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シュマギナール皇国編
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「とりあえず中に入らねえ事にはなぁ。」
「あぇ、なに?」
「城壁だぁ。皇国に入るにはあそこからしかねぇから、律儀に堀に跳ね橋かかるまで待たなきゃなんねぇな…」
ナナシの指差す先には、見上げるほど大きな城壁がぐるりと国を囲っている。この壁は何度魔物の侵入を防いできたのだろうか。色味の違う壁の部分は修繕を繰り返しているのだろう、真新しく見える壁もちらと見て取れるが、堂々たる存在感は中々に男心をくすぐるものがある。
主にエルマーとしては、登れるだろうかという部分であるが。
あれから、サジは苗床にしたキノコを抱いて、新たな魔物が生まれるまで面倒を見ねばならぬと言って、大事そうにそれを抱えたままふらりと姿を消した。消えている間はどこに行ってるのかはわからない。興味もないが。
エルマー達はというと、皇国を囲む城壁を目にした所で足止めをくらっていた。無理もない、もうじき外は夕闇に包まれる時刻だ。閉められた城門が開かれるまで待たなきゃいけない。近くで待ってもいいが、物乞いやら暴漢やらが城壁の外側を根城にしているせいで、城壁まわりでは遅れてきた冒険者らをターゲットに鋭意活動中だった。
元気なものである。魔物が来たらお前らがターゲットにしている冒険者が戦う羽目になるのに、今から身ぐるみ剥がしてどうするのかとも思ったが、エルマーもここに来て無駄な体力は使いたくない。仕方なく皇国の城壁を視認できるこの森で野宿することにした。
「とりあえず俺の記憶が正しけりゃ廃れた教会があったはず。」
「う、」
くるる、と腹を鳴らしたナナシがぺたんこのお腹を撫でる。そういやパン食ったあとに果実を一口齧っていただけだった。エルマーはインべントリから焼いた鱒を一本取り出すと、ナナシに渡した。
「これ食って我慢な。ほら行くぞ。」
「あぃ、んぐ」
エルマーに手を握られながら、鱒を片手に暗い森の道なき道を進む。
ここはなんだか暗くて怖い。ナナシはエルマーの手を握る力を強めながら、置いて行かれないようにと、てこてこと足を早めてより添う。
「ここは境界だからまだ大丈夫だ。こんな森俺ら以外には誰も入らねえからある意味安全っちゃあ、安全…」
「きょぅかぃ?」
「ナナシの左側をずーーっと進んでくと始まりの大地なんだぁ。あそこは魔素が強いから近寄んねー方がいいんだけどよ、ここいらなら平気。」
「まそ…」
二人の進んでいる森は、百年前に邪竜が生まれ落ちたと言われている呪われた大地の一部だ。と入っても東の国の領地として、ある程度歩けるくらいには切り開かれてはいるが、そんな伝説が残る大地だからか、なかなかに曰くつきなのだ。
奥の方に行くに連れて濃度の濃い魔素が滞留し、未熟なものや心根の弱いもの、魔力が少ない者たちが一歩踏み込めば、たちまち魔素にやられて正気を失う。
「こぁぃ…」
ぎゅ、とエルマーにくっついて、ナナシは自分の左側の森の奥を見つめる。どうやらエルマーの話で怯えてしまったらしい。宥めるように頭を撫でると、場所を入れ替えた。
怖がらせるつもりはなかったのだが、可哀想なことをした。
ナナシはちまこい手のひらでエルマーに縋りつきながら、おずおずと森を見ては、頭を腕に押し付けるようにして顔を埋める。
何故そこまでエルマーが始まりの大地について詳しいかというと、従軍中に川を渡った奥にある深い森を舞台に、西の国と領土を巡り争った経験があるからだ。
とはいっても、この皇国側の森の入り口から魔素が滞留する奥地まではかなり遠い。エルマーが全力で走っても二日はかかる程だ。境界を隔てるように流れる川まではそのくらいかかるので、深く踏み込まなければ危険もない。
「大丈夫大丈夫、ちっと暗いだけ出し、出るのはゴーストくらい…あり?」
じゃり、と小石が靴の下で音をたてる。鱒を齧りながらめそめそしていたナナシは、不自然に足を止めたエルマーの背中に顔を押し付けるかのようにして足を止めた。
ナナシが打つかっても身動ぎ一つしないエルマーの、その背中からひょこりと顔を出すと、目の前には酷く廃れた教会が聳え立っていた。
「…門が崩れてるな…」
「う、あ」
エルマーが足元に落ちていた瓦礫の一部を拾う。そこには魔除けの陣が彫り込まれているようだった。戦争で廃れてしまったまま、手入れもされずに廃墟となった教会は、木々の隙間から差し込む月明かりに照らされ、朽ちてなお静謐な雰囲気を漂わせる。
エルマーが気になったのは瓦礫と化したこの門の欠片だ。教会は崩れても、この門さえ残しておけば、聖地として魔物から人を守ることが出来る。
教会は清められた土地にしか建てられない。魔物が入らないように術を施されるため、結界の役割を果たす為の門が崩れたままなど、悪戯にしては質が悪すぎる。
風化したのだろうか。それにしても外壁を見る限りではそんなふうには見えない。
誰がこんなことをしたのだろう、不穏さを微かに残すような、そんな具合だ。まるで意図的に壊された様子に見えなくもない、そんな有様を見たエルマーの眉間には皺が刻まれる。
「これじゃあただの廃墟、っと…ナナシ?」
静かなナナシの様子が気になって振り向く。
月明かりに照らされた教会を目の前にして、ナナシの顔色は可哀想なくらいに青褪め、その身はがたがたと震えている。
「え、え、える、こ、ここや、ぃや、」
「あ?何だ、急にどうした…」
「こ、ここ、やら、こぁい、ゃら、っ」
怖いものでも見たのかと、再び背後の廃墟を振り向くも何も無い。突然この場に入ってからナナシの様子がおかしくなったのだ。変なトラップの気配すら無いのに、ついには怖気づいたのか足を滑らせて地べたに尻餅をついた。
ただならぬ様子であった。これには流石のエルマーも見過ごせず、落ち着かせようと声をかけようとしたときだった。
「や、やぁ、あっ!」
「馬鹿!一人で行くなって!」
ついには小石をかき分けるようにして、ヨロヨロと立ち上がる。ナナシは錯乱したまま来た道を戻るように駆け出した。エルマー一人ならいい。だけどナナシは戦えないのだ。あんな小柄な体で魔物に襲われでもしたら、致命傷を負うだろう。エルマーは慌ててその後ろ姿を追いかけた。
森の闇の中、葉の緑を暗く染める影が、葉擦れの音とともに消えた二人を追って迫ってくるようだった。
いけない、ここはいけない。
「は、はひ、っ…ひゅ、っ」
ナナシは荒い呼吸を繰り返しながら、まるで何かに追いかけられるようにして全速力で走っていた。
怖い。何が怖いのかわからないが、あそこはだめだ。ナナシの知らない、自分の記憶が近づくなと叫んでいる、なんで、なにがいけないのか、わからないのが余計に怖い。
思い出したのは土の匂いだ、それと白くて綺麗な靴。
そして静謐な空気を含む場所で感じた、目玉が溶けてしまいそうな位の熱と痛み。
やがて視界は真っ暗になって、揺れる白いお花を記憶に咲かせたまま、泥のような暗闇の中に沈んでいった。
「ひゅ、っ」
ごぽりと喉がなる。どれくらい走ったのかわからない。ナナシは震える手で喉を抑える。ふらふらと木を支えに蹲ると、食べたものをすべて吐き出した。
「う、っ、けほっ、え゛、っ…」
肺が、ひゅうひゅうと痛みを伴いながら鳴いている。エルマー、エルマー、エルマー!
名前を呼んで安心したいのにそれも出来ない。指先が震えて声の出し方がわからないのだ。
自分の記憶だと、目が焼けるように痛かった。大丈夫だろうか。目はちゃんとあるのか、見えているのだから有るに決まっているのに、指先で触れて確認するまでは安心できなかった。
「え、っ、ぅ…こ、ぁい…っ、」
呼吸を整えようと顔を上げた。眼の前に広がるのは、暗闇。
森の木々が聳え立ち、小柄なナナシの体を見下ろすようにして取り囲む。歪んでいるのは視界なのか、それともこの木なのか。虚の暗闇が怖い。エルマー、エルマーはどこ。ナナシは今、どこにいるの。
靴底で砂利を踏みつけて立ちあがる。膝は震えて、心細くてまた泣きそうだ。小さい手は心許なさを誤魔化そうと胸元のネックレスを握りしめる。
エルマーから貰った、ナナシの命よりも大切な宝物。
暗闇が心なしか深くなる。がさりと音がして、慌てて振り向いた。
据えた匂いが鼻孔をかすめるナナシの金色の瞳がキュウッと細まり、その瞬間、瞬きを忘れた。
そこにいたのは頭を逆さにしてニタリと笑う化け物だった。
「ひ、っ…」
なんだこれは。とおもった。
異形とはこういうもののことを言うのだろう。木の根が盛り上がったかのように、そこに現れた醜悪な魔物。
黄土色の肌は渇き、皮膚組織が木の皮のように捲くれ上がりながら全身を覆う。にたりと笑う顔だけが上下逆さまだったのだ。
笑っているのに、目は開いていない。見えないのだろうか、しきりに耳を傾かせるようにゆらゆらと体ごと揺れながら、音のする方向を探している。
「っ、」
声を出してはいけない。息を止めなくては。
ナナシはネックレスを握りしめた手で、祈るように指を絡める。そのまま手で口を押さえると、ゆっくりと呼吸をした。ずるりと音がして、その歪な人形の化け物が藪から歩み出る。長い腕を引きずるようにして、ゆっくりと細い足で地べたを踏みしめる。
魔物は、まるで骨や関節などを無視した動きで触手のように腕を操ると、地べたすれすれに手を這わせた。
自分を探している、直感的にそう思った。
目からは涙が溢れる。怖い、助けて欲しい、足元は砂利だらけて、一歩でも動いたら居場所がバレてしまうに違いない。
その化け物の指先がこつりとナナシの靴先に触れる。数度触れたあと、まるで手のひら全体で確かめるようにして足首を握りしめる。ああ、駄目だ。
ナナシは下を見つめていた目を、ゆっくりと正面に向けた。
「イタ、い、た。」
ナナシの鼻先が触れそうな距離に顔を近づける。魔物は黄土色のを不気味な顔を歪ませた
八つの赤い目玉をぎょろりとナナシに向けると、そのしわがれた容貌からは想像できない無邪気な子供の声で笑った。
「ぁ、あ、」
口から吐息とともに掠れた声が出た。怖いを通り越えると笑えてくるらしい。ナナシは足首を掴まれたままゆるゆると首を振る。
べしょりと腰を地面に落とすと、追いかけるようにして化け物の首が伸びてナナシの顔を凝視する。頭がどんどん痛くなってくる。怖い、全てがどうでも良くなってしまうような諦観がその身を支配する。
じわりと感じたそれが地べたを濡らした。ぺしゃ、と水音を踏む化け物の手のひらがナナシの足の間にある。恐怖に気が抜けて漏らしたのだ。
ギザ歯を見せつけるようにぐぱりと口を開いた瞬間、ふわりと風がふいた。
「バカ野郎が!!!」
ギィッ、と蝶番の軋むような音と共にナナシの目の前から化け物が消えた。
先程まで至近距離で睨みつけられていたナナシの体は、がくんと糸の切れたマリオネットのようにその場に崩れる。
体が動かない。エルマーが来てくれて嬉しいのに、視界に広がるのは黒い葉と隙間から覗く、夜の冷たい色しか見えない。ナナシの体は指先一つ動かなかった。
「ナナシ!!」
「っ、っ、」
エルマーは崩れたナナシを抱き起こすと、目を見開いた。恐慌状態で体が硬直していたのだ。このままでは呼吸が出来なくなってしまう。涙目ではくはくと唇を震わすナナシをそっと寝かせると、エルマーは蹴り飛ばした魔物に顔を向けた。
「…幽鬼。」
「イた、ィタ、」
腰が折れたのか、中程で不自然に折れ曲がった体をずるずると引きずりながら起き上がる。アンデッド系の魔物の中でもその赤目に睨まれたら状態異常を引き起こす、やっかいな魔物だ。
倒せば回復することはわかっている。どれくらいナナシがこの状態なのかはわからないが、呼吸不全で失神する前には終わらせたい。
「一息でいく。てめぇはそこから動くなよ。」
エルマーは太腿から取り出した短剣に聖属性の加護を持つ札を持ち手に巻きつけると、幽鬼が鞭のように撓らせたその腕をがしりと掴む。
エルマーの腕に力が入り、みしりと音をたてる。その腕の筋力を高めるかのように血流が送られ、びきりと太い血管の筋が腕に浮かぶ。
フッ、と小さく息を吐き出した。エルマーは金眼を光らせると、振り抜くようにして一気にその体を引き寄せた。エルマーの金色の虹彩が光の軌跡を描く。肉薄したその顔面に、聖属性の札を施した短剣を突き立てると、そのまま撚るかのようにゴリ、と短剣を柄まで通す。
目が開く前に脳天を潰すのが、幽鬼とやり合う上での鉄則だった。
耳障りの酷い断末魔の叫びが上がる前に、幽鬼の喉元を鷲掴む。絶命の際の絶叫は、ゴーストを呼び寄せるのだ。
エルマーは握力をすべて注ぎ込み、乾いた音を立てながら締め上げる。やがてグギッと詰まったような声を出し、ぐぱりと幽鬼の口が開くと、手を突っ込んで紫色の舌を一気に引き抜いた。
「チッ。」
口から黒い血をごぽごぽと吹き出した幽鬼を地面に投げ捨てる。びちびちと動く舌を握りしめ黙らせると、そのまま筋を伸ばすように引張り絶命させた。
幽鬼は本体が舌なのだ。首を切り落としただけではすぐに復活する。
脳天から聖属性の札を貼り付けた短剣引き抜くと、札は役目を終えたかのように燃えて消えた。
「ひゅ、っ」
まるで水面から顔を出したかのような勢いでナナシが呼吸を始める。ぎりぎりだったらしい。
エルマーは乱暴な足取りでナナシに近付くと、うずくまる細い体の肩を掴み乱暴に地面に縫い付けた。
「なんで離れた!!!!」
「ひ、っ…!」
金色の瞳を怒りで染めたエルマーは、トパーズの瞳を涙で濡らすナナシに覆い被さるようにしてマウントを取る。
みたこともない怒りを宿したエルマーの声色に強く怒鳴られ、幽鬼と対峙したときとはまた違う恐怖がナナシを包んだ。
「ぇ、るっ…」
「死にてえのか!!間に合わなかったらどうすんだバカ野郎がァ!!」
ビクリと体を震わせると、ついに耐えきれなくなったのか、ひぐひぐと嗚咽混じりに泣き出した。それでもエルマーは許さなかった。それだけナナシは危ないことをしたのだ。
安全だとおもって、教会で野宿するつもりで連れてきたエルマーにも非がある。それでも森の闇に怯えていた癖に、なぜ一人で走り出すなどと愚かなことをしたのか。
「バカ野郎が…、マジで馬鹿野郎だナナシは。」
「ご、ごぇ、ぁ、さ…っ、ふ、ぇっ…ひぅー‥っぁー…!」
抱き起こし、きつく腕の中に閉じ込める。無事で本当に良かった。泣きながら背中に腕を回してくるナナシの小さい体を、体温を確かめるように抱きしめると、心底ホッとしたと言わんばかりに、大きな溜め息をはいた。
幽鬼に襲われているナナシを見たときは肝が冷えた。自分も悪いのだが、思わず怒りをナナシに強く打つけ過ぎた。
わあわあと声を上げて大泣きするナナシの頭を撫でながら、あたりを見回す。汚れた木の根元をみると、その細い体が精神的にダメージを負っているのではないかと心配した。
「ふぁ、あっえ、える、えるぅ…っ、ひぅうっ、」
「わーったわーった、もう怒ってねーから泣き止めって。ほら、抱っこしてやっから。」
「うわ、ぁあっ、ぁっ、…き、きらぁ、な、ぃれ、えっ…ごぇ、ぁっさぃ、いっ…」
「吐いても漏らしてもお前が無事ならなんだっていいよ。はあ、もう離れるなまじで…」
しがみつくように泣くナナシに肩口をビショビショに濡らされる。抱き上げた体は可愛そうなほど震えており、エルマーの首に縋りつく力は強まるばかりた。
この先にある河原の先は境界だ。月が高く見下ろしている以上幽鬼はまだ彷徨っているだろう。
エルマーは頭の痛そうな顔をしながらナナシを見つめる。幽鬼を近づけない方法の一つとして、生のエネルギーを強く見せつけるというやり方がある。
そうすると人の怯えや恐怖に引き寄せられる幽鬼は近づけない。生者と死者での線引を無理やり作るのだが、これを行うともう後戻りができない気がしていた。
「える、える…」
「人の気も知らねぇでよー‥」
すりすりと甘えるように首筋に顔を埋めて愚図るナナシに、エルマーは少しだけ参った。
「あぇ、なに?」
「城壁だぁ。皇国に入るにはあそこからしかねぇから、律儀に堀に跳ね橋かかるまで待たなきゃなんねぇな…」
ナナシの指差す先には、見上げるほど大きな城壁がぐるりと国を囲っている。この壁は何度魔物の侵入を防いできたのだろうか。色味の違う壁の部分は修繕を繰り返しているのだろう、真新しく見える壁もちらと見て取れるが、堂々たる存在感は中々に男心をくすぐるものがある。
主にエルマーとしては、登れるだろうかという部分であるが。
あれから、サジは苗床にしたキノコを抱いて、新たな魔物が生まれるまで面倒を見ねばならぬと言って、大事そうにそれを抱えたままふらりと姿を消した。消えている間はどこに行ってるのかはわからない。興味もないが。
エルマー達はというと、皇国を囲む城壁を目にした所で足止めをくらっていた。無理もない、もうじき外は夕闇に包まれる時刻だ。閉められた城門が開かれるまで待たなきゃいけない。近くで待ってもいいが、物乞いやら暴漢やらが城壁の外側を根城にしているせいで、城壁まわりでは遅れてきた冒険者らをターゲットに鋭意活動中だった。
元気なものである。魔物が来たらお前らがターゲットにしている冒険者が戦う羽目になるのに、今から身ぐるみ剥がしてどうするのかとも思ったが、エルマーもここに来て無駄な体力は使いたくない。仕方なく皇国の城壁を視認できるこの森で野宿することにした。
「とりあえず俺の記憶が正しけりゃ廃れた教会があったはず。」
「う、」
くるる、と腹を鳴らしたナナシがぺたんこのお腹を撫でる。そういやパン食ったあとに果実を一口齧っていただけだった。エルマーはインべントリから焼いた鱒を一本取り出すと、ナナシに渡した。
「これ食って我慢な。ほら行くぞ。」
「あぃ、んぐ」
エルマーに手を握られながら、鱒を片手に暗い森の道なき道を進む。
ここはなんだか暗くて怖い。ナナシはエルマーの手を握る力を強めながら、置いて行かれないようにと、てこてこと足を早めてより添う。
「ここは境界だからまだ大丈夫だ。こんな森俺ら以外には誰も入らねえからある意味安全っちゃあ、安全…」
「きょぅかぃ?」
「ナナシの左側をずーーっと進んでくと始まりの大地なんだぁ。あそこは魔素が強いから近寄んねー方がいいんだけどよ、ここいらなら平気。」
「まそ…」
二人の進んでいる森は、百年前に邪竜が生まれ落ちたと言われている呪われた大地の一部だ。と入っても東の国の領地として、ある程度歩けるくらいには切り開かれてはいるが、そんな伝説が残る大地だからか、なかなかに曰くつきなのだ。
奥の方に行くに連れて濃度の濃い魔素が滞留し、未熟なものや心根の弱いもの、魔力が少ない者たちが一歩踏み込めば、たちまち魔素にやられて正気を失う。
「こぁぃ…」
ぎゅ、とエルマーにくっついて、ナナシは自分の左側の森の奥を見つめる。どうやらエルマーの話で怯えてしまったらしい。宥めるように頭を撫でると、場所を入れ替えた。
怖がらせるつもりはなかったのだが、可哀想なことをした。
ナナシはちまこい手のひらでエルマーに縋りつきながら、おずおずと森を見ては、頭を腕に押し付けるようにして顔を埋める。
何故そこまでエルマーが始まりの大地について詳しいかというと、従軍中に川を渡った奥にある深い森を舞台に、西の国と領土を巡り争った経験があるからだ。
とはいっても、この皇国側の森の入り口から魔素が滞留する奥地まではかなり遠い。エルマーが全力で走っても二日はかかる程だ。境界を隔てるように流れる川まではそのくらいかかるので、深く踏み込まなければ危険もない。
「大丈夫大丈夫、ちっと暗いだけ出し、出るのはゴーストくらい…あり?」
じゃり、と小石が靴の下で音をたてる。鱒を齧りながらめそめそしていたナナシは、不自然に足を止めたエルマーの背中に顔を押し付けるかのようにして足を止めた。
ナナシが打つかっても身動ぎ一つしないエルマーの、その背中からひょこりと顔を出すと、目の前には酷く廃れた教会が聳え立っていた。
「…門が崩れてるな…」
「う、あ」
エルマーが足元に落ちていた瓦礫の一部を拾う。そこには魔除けの陣が彫り込まれているようだった。戦争で廃れてしまったまま、手入れもされずに廃墟となった教会は、木々の隙間から差し込む月明かりに照らされ、朽ちてなお静謐な雰囲気を漂わせる。
エルマーが気になったのは瓦礫と化したこの門の欠片だ。教会は崩れても、この門さえ残しておけば、聖地として魔物から人を守ることが出来る。
教会は清められた土地にしか建てられない。魔物が入らないように術を施されるため、結界の役割を果たす為の門が崩れたままなど、悪戯にしては質が悪すぎる。
風化したのだろうか。それにしても外壁を見る限りではそんなふうには見えない。
誰がこんなことをしたのだろう、不穏さを微かに残すような、そんな具合だ。まるで意図的に壊された様子に見えなくもない、そんな有様を見たエルマーの眉間には皺が刻まれる。
「これじゃあただの廃墟、っと…ナナシ?」
静かなナナシの様子が気になって振り向く。
月明かりに照らされた教会を目の前にして、ナナシの顔色は可哀想なくらいに青褪め、その身はがたがたと震えている。
「え、え、える、こ、ここや、ぃや、」
「あ?何だ、急にどうした…」
「こ、ここ、やら、こぁい、ゃら、っ」
怖いものでも見たのかと、再び背後の廃墟を振り向くも何も無い。突然この場に入ってからナナシの様子がおかしくなったのだ。変なトラップの気配すら無いのに、ついには怖気づいたのか足を滑らせて地べたに尻餅をついた。
ただならぬ様子であった。これには流石のエルマーも見過ごせず、落ち着かせようと声をかけようとしたときだった。
「や、やぁ、あっ!」
「馬鹿!一人で行くなって!」
ついには小石をかき分けるようにして、ヨロヨロと立ち上がる。ナナシは錯乱したまま来た道を戻るように駆け出した。エルマー一人ならいい。だけどナナシは戦えないのだ。あんな小柄な体で魔物に襲われでもしたら、致命傷を負うだろう。エルマーは慌ててその後ろ姿を追いかけた。
森の闇の中、葉の緑を暗く染める影が、葉擦れの音とともに消えた二人を追って迫ってくるようだった。
いけない、ここはいけない。
「は、はひ、っ…ひゅ、っ」
ナナシは荒い呼吸を繰り返しながら、まるで何かに追いかけられるようにして全速力で走っていた。
怖い。何が怖いのかわからないが、あそこはだめだ。ナナシの知らない、自分の記憶が近づくなと叫んでいる、なんで、なにがいけないのか、わからないのが余計に怖い。
思い出したのは土の匂いだ、それと白くて綺麗な靴。
そして静謐な空気を含む場所で感じた、目玉が溶けてしまいそうな位の熱と痛み。
やがて視界は真っ暗になって、揺れる白いお花を記憶に咲かせたまま、泥のような暗闇の中に沈んでいった。
「ひゅ、っ」
ごぽりと喉がなる。どれくらい走ったのかわからない。ナナシは震える手で喉を抑える。ふらふらと木を支えに蹲ると、食べたものをすべて吐き出した。
「う、っ、けほっ、え゛、っ…」
肺が、ひゅうひゅうと痛みを伴いながら鳴いている。エルマー、エルマー、エルマー!
名前を呼んで安心したいのにそれも出来ない。指先が震えて声の出し方がわからないのだ。
自分の記憶だと、目が焼けるように痛かった。大丈夫だろうか。目はちゃんとあるのか、見えているのだから有るに決まっているのに、指先で触れて確認するまでは安心できなかった。
「え、っ、ぅ…こ、ぁい…っ、」
呼吸を整えようと顔を上げた。眼の前に広がるのは、暗闇。
森の木々が聳え立ち、小柄なナナシの体を見下ろすようにして取り囲む。歪んでいるのは視界なのか、それともこの木なのか。虚の暗闇が怖い。エルマー、エルマーはどこ。ナナシは今、どこにいるの。
靴底で砂利を踏みつけて立ちあがる。膝は震えて、心細くてまた泣きそうだ。小さい手は心許なさを誤魔化そうと胸元のネックレスを握りしめる。
エルマーから貰った、ナナシの命よりも大切な宝物。
暗闇が心なしか深くなる。がさりと音がして、慌てて振り向いた。
据えた匂いが鼻孔をかすめるナナシの金色の瞳がキュウッと細まり、その瞬間、瞬きを忘れた。
そこにいたのは頭を逆さにしてニタリと笑う化け物だった。
「ひ、っ…」
なんだこれは。とおもった。
異形とはこういうもののことを言うのだろう。木の根が盛り上がったかのように、そこに現れた醜悪な魔物。
黄土色の肌は渇き、皮膚組織が木の皮のように捲くれ上がりながら全身を覆う。にたりと笑う顔だけが上下逆さまだったのだ。
笑っているのに、目は開いていない。見えないのだろうか、しきりに耳を傾かせるようにゆらゆらと体ごと揺れながら、音のする方向を探している。
「っ、」
声を出してはいけない。息を止めなくては。
ナナシはネックレスを握りしめた手で、祈るように指を絡める。そのまま手で口を押さえると、ゆっくりと呼吸をした。ずるりと音がして、その歪な人形の化け物が藪から歩み出る。長い腕を引きずるようにして、ゆっくりと細い足で地べたを踏みしめる。
魔物は、まるで骨や関節などを無視した動きで触手のように腕を操ると、地べたすれすれに手を這わせた。
自分を探している、直感的にそう思った。
目からは涙が溢れる。怖い、助けて欲しい、足元は砂利だらけて、一歩でも動いたら居場所がバレてしまうに違いない。
その化け物の指先がこつりとナナシの靴先に触れる。数度触れたあと、まるで手のひら全体で確かめるようにして足首を握りしめる。ああ、駄目だ。
ナナシは下を見つめていた目を、ゆっくりと正面に向けた。
「イタ、い、た。」
ナナシの鼻先が触れそうな距離に顔を近づける。魔物は黄土色のを不気味な顔を歪ませた
八つの赤い目玉をぎょろりとナナシに向けると、そのしわがれた容貌からは想像できない無邪気な子供の声で笑った。
「ぁ、あ、」
口から吐息とともに掠れた声が出た。怖いを通り越えると笑えてくるらしい。ナナシは足首を掴まれたままゆるゆると首を振る。
べしょりと腰を地面に落とすと、追いかけるようにして化け物の首が伸びてナナシの顔を凝視する。頭がどんどん痛くなってくる。怖い、全てがどうでも良くなってしまうような諦観がその身を支配する。
じわりと感じたそれが地べたを濡らした。ぺしゃ、と水音を踏む化け物の手のひらがナナシの足の間にある。恐怖に気が抜けて漏らしたのだ。
ギザ歯を見せつけるようにぐぱりと口を開いた瞬間、ふわりと風がふいた。
「バカ野郎が!!!」
ギィッ、と蝶番の軋むような音と共にナナシの目の前から化け物が消えた。
先程まで至近距離で睨みつけられていたナナシの体は、がくんと糸の切れたマリオネットのようにその場に崩れる。
体が動かない。エルマーが来てくれて嬉しいのに、視界に広がるのは黒い葉と隙間から覗く、夜の冷たい色しか見えない。ナナシの体は指先一つ動かなかった。
「ナナシ!!」
「っ、っ、」
エルマーは崩れたナナシを抱き起こすと、目を見開いた。恐慌状態で体が硬直していたのだ。このままでは呼吸が出来なくなってしまう。涙目ではくはくと唇を震わすナナシをそっと寝かせると、エルマーは蹴り飛ばした魔物に顔を向けた。
「…幽鬼。」
「イた、ィタ、」
腰が折れたのか、中程で不自然に折れ曲がった体をずるずると引きずりながら起き上がる。アンデッド系の魔物の中でもその赤目に睨まれたら状態異常を引き起こす、やっかいな魔物だ。
倒せば回復することはわかっている。どれくらいナナシがこの状態なのかはわからないが、呼吸不全で失神する前には終わらせたい。
「一息でいく。てめぇはそこから動くなよ。」
エルマーは太腿から取り出した短剣に聖属性の加護を持つ札を持ち手に巻きつけると、幽鬼が鞭のように撓らせたその腕をがしりと掴む。
エルマーの腕に力が入り、みしりと音をたてる。その腕の筋力を高めるかのように血流が送られ、びきりと太い血管の筋が腕に浮かぶ。
フッ、と小さく息を吐き出した。エルマーは金眼を光らせると、振り抜くようにして一気にその体を引き寄せた。エルマーの金色の虹彩が光の軌跡を描く。肉薄したその顔面に、聖属性の札を施した短剣を突き立てると、そのまま撚るかのようにゴリ、と短剣を柄まで通す。
目が開く前に脳天を潰すのが、幽鬼とやり合う上での鉄則だった。
耳障りの酷い断末魔の叫びが上がる前に、幽鬼の喉元を鷲掴む。絶命の際の絶叫は、ゴーストを呼び寄せるのだ。
エルマーは握力をすべて注ぎ込み、乾いた音を立てながら締め上げる。やがてグギッと詰まったような声を出し、ぐぱりと幽鬼の口が開くと、手を突っ込んで紫色の舌を一気に引き抜いた。
「チッ。」
口から黒い血をごぽごぽと吹き出した幽鬼を地面に投げ捨てる。びちびちと動く舌を握りしめ黙らせると、そのまま筋を伸ばすように引張り絶命させた。
幽鬼は本体が舌なのだ。首を切り落としただけではすぐに復活する。
脳天から聖属性の札を貼り付けた短剣引き抜くと、札は役目を終えたかのように燃えて消えた。
「ひゅ、っ」
まるで水面から顔を出したかのような勢いでナナシが呼吸を始める。ぎりぎりだったらしい。
エルマーは乱暴な足取りでナナシに近付くと、うずくまる細い体の肩を掴み乱暴に地面に縫い付けた。
「なんで離れた!!!!」
「ひ、っ…!」
金色の瞳を怒りで染めたエルマーは、トパーズの瞳を涙で濡らすナナシに覆い被さるようにしてマウントを取る。
みたこともない怒りを宿したエルマーの声色に強く怒鳴られ、幽鬼と対峙したときとはまた違う恐怖がナナシを包んだ。
「ぇ、るっ…」
「死にてえのか!!間に合わなかったらどうすんだバカ野郎がァ!!」
ビクリと体を震わせると、ついに耐えきれなくなったのか、ひぐひぐと嗚咽混じりに泣き出した。それでもエルマーは許さなかった。それだけナナシは危ないことをしたのだ。
安全だとおもって、教会で野宿するつもりで連れてきたエルマーにも非がある。それでも森の闇に怯えていた癖に、なぜ一人で走り出すなどと愚かなことをしたのか。
「バカ野郎が…、マジで馬鹿野郎だナナシは。」
「ご、ごぇ、ぁ、さ…っ、ふ、ぇっ…ひぅー‥っぁー…!」
抱き起こし、きつく腕の中に閉じ込める。無事で本当に良かった。泣きながら背中に腕を回してくるナナシの小さい体を、体温を確かめるように抱きしめると、心底ホッとしたと言わんばかりに、大きな溜め息をはいた。
幽鬼に襲われているナナシを見たときは肝が冷えた。自分も悪いのだが、思わず怒りをナナシに強く打つけ過ぎた。
わあわあと声を上げて大泣きするナナシの頭を撫でながら、あたりを見回す。汚れた木の根元をみると、その細い体が精神的にダメージを負っているのではないかと心配した。
「ふぁ、あっえ、える、えるぅ…っ、ひぅうっ、」
「わーったわーった、もう怒ってねーから泣き止めって。ほら、抱っこしてやっから。」
「うわ、ぁあっ、ぁっ、…き、きらぁ、な、ぃれ、えっ…ごぇ、ぁっさぃ、いっ…」
「吐いても漏らしてもお前が無事ならなんだっていいよ。はあ、もう離れるなまじで…」
しがみつくように泣くナナシに肩口をビショビショに濡らされる。抱き上げた体は可愛そうなほど震えており、エルマーの首に縋りつく力は強まるばかりた。
この先にある河原の先は境界だ。月が高く見下ろしている以上幽鬼はまだ彷徨っているだろう。
エルマーは頭の痛そうな顔をしながらナナシを見つめる。幽鬼を近づけない方法の一つとして、生のエネルギーを強く見せつけるというやり方がある。
そうすると人の怯えや恐怖に引き寄せられる幽鬼は近づけない。生者と死者での線引を無理やり作るのだが、これを行うともう後戻りができない気がしていた。
「える、える…」
「人の気も知らねぇでよー‥」
すりすりと甘えるように首筋に顔を埋めて愚図るナナシに、エルマーは少しだけ参った。
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