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睡蓮の満月 *
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琥珀は我儘で、不器用で、仕事以外はだらしがない天狗であった。一途を貫く妖かしだというのに、何やら己の理想というか、夢見がちな部分もある癖に、それを認めぬきらいがあった。人間の血が混じっているせいか奔放な部分があり、己が気に入れば誰にでも優しくする博愛主義者。
雌もいくつかはいた。閨をともにすることもあった。それでも、良かれと思って贈り物をするのは身内だけであったし、上っ面に笑みを貼り付けずに接するのも身内だけ。
母である天嘉には、お前ってマジで結婚できんのかね?などと無駄な心配をされたりもした。
天嘉は総大将の妻でもあるし、自身の手腕も信頼をおけるものだからこそ、そんな母からのその言葉を助言ととった琥珀は、できる男は所帯も早く持つべきかと妙な方向に解釈をして、そんなこじつけのような理由で番探しに奔走したりもした。
けれど、琥珀は我儘で夢見がちな部分があったので、己も親父のように、運命が降ってくるのだろうと思っていたのだ。
上ばかり見て、身の回りなど気にもしない。娶ることは義務だと思っていたし、蘇芳が隠居した後くらいから、己のもとに侍る雌の質が変わって、ああ、なんだか面倒くせえなあと思い始めたりもした。
運命を探すと嘯いて、気晴らしに人里に出掛けたりもした。そうして、常々よわっちい妖かしだと思っていた泣き虫な睡蓮が、間抜けにも人の罠にかかっていたのを見つけたのだ。
肉の柔らかさと容姿と、努力と、性格と、気立の良さ。それ以外は褒められたものじゃないと思っていたが、よくよく考えてみれば、他の雌よりも褒められるところが指を折るほどあったというのがきっかけだ。
何処よりも、誰よりも上から目線で睡蓮を評価していたのは、琥珀だけであったと思っていたのに、なんと由春まででしゃばってきたではないか。睡蓮は己の後ろについてくるばかりだと思っていたのに、職務とはいえ由春の後ろにもついてまわる。そのせいで尚の事闘争心が湧いたのかもしれぬ。昼間の姿しか存じぬ妖かしの、別の姿も知りたいと思った。
「ああ、やっぱもっと早く気がつきゃよかった。」
「?」
何を言っているのだろう。そんな具合に首を傾げる目の前の妖かしの髪を梳くように、優しく撫でる。
「ひぅ、っ」
薄い肩が震えて、可愛らしい声が漏れた。あの後直ぐに、堪らなくなって組み敷いた。琥珀が睡蓮を着飾らせた癖に、その肌を暴きたくなったのだ。
もし己が睡蓮ならば、こんな身勝手な男は嫌だと思う。けれど、琥珀は睡蓮じゃないし、睡蓮は、そんな琥珀の一挙手一投足を前に、まるで翻弄されるのが嬉しいと言わんばかりに、可愛らしい反応を返すのだ。
「お前の契の言葉に、まさか俺がぐっとくるとは思わなかった。」
「ゃ、だ、だって…っ、ほ、ほんとだ、もの…っ」
「おう、わかってら。」
がじ、とふかふかのお耳を甘く喰み、皮膚の薄い耳の内側をべろりと舐め上げられた。月明かりが部屋に差し込む、その僅かに開いた障子すらも閉じぬまま、琥珀は着せ付けた着物を開けさせ、まるで大切なものを扱うかのように睡蓮の緊張を解いていく。
ー琥珀のおめめは、僕だけのお月様だね。
そう言った睡蓮の言葉に、琥珀はこみ上げてくるものがあったのだ。
贈った着物では、睡蓮を満月に見立てていた。袂に描かれた猛禽は、己が睡蓮の翼になると意志を込めたものだったのだ。琥珀の口に出来ぬ心意気を、着物に込めて睡蓮を着飾る。そんな決意を纏った睡蓮が、琥珀の瞳を満月だといったのだ。
「お月さんよりも、くすんだ色してんのにさ。」
「金色だよ、だって…今も、」
睡蓮は、ずっと琥珀の瞳を金色だと思っている。己に向けられる虹彩の奥には、深く輝く金色があるのだ。それは、こうして月が照らす夜。睡蓮にしか見えぬ特別な色だ。
「ぅ、うぁ、っ」
「ん、」
睡蓮の細い体を抱き込みながら、琥珀はゆっくりと睡蓮の腹の中を探る。暗い色の着物に、睡蓮の白い肌の対比が美しい。細い脚を開かせるように手を添えれば、顔を赤らめて目を瞑る。
「き、着物…汚しちゃうって…」
「洗う。」
「ひぁ、…っだ、だか、ぁっ、…」
だから、ダメだって。睡蓮の弱弱しい抵抗。それは、素直になれぬ可愛らしいおねだりの一つだと言うことを、肌を重ねてから理解した。睡蓮の駄目は、もっとしてほしい。いやだ、は気持ちいい。琥珀、と呼ぶのは、溢れる気持ちを言葉にできぬ時。状況が違うだけで、察する睡蓮の素直な気持ちは、言葉以上に雄弁な瞳が教えてくれるのだ。
「痛いって言っていい、でも、とめらんねえのは許してほしい。」
着物の合わせ目から侵入した琥珀の指が、睡蓮の下履きの隙間からそっと侵入する。柔らかで小ぶりな袋に触れて、それをそっと包むようにして性器を握り込む。震える内股が柔らかく琥珀の手首を挟む。鼻先を埋めた首筋から甘い香りがして、生唾を飲み込んだ。
「ん…っ、こ、こは…っ…」
「うん、」
睡蓮の頬がすり寄せられ、重なったそこからはじんわりと高い体温が伝達する。睡蓮の、快感に震える声が好きだ。感じて、訳がわからなくなって、泣いてしまうところも、少し頭が弱いところも大好きだ。そして何より、琥珀が素直な気持ちで優しくしたいと思える、唯一の雌は、いつだって琥珀のほしい言葉をくれるのだ。
「はら、ませて…ほし…、」
掠れた声で、そんなことを言う。前後不覚になる前に、睡蓮は自分の口からおねだりをした。訳がわからなくなって、流されるようなことは嫌だったのだ。睡蓮は、自分の言葉で思いを告げる。琥珀の雌にして、家族にして、一生離さないように繋がりを頂戴。
そんな、たくさんの気持ちがこもった言葉を音にして、睡蓮は琥珀の目を見ておねだりをした。
「琥珀と、家族になりたい…」
そばにいて、そばにいさせて。幸せにするから、幸せにして。
「睡蓮、」
「ぅ、ぅあ、ぁっ…ふ、」
「前言撤回はナシだからな。」
「ぅ、ん…っ、う、ん…っ…!あ、あ、あ…っ」
開かされた足を抱え上げるようにして、上体を起こした琥珀がゆっくりと内壁をほぐす。目の前がチカチカと明滅して、まだ指が入っているだけだと言うのに、視覚的な刺激も相まって達してしまいそうになる。
琥珀の無骨な指が押し広げていく睡蓮の狭い内壁の中を、まるで甘やかすかのように指でくすぐるのだ。薄い腹の、どこを弄られているのかがわかる。琥珀の手によって己を暴かれるこの感覚が、睡蓮は好きだった。
「ひぅ、ゃ…っお、おひり…っ、へ、へん…」
「ここ?」
「ぅあ、っ…ゃだ、あっ…そ、そこぉ…や、ぁあ、あっ」
さっきまで、散々着物が汚れるからと気にしていた睡蓮は、もうそんな余裕がないらしい。薄い腹を痙攣させながら、琥珀の征服欲を満たすように可愛らしく震え、そして内股を震わしながら、無意識に腰を浮かす。端なくて、いやらしくて、素直で可愛らしい琥珀だけの雌。
「中気持ちいな、腰揺れちまってんぞ。」
「ぅ、うぅ、ぁ、ゆ、ゆれ、ひゃぅ…あっ、も、もっと、してぇっ」
「かあいらし、ああちくしょう…お前を前にすると、俺あ馬鹿になっちまうみてえだ。」
「ふ、ぁっゆ、ゅびや!ふ、ふゃ、さな、っ」
「もっとって、お前が言ったんだろうが」
ぬちぬちと空気の弾ける音がする。睡蓮の慎ましい穴は、琥珀が指を広げるだけで赤い媚肉をのぞかせる。蜜のようにとろみのあるそれが指に絡みついては、手首を伝って着物に染み込む。だらしなく開いた足の間に琥珀を挟みながら、睡蓮の内壁はうねりながら指にしゃぶりつく。
「全部うねってら、飲み込もうとしてんのか。」
「ゎ、あんな、っ…も、ゃ、め…ち、ちから、はぃ、んな、いっ…」
「そら重畳、そのまま楽にしておきな。」
ちゅ、と唇で目元に吸い付く。睡蓮の右手を引くように顔から離させると、その小さな手を己の下肢に押し付けた。
「あつ、…」
「ん…、お前のせいで、すげえ痛えの。」
「ふ、うっ…」
掠れた声だ。琥珀の、堪えるようなその声に囚われる。くらりと揺れた瞳の奥、己を捉える金色の月がそこにはあった。
「こ、はく…」
ふるり、と身を震わした。白い素肌が月明かりに照らされて、琥珀の前に晒される。震える足をゆっくりと開いた睡蓮が、濡れた手のひらでそっと琥珀の下履き越しのそれをなぞる。
「くって、…」
「っ、」
紡いだ一言、赤い舌がちろりと見える。欲に濡れた声だった。睡蓮のおねだりに、琥珀はぶわりと満たされた征服欲が全身を駆け巡った。これは、俺の雌だと叫びだしたくなる気持ちを堪える。薄い腹に手を添えたつもりが、その手は鉤爪に変わっていた。ざわざわと睡蓮を見下ろす己が、人外のそれに変わっていくのがわかる。覆うように手のひらで隠した己の顔は、まるで、仮面を被るかのように獣化していた。
雌もいくつかはいた。閨をともにすることもあった。それでも、良かれと思って贈り物をするのは身内だけであったし、上っ面に笑みを貼り付けずに接するのも身内だけ。
母である天嘉には、お前ってマジで結婚できんのかね?などと無駄な心配をされたりもした。
天嘉は総大将の妻でもあるし、自身の手腕も信頼をおけるものだからこそ、そんな母からのその言葉を助言ととった琥珀は、できる男は所帯も早く持つべきかと妙な方向に解釈をして、そんなこじつけのような理由で番探しに奔走したりもした。
けれど、琥珀は我儘で夢見がちな部分があったので、己も親父のように、運命が降ってくるのだろうと思っていたのだ。
上ばかり見て、身の回りなど気にもしない。娶ることは義務だと思っていたし、蘇芳が隠居した後くらいから、己のもとに侍る雌の質が変わって、ああ、なんだか面倒くせえなあと思い始めたりもした。
運命を探すと嘯いて、気晴らしに人里に出掛けたりもした。そうして、常々よわっちい妖かしだと思っていた泣き虫な睡蓮が、間抜けにも人の罠にかかっていたのを見つけたのだ。
肉の柔らかさと容姿と、努力と、性格と、気立の良さ。それ以外は褒められたものじゃないと思っていたが、よくよく考えてみれば、他の雌よりも褒められるところが指を折るほどあったというのがきっかけだ。
何処よりも、誰よりも上から目線で睡蓮を評価していたのは、琥珀だけであったと思っていたのに、なんと由春まででしゃばってきたではないか。睡蓮は己の後ろについてくるばかりだと思っていたのに、職務とはいえ由春の後ろにもついてまわる。そのせいで尚の事闘争心が湧いたのかもしれぬ。昼間の姿しか存じぬ妖かしの、別の姿も知りたいと思った。
「ああ、やっぱもっと早く気がつきゃよかった。」
「?」
何を言っているのだろう。そんな具合に首を傾げる目の前の妖かしの髪を梳くように、優しく撫でる。
「ひぅ、っ」
薄い肩が震えて、可愛らしい声が漏れた。あの後直ぐに、堪らなくなって組み敷いた。琥珀が睡蓮を着飾らせた癖に、その肌を暴きたくなったのだ。
もし己が睡蓮ならば、こんな身勝手な男は嫌だと思う。けれど、琥珀は睡蓮じゃないし、睡蓮は、そんな琥珀の一挙手一投足を前に、まるで翻弄されるのが嬉しいと言わんばかりに、可愛らしい反応を返すのだ。
「お前の契の言葉に、まさか俺がぐっとくるとは思わなかった。」
「ゃ、だ、だって…っ、ほ、ほんとだ、もの…っ」
「おう、わかってら。」
がじ、とふかふかのお耳を甘く喰み、皮膚の薄い耳の内側をべろりと舐め上げられた。月明かりが部屋に差し込む、その僅かに開いた障子すらも閉じぬまま、琥珀は着せ付けた着物を開けさせ、まるで大切なものを扱うかのように睡蓮の緊張を解いていく。
ー琥珀のおめめは、僕だけのお月様だね。
そう言った睡蓮の言葉に、琥珀はこみ上げてくるものがあったのだ。
贈った着物では、睡蓮を満月に見立てていた。袂に描かれた猛禽は、己が睡蓮の翼になると意志を込めたものだったのだ。琥珀の口に出来ぬ心意気を、着物に込めて睡蓮を着飾る。そんな決意を纏った睡蓮が、琥珀の瞳を満月だといったのだ。
「お月さんよりも、くすんだ色してんのにさ。」
「金色だよ、だって…今も、」
睡蓮は、ずっと琥珀の瞳を金色だと思っている。己に向けられる虹彩の奥には、深く輝く金色があるのだ。それは、こうして月が照らす夜。睡蓮にしか見えぬ特別な色だ。
「ぅ、うぁ、っ」
「ん、」
睡蓮の細い体を抱き込みながら、琥珀はゆっくりと睡蓮の腹の中を探る。暗い色の着物に、睡蓮の白い肌の対比が美しい。細い脚を開かせるように手を添えれば、顔を赤らめて目を瞑る。
「き、着物…汚しちゃうって…」
「洗う。」
「ひぁ、…っだ、だか、ぁっ、…」
だから、ダメだって。睡蓮の弱弱しい抵抗。それは、素直になれぬ可愛らしいおねだりの一つだと言うことを、肌を重ねてから理解した。睡蓮の駄目は、もっとしてほしい。いやだ、は気持ちいい。琥珀、と呼ぶのは、溢れる気持ちを言葉にできぬ時。状況が違うだけで、察する睡蓮の素直な気持ちは、言葉以上に雄弁な瞳が教えてくれるのだ。
「痛いって言っていい、でも、とめらんねえのは許してほしい。」
着物の合わせ目から侵入した琥珀の指が、睡蓮の下履きの隙間からそっと侵入する。柔らかで小ぶりな袋に触れて、それをそっと包むようにして性器を握り込む。震える内股が柔らかく琥珀の手首を挟む。鼻先を埋めた首筋から甘い香りがして、生唾を飲み込んだ。
「ん…っ、こ、こは…っ…」
「うん、」
睡蓮の頬がすり寄せられ、重なったそこからはじんわりと高い体温が伝達する。睡蓮の、快感に震える声が好きだ。感じて、訳がわからなくなって、泣いてしまうところも、少し頭が弱いところも大好きだ。そして何より、琥珀が素直な気持ちで優しくしたいと思える、唯一の雌は、いつだって琥珀のほしい言葉をくれるのだ。
「はら、ませて…ほし…、」
掠れた声で、そんなことを言う。前後不覚になる前に、睡蓮は自分の口からおねだりをした。訳がわからなくなって、流されるようなことは嫌だったのだ。睡蓮は、自分の言葉で思いを告げる。琥珀の雌にして、家族にして、一生離さないように繋がりを頂戴。
そんな、たくさんの気持ちがこもった言葉を音にして、睡蓮は琥珀の目を見ておねだりをした。
「琥珀と、家族になりたい…」
そばにいて、そばにいさせて。幸せにするから、幸せにして。
「睡蓮、」
「ぅ、ぅあ、ぁっ…ふ、」
「前言撤回はナシだからな。」
「ぅ、ん…っ、う、ん…っ…!あ、あ、あ…っ」
開かされた足を抱え上げるようにして、上体を起こした琥珀がゆっくりと内壁をほぐす。目の前がチカチカと明滅して、まだ指が入っているだけだと言うのに、視覚的な刺激も相まって達してしまいそうになる。
琥珀の無骨な指が押し広げていく睡蓮の狭い内壁の中を、まるで甘やかすかのように指でくすぐるのだ。薄い腹の、どこを弄られているのかがわかる。琥珀の手によって己を暴かれるこの感覚が、睡蓮は好きだった。
「ひぅ、ゃ…っお、おひり…っ、へ、へん…」
「ここ?」
「ぅあ、っ…ゃだ、あっ…そ、そこぉ…や、ぁあ、あっ」
さっきまで、散々着物が汚れるからと気にしていた睡蓮は、もうそんな余裕がないらしい。薄い腹を痙攣させながら、琥珀の征服欲を満たすように可愛らしく震え、そして内股を震わしながら、無意識に腰を浮かす。端なくて、いやらしくて、素直で可愛らしい琥珀だけの雌。
「中気持ちいな、腰揺れちまってんぞ。」
「ぅ、うぅ、ぁ、ゆ、ゆれ、ひゃぅ…あっ、も、もっと、してぇっ」
「かあいらし、ああちくしょう…お前を前にすると、俺あ馬鹿になっちまうみてえだ。」
「ふ、ぁっゆ、ゅびや!ふ、ふゃ、さな、っ」
「もっとって、お前が言ったんだろうが」
ぬちぬちと空気の弾ける音がする。睡蓮の慎ましい穴は、琥珀が指を広げるだけで赤い媚肉をのぞかせる。蜜のようにとろみのあるそれが指に絡みついては、手首を伝って着物に染み込む。だらしなく開いた足の間に琥珀を挟みながら、睡蓮の内壁はうねりながら指にしゃぶりつく。
「全部うねってら、飲み込もうとしてんのか。」
「ゎ、あんな、っ…も、ゃ、め…ち、ちから、はぃ、んな、いっ…」
「そら重畳、そのまま楽にしておきな。」
ちゅ、と唇で目元に吸い付く。睡蓮の右手を引くように顔から離させると、その小さな手を己の下肢に押し付けた。
「あつ、…」
「ん…、お前のせいで、すげえ痛えの。」
「ふ、うっ…」
掠れた声だ。琥珀の、堪えるようなその声に囚われる。くらりと揺れた瞳の奥、己を捉える金色の月がそこにはあった。
「こ、はく…」
ふるり、と身を震わした。白い素肌が月明かりに照らされて、琥珀の前に晒される。震える足をゆっくりと開いた睡蓮が、濡れた手のひらでそっと琥珀の下履き越しのそれをなぞる。
「くって、…」
「っ、」
紡いだ一言、赤い舌がちろりと見える。欲に濡れた声だった。睡蓮のおねだりに、琥珀はぶわりと満たされた征服欲が全身を駆け巡った。これは、俺の雌だと叫びだしたくなる気持ちを堪える。薄い腹に手を添えたつもりが、その手は鉤爪に変わっていた。ざわざわと睡蓮を見下ろす己が、人外のそれに変わっていくのがわかる。覆うように手のひらで隠した己の顔は、まるで、仮面を被るかのように獣化していた。
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