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シュマギナール皇国編
15 *
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日が上るまでまだ時間がある。エルマーは安全な教会も使えないので、本当に仕方なくだが野営で乗り切ることにした。
おそらく幽鬼は再び出る。一度怯えた、ナナシの匂いを嗅ぎつけて。
「とりあえず囲うか。」
エルマーは始めて会った時のように、ナナシを背中にしがみつかせたまま黙々とテントを張ると、四隅に杭を打ち付け、簡易結界の術を施してある紐でテントの周りを囲う。おそらく使い古している為幽鬼には効かないだろうが、無いよりはマシだ。
皇国についたら新調しよう。エルマーは面倒くさがりな自分を少しだけ恨んだ。
「ひぅ、」
「これは牽制。びびんな、もう死んでっから。」
先程倒した幽鬼の急所である紫色の舌をべしょりと地面に放り投げる。その先には事切れたその体がまだ残っていた。陽の光を浴びればニつとも燃えるように消える。幽鬼の魔石は太陽で焼かないと取り出すことの出来ない面倒な魔物である。その分売れる金額も大きいが。
エルマーはナナシの体を抱き上げると、テントの中に入った。インべントリから、毛布やら体を拭うための布を取り出し、さらに木の桶には水性スライムの死骸を入れた。短剣でその丸みを帯びた体を穿くと、パンッと破裂音がして桶に水が満たされる。
「こいつはあんま使いたくなかったんだよなぁ。」
水性スライムは水場によく居るのだが、形を残したまま仕留めるのは難しい。そのかわり、仕留めるのに成功すればインべントリで保管もできるし、腐らない水も確保できるのだ。スライ厶の体を包んでいたゲル状の被膜を摘んで小瓶に入れると、なみなみと溜まった桶の水に布を浸した。
「ほら、脱いじまいな。このままじゃ気持ちわりいだろ。」
「ごぇんあさい…」
「ん、いーよ。それにしてもマントもブーツも汚さず器用に漏らしたな…。ああ、座ったまま?」
エルマーが指摘すると、ナナシは涙目のまま顔を赤らめた。誂ったつもりは微塵もないのだが、どうにも恥ずかしかったらしい。エルマーはナナシのマントやらブーツやらを脱がし、下肢の濡れたズボンも全て取り払うと、濡らした布を固く絞ったもので汚れた腰回りを手際よく清拭してやった。
「ナナシ、変えのズボンも下着もねえ。乾くまで待てるか?」
「うぃ…」
小さく頷くと、チュニックの裾を伸ばして恥ずかしそうに性器を隠す。ナナシの体に毛布を被せてやると、それに包まりながら、縮こまるようにして膝を抱える。
テントの外側では、風がざわめいていた。葉擦れの音と共に、何かを引き摺るような音がゆっくりとテントの周りを徘徊する。
「来たな。」
「っ、える…」
「大丈夫だ。おいで。」
ランプの明かりを絞る。幽鬼は、まるで己の存在を知らしめるかのように、細い枝のような指先で外側の布地をなぞり、不愉快な音を立てている。
腕に入り込んできたナナシの体は震えていた。細い腕はしがみつくように背に回され、時折上擦った声が聞こえる。毛布に包まったナナシを宥めるように撫でながら、未だ決めあぐねているエルマーは、眉間にシワを寄せてテントの隙間を睨んだ。プチンと紐が切れる音がしたのだ。
「…図太い幽鬼もいるもんだなァ。」
「っ、や、やら…こぁ、い…!」
枝の様な指がテントの隙間を広げる。覗き込むようにしてシワシワの顔がちらりと見え隠れした。
死骸を撒いておいたのに、目が見えていないせいか物ともしなかったらしい。
ボロの簡易結界紐が役目を果たさなかということだ。
怯えて仕方がないナナシの様子は、幽鬼にとって格好のエサである。
「ナナシ、いっこ勉強な。」
「ひ、っ」
「幽鬼は生きてるエネルギーが強けりゃ逃げる。」
「え、える…?」
本当はサジのが適任なんだけどよ。と言われて、ナナシは少しだけ泣きそうになる。自分は何もできないと言われているような気がしたのだ。
「っ、…でき、ぅ。」
「…何やるかわかってんのか?」
ナナシだって男だ。守られてばかりは嫌だった。それに、自分にできることなら、エルマーの為になにかしたかった。やれるよ、と言うように、小さく頷くと、怯えながらもエルマーを見上げた。
金色の瞳は濡れていた。それでも、もう揺らいではいなかった。
「や、やる、える、ナナシやる。」
「…すげえ最低なことすんけど、嫌わねえ?」
「える、すき。」
エルマーの言い方に一瞬だけ戸惑った。最低な事とはなんだろうと思ったのだ。それでも、地獄を経験しているナナシからしてみたら、ちょっとくらい痛い思いをしてもそれがエルマーの為なら我慢できる。
まっすぐ目を見て返事をすると、エルマーは、きゅうっと噤まれた唇を見て、心配の色を覗かせた。それでも、ナナシの気持ちを汲み取ったらしい。体を包んでいた毛布を取り払うと、その上にそっとナナシを寝かせる。そして、まるで跨がるかのようにして組み敷いた。
「後で殴っていいから、今だけ我慢しろな。」
「える、?っ…」
エルマーの鼻先がナナシの細い首筋に擦り寄る。ぴくんと肉付きの薄い肩が跳ねたのを合図に、ナナシの足の間に腰を勧めた。心配になるほど細い足を優しく開けば、腰を挟むようにして下肢を引き寄せた。
「ひゃ、」
「出来るだけ、声出せ。」
「える、っひぅ、っ!」
エルマーの舌が、ナナシの細い首筋を舐めげる。ただでさえ幽鬼が入り込もうとする恐怖で胸が爆発しそうなのに、今はエルマーの手付き一つで死んでしまいそうな位に胸がドキドキと喧しい。
エルマーは顔を一気に染め上げ、胸の前で縮こまったかのように腕をたたんだナナシの手のひらを、そっと開くようにして指を絡める。
「は、大丈夫だから。胸触んぞ。」
「あ、…あぃ、っ…」
「いいお返事。」
エルマーに手を握られ、胸元から離される。そっと降伏するように両手をテントの床に投げ出すと、緊張からか、はふはふと呼吸を乱しながら、ギュッと目を瞑った。噛み付かれても悲鳴は上げないように、首を絞められても上手に力が抜けますように。
エルマーがナナシのそんな様子を、目を細めて見つめていたのだが、それに気付くことはなかった。
エルマーの男らしい手が、ナナシの背筋を撫でるようにして這わされ、そっと胸を反らされた。とくとくと早鐘を打つナナシの鼓動に小さく笑うと、つんと立ち上がった薄赤の突起を、労るようにして優しく舌で舐め上げる。
怯えていた、犬歯で噛みつかれるような痛みはない。ただナナシが怖がらないように、伺うような優しさで甘く唇で挟み、時折吸い付き、もう片方の突起も手慰みのようにくにくにと弄る。
「ぁ、っ、ひぅ、っ、ぇ、える、ぁっ」
「ン、上手に声出てる。きもちいか?」
「ぁ、んぅ、きもち、はぁ、ぁっ」
時折鋭くなるように高まる感度が、胸の先端をじんじんと痺れさせる。固く尖ったそこを歯で掠めるように弄られると、それだけで思考がままならない程であった。
ナナシは知らない、こんな、体がどうにかなってしまいそうな、こんな刺激は知らなかった。
「は、は、ぁんっ、える、まぁっ、ぇ、るまぁ、あっ、ひぁ、っ」
「ああ、くそ、かわいいな。」
幽鬼を追い返すためだとはいえ、こんなところで抱くのはナナシが可哀想だ。エルマーは自分の下で蕩けているナナシを見下ろしながら、今まで連れ込んだ女や床で犯したサジのことなどを棚に上げて、幼いナナシの可愛らしい反応に完全に参っていた。
ぐつぐつと煮えるような茹だった頭に、性器が主張するように張り詰める。ボトムを押し上げるそこがじくじくと痛みを訴えるのだ。
仕方なくエルマーはジッパーを下げて性器を取り出すと、ナナシの腰を持ち上げる。
「挿れねえ。だから怖がんな。」
「らめ、ぇ、えるぅっ、そ、そこやぁ、あっ、」
こぶりな尻を割り開くと、エルマーの赤い舌がその蕾にねとりと這わされる。そんな事などされたことがなく、余りの羞恥に顔を更にに赤らめながら、幼い性器からとろりとした先走りを零す。見ていられない、ナナシは目を逸してテントの入り口を見ると、もうそこに幽鬼はいなかった。
「ぁ、ぁっ、あ、ぇる、えるぅっ!」
もうこわいのいないよ、だいじょうぶだよ。
そう言いたいのに、言葉を紡げない。翻弄されるように身悶えながら、思考とは裏腹にもっとして欲しいという浅ましい欲求が顔を出す。終わってしまうのが残念で、ナナシは強請るような声でエルマーを呼ぶ。
そんなナナシの声に、エルマーは意地悪な顔で微笑む。とくんと胸を跳ねさせては、気持ちいいでいっぱいいっぱいになり、息が苦しくなる。全然止まってはくれない。胸の先端がこんなにも痺れる。幼い性器も疼痛のような鋭敏な刺激でナナシの体をを蕩かすのだ。
「とまんねえ、ごめんな。クソ、だから嫌だったんだ。」
「はあ、あっ、きもちぃ、える、きもちぃ…ひぁ、んっ」
「ああくそ、なんて顔しやがる…」
その嫌は嬉しい。ナナシはあの夜のことを思い出していた。サジが裸で崩折れているのを抱きとめるように、そっと手を下したエルマー。結局なんともなかったのだが、あの時のサジのように、エルマーが裸のナナシに触れてくれるのが嬉しかった。
体の大きいエルマーが、男の象徴を昂らせてナナシの為に我慢をしてくれる。
サジの綺麗な体と違う、傷が目立つナナシの薄っぺらな体に触れてくれる、その優しさがナナシは嬉しかった。
「すき、ぇるすき、っうれひぃ、はぁ、ァんっ…」
「もう、お前ちょっと黙れ…」
「ンふ、っ…」
困ったような、少し欲に染まった金の瞳で睨まれる。素直になったナナシにこれ以上喋らせまいと、唇を割り開くように舌を差し込んだ。
「ふ、んン、む、っ、えぅ、っ、んゅ、ふぁ…っ」
れる、と舌を掬い上げるように舐められる。時折甘く吸い付いては、エルマーはナナシに唾液を与える。上手に飲み込むと優しく頭を撫でられた。これは、口付けだ。ナナシが欲しかった、大人の口付け。
太腿を纏めて固定するようにエルマーの肩に担がれながら、その隙間を熱く硬いなにかが押し開くようにして侵入する。
「ン、ナナシ…っ…」
「ふぁ、すき、…はぁ、あ、」
ナナシの性器を擦るようにして、エルマーの大人のそれが、にゅくにゅくと太腿の肉を割り開く。遠慮がちに腰を打ち付けながら、堪えるように寄せられた眉が整った顔を歪ませる。吸い寄せられるように近づいて、再び唇が重なる。ナナシはエルマーの優しくも欲のある口付けに蕩けた顔をすると、その熱源に触れてみたくてエルマーの先端に小さな手を伸ばす。息を詰まらせ、小さな唇から離れていったエルマーの舌がもっと欲しかった。口寂しくて、手についた先走りをぺしょりと舐める。よくわからない、ただ本能的に美味しそうに見えたのだ。
「おまえ、それはだめだろ…っ、」
「う?」
「ああ、もう…」
頭が痛そうに溜め息を吐くと、エルマーは太腿から性器を引き抜いてナナシの細い脚をガバリと広げた。ふるりと揺れる幼い性器を口に含むと、ぢゅる、と音を立てて口の中で転がす。
「ふぁ、あ、あっあっ!や、やぁ、らめ、えるぅ!」
「ん、ちっとしょっぺえ。まだ精通してねえの?」
「わ、わか、んぁ、っ、やぅ、うっ」
「なら、そのまま感じてな。」
「ぁ、あんっやぁ、あっ」
腰が抜けそうなほどに気持ちのいい刺激に、ナナシの性器はじくじくと甘く疼く。知らない刺激だ、先っぽを舐められるのがこんなに気持ちいいなんてナナシは知らなかった。
エルマーは薄い皮を剥くように、優しく舌を使って虐めてやると、ナナシはびくびくと背筋を痺れさせた。
「もぇぅ…えるぅ、っ!おひ、っこ、もぇちゃ、っ…」
「ん、さっき出したろうが、これはちげえよ。」
「ふぁ、あっれぅ、れひゃ、ぅっ、」
「おっと、」
ぷちゅ、と可愛い音を立てて、ナナシの先端からぴゅくんと先走りが吹き出る。そのまま幹全体に舌を這わしながら、エルマーはナナシに見せつけるように口に含む。細い指の隙間から、蕩けた金色の瞳が見つめ返す。ぷるりと身を震わすと、吹き零すようにして水っぽい精液がこぽりと溢れた。
「はぁ、あ、あ、あ、」
「ん、でたな…」
目の前がちかちかと弾ける程に気持ちがいい。がくがく震える太腿をエルマーに預けたまま、漏らしたような量の白い何かが腰回りまで濡らす。ナナシの初めて射精は量が多く、エルマーはねとりとしたそれを手に絡めると、そっと尻のあわいに塗り付けた。
「わりい、俺も限界。尻かして」
「ぁ、ふぇ、っ…?」
「…痛くしねえから勝手に借りるな。」
初めての射精の余韻で前後不覚のナナシをそのままに、柔い尻肉に己の性器を挟む。熱い猛りを蕾に擦り付けるようにして腰を揺らめかせるエルマーの腹筋が、まるで何かを我慢するかのように絞られる。ナナシは吐精後の余韻に浸りながら、エルマーの下肢に向かって走る太い血管を白い指でなぞった。
「おま、どこでそんな誘い方覚えてくんだ…」
「んぅ、える、っ…」
ぐる、と獣が唸るように犬歯を見せ、顔を顰めるエルマーが、ナナシの悪戯な手を取ると手首に歯を立てる。がじ、と諌めるように甘噛みするエルマーがなんだか可愛く見えて、ナナシは蕩けた顔のままふにゃ、と微笑んだ。
こんな行為をしていながらも、尚もあどけなく濡れた顔で笑うのだ。悪いことをしている気がして、エルマーはぐっ…と口を一文字に引き絞り俯く。堪えるように深呼吸をし、覚悟をしろと言わんばかりにキッとナナシを睨みつけた。完全に捕食者のような眼差しであった。
「泣かす。」
「はぇ、」
エルマーが唸るように低く呟く。がばりと足を大きく開かせたナナシを、体で隠すように覆い被さった。その太ましい性器をナナシの腹に擦り付ける。先程よりも更に大きくなったそれに目を見開いたナナシは、ひっ、と短く声を漏らした後、もう逃げられないのだと悟る。
暗闇に包まれた深い森が静かに広がる一角で、まるでそこだけ取り残されたような、狭い二人だけの世界。
ナナシの少年特有の高い悲鳴が森の中に木霊する。それも時期に蕩けた媚声へと変わるのだが、止められなかったエルマーが翌日ナナシに土下座するのはもはや避けられない。
そんな二人を見下ろすようにして、満月だけが静かに行く末を見守っていた。
おそらく幽鬼は再び出る。一度怯えた、ナナシの匂いを嗅ぎつけて。
「とりあえず囲うか。」
エルマーは始めて会った時のように、ナナシを背中にしがみつかせたまま黙々とテントを張ると、四隅に杭を打ち付け、簡易結界の術を施してある紐でテントの周りを囲う。おそらく使い古している為幽鬼には効かないだろうが、無いよりはマシだ。
皇国についたら新調しよう。エルマーは面倒くさがりな自分を少しだけ恨んだ。
「ひぅ、」
「これは牽制。びびんな、もう死んでっから。」
先程倒した幽鬼の急所である紫色の舌をべしょりと地面に放り投げる。その先には事切れたその体がまだ残っていた。陽の光を浴びればニつとも燃えるように消える。幽鬼の魔石は太陽で焼かないと取り出すことの出来ない面倒な魔物である。その分売れる金額も大きいが。
エルマーはナナシの体を抱き上げると、テントの中に入った。インべントリから、毛布やら体を拭うための布を取り出し、さらに木の桶には水性スライムの死骸を入れた。短剣でその丸みを帯びた体を穿くと、パンッと破裂音がして桶に水が満たされる。
「こいつはあんま使いたくなかったんだよなぁ。」
水性スライムは水場によく居るのだが、形を残したまま仕留めるのは難しい。そのかわり、仕留めるのに成功すればインべントリで保管もできるし、腐らない水も確保できるのだ。スライ厶の体を包んでいたゲル状の被膜を摘んで小瓶に入れると、なみなみと溜まった桶の水に布を浸した。
「ほら、脱いじまいな。このままじゃ気持ちわりいだろ。」
「ごぇんあさい…」
「ん、いーよ。それにしてもマントもブーツも汚さず器用に漏らしたな…。ああ、座ったまま?」
エルマーが指摘すると、ナナシは涙目のまま顔を赤らめた。誂ったつもりは微塵もないのだが、どうにも恥ずかしかったらしい。エルマーはナナシのマントやらブーツやらを脱がし、下肢の濡れたズボンも全て取り払うと、濡らした布を固く絞ったもので汚れた腰回りを手際よく清拭してやった。
「ナナシ、変えのズボンも下着もねえ。乾くまで待てるか?」
「うぃ…」
小さく頷くと、チュニックの裾を伸ばして恥ずかしそうに性器を隠す。ナナシの体に毛布を被せてやると、それに包まりながら、縮こまるようにして膝を抱える。
テントの外側では、風がざわめいていた。葉擦れの音と共に、何かを引き摺るような音がゆっくりとテントの周りを徘徊する。
「来たな。」
「っ、える…」
「大丈夫だ。おいで。」
ランプの明かりを絞る。幽鬼は、まるで己の存在を知らしめるかのように、細い枝のような指先で外側の布地をなぞり、不愉快な音を立てている。
腕に入り込んできたナナシの体は震えていた。細い腕はしがみつくように背に回され、時折上擦った声が聞こえる。毛布に包まったナナシを宥めるように撫でながら、未だ決めあぐねているエルマーは、眉間にシワを寄せてテントの隙間を睨んだ。プチンと紐が切れる音がしたのだ。
「…図太い幽鬼もいるもんだなァ。」
「っ、や、やら…こぁ、い…!」
枝の様な指がテントの隙間を広げる。覗き込むようにしてシワシワの顔がちらりと見え隠れした。
死骸を撒いておいたのに、目が見えていないせいか物ともしなかったらしい。
ボロの簡易結界紐が役目を果たさなかということだ。
怯えて仕方がないナナシの様子は、幽鬼にとって格好のエサである。
「ナナシ、いっこ勉強な。」
「ひ、っ」
「幽鬼は生きてるエネルギーが強けりゃ逃げる。」
「え、える…?」
本当はサジのが適任なんだけどよ。と言われて、ナナシは少しだけ泣きそうになる。自分は何もできないと言われているような気がしたのだ。
「っ、…でき、ぅ。」
「…何やるかわかってんのか?」
ナナシだって男だ。守られてばかりは嫌だった。それに、自分にできることなら、エルマーの為になにかしたかった。やれるよ、と言うように、小さく頷くと、怯えながらもエルマーを見上げた。
金色の瞳は濡れていた。それでも、もう揺らいではいなかった。
「や、やる、える、ナナシやる。」
「…すげえ最低なことすんけど、嫌わねえ?」
「える、すき。」
エルマーの言い方に一瞬だけ戸惑った。最低な事とはなんだろうと思ったのだ。それでも、地獄を経験しているナナシからしてみたら、ちょっとくらい痛い思いをしてもそれがエルマーの為なら我慢できる。
まっすぐ目を見て返事をすると、エルマーは、きゅうっと噤まれた唇を見て、心配の色を覗かせた。それでも、ナナシの気持ちを汲み取ったらしい。体を包んでいた毛布を取り払うと、その上にそっとナナシを寝かせる。そして、まるで跨がるかのようにして組み敷いた。
「後で殴っていいから、今だけ我慢しろな。」
「える、?っ…」
エルマーの鼻先がナナシの細い首筋に擦り寄る。ぴくんと肉付きの薄い肩が跳ねたのを合図に、ナナシの足の間に腰を勧めた。心配になるほど細い足を優しく開けば、腰を挟むようにして下肢を引き寄せた。
「ひゃ、」
「出来るだけ、声出せ。」
「える、っひぅ、っ!」
エルマーの舌が、ナナシの細い首筋を舐めげる。ただでさえ幽鬼が入り込もうとする恐怖で胸が爆発しそうなのに、今はエルマーの手付き一つで死んでしまいそうな位に胸がドキドキと喧しい。
エルマーは顔を一気に染め上げ、胸の前で縮こまったかのように腕をたたんだナナシの手のひらを、そっと開くようにして指を絡める。
「は、大丈夫だから。胸触んぞ。」
「あ、…あぃ、っ…」
「いいお返事。」
エルマーに手を握られ、胸元から離される。そっと降伏するように両手をテントの床に投げ出すと、緊張からか、はふはふと呼吸を乱しながら、ギュッと目を瞑った。噛み付かれても悲鳴は上げないように、首を絞められても上手に力が抜けますように。
エルマーがナナシのそんな様子を、目を細めて見つめていたのだが、それに気付くことはなかった。
エルマーの男らしい手が、ナナシの背筋を撫でるようにして這わされ、そっと胸を反らされた。とくとくと早鐘を打つナナシの鼓動に小さく笑うと、つんと立ち上がった薄赤の突起を、労るようにして優しく舌で舐め上げる。
怯えていた、犬歯で噛みつかれるような痛みはない。ただナナシが怖がらないように、伺うような優しさで甘く唇で挟み、時折吸い付き、もう片方の突起も手慰みのようにくにくにと弄る。
「ぁ、っ、ひぅ、っ、ぇ、える、ぁっ」
「ン、上手に声出てる。きもちいか?」
「ぁ、んぅ、きもち、はぁ、ぁっ」
時折鋭くなるように高まる感度が、胸の先端をじんじんと痺れさせる。固く尖ったそこを歯で掠めるように弄られると、それだけで思考がままならない程であった。
ナナシは知らない、こんな、体がどうにかなってしまいそうな、こんな刺激は知らなかった。
「は、は、ぁんっ、える、まぁっ、ぇ、るまぁ、あっ、ひぁ、っ」
「ああ、くそ、かわいいな。」
幽鬼を追い返すためだとはいえ、こんなところで抱くのはナナシが可哀想だ。エルマーは自分の下で蕩けているナナシを見下ろしながら、今まで連れ込んだ女や床で犯したサジのことなどを棚に上げて、幼いナナシの可愛らしい反応に完全に参っていた。
ぐつぐつと煮えるような茹だった頭に、性器が主張するように張り詰める。ボトムを押し上げるそこがじくじくと痛みを訴えるのだ。
仕方なくエルマーはジッパーを下げて性器を取り出すと、ナナシの腰を持ち上げる。
「挿れねえ。だから怖がんな。」
「らめ、ぇ、えるぅっ、そ、そこやぁ、あっ、」
こぶりな尻を割り開くと、エルマーの赤い舌がその蕾にねとりと這わされる。そんな事などされたことがなく、余りの羞恥に顔を更にに赤らめながら、幼い性器からとろりとした先走りを零す。見ていられない、ナナシは目を逸してテントの入り口を見ると、もうそこに幽鬼はいなかった。
「ぁ、ぁっ、あ、ぇる、えるぅっ!」
もうこわいのいないよ、だいじょうぶだよ。
そう言いたいのに、言葉を紡げない。翻弄されるように身悶えながら、思考とは裏腹にもっとして欲しいという浅ましい欲求が顔を出す。終わってしまうのが残念で、ナナシは強請るような声でエルマーを呼ぶ。
そんなナナシの声に、エルマーは意地悪な顔で微笑む。とくんと胸を跳ねさせては、気持ちいいでいっぱいいっぱいになり、息が苦しくなる。全然止まってはくれない。胸の先端がこんなにも痺れる。幼い性器も疼痛のような鋭敏な刺激でナナシの体をを蕩かすのだ。
「とまんねえ、ごめんな。クソ、だから嫌だったんだ。」
「はあ、あっ、きもちぃ、える、きもちぃ…ひぁ、んっ」
「ああくそ、なんて顔しやがる…」
その嫌は嬉しい。ナナシはあの夜のことを思い出していた。サジが裸で崩折れているのを抱きとめるように、そっと手を下したエルマー。結局なんともなかったのだが、あの時のサジのように、エルマーが裸のナナシに触れてくれるのが嬉しかった。
体の大きいエルマーが、男の象徴を昂らせてナナシの為に我慢をしてくれる。
サジの綺麗な体と違う、傷が目立つナナシの薄っぺらな体に触れてくれる、その優しさがナナシは嬉しかった。
「すき、ぇるすき、っうれひぃ、はぁ、ァんっ…」
「もう、お前ちょっと黙れ…」
「ンふ、っ…」
困ったような、少し欲に染まった金の瞳で睨まれる。素直になったナナシにこれ以上喋らせまいと、唇を割り開くように舌を差し込んだ。
「ふ、んン、む、っ、えぅ、っ、んゅ、ふぁ…っ」
れる、と舌を掬い上げるように舐められる。時折甘く吸い付いては、エルマーはナナシに唾液を与える。上手に飲み込むと優しく頭を撫でられた。これは、口付けだ。ナナシが欲しかった、大人の口付け。
太腿を纏めて固定するようにエルマーの肩に担がれながら、その隙間を熱く硬いなにかが押し開くようにして侵入する。
「ン、ナナシ…っ…」
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「おまえ、それはだめだろ…っ、」
「う?」
「ああ、もう…」
頭が痛そうに溜め息を吐くと、エルマーは太腿から性器を引き抜いてナナシの細い脚をガバリと広げた。ふるりと揺れる幼い性器を口に含むと、ぢゅる、と音を立てて口の中で転がす。
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「なら、そのまま感じてな。」
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「はぁ、あ、あ、あ、」
「ん、でたな…」
目の前がちかちかと弾ける程に気持ちがいい。がくがく震える太腿をエルマーに預けたまま、漏らしたような量の白い何かが腰回りまで濡らす。ナナシの初めて射精は量が多く、エルマーはねとりとしたそれを手に絡めると、そっと尻のあわいに塗り付けた。
「わりい、俺も限界。尻かして」
「ぁ、ふぇ、っ…?」
「…痛くしねえから勝手に借りるな。」
初めての射精の余韻で前後不覚のナナシをそのままに、柔い尻肉に己の性器を挟む。熱い猛りを蕾に擦り付けるようにして腰を揺らめかせるエルマーの腹筋が、まるで何かを我慢するかのように絞られる。ナナシは吐精後の余韻に浸りながら、エルマーの下肢に向かって走る太い血管を白い指でなぞった。
「おま、どこでそんな誘い方覚えてくんだ…」
「んぅ、える、っ…」
ぐる、と獣が唸るように犬歯を見せ、顔を顰めるエルマーが、ナナシの悪戯な手を取ると手首に歯を立てる。がじ、と諌めるように甘噛みするエルマーがなんだか可愛く見えて、ナナシは蕩けた顔のままふにゃ、と微笑んだ。
こんな行為をしていながらも、尚もあどけなく濡れた顔で笑うのだ。悪いことをしている気がして、エルマーはぐっ…と口を一文字に引き絞り俯く。堪えるように深呼吸をし、覚悟をしろと言わんばかりにキッとナナシを睨みつけた。完全に捕食者のような眼差しであった。
「泣かす。」
「はぇ、」
エルマーが唸るように低く呟く。がばりと足を大きく開かせたナナシを、体で隠すように覆い被さった。その太ましい性器をナナシの腹に擦り付ける。先程よりも更に大きくなったそれに目を見開いたナナシは、ひっ、と短く声を漏らした後、もう逃げられないのだと悟る。
暗闇に包まれた深い森が静かに広がる一角で、まるでそこだけ取り残されたような、狭い二人だけの世界。
ナナシの少年特有の高い悲鳴が森の中に木霊する。それも時期に蕩けた媚声へと変わるのだが、止められなかったエルマーが翌日ナナシに土下座するのはもはや避けられない。
そんな二人を見下ろすようにして、満月だけが静かに行く末を見守っていた。
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こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
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書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
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