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シュマギナール皇国陰謀編
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どこだここ。
エルマーが目を開けて真っ先に見たのは、雲ひとつない青空だった。
「………。」
ムクリと起き上がる。こんな地べたに大の字で寝転がっていた割に、石や土での汚れはない。ただ気持ち的になんとなく汚れを払うように服を正すと、きょろりとあたりを見回した。
針葉樹林が目指すように空に向かって伸びている。
ぼりぼりと頭を掻きながら、なんでここにいるのかを考えたのだが、全く思い浮かばない。鼻を効かせてもなんの匂いもしないのだ。
「森の匂いもしねえ。まじでどこだここ。」
いつまでも座っていても埒が明かない。エルマーは立ち上がると、軽く柔軟をしてから目を瞑る。魔力の流れを確かめるためだ。
毎朝の日課で、神経の一つ一つまで魔力が行き渡るのかを確かめた。それがおわれば、ここら一帯を探索すべく、身体強化魔法をかけようと足に触れたときだった。
「…………ん?あ?」
もう一度足に触れる。
「あり?」
己の魔力は確かに感じ取れる。しかし、それを行使することが出来ないのだ。
身体強化がつかえない。となると、少し、いやかなりまずい。
「……武器、鎌……あ?荷物がねえ!?」
せめてとインべントリの中を漁ろうとしたが、そのインべントリ自体が見当たらない。エルマーの惟一の武器は、腰に指したホルスターの中の短剣と、空魔石製のハッタリ程度の地雷だけだ。
「……、ええ。」
まじかよ。こんな訳のわからない森で、ほぼ手ぶらで駆け抜けろというのか?意味がわからない、一体どんな縛りだと頭の痛い思いで溜め息を吐く。
渋い顔をしたエルマーが、ゆっくりと周りに目を配る。なんだか見たことがあるような、ないような。自分の記憶が心配になる景色であった。まあ、森はどこも同じだと言われたらそうなのだけれど。
意味もなく靴紐を結び直す。ホルスターの留め具を外して、いつでも短剣を抜ける様にすると、風が向かう方向へと歩きだした。風圧を感じないので、頼りは木々の揺れや地べたを滑る木っ端頼みである。
砂利道を歩いているはずなのに、その感触もない。まるで浮いているような不思議な感覚だ。
どれくらい歩いただろう。エルマーは一休みをしようとして、大きな木の根本に腰掛けようとした。そのまま、なんとなく目端に映った何かに気がついて、きろりと瞳を木の幹へと向けた。
目線の高さに、どぎついピンク色の甲虫が張り付いている。
見たこともない種類だ。エルマーはしばらく座ろうとした中腰のまま、角の生えたよく分からないその虫がカサカサと動くのを見つめ、好奇心に負けてそっと触れようとした時だった。
「は。」
エルマーの指が、するんと虫をすり抜けた。
指先は、結構な深さまで埋まっている。頭の中には、いくつもの疑問符が散らばって、収束がつかない。目の前の甲虫は、エルマーの指が突き刺さっているというのに、気にもしないで動くのだ。
ぶわりと、嫌な汗が吹き出す。震える手のひらを広げ、甲虫を押し潰すようにして、木の幹へ押し付けた。手首までずぶりと埋まったところで、エルマーはよろよろと後ずさった。
なんだこれ、
「……っ、」
冷や汗がぶわりと背筋をなぞる。己の実体が無い事に動揺を極めたその時。ガサガサと音を立て、叢からホーンが飛び出してきた。めったにお目にかかれない男鹿の立派な体躯を持つ魔物が、エルマーに向かってくる。
思わず構えるも、ホーンは気にせずエルマーの体をすり抜けていく。追い掛けるように続いた大型の熊の魔物も、まるでエルマーを無いものとして通り過ぎていく。
己の体を不躾に扱われながら、エルマーは魔物を見送った。
手のひらで顔に触れる。自分では実体を感じることができるのに、他のものに触れようとすると、すり抜けてしまうのだ。
「はあ、っ……は、っ……」
気持ちの悪さに呼吸が乱れる。どくどくと忙しない鼓動は、体の震えへと繋がっていく。ここで倒れても、誰にも気づかれずに死ぬのかもしれない。いや、もしかしたらもう死んでいるのか?
そっと左目に触れた。ごくりとエルマーの喉が鳴る。指先に感じ取ったのは、失ったはずの左目の感覚だ。
「なんで、ある……」
左目がある。足りてない筈のものが、そこに収まっているのだ。あまりにも非現実的な状況から逃げるように、エルマーは覚束ない足取りで歩いた。
纏まらない思考を、纏めねばならない。
集中しすぎて、唾液が顎を伝うことも気にせずに、エルマーは己の中の記憶をかき集めた。
寝る前、いや起きる前に何があったのか。
何かあった筈なのだ。まさか、気づかないまま死んだ?そんな筈はない。余程イレギュラーなことが起こらない限り、常に警戒はしていた。
人や魔物が襲いかかった?いや、武器がなくても負ける気はしない。
なら毒?それもちがう。毒なら香りでわかる筈だ。ならば、悪意のないなにか。しかし、その何かがわからない。
抜け落ちた記憶、そこに答えがあるというのに。
気がつけば、森を抜けて開けた場所にきていた。空に向かって突き抜けるように生えていた針葉樹林は、随分と背後の方に纏っている。
景色が変わったことに気づくと、エルマーは辺りを見渡した。背丈の低い草花に隠されるように、その足元は赤土に変わっている。
葉が踊るように足元を過ぎ去る。この葉ですら感じられる風が、エルマーにはわからない。
風の通り道を探るように歩いてきたつもりだったのに、集中しすぎてそんなことも忘れていた。
エルマーは、風の流れを示すかのように揺らぐ草が、どこまで広がっているのか、確認するように顔を上げる。
それは、目前の窪地へと向かって流れていた。
大きなものが横たわっていたかのようなそこを、草花が覆うように繁っている。
重いものを引きずるような、地響きのような音が聞こえる。
その音に促されるように顔を上げれば、白い獣が足を引きずるようにして姿を現した。
「…狼、か…?」
美しい獣だった。
頭からは、木の枝のような立派な角を生やしていた。オパールのような神秘的な色合いを持つ鱗で、その靭やかな四肢や尾の付け根を覆う、見たこともない魔獣だ。
装飾のような鱗を輝かせながら、四肢には青色の炎を纏っている。目の色は分からないが、きっと美しい色をしているのだろう。
見慣れぬ魔獣は、窪地に体を擦り付ける様にしてズルズルと落ちていく。
近寄ることすら畏怖を覚えるだろうその魔獣を前に、エルマーは己の実体が無いことを建前に、遠慮することもないかと近づいた。
大きな獣だった。その体をゆっくりと上下させるほど、深い呼吸を繰り返す。きっと、もう死ぬのだろう。
エルマーは、見知らぬ獣を看取ってやりたくて、窪地に降りたった。
近づいたその巨躯は、獣の頭だけでエルマーの背丈の半分ほどもある。エルマーは近づいた気配を感じたのか、その魔物がふるりと身を震わした。
ゆっくりと開かれた瞼から溢れたのは、息を飲むほどに美しい色をした金の瞳だ。
虹彩から溢れるような細かな光が、長いまつ毛に反射して白銀の毛並みを染める。きゅるりと細まった魔獣の瞳孔に、エルマーは瞳を揺らした。
「……もう、いくのか」
今にも零れそうな涙の膜が、その魔物の瞳をゆっくりと覆った。
この魔物はこんなに大きいのに、やけに泣き虫なようだ。
エルマーは、触れられぬことをわかっていながらも、その目の下を優しく撫でた。
長い睫毛に縁取られた美しい金色の瞳は、ぼろりと涙を零す。肺を絞るように深い息を吐き出しながら、エルマーを目に焼き付けるかのように、こちらを見つめていた。
優しい顔をしている。そんなことを思った。エルマーの目の前で、瞼を閉じて終わりを迎える魔物。
その様子を、エルマーは目を逸らさずに、最後の一呼吸まで見つめていた。
瞼の奥にある宝石の瞳を、もう見ることができないのかと思うと、なんだか酷く悲しく感じた。
生命の灯火が消える。まるで、それを惜しむかのように白い光が降ってくる。エルマーは、動かなくなった魔獣の側に座り込みながら、ぼんやりとした目で空を見上げていた。
「ああ、雪だあ……あいつ、見たらきっとはしゃぐだろうなあ……」
落ちてきた雪の結晶を、手のひらに受け止めようとして、諦める。やはりこの身では無理らしい。
エルマーは、魔獣の側から離れがたくて、未だぼんやりと座り込んでいた。慰めに、毛並みを撫でてやるように触れても、労ってやることすら叶わない。
「あいつ、…?」
口から出た言葉に、疑問を感じた。記憶がないはずなのに、あいつと出てきたのだ。己の唇に触れる。何かを思い出すかのようにして、そっと撫でた。
あいつは、そう、己にとって何よりも大切な人物だ。全てを捧げたいと思える人。己がここにいる理由すらわからないと言うのに、記憶の片隅に息づく己の愛しい存在は、薄ぼんやりと浮かび上がってくる。
願うなら、あいつに会って抱きしめたい。この腕の中に閉じ込めて、口付けをしたい。
「顔見たら、わかっかな。」
顔だけが、思い出せない。記憶に浮かんできたのは、酷く荒いすりガラス越しに見たような曖昧な人影だ。その、不確かな存在を、エルマーは今この瞬間に求めていた。
会いたい。会って確かめたい。そう思っていると、ざわりと空気が変わった。
「……っ、あ?」
エルマーの目の前で、突然、雲が走り出した。夕闇が、恐ろしいスピードで西の空に吸い込まれていったかと思うと、突然東から朝日が登る。エルマーと魔獣の亡骸の上を、いくつもの雲の影が通り抜け、空の色がぐんぐんと忙しなく変わっていく。
ありえない光景を前に、呆気にとられて見上げていると、その突然の変化は徐々に収束していく。
驚きすぎて、ついよろよろと座り込んだ。エルマーが見上げていた数分間で、一体いくつの夜を超えたのだろう。
魔獣の躯は、降り積もった雪に埋もれて腐らずにいる。
「……消えてねえ。なんでだ…」
魔獣が、魔素になっていないのだ。通常の魔物の場合、倒した後は黒い煙を噴き上げて、体が崩れるようにして魔素に変わるのだ。エルマーの目の前に横たわる魔物は、いまだ綺麗なままである。
一体、何が起きている。困惑しているエルマーをよそに、事態は急転した。
ーーーー!!ーー、ー!
「っ、」
聞き慣れない言葉を話すいくつもの気配が、窪地を囲むように突如として現れた。横たわる魔獣を指差し、何かを叫ぶ。
見慣れない服装は、いつの時代のものだろう。男たちは、何かを叫びながらエルマーを通り過ぎ、横たわる魔獣の前に降り立った。
男達は、皆こぞって目の色を変え、魔獣の亡骸を見つめていた。宝の山を見つけたような顔をして、大きな剣やら鎌やら、そんな物騒な武器を背負ったまま、嬉しそうに喜んでいるのだ。
なんだこれ。エルマーは訝しげな顔をして、成り行きを見つめていた。
男達の中の一人が、部下に何かを命令している。どうやら首を抑えるように指示をしているようである。
魔獣の大きな頭を二人がかりで抑えると、大柄な男が剣を抜いた。
「え、」
ひゅう、と大きく剣を振りかぶった瞬間、当たり前かのように、それを魔獣の首へと振り下ろした。
そこからは、もう地獄だ。
エルマーが幾ら止めろと叫んでも、飛びかかっても止まるものはいない。当たり前だ、実体がないから、誰も気にもとめない。美しい白銀の毛皮が、鱗が、牙が、頭蓋が。そして零れるように落ちた、金色の眼も、何もかもが残酷に剥ぎ取られていく。
エルマーは余りの酷さに何度も嘔吐した。何度もやめろと叫んだ。それでも、誰もやめなかったのだ。まるで、取り憑かれたかのように、愚かな行為は止まらなかった。
美しい獣が、死してなお穢される。大きな体躯の男が、肉塊になった体に剣を突き立てなにかの塊を取り出した。
掲げるように手に乗せられたのは、神秘的な青を纏う宝玉だった。それをエルマーが目にした瞬間、忘れていた全ての記憶が、脳に流れ込んできた。
「ぁ、くっ……あ、ああ、あ、ああ…」
まて、それは、もしかして。
体の内側で、バクンと嫌な跳ね方をした心臓は、如実にエルマーの衝撃を受け止める。
左目が、唐突に熱を持つ。思い出せと急かされるように、脳が記憶を引きずり出そうとする。そんな酷い頭痛に苛まれた。
ころりと転がったあの金眼は、あの塊は。
嫌な考えが、一気に思考を支配する。ちがう、違う。認めたくない。そんな、あり得ない。
エルマーの見開かれた瞳が映したのは、血塗れの手で掲げられた龍玉だ。そう、エルマーは、あれが龍玉だと言うことを知っている。
呼吸の仕方を忘れたかのように、言葉を失ったエルマーの目の前で、青い龍玉が煌めいた。瞬間、再び景色が大きく動いた。
目の前で早送りされていく景色。まるで、コマ割りの動きで人が入れ替わっては消えていく。肉塊と血で染められた土が優しく雪に包まれ、木々が枯れ、草木が芽吹き、やがて窪地には真っ白な花が溢れるように咲き乱れる。
エルマーは、ただ顔を手で覆ったまま、指の隙間からその光景を見つめていた。
これは、記憶だ。
肩で息をする。情報がとめどなく脳へと注ぎ込まれ、頭が痛い。目からは涙が止まらず、ただその肉塊が自然と朽ちるのを、見つめることしかできなかった。
そして、再び景色が止まった。
ガクンと、膝から崩れ落ちたエルマーは、肩を震わしながら拳を握りしめる。短い呼吸を繰り返し、重くなった肺から苦しみを吐き出すように蹲り、地面に涙を染み込ませる。
辛かった。なんで、こんなものを見せられなくてはいけないのかと、そう思うくらいには、精神的にダメージを食らっていた。
ーー、みつけた。
「……?」
その最中、耳に入ってきたのは、聞き慣れぬ声であった。
泣き濡れたまま、ゆっくりと顔を上げる。この苦しみから、解放してくれるものが現れたのかと、期待すらもしていた。
エルマーの体を、小柄な男がすり抜けていく。白い靴を履いた人物は、窪地の花を散らしながら、中央に向かっていった。
男は、体に合わない仰々しい司祭のような格好をしていた。窪地には、最初に見たときにはなかった台座のようなものが作り上げられている。その周りは柱で囲まれ、神殿のような建物ができている。
エルマーは、神殿の中に入っていく背中を見つめていた。何をするのかという、怯え混じりの視線を向けてしまうくらいには、限界だった。
そんなエルマーの目の前で、司祭は台座に陣を書き始めた。
「やめ、ろ…」
もう、そこを荒らすのは辞めてくれ。エルマーはよろよろと男の側に行くと、刻まれた陣を消そうと、地べたに這いつくばった。
無理だとわかっていても、どうしてもそうせずにはいられなかった。あの魔獣が眠るその場所を、そっとしておいてほしかったのだ。
ーこれで、……は、……え、……る
肝心なところは聞き取れない。長々と陣を書き終えた男は、項垂れるエルマーの目の前に、金色の宝玉を放り投げた。
あの時、奪われたはずの金色の宝玉、龍の瞳。
石の台座の上を、滑るようにして転がる。招かれるようにして複雑な陣の中に収まると、模様をなぞる様に金色のまばゆい光が広がった。
ふわりと光が浮き上がる。地面から離れた陣が、龍の瞳ををホロホロと崩す様にして取り込んでいく。陣が上昇するとともに共に、エルマーの目前で、白いつま先が現れる。
「は…、っ…?」
これは、構築しているのか。
周りの土から浮き出た、赤黒く細かい粒が、吸い込まれるようにして陣に取り込まれていく。どんどんと構築されていく白い体の人間は、どうやら男のようだった。
首から上が、徐々に顕になっていく。
ふわりとした長い黒髪が、その華奢な体を撫でるように滑る。エルマーの目の前で、全貌を顕にした少年は、どしゃりと台座の中央に産まれ落ちた。
ーー、ーい。おきろ。
くたりと体を投げ出した、少年の黒髪が肩を滑る。薄い胸をゆっくりと上下させると、こてりとエルマーの方に顔を向ける。目の周りは、ひどく焼け爛れている。片眼は白く濁り、薄く開いたもう一つの目からは、透き通った金色をちらりと覗かせていた。
「ーーーナナシ、!!!!」
ひゅう、と喉が鳴く。エルマーの全身は、衝撃で総毛立った。そこには、己のたった一人の大切が、酷い状態で横たわっていた。
エルマーが目を開けて真っ先に見たのは、雲ひとつない青空だった。
「………。」
ムクリと起き上がる。こんな地べたに大の字で寝転がっていた割に、石や土での汚れはない。ただ気持ち的になんとなく汚れを払うように服を正すと、きょろりとあたりを見回した。
針葉樹林が目指すように空に向かって伸びている。
ぼりぼりと頭を掻きながら、なんでここにいるのかを考えたのだが、全く思い浮かばない。鼻を効かせてもなんの匂いもしないのだ。
「森の匂いもしねえ。まじでどこだここ。」
いつまでも座っていても埒が明かない。エルマーは立ち上がると、軽く柔軟をしてから目を瞑る。魔力の流れを確かめるためだ。
毎朝の日課で、神経の一つ一つまで魔力が行き渡るのかを確かめた。それがおわれば、ここら一帯を探索すべく、身体強化魔法をかけようと足に触れたときだった。
「…………ん?あ?」
もう一度足に触れる。
「あり?」
己の魔力は確かに感じ取れる。しかし、それを行使することが出来ないのだ。
身体強化がつかえない。となると、少し、いやかなりまずい。
「……武器、鎌……あ?荷物がねえ!?」
せめてとインべントリの中を漁ろうとしたが、そのインべントリ自体が見当たらない。エルマーの惟一の武器は、腰に指したホルスターの中の短剣と、空魔石製のハッタリ程度の地雷だけだ。
「……、ええ。」
まじかよ。こんな訳のわからない森で、ほぼ手ぶらで駆け抜けろというのか?意味がわからない、一体どんな縛りだと頭の痛い思いで溜め息を吐く。
渋い顔をしたエルマーが、ゆっくりと周りに目を配る。なんだか見たことがあるような、ないような。自分の記憶が心配になる景色であった。まあ、森はどこも同じだと言われたらそうなのだけれど。
意味もなく靴紐を結び直す。ホルスターの留め具を外して、いつでも短剣を抜ける様にすると、風が向かう方向へと歩きだした。風圧を感じないので、頼りは木々の揺れや地べたを滑る木っ端頼みである。
砂利道を歩いているはずなのに、その感触もない。まるで浮いているような不思議な感覚だ。
どれくらい歩いただろう。エルマーは一休みをしようとして、大きな木の根本に腰掛けようとした。そのまま、なんとなく目端に映った何かに気がついて、きろりと瞳を木の幹へと向けた。
目線の高さに、どぎついピンク色の甲虫が張り付いている。
見たこともない種類だ。エルマーはしばらく座ろうとした中腰のまま、角の生えたよく分からないその虫がカサカサと動くのを見つめ、好奇心に負けてそっと触れようとした時だった。
「は。」
エルマーの指が、するんと虫をすり抜けた。
指先は、結構な深さまで埋まっている。頭の中には、いくつもの疑問符が散らばって、収束がつかない。目の前の甲虫は、エルマーの指が突き刺さっているというのに、気にもしないで動くのだ。
ぶわりと、嫌な汗が吹き出す。震える手のひらを広げ、甲虫を押し潰すようにして、木の幹へ押し付けた。手首までずぶりと埋まったところで、エルマーはよろよろと後ずさった。
なんだこれ、
「……っ、」
冷や汗がぶわりと背筋をなぞる。己の実体が無い事に動揺を極めたその時。ガサガサと音を立て、叢からホーンが飛び出してきた。めったにお目にかかれない男鹿の立派な体躯を持つ魔物が、エルマーに向かってくる。
思わず構えるも、ホーンは気にせずエルマーの体をすり抜けていく。追い掛けるように続いた大型の熊の魔物も、まるでエルマーを無いものとして通り過ぎていく。
己の体を不躾に扱われながら、エルマーは魔物を見送った。
手のひらで顔に触れる。自分では実体を感じることができるのに、他のものに触れようとすると、すり抜けてしまうのだ。
「はあ、っ……は、っ……」
気持ちの悪さに呼吸が乱れる。どくどくと忙しない鼓動は、体の震えへと繋がっていく。ここで倒れても、誰にも気づかれずに死ぬのかもしれない。いや、もしかしたらもう死んでいるのか?
そっと左目に触れた。ごくりとエルマーの喉が鳴る。指先に感じ取ったのは、失ったはずの左目の感覚だ。
「なんで、ある……」
左目がある。足りてない筈のものが、そこに収まっているのだ。あまりにも非現実的な状況から逃げるように、エルマーは覚束ない足取りで歩いた。
纏まらない思考を、纏めねばならない。
集中しすぎて、唾液が顎を伝うことも気にせずに、エルマーは己の中の記憶をかき集めた。
寝る前、いや起きる前に何があったのか。
何かあった筈なのだ。まさか、気づかないまま死んだ?そんな筈はない。余程イレギュラーなことが起こらない限り、常に警戒はしていた。
人や魔物が襲いかかった?いや、武器がなくても負ける気はしない。
なら毒?それもちがう。毒なら香りでわかる筈だ。ならば、悪意のないなにか。しかし、その何かがわからない。
抜け落ちた記憶、そこに答えがあるというのに。
気がつけば、森を抜けて開けた場所にきていた。空に向かって突き抜けるように生えていた針葉樹林は、随分と背後の方に纏っている。
景色が変わったことに気づくと、エルマーは辺りを見渡した。背丈の低い草花に隠されるように、その足元は赤土に変わっている。
葉が踊るように足元を過ぎ去る。この葉ですら感じられる風が、エルマーにはわからない。
風の通り道を探るように歩いてきたつもりだったのに、集中しすぎてそんなことも忘れていた。
エルマーは、風の流れを示すかのように揺らぐ草が、どこまで広がっているのか、確認するように顔を上げる。
それは、目前の窪地へと向かって流れていた。
大きなものが横たわっていたかのようなそこを、草花が覆うように繁っている。
重いものを引きずるような、地響きのような音が聞こえる。
その音に促されるように顔を上げれば、白い獣が足を引きずるようにして姿を現した。
「…狼、か…?」
美しい獣だった。
頭からは、木の枝のような立派な角を生やしていた。オパールのような神秘的な色合いを持つ鱗で、その靭やかな四肢や尾の付け根を覆う、見たこともない魔獣だ。
装飾のような鱗を輝かせながら、四肢には青色の炎を纏っている。目の色は分からないが、きっと美しい色をしているのだろう。
見慣れぬ魔獣は、窪地に体を擦り付ける様にしてズルズルと落ちていく。
近寄ることすら畏怖を覚えるだろうその魔獣を前に、エルマーは己の実体が無いことを建前に、遠慮することもないかと近づいた。
大きな獣だった。その体をゆっくりと上下させるほど、深い呼吸を繰り返す。きっと、もう死ぬのだろう。
エルマーは、見知らぬ獣を看取ってやりたくて、窪地に降りたった。
近づいたその巨躯は、獣の頭だけでエルマーの背丈の半分ほどもある。エルマーは近づいた気配を感じたのか、その魔物がふるりと身を震わした。
ゆっくりと開かれた瞼から溢れたのは、息を飲むほどに美しい色をした金の瞳だ。
虹彩から溢れるような細かな光が、長いまつ毛に反射して白銀の毛並みを染める。きゅるりと細まった魔獣の瞳孔に、エルマーは瞳を揺らした。
「……もう、いくのか」
今にも零れそうな涙の膜が、その魔物の瞳をゆっくりと覆った。
この魔物はこんなに大きいのに、やけに泣き虫なようだ。
エルマーは、触れられぬことをわかっていながらも、その目の下を優しく撫でた。
長い睫毛に縁取られた美しい金色の瞳は、ぼろりと涙を零す。肺を絞るように深い息を吐き出しながら、エルマーを目に焼き付けるかのように、こちらを見つめていた。
優しい顔をしている。そんなことを思った。エルマーの目の前で、瞼を閉じて終わりを迎える魔物。
その様子を、エルマーは目を逸らさずに、最後の一呼吸まで見つめていた。
瞼の奥にある宝石の瞳を、もう見ることができないのかと思うと、なんだか酷く悲しく感じた。
生命の灯火が消える。まるで、それを惜しむかのように白い光が降ってくる。エルマーは、動かなくなった魔獣の側に座り込みながら、ぼんやりとした目で空を見上げていた。
「ああ、雪だあ……あいつ、見たらきっとはしゃぐだろうなあ……」
落ちてきた雪の結晶を、手のひらに受け止めようとして、諦める。やはりこの身では無理らしい。
エルマーは、魔獣の側から離れがたくて、未だぼんやりと座り込んでいた。慰めに、毛並みを撫でてやるように触れても、労ってやることすら叶わない。
「あいつ、…?」
口から出た言葉に、疑問を感じた。記憶がないはずなのに、あいつと出てきたのだ。己の唇に触れる。何かを思い出すかのようにして、そっと撫でた。
あいつは、そう、己にとって何よりも大切な人物だ。全てを捧げたいと思える人。己がここにいる理由すらわからないと言うのに、記憶の片隅に息づく己の愛しい存在は、薄ぼんやりと浮かび上がってくる。
願うなら、あいつに会って抱きしめたい。この腕の中に閉じ込めて、口付けをしたい。
「顔見たら、わかっかな。」
顔だけが、思い出せない。記憶に浮かんできたのは、酷く荒いすりガラス越しに見たような曖昧な人影だ。その、不確かな存在を、エルマーは今この瞬間に求めていた。
会いたい。会って確かめたい。そう思っていると、ざわりと空気が変わった。
「……っ、あ?」
エルマーの目の前で、突然、雲が走り出した。夕闇が、恐ろしいスピードで西の空に吸い込まれていったかと思うと、突然東から朝日が登る。エルマーと魔獣の亡骸の上を、いくつもの雲の影が通り抜け、空の色がぐんぐんと忙しなく変わっていく。
ありえない光景を前に、呆気にとられて見上げていると、その突然の変化は徐々に収束していく。
驚きすぎて、ついよろよろと座り込んだ。エルマーが見上げていた数分間で、一体いくつの夜を超えたのだろう。
魔獣の躯は、降り積もった雪に埋もれて腐らずにいる。
「……消えてねえ。なんでだ…」
魔獣が、魔素になっていないのだ。通常の魔物の場合、倒した後は黒い煙を噴き上げて、体が崩れるようにして魔素に変わるのだ。エルマーの目の前に横たわる魔物は、いまだ綺麗なままである。
一体、何が起きている。困惑しているエルマーをよそに、事態は急転した。
ーーーー!!ーー、ー!
「っ、」
聞き慣れない言葉を話すいくつもの気配が、窪地を囲むように突如として現れた。横たわる魔獣を指差し、何かを叫ぶ。
見慣れない服装は、いつの時代のものだろう。男たちは、何かを叫びながらエルマーを通り過ぎ、横たわる魔獣の前に降り立った。
男達は、皆こぞって目の色を変え、魔獣の亡骸を見つめていた。宝の山を見つけたような顔をして、大きな剣やら鎌やら、そんな物騒な武器を背負ったまま、嬉しそうに喜んでいるのだ。
なんだこれ。エルマーは訝しげな顔をして、成り行きを見つめていた。
男達の中の一人が、部下に何かを命令している。どうやら首を抑えるように指示をしているようである。
魔獣の大きな頭を二人がかりで抑えると、大柄な男が剣を抜いた。
「え、」
ひゅう、と大きく剣を振りかぶった瞬間、当たり前かのように、それを魔獣の首へと振り下ろした。
そこからは、もう地獄だ。
エルマーが幾ら止めろと叫んでも、飛びかかっても止まるものはいない。当たり前だ、実体がないから、誰も気にもとめない。美しい白銀の毛皮が、鱗が、牙が、頭蓋が。そして零れるように落ちた、金色の眼も、何もかもが残酷に剥ぎ取られていく。
エルマーは余りの酷さに何度も嘔吐した。何度もやめろと叫んだ。それでも、誰もやめなかったのだ。まるで、取り憑かれたかのように、愚かな行為は止まらなかった。
美しい獣が、死してなお穢される。大きな体躯の男が、肉塊になった体に剣を突き立てなにかの塊を取り出した。
掲げるように手に乗せられたのは、神秘的な青を纏う宝玉だった。それをエルマーが目にした瞬間、忘れていた全ての記憶が、脳に流れ込んできた。
「ぁ、くっ……あ、ああ、あ、ああ…」
まて、それは、もしかして。
体の内側で、バクンと嫌な跳ね方をした心臓は、如実にエルマーの衝撃を受け止める。
左目が、唐突に熱を持つ。思い出せと急かされるように、脳が記憶を引きずり出そうとする。そんな酷い頭痛に苛まれた。
ころりと転がったあの金眼は、あの塊は。
嫌な考えが、一気に思考を支配する。ちがう、違う。認めたくない。そんな、あり得ない。
エルマーの見開かれた瞳が映したのは、血塗れの手で掲げられた龍玉だ。そう、エルマーは、あれが龍玉だと言うことを知っている。
呼吸の仕方を忘れたかのように、言葉を失ったエルマーの目の前で、青い龍玉が煌めいた。瞬間、再び景色が大きく動いた。
目の前で早送りされていく景色。まるで、コマ割りの動きで人が入れ替わっては消えていく。肉塊と血で染められた土が優しく雪に包まれ、木々が枯れ、草木が芽吹き、やがて窪地には真っ白な花が溢れるように咲き乱れる。
エルマーは、ただ顔を手で覆ったまま、指の隙間からその光景を見つめていた。
これは、記憶だ。
肩で息をする。情報がとめどなく脳へと注ぎ込まれ、頭が痛い。目からは涙が止まらず、ただその肉塊が自然と朽ちるのを、見つめることしかできなかった。
そして、再び景色が止まった。
ガクンと、膝から崩れ落ちたエルマーは、肩を震わしながら拳を握りしめる。短い呼吸を繰り返し、重くなった肺から苦しみを吐き出すように蹲り、地面に涙を染み込ませる。
辛かった。なんで、こんなものを見せられなくてはいけないのかと、そう思うくらいには、精神的にダメージを食らっていた。
ーー、みつけた。
「……?」
その最中、耳に入ってきたのは、聞き慣れぬ声であった。
泣き濡れたまま、ゆっくりと顔を上げる。この苦しみから、解放してくれるものが現れたのかと、期待すらもしていた。
エルマーの体を、小柄な男がすり抜けていく。白い靴を履いた人物は、窪地の花を散らしながら、中央に向かっていった。
男は、体に合わない仰々しい司祭のような格好をしていた。窪地には、最初に見たときにはなかった台座のようなものが作り上げられている。その周りは柱で囲まれ、神殿のような建物ができている。
エルマーは、神殿の中に入っていく背中を見つめていた。何をするのかという、怯え混じりの視線を向けてしまうくらいには、限界だった。
そんなエルマーの目の前で、司祭は台座に陣を書き始めた。
「やめ、ろ…」
もう、そこを荒らすのは辞めてくれ。エルマーはよろよろと男の側に行くと、刻まれた陣を消そうと、地べたに這いつくばった。
無理だとわかっていても、どうしてもそうせずにはいられなかった。あの魔獣が眠るその場所を、そっとしておいてほしかったのだ。
ーこれで、……は、……え、……る
肝心なところは聞き取れない。長々と陣を書き終えた男は、項垂れるエルマーの目の前に、金色の宝玉を放り投げた。
あの時、奪われたはずの金色の宝玉、龍の瞳。
石の台座の上を、滑るようにして転がる。招かれるようにして複雑な陣の中に収まると、模様をなぞる様に金色のまばゆい光が広がった。
ふわりと光が浮き上がる。地面から離れた陣が、龍の瞳ををホロホロと崩す様にして取り込んでいく。陣が上昇するとともに共に、エルマーの目前で、白いつま先が現れる。
「は…、っ…?」
これは、構築しているのか。
周りの土から浮き出た、赤黒く細かい粒が、吸い込まれるようにして陣に取り込まれていく。どんどんと構築されていく白い体の人間は、どうやら男のようだった。
首から上が、徐々に顕になっていく。
ふわりとした長い黒髪が、その華奢な体を撫でるように滑る。エルマーの目の前で、全貌を顕にした少年は、どしゃりと台座の中央に産まれ落ちた。
ーー、ーい。おきろ。
くたりと体を投げ出した、少年の黒髪が肩を滑る。薄い胸をゆっくりと上下させると、こてりとエルマーの方に顔を向ける。目の周りは、ひどく焼け爛れている。片眼は白く濁り、薄く開いたもう一つの目からは、透き通った金色をちらりと覗かせていた。
「ーーーナナシ、!!!!」
ひゅう、と喉が鳴く。エルマーの全身は、衝撃で総毛立った。そこには、己のたった一人の大切が、酷い状態で横たわっていた。
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