことを心配している様子は見て取れたが、アロンダートは少しばかしひやひやした。
「ふわぁ……シンディ……おはなきれい、すてきね」
「サジの育てた花だからな!ふふふ、そうだろうそうだろう!」
甘えるように、その花弁へとナナシが頬ずりをする。シンディは、その根をエルマーが倒したボアの肉に絡めながら、エルマーと同じ背丈に身を縮めていた。たしかに、根本を見なければとても綺麗だ。下を見れば現実がまっているが。
「うー……おなか、くるくるする……」
「まったく、あいつはどれだけ腹に出したのだ。ただでさえ龍眼が入って魔力が人並み外れているというのに。」
「う。」
「待て待て待てそこで吐くな!アロンダート!トイレ!」
「僕はトイレではない。」
口を抑えたナナシは、アロンダートに抱きかかえられてトイレへと運ばれた。
逞しい腕に抱きながら、四足で駆けてナナシを連れて行くものだから、アロンダートがトイレに運んだ途端におえっとなってしまった。
揺れる移動はある意味室内アトラクションだったのだ。トイレまでの短い距離でえらい目にあった。
「む、はけたか?」
「ひぅー……やだあ……ぅえっ……」
「あーあーあー……」
アロンダートはナナシの長くなった髪を纏めてやりながら、悪阻が収まるのを待つ。
こんなにも苦しんでいる姿を見ると、エルマーに灸を据えてやらねばと思う。ナナシはしっかりとエルマーの預かり知らぬところで、アロンダートの父性を刺激していた。
嫁が可愛いのはわかる。アロンダートだってサジを抱いたら三時間は離せない。だけれど注ぐ精液の量くらいは絞れと思う。まあ、自分も人のことはいえないのだが。
「んぐ、……うぅ、えるぅ……さびしい……」
悪阻があるからと、サジとアロンダートに預けられたナナシは、小さい子供のように愚図っていた。
耳をしょんもりと下げ、尻尾をはぐりと甘噛みをする。具合が悪いのと寂しいので、ちょっぴりご機嫌がよろしくないらしい。
汚れたものを水で流してから、ひぐひぐ泣きながら戻ってくるものだから、アロンダートは小さい子を慰めるようにしてナナシを抱き上げる。
まるで父親のようだ。
薄い背中をぽんぽんと撫でる。エルマーが不在の時は誰かしらとくっついていないと不安になるらしい。
子供を育てたことはないが、ナナシは似たようなものだろう。この場合、サジがママである。
「よしよし、ナナシは僕達ともう少し良い子で待っていような。ほら、ママのところに帰ろう。」
「サジ……ままなのう?」
「そうだなあ、サジはナナシのママみたいなものだろう。」
「はわ……」
不機嫌に揺れていた尻尾を、ぎゅむりと抱きしめる。
くふんと鼻を鳴らし、照れたようにもぞもぞと顔を隠すナナシを前に、アロンダートは微笑ましく思った。
視界の端で、視線を感じた。どうやら心配していたらしい、扉からシンディとサジが顔を出して、こちらを見つめている。
アロンダートがナナシと共に戻ってくるのを待っていたようだ。
シンディは蔓でナナシの眦の涙を拭うと、ご機嫌を伺うように首を傾げる。顔がないので表情は分からないが、どうやらナナシはシンディの母性も刺激をしたらしい。
「む、顔が白いな。悪阻は経験がないが、二日酔いのようなものなのか?なんにせよ、今は大人しくするが良い。」
「うう……えるまー……」
「お前の旦那はお仕事中である。いい嫁というのは、家庭を守り、帰りを待つものだぞナナシ。」
サジはナナシの頭を撫でながら、言い聞かせるように諭した。
メソメソするナナシの頭を、サジが撫でる。二日後に国葬、喪に服した七日目に戴冠式だ。それが終わるまでは、どちらにしろ動けない。
「ふむ、なにか食えるものでも買ってこようか。果実なら食えるか?」
「あう……ナナシもついてく……」
「馬鹿者、お前になにかあったらアロンダートの羽根がむしられるぞ。」
誂い混じりのサジの言葉ではあったが、なんとなく想像できてしまうのが嫌だ。
転化して、自慢の羽根が手羽先状態だったら情けないにもほどがある。アロンダートはなんとも言えない顔をして口を噤んだ。
「まあまて、滋養ならシロがいるだろう。」
「ええ……シロたべるのう?」
「ばかもの、食べぬ。」
そう言うやいなや、サジはシロを抱き上げる。桶を片手にキッチンに向かったかと思えば、何かを準備する音が聞こえる。
キョトンとした顔でナナシがサジを見送って数分後、桶ごと抱えられたシロが、湯の中で寛ぎながら戻ってきた。
「シロ、おふろ?」
「マンドラゴラの煮出し汁には滋養効果があるのだ。まあ、残り湯だなあ。いい出汁がでている。」
「絵面は最悪だな……」
ぐっ、とシロが手を高く上げるその様子は、任せろと言わんばかりだ。
シロは、ひげのようにみえる部分を満足気に手で撫でながら、さあ飲めと言わんばかりにちゃぷちゃぷと水面を叩く。
マイコがのそのそとシロに近付くと、ぺちょりとその湯に手を差し入れた。
どうやら毒味をかって出てくれたらしい。ぶるぶると傘を震わすと、艶めきが増した。すごい効果だが、マイコにとっては美容効果がでたらしい。
飲むものの必要な養分のみを与える特別エキスだ。少しとろみはあるが、無臭である。色だけが生成りに濁ってはいるが。
「これに砂糖でも入れてやろう、ふむ、飲みやすくなったはずだ。」
とろとろのそれを匙で掬う。気づけばシンディもご相伴に預かっていた。ボアよりもよほど栄養があったらしい。ナナシが貰った残り湯に根を移して、マンドラゴラとともに桶に入っていた。
「んん……あまい……しあわせのあじがするう……」
「エルマーにも残しておくか。ふむ、ナナシが飲み残したらとっておいてやれば良い。」
「はあい」
ぺしょりと匙を舐めてふにゃふにゃ笑う。余程気に入ったらしい。ぱたぱたと尾を揺らめかせながら喜んでいる。
アロンダートとサジがナナシの面倒を見ていれば、扉の外ではドシン!という重いものが落ちる音がした。
なんだと三人が振り返れば、サジが立ち上がるよりも先にギンイロがぽひゅんと現れ、扉の外へと顔を出した。
外では、レイガンの悲鳴が上がった。どうやら、ギンイロが大きな体のまま現れたものだから、驚いたらしい。
単眼の、大きな狼顔が突然壁から生えれば誰だってそうなるだろう。
「む、帰ってきたようだな。おかえり。」
やれやれと言わんばかりに、億劫そうに立ち上がったサジが、ドアノブを引いて扉を開ける。廊下には女装をしたままのエルマーが寝転がっていた。
レイガンはというと、エルマーの上に重なるように倒れ込んだまま、目を丸くしてギンイロを見上げていた。
「ひぅ、えるぅ……」
「あ。」
開いたドアの隙間から、ナナシが愚図りながら顔を出す。エルマーを見るやいなや、その金色をとろめかすと、ひんひんと泣きながらエルマーの元へと向かう。
よほど寂しかったらしい。ぎゅむりとエルマーにしがみつけば、そのまま吐きそうな顔でトイレの方向へと消えていくレイガンを見送った。
「うちの姫さん、なんで泣いてんだぁ?」
「ひめさんじゃないよう……」
エルマーの首筋に顔を埋める。そんなナナシの細い腰を宥めるように撫でてやると、涙目の金色にエルマーが収まった。
「エルマーが魔力を与えすぎるから、悪阻に苦しんでいたのだ。」
「まじでか。」
エルマーの大きな手のひらが、労りを宿すように優しくナナシの頬を撫でる。カサついた親指が心配そうに涙を拭うと、ナナシは応えるように、その指先ををぺしょりと舐めた。
「やだよぅ……おるすばん、やだあ……」
「あんま泣くなよ。目ぇ腫れちまう……」
「うう……えるがちゆしてえ……」
「俺ぁナナシみてえにうまく出来ねえもんよ。」
エルマーはナナシに好きにさせながら、胸元のリボンタイを外して放り投げる。
寂しい思いをさせたときは、ナナシの駄々に付き合ってやるのが一番なのだ。エルマーの経験論である。
女の衣服を雑に脱ぎ捨てると、晒されたコルセットの紐を緩めて偽乳を放り投げた。
目を輝かせながらそれを追いかけていくギンイロを前に、エルマーは精霊のくせにペットみてえだなあと思った。
「というか、随分と慌てて帰ってきたのだなあ。」
「いやあ、なんかイケる気がしてレイガンつれて転移したんだあ。あーしんど……」
「なるほど、ならあいつは転移酔いで消えてったのか。」
エルマーのことだ。座標のことも考えずに雑に決めたのだろう。
着地点に人がいたら大事故だと言うのに、その心配をしていたのはレイガンだけのようだった。
「……俺はもう、お前のイケるは信じない。」
頭上から降ってきたレイガンの声に顔を上げれば、げっそりとした幽鬼のような面で現れた。この男もなかなかに可哀想な目に会う。
下着一枚まで脱ぎ終わったエルマーが、胡座の上にナナシを乗せてレイガンを見上げる。
男らしい腕に抱き込まれたまま、めそめそと泣いているナナシを前に、レイガンはようやくエルマーが急いでいた理由を理解した。
「ナナシ、寂しかったのか。」
「うぅ……」
「さっきまでご機嫌でシロの出汁飲んでたのになあ。」
「あ!?ナナシに変なもん飲ますなよ!?」
はぐはぐと自分の尻尾を甘噛みしながら愚図るナナシに、レイガンは少しだけエルマーが羨ましくなった。
己もこんなふうに帰りを待ってくれる相手がいたらなあ、という羨望だ。
レイガンも年頃だ。今は無理でも、何れは恋人と呼べる人がほしい。改めて考えてみたが、サジもアロンダートのものだし、ナナシもエルマーのものだった。
「……俺も番がほしい。」
「ぶはっ……」
レイガンの小さなぼやきに、エルマーは吹き出した。
顔は悪くないが、環境が悪い。若者らしい切実な願いがなんとも可愛らしくて、エルマーは面白くなったのだ。
こんな運命でなければ恐らくモテていただろう。レイガンの頭を、乱暴に撫でた。
「ぅわ、っ……なんだ!?」
「くくっ……いやべつに……なんかウケた。」
「くっ……、エルマーが大人にみえる……」
「大人ですけど。」
ナナシがキョトンとした顔でレイガンを見つめる。涙に濡れた睫が毛束になって、その大きな瞳を強調していた。
そんな小動物のような目で見ないでくれとおもう。しかし、レイガンの周りの顔面偏差値が振り切れているため、さあ恋を始めようとなっても、無意識に恋愛のハードルが上がってしまうのだ。
まだそこに気づけるほど、レイガンも大人ではないのだが。
泣き止んだナナシは、エルマーのお膝の上で大人しくなっている。サジはこれ幸いと、早速話の軌道を修正した。
「んで、どうだったのだ。ジルバの話は。」
「ああ、それなンだけどよお……。」
エルマーはなんとも難しい顔をしながら、どこから説明したものかと迷っていた。しかしそれも数秒のうちで、結局は面倒くさくなって、ありのままを説明した。エルマーの頭の辞書に、慮るという言葉はない。
「つまり、ダラスは弟の皮を被って裏から糸を引いていたと?」
「おう、まあ、あんま現実味わかねえっつーか……でも、ダラスの弟がグレイシスに入ってんだよなあ。」
エルマーはアロンダートからガウンを受け取ると、ひとまず文明的な姿を取り戻した。
これから真面目な話をするのだろうと察した、アロンダートからの気遣いだ。
着込んだはいいが、早速ナナシに肩口の生地をはぐりと噛まれる。まだ拗ねているらしい。
「というか、時間差で取り憑くというのも面白い話だな。グレイシスは無事なのか?」
「おう、ジルバにつれられて隠れ家に顔だしたら、そりゃあもうふてぶてしい花に変わってた。」
思い出しただけでも笑うしかない。グレイシスの体は、ルキーノの魂の器になっている。
そのかわり、グレイシスの魂は本に挟まれていたスミレの花の中。
ぼろぼろの花は、グレイシスが入った途端、息を吹き返すかのような見事な紫を咲かせたらしい。
ジルバによって、鉢に移された花をグレイシスだと紹介されたエルマーは、ついに己の毒が頭にまで回ったのかと、哀れみの視線をジルバへと向けてしまった。
ー何見ているのだ役立たず。殺されたくなければさっさと体を取り戻せ!!
しかし、エルマーの哀れみに応えたのは、グレイシスであった。
まさかの念話でキレ散らかされるとはついぞ思わぬ。スミレの花から発せられる罵詈雑言に、これは間違いなくグレイシスだと、再確認することはできた。
「あいつ、花に囚われてもふてぶてしさだけは変わんなかったんだあ。」
「……まあ、国葬があるのは二日後だしなあ、焦るであろう。どうするんだエルマー。」
「ジルバはなるようになるとかいってたけどよう、どーーーすっかなあ。」
エルマーは眉を寄せながら、スプリングを軋ませるようにベッドへと横になる。
龍玉も龍眼も、現在はダラスの手元にはないのだ。計画通りに他国の闖入者が奪い去ったことにしたとしても、今のところダラスが焦って尻尾を出すところまでは見ていない。
もしエルマーなら、国葬なんて悠長なことをせずに大慌てで探しに行く。
「なぁんかひっかかるんだよなあー」
強かな相手だ。なにか、聖遺物が無くなっても動じない理由があるはずだった。
「える、……ちゅうしてほしいよう……」
「ん?ほら、おいで。」
エルマーの胸元に擦り寄り、抱きついていたナナシが甘えた声でねだる。
そっと頭を引き寄せ唇を甘く食んでやると、くふんと吐息を漏らして喜んだ。
「エルマー、なにか引っかかるなら行動すべきだ。まあ、二日後に差し迫っておきながら、次期国王不在とは流石に笑えぬ。グレイシスに恩を売るチャンスだぞ。」
「あー……、」
エルマーの顔には、面倒くさいと堂々と書いてある。しかしサジが言うことは最もなのだ。まじでどうすっかという具合には頭を悩ませていた。
「魂魄付与みたいなものなのか?今のグレイシスの状態は……」
「いや、それともちげえ。まあ入れ替わる呪いのようなもんだぁな。あの花さえ持ち出せりゃあなんとかなる気がすんだけどよ……」
キョトンとした顔で、ナナシがエルマーをみる。なにやら困っている様子に反応したらしい。花の周りの魔素が少しでも変化すると脆く崩れてしまいそうになるようだ。
グレイシスが花の中に閉じ込められている為、崩れてしまってはどんな影響があるかわからないという話だった。
ぱたぱたとナナシの尾が床を撫でる。何かを思いついたらしい、ナナシはエルマーの服をゆるく引くと、おずおずと口を開く。
「んと……おはな、こていするの…」
「んあ?」
「まそ、かわらないように……んと、まわりを、けっかいでつつむする、のは……?」
「結界…」
以前、エルマーへ向けて放たれたグレイシスの剣を防いだ結界は、エルマーにのみ当たらないように、部分強度を高めて行ったものだ。
通常の結界は全体を包む。ナナシは即座に展開するために、必要な部分だけに魔素を取り込んで強化したのだ。
離れ業であるそれを容易くやってのける。そんな制度の高い結界を思い出したのか、エルマーははたと気がついたように顔を明るくした。
「結界で結晶化すりゃあいいのか!」
「ああ、たしかにそれならグレイシスの周りの魔素はかわらないな。」
花だけを薄く包むように魔力を流そうとしたからできなかったのだ。エルマーは器用すぎるがゆえに、それは思いつかなかったようである。
「ナナシ、お前の力貸してくんね?」
「はわ……うん、……うんっ!」
ナナシは、エルマーに言われて目を輝かせた。
いつも助けられてばかりのナナシが、エルマーに力を貸してと言われたのだ。高揚しないわけがない。
頬を紅潮させ、嬉しそうに愛好を崩すナナシは、千切れんばかりにぶんぶんとしっぽを振ると、元気よくいいお返事をした。
「む?これか。これはマンドラゴラだなあ。」
「また新しく育てたのか……」
エルマー達が城でジルバに会っている頃、ナナシ達はアロンダートの隠れ家で穏やかな時間を過ごしていた。
サジはというと、アロンダートの庭で勝手にマンドラゴラを育てていたようだ。
シロと名付けられた魔物を部屋に連れて来きたかとおもえば、ナナシの相手をさせることにしたらしい。
ナナシの周りには、マイコにシロ、そして吸血花のシンディが侍り、なんとも豪華な顔ぶれが揃い踏みである。
アロンダートも、ナナシからねだられて腰から下だけ転化していた。
どんどん自分の体を使いこなすアロンダートは、器用になっていくたびに人間離れしていく。
獣の体をナナシの背もたれ代わりにしながら、今も片手間に相手をしつつ読書をする。
「はぅ、」
「何だ、また気持ち悪いのか。」
「うー……」
ナナシがなぜこんなに甘やかされているかというと、悪阻だ。
小さな手で口を抑えながら、ぐぬ……という難しい顔で眉を寄せる。腹で受けとったエルマーの魔力が多い為、腹の子が取り込むまで、ナナシは魔力酔いを起こしていた。
トッドの店を出た後、ふらふらと路地に入ったナナシか急に吐いたのだ。
あの時のエルマーときたら、まるでこの世の終わりかのように顔を青褪めさせて、ナナシの背中に下手くそな治癒をかけていた。
しかしそれが悪手で、ナナシは更に酔ってぐったりしてしまったのだ。
レイガンが魔力視を使って腹の子が育っていることを見なければ、それが過度の魔力摂取による魔力酔い……まあ、サジは悪阻と言っているが。それだとは思い至らなかった。
まったくもって、こういうときに旦那というのは気が回らない。
ナナシは吐いてビックリしたというのに、エルマーの真っ青な顔を見てさらに驚いて、ちょっとだけ泣いた。
「える、だいじょうぶかなあ」
「大丈夫だろう。というか、お前が大丈夫なのか。」
「ナナシ、吐くのは構わないが僕の腹の上だけはやめてくれ。」
「うー……はかない……」
ナナシはまだ膨らみもない腹を撫でながら、アロンダートの体で暖を取る。なんとも豪華な背もたれで寛ぎながらも、具合は悪いままらしい。
母性本能を擽られたのか、シンディはそそそ、とナナシに近づくと、花を咲かせてリラックスする香りを漂わせる。獲物の血を抜くときに暴れないようにする為の香りだが、今は純粋な好意である。ナナシのことを心配している様子は見て取れたが、アロンダートは少しばかしひやひやした。
「ふわぁ……シンディ……おはなきれい、すてきね」
「サジの育てた花だからな!ふふふ、そうだろうそうだろう!」
甘えるように、その花弁へとナナシが頬ずりをする。シンディは、その根をエルマーが倒したボアの肉に絡めながら、エルマーと同じ背丈に身を縮めていた。たしかに、根本を見なければとても綺麗だ。下を見れば現実がまっているが。
「うー……おなか、くるくるする……」
「まったく、あいつはどれだけ腹に出したのだ。ただでさえ龍眼が入って魔力が人並み外れているというのに。」
「う。」
「待て待て待てそこで吐くな!アロンダート!トイレ!」
「僕はトイレではない。」
口を抑えたナナシは、アロンダートに抱きかかえられてトイレへと運ばれた。
逞しい腕に抱きながら、四足で駆けてナナシを連れて行くものだから、アロンダートがトイレに運んだ途端におえっとなってしまった。
揺れる移動はある意味室内アトラクションだったのだ。トイレまでの短い距離でえらい目にあった。
「む、はけたか?」
「ひぅー……やだあ……ぅえっ……」
「あーあーあー……」
アロンダートはナナシの長くなった髪を纏めてやりながら、悪阻が収まるのを待つ。
こんなにも苦しんでいる姿を見ると、エルマーに灸を据えてやらねばと思う。ナナシはしっかりとエルマーの預かり知らぬところで、アロンダートの父性を刺激していた。
嫁が可愛いのはわかる。アロンダートだってサジを抱いたら三時間は離せない。だけれど注ぐ精液の量くらいは絞れと思う。まあ、自分も人のことはいえないのだが。
「んぐ、……うぅ、えるぅ……さびしい……」
悪阻があるからと、サジとアロンダートに預けられたナナシは、小さい子供のように愚図っていた。
耳をしょんもりと下げ、尻尾をはぐりと甘噛みをする。具合が悪いのと寂しいので、ちょっぴりご機嫌がよろしくないらしい。
汚れたものを水で流してから、ひぐひぐ泣きながら戻ってくるものだから、アロンダートは小さい子を慰めるようにしてナナシを抱き上げる。
まるで父親のようだ。
薄い背中をぽんぽんと撫でる。エルマーが不在の時は誰かしらとくっついていないと不安になるらしい。
子供を育てたことはないが、ナナシは似たようなものだろう。この場合、サジがママである。
「よしよし、ナナシは僕達ともう少し良い子で待っていような。ほら、ママのところに帰ろう。」
「サジ……ままなのう?」
「そうだなあ、サジはナナシのママみたいなものだろう。」
「はわ……」
不機嫌に揺れていた尻尾を、ぎゅむりと抱きしめる。
くふんと鼻を鳴らし、照れたようにもぞもぞと顔を隠すナナシを前に、アロンダートは微笑ましく思った。
視界の端で、視線を感じた。どうやら心配していたらしい、扉からシンディとサジが顔を出して、こちらを見つめている。
アロンダートがナナシと共に戻ってくるのを待っていたようだ。
シンディは蔓でナナシの眦の涙を拭うと、ご機嫌を伺うように首を傾げる。顔がないので表情は分からないが、どうやらナナシはシンディの母性も刺激をしたらしい。
「む、顔が白いな。悪阻は経験がないが、二日酔いのようなものなのか?なんにせよ、今は大人しくするが良い。」
「うう……えるまー……」
「お前の旦那はお仕事中である。いい嫁というのは、家庭を守り、帰りを待つものだぞナナシ。」
サジはナナシの頭を撫でながら、言い聞かせるように諭した。
メソメソするナナシの頭を、サジが撫でる。二日後に国葬、喪に服した七日目に戴冠式だ。それが終わるまでは、どちらにしろ動けない。
「ふむ、なにか食えるものでも買ってこようか。果実なら食えるか?」
「あう……ナナシもついてく……」
「馬鹿者、お前になにかあったらアロンダートの羽根がむしられるぞ。」
誂い混じりのサジの言葉ではあったが、なんとなく想像できてしまうのが嫌だ。
転化して、自慢の羽根が手羽先状態だったら情けないにもほどがある。アロンダートはなんとも言えない顔をして口を噤んだ。
「まあまて、滋養ならシロがいるだろう。」
「ええ……シロたべるのう?」
「ばかもの、食べぬ。」
そう言うやいなや、サジはシロを抱き上げる。桶を片手にキッチンに向かったかと思えば、何かを準備する音が聞こえる。
キョトンとした顔でナナシがサジを見送って数分後、桶ごと抱えられたシロが、湯の中で寛ぎながら戻ってきた。
「シロ、おふろ?」
「マンドラゴラの煮出し汁には滋養効果があるのだ。まあ、残り湯だなあ。いい出汁がでている。」
「絵面は最悪だな……」
ぐっ、とシロが手を高く上げるその様子は、任せろと言わんばかりだ。
シロは、ひげのようにみえる部分を満足気に手で撫でながら、さあ飲めと言わんばかりにちゃぷちゃぷと水面を叩く。
マイコがのそのそとシロに近付くと、ぺちょりとその湯に手を差し入れた。
どうやら毒味をかって出てくれたらしい。ぶるぶると傘を震わすと、艶めきが増した。すごい効果だが、マイコにとっては美容効果がでたらしい。
飲むものの必要な養分のみを与える特別エキスだ。少しとろみはあるが、無臭である。色だけが生成りに濁ってはいるが。
「これに砂糖でも入れてやろう、ふむ、飲みやすくなったはずだ。」
とろとろのそれを匙で掬う。気づけばシンディもご相伴に預かっていた。ボアよりもよほど栄養があったらしい。ナナシが貰った残り湯に根を移して、マンドラゴラとともに桶に入っていた。
「んん……あまい……しあわせのあじがするう……」
「エルマーにも残しておくか。ふむ、ナナシが飲み残したらとっておいてやれば良い。」
「はあい」
ぺしょりと匙を舐めてふにゃふにゃ笑う。余程気に入ったらしい。ぱたぱたと尾を揺らめかせながら喜んでいる。
アロンダートとサジがナナシの面倒を見ていれば、扉の外ではドシン!という重いものが落ちる音がした。
なんだと三人が振り返れば、サジが立ち上がるよりも先にギンイロがぽひゅんと現れ、扉の外へと顔を出した。
外では、レイガンの悲鳴が上がった。どうやら、ギンイロが大きな体のまま現れたものだから、驚いたらしい。
単眼の、大きな狼顔が突然壁から生えれば誰だってそうなるだろう。
「む、帰ってきたようだな。おかえり。」
やれやれと言わんばかりに、億劫そうに立ち上がったサジが、ドアノブを引いて扉を開ける。廊下には女装をしたままのエルマーが寝転がっていた。
レイガンはというと、エルマーの上に重なるように倒れ込んだまま、目を丸くしてギンイロを見上げていた。
「ひぅ、えるぅ……」
「あ。」
開いたドアの隙間から、ナナシが愚図りながら顔を出す。エルマーを見るやいなや、その金色をとろめかすと、ひんひんと泣きながらエルマーの元へと向かう。
よほど寂しかったらしい。ぎゅむりとエルマーにしがみつけば、そのまま吐きそうな顔でトイレの方向へと消えていくレイガンを見送った。
「うちの姫さん、なんで泣いてんだぁ?」
「ひめさんじゃないよう……」
エルマーの首筋に顔を埋める。そんなナナシの細い腰を宥めるように撫でてやると、涙目の金色にエルマーが収まった。
「エルマーが魔力を与えすぎるから、悪阻に苦しんでいたのだ。」
「まじでか。」
エルマーの大きな手のひらが、労りを宿すように優しくナナシの頬を撫でる。カサついた親指が心配そうに涙を拭うと、ナナシは応えるように、その指先ををぺしょりと舐めた。
「やだよぅ……おるすばん、やだあ……」
「あんま泣くなよ。目ぇ腫れちまう……」
「うう……えるがちゆしてえ……」
「俺ぁナナシみてえにうまく出来ねえもんよ。」
エルマーはナナシに好きにさせながら、胸元のリボンタイを外して放り投げる。
寂しい思いをさせたときは、ナナシの駄々に付き合ってやるのが一番なのだ。エルマーの経験論である。
女の衣服を雑に脱ぎ捨てると、晒されたコルセットの紐を緩めて偽乳を放り投げた。
目を輝かせながらそれを追いかけていくギンイロを前に、エルマーは精霊のくせにペットみてえだなあと思った。
「というか、随分と慌てて帰ってきたのだなあ。」
「いやあ、なんかイケる気がしてレイガンつれて転移したんだあ。あーしんど……」
「なるほど、ならあいつは転移酔いで消えてったのか。」
エルマーのことだ。座標のことも考えずに雑に決めたのだろう。
着地点に人がいたら大事故だと言うのに、その心配をしていたのはレイガンだけのようだった。
「……俺はもう、お前のイケるは信じない。」
頭上から降ってきたレイガンの声に顔を上げれば、げっそりとした幽鬼のような面で現れた。この男もなかなかに可哀想な目に会う。
下着一枚まで脱ぎ終わったエルマーが、胡座の上にナナシを乗せてレイガンを見上げる。
男らしい腕に抱き込まれたまま、めそめそと泣いているナナシを前に、レイガンはようやくエルマーが急いでいた理由を理解した。
「ナナシ、寂しかったのか。」
「うぅ……」
「さっきまでご機嫌でシロの出汁飲んでたのになあ。」
「あ!?ナナシに変なもん飲ますなよ!?」
はぐはぐと自分の尻尾を甘噛みしながら愚図るナナシに、レイガンは少しだけエルマーが羨ましくなった。
己もこんなふうに帰りを待ってくれる相手がいたらなあ、という羨望だ。
レイガンも年頃だ。今は無理でも、何れは恋人と呼べる人がほしい。改めて考えてみたが、サジもアロンダートのものだし、ナナシもエルマーのものだった。
「……俺も番がほしい。」
「ぶはっ……」
レイガンの小さなぼやきに、エルマーは吹き出した。
顔は悪くないが、環境が悪い。若者らしい切実な願いがなんとも可愛らしくて、エルマーは面白くなったのだ。
こんな運命でなければ恐らくモテていただろう。レイガンの頭を、乱暴に撫でた。
「ぅわ、っ……なんだ!?」
「くくっ……いやべつに……なんかウケた。」
「くっ……、エルマーが大人にみえる……」
「大人ですけど。」
ナナシがキョトンとした顔でレイガンを見つめる。涙に濡れた睫が毛束になって、その大きな瞳を強調していた。
そんな小動物のような目で見ないでくれとおもう。しかし、レイガンの周りの顔面偏差値が振り切れているため、さあ恋を始めようとなっても、無意識に恋愛のハードルが上がってしまうのだ。
まだそこに気づけるほど、レイガンも大人ではないのだが。
泣き止んだナナシは、エルマーのお膝の上で大人しくなっている。サジはこれ幸いと、早速話の軌道を修正した。
「んで、どうだったのだ。ジルバの話は。」
「ああ、それなンだけどよお……。」
エルマーはなんとも難しい顔をしながら、どこから説明したものかと迷っていた。しかしそれも数秒のうちで、結局は面倒くさくなって、ありのままを説明した。エルマーの頭の辞書に、慮るという言葉はない。
「つまり、ダラスは弟の皮を被って裏から糸を引いていたと?」
「おう、まあ、あんま現実味わかねえっつーか……でも、ダラスの弟がグレイシスに入ってんだよなあ。」
エルマーはアロンダートからガウンを受け取ると、ひとまず文明的な姿を取り戻した。
これから真面目な話をするのだろうと察した、アロンダートからの気遣いだ。
着込んだはいいが、早速ナナシに肩口の生地をはぐりと噛まれる。まだ拗ねているらしい。
「というか、時間差で取り憑くというのも面白い話だな。グレイシスは無事なのか?」
「おう、ジルバにつれられて隠れ家に顔だしたら、そりゃあもうふてぶてしい花に変わってた。」
思い出しただけでも笑うしかない。グレイシスの体は、ルキーノの魂の器になっている。
そのかわり、グレイシスの魂は本に挟まれていたスミレの花の中。
ぼろぼろの花は、グレイシスが入った途端、息を吹き返すかのような見事な紫を咲かせたらしい。
ジルバによって、鉢に移された花をグレイシスだと紹介されたエルマーは、ついに己の毒が頭にまで回ったのかと、哀れみの視線をジルバへと向けてしまった。
ー何見ているのだ役立たず。殺されたくなければさっさと体を取り戻せ!!
しかし、エルマーの哀れみに応えたのは、グレイシスであった。
まさかの念話でキレ散らかされるとはついぞ思わぬ。スミレの花から発せられる罵詈雑言に、これは間違いなくグレイシスだと、再確認することはできた。
「あいつ、花に囚われてもふてぶてしさだけは変わんなかったんだあ。」
「……まあ、国葬があるのは二日後だしなあ、焦るであろう。どうするんだエルマー。」
「ジルバはなるようになるとかいってたけどよう、どーーーすっかなあ。」
エルマーは眉を寄せながら、スプリングを軋ませるようにベッドへと横になる。
龍玉も龍眼も、現在はダラスの手元にはないのだ。計画通りに他国の闖入者が奪い去ったことにしたとしても、今のところダラスが焦って尻尾を出すところまでは見ていない。
もしエルマーなら、国葬なんて悠長なことをせずに大慌てで探しに行く。
「なぁんかひっかかるんだよなあー」
強かな相手だ。なにか、聖遺物が無くなっても動じない理由があるはずだった。
「える、……ちゅうしてほしいよう……」
「ん?ほら、おいで。」
エルマーの胸元に擦り寄り、抱きついていたナナシが甘えた声でねだる。
そっと頭を引き寄せ唇を甘く食んでやると、くふんと吐息を漏らして喜んだ。
「エルマー、なにか引っかかるなら行動すべきだ。まあ、二日後に差し迫っておきながら、次期国王不在とは流石に笑えぬ。グレイシスに恩を売るチャンスだぞ。」
「あー……、」
エルマーの顔には、面倒くさいと堂々と書いてある。しかしサジが言うことは最もなのだ。まじでどうすっかという具合には頭を悩ませていた。
「魂魄付与みたいなものなのか?今のグレイシスの状態は……」
「いや、それともちげえ。まあ入れ替わる呪いのようなもんだぁな。あの花さえ持ち出せりゃあなんとかなる気がすんだけどよ……」
キョトンとした顔で、ナナシがエルマーをみる。なにやら困っている様子に反応したらしい。花の周りの魔素が少しでも変化すると脆く崩れてしまいそうになるようだ。
グレイシスが花の中に閉じ込められている為、崩れてしまってはどんな影響があるかわからないという話だった。
ぱたぱたとナナシの尾が床を撫でる。何かを思いついたらしい、ナナシはエルマーの服をゆるく引くと、おずおずと口を開く。
「んと……おはな、こていするの…」
「んあ?」
「まそ、かわらないように……んと、まわりを、けっかいでつつむする、のは……?」
「結界…」
以前、エルマーへ向けて放たれたグレイシスの剣を防いだ結界は、エルマーにのみ当たらないように、部分強度を高めて行ったものだ。
通常の結界は全体を包む。ナナシは即座に展開するために、必要な部分だけに魔素を取り込んで強化したのだ。
離れ業であるそれを容易くやってのける。そんな制度の高い結界を思い出したのか、エルマーははたと気がついたように顔を明るくした。
「結界で結晶化すりゃあいいのか!」
「ああ、たしかにそれならグレイシスの周りの魔素はかわらないな。」
花だけを薄く包むように魔力を流そうとしたからできなかったのだ。エルマーは器用すぎるがゆえに、それは思いつかなかったようである。
「ナナシ、お前の力貸してくんね?」
「はわ……うん、……うんっ!」
ナナシは、エルマーに言われて目を輝かせた。
いつも助けられてばかりのナナシが、エルマーに力を貸してと言われたのだ。高揚しないわけがない。
頬を紅潮させ、嬉しそうに愛好を崩すナナシは、千切れんばかりにぶんぶんとしっぽを振ると、元気よくいいお返事をした。
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