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甘いのが好き *
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「ち、近いよ…どうし、たの。」
声色は震えていた。発情期のせいで、言葉も舌ったらずで少しばかし恥ずかしい。睡蓮は、琥珀の胸元に手を添えながら、とくとくと早鐘を打つ心臓が、自分だけじゃないのだと知った。
「琥珀、あの…、」
「うん、」
「う、うんじゃ、わかんないよ、琥珀、」
何がどうなってしまったのだ。睡蓮の背に回された琥珀の腕に、甘えてしまいたくなる。いいのだろうか、恋人でもない睡蓮が琥珀に触れても。そう思って、こくりと不安を飲み下す。右腕をゆっくりと背中に回した。指先に当たったのは、そこだけ皮膚がひきつれたような感触だった。
「こ、琥珀、せ、背中に…」
「今は、いいから。」
「痛くないの…」
「うん、…睡蓮、あのよ」
「なあに…」
鼻先が擦れあう。ヒクリと喉が震えた。少しでも顔を傾けて仕舞えば、唇が触れ合ってしまう。そうしたら、僕はきっと死んでしまうかもしれない。じんわりと涙を滲ませた睡蓮の表情に、琥珀が瞳を揺らす。悲しいとか、嬉しいとか、そういう顔ではない。甘い吐息と共に、齎されたそれは、睡蓮の込み上げてくる甘やかな感情によるもので、その涙が溢れそうになるたびに、睡蓮の花の香りが強まる。
「触れたい、ダメか。」
「ふ、…っ…、」
切なそうな顔をして、琥珀が、優しい声色で言葉を漏らす。胸の疼痛に歪ませた表情は、睡蓮の知らない顔であった。嬉しかった。睡蓮は琥珀に触れたいと言われて、本当に嬉しくて、一粒涙を溢してしまった。
「その涙は、どういう意味だ。」
「わ、わかン…ぁ、い…」
「教えて、お前が泣くのは、痛い。」
苦しそうな琥珀の声が、睡蓮の耳に届いた。ああ、僕の涙ひとつで、琥珀が不安になってくれるのが、こんなにも嬉しいだなんて。きゅうん、と甘く喉が鳴る。切なそうに顔を歪めた琥珀の口端に、そっと触れるだけの口付けをした。それが、睡蓮の精一杯であった。
「お前が、良いなら…俺は、」
「ン、うん…っ、ぅん、…っ、」
「睡蓮、」
堪えて、絞り出すような声色だった。琥珀の掌が、動かない睡蓮の左手をとる。力の入らぬ指の合間をたやすく開き、絡ませ、そうして握りしめた。胸が痛い、痛くて、切なくて、涙が出る。悲しい時の気持ちと、嬉しくて涙が出る時の感覚は、なんでこんなにも似ているのだろう。睡蓮は、ヒック、と情けない嗚咽を漏らしそうになった、けれど、それはできなかった。
「う、ンっ…」
睡蓮の溢れそうになった気持ちを、琥珀が唇で受け止める。泣きそうな睡蓮を甘やかすかのように、熱い舌がそっと唇を割り開く。柔らかくて、震えていて、そして唾液は甘かった。
「ふ…、っ…」
「んだよ、もう泣くなよ、」
「ふ、ぅ…、うっ、あ、す、好き、好き…こはく、っ…」
「くそ、んな、声出すな…ああ、くそ、チキショウ、」
優しく、慰めるようなそれが、徐々に欲を孕む。互いの唾液を交換し合うかのように、睡蓮は与えられるそれで喉を濡らし、静かな室内に微かに弾ける水音に身を震わす。
ちゅ、くちり、そういった、耳に毒な濡れた音である。睡蓮の小さな赤い舌と、厚みのある琥珀の熱い舌は、味蕾を擦り合わせるかのように何度も互いを蕩けさせ、体を開いていく。
「睡蓮、すいれ、ん…」
「ふぁ、っ…あ、こ、こは、く…っ」
熱い掌が、欲を持って睡蓮に触れる。小さな頤を舐め上げる琥珀は、まるで今にも腹に収めてやろうと言った具合に、獣じみた目で睡蓮を見下ろす。琥珀の唇を濡らしているのは、睡蓮の唾液だ。大きな鳶に囚われた兎は、まるでその捕食を待つかのように、赤い瞳を揺らすのだ。
「俺が、お前を抱く。他の誰でもねえ、俺がそう決めた。だから、いいな。」
「うん…っ、」
捕食とは、こういうことを言うのかもしれない。琥珀の本能の部分を揺さぶる目の前の獲物は、まるでそれが望みだと言わんばかりに体を差し出す。ああ、血が沸騰しそうだ。喉から鳴る本能的な声が、己が獣だということを自覚させる。
「っ、嗚呼…頭ん中、くそあっちぃな…、っ」
「きゅ、う…っン、っ」
がじりと肩口に噛みつかれ、睡蓮は身体を跳ねさせた。痛い、痛いのに、その余裕のなさが嬉しい。琥珀の腕が、睡蓮の足を開かせる。何も纏っていないのだ。引き締まった身体が足の間に入り込み、大きな手のひらが睡蓮の細い腰を掴む。
「あっ、」
「ん、っ…ここ、に、いれるから、」
「ひぅ、っ…」
琥珀の、余裕のない掠れた声が睡蓮の耳を刺激する。口に溜まる唾液を何度も飲み下しながら、琥珀の手の平がやわらかな尻の合間を指でなぞるように悪戯をする。
そこはじんわりと濡れており、期待をしていることがありありとわかる様子だった。生白く、それでいて色付いて己を待っている。あの時掴んだ睡蓮の、柔らかな肉の感触を思い出した。
「う、ぅあ、あっや、」
やだ、と言いかけて口を抑える。嫌じゃない、反射的に出そうになった言葉を、睡蓮は必死で噛み締めた。駄目だ、やめてほしくない。だから、言わないようにしなきゃ、指の隙間から漏れる吐息に、睡蓮の散慢した思考を感じ取る。琥珀はそれに目を細めると、その足を肩に抱えたまま、上体を倒した。
「お前が嫌だっていっても止める気ねえから、今はこっちに集中しておけ。」
「う、ぅそま、まって、」
「待つわけねえ。」
大きな手のひらが、睡蓮の濡れた性器に触れた。指を絡められ、フルリと震えながら先走りを零す先端を摩擦するように親指でいじられる。ひくんと震える薄い腹に、睡蓮を己の手で揺らがせているという愉悦に浸る。
「握ったの二回目だろうが、」
「ぁ、あれと、い、ぃみが、ちがっ、」
「ああ、これはそうさな。」
赤い瞳に、余裕のなさが見て取れる琥珀の意地悪な笑みが映った。ああ、好きだなあと思う。睡蓮は、ぴこりと尾を揺らしてしまう。素直な短いオッポの反応に、琥珀の胸は知らぬ音を立てて甘く鳴くのだ。成程、可愛いと素直に思える感情が、己自身にもあったのだと思った。
「心臓、すげえばくついてる。」
「う、か、体震えちゃう、よ」
「お前はただ寝てるだけで構わねえよ。」
ちゅ、と頬に唇を当てられ、甘やかしてくる琥珀の様子に、睡蓮は照れと羞恥で唇を噤む。少しだけカサついた手が触れる己の慎ましやかな性器には、もう既にとろみのある先走りが塗り付けられ、その垂れた一筋がしっとりと尾の付け根を濡らすのだ。
「ふ、ぅあ、ぁっや、」
「雄なら弄るだろう、」
「か、かわやくらいだよっ」
「なら覚えな。」
「ひぅっ、」
琥珀の手の平が、己のそこを握っているだけでもいけないのに、薄暗い部屋で、まるで己が雌になったかのような感覚に陥り、薄い肩を震わしながら腰を跳ねさせる。
聞くに堪えない水音も、意思に反して揺れる腰も、全部が全部睡蓮の五感を刺激して、頭の中で気持ちいいが渋滞して馬鹿になる。
「う、ぅあ、ぁっこ、こは、も、もっと、あっ」
「ん?」
「も、もっと、もっとして、えっぁ、あっき、きも、ちぃ…から、っ」
犬歯を覗かせて笑う。琥珀の金眼は怪しく光り、睡蓮の細腰を鷲掴むと、ぐいと持ち上げ引き寄せる。尻の合間に硬く張ったものを挟むと、胸元の粒をべろりと舐め上げた。
「ひぅっ、あ、あっあっ!」
「お前の薄い腹に入るかね、破いちまいそうだ。」
「ぁ、あっは、はぃ、るっ、から、ぁっ」
「そうかい、でも慣らさにゃ無理そうだ。」
「ぁう、っ、な、ぁあ、あっ!」
ぢぅ、と胸に強く吸い付かれ、睡蓮の性器からは精液が散る。引くつく腹を辿るように筋が伝い、臍にそっと辿り着く。琥珀の瞳には、その煽情的な様子が映っていた。腹に溜まったその滑りを指で拭い取り、馴染ませる。そうして尻のあわいの慎ましい穴に、ねとりと塗りつけた。
「せめぇな、」
「う、うっ、ぁ、」
「こら、締めるな。食い千切る気か。」
「ま、まって、こ、こゎ、いっ、」
「だろうな。」
節ばった無骨な指が、ゆっくりと縁を開いていく。たった一本でも酷く苦しくて、睡蓮は顔を隠すようにして、怯えた様子で琥珀を見る。腹の奥はこんなに寂しいのに、睡蓮の体の準備が追いつかない。琥珀はそれがわかったようで、その柔らかな太腿の肉をがじりと齧ると、こぶりな性器をべろりと舐め上げた。
「ゃ、ひぅ、んっ!」
「お前は辛いかもしれねえけど、俺のがもっと辛いんだぞ。」
「へぁ、っ」
「まじで、俺が堪えるのはお前だからだぞ。」
「んぁ、あっこ、こはっ、」
なんでそんな怖い顔してるの、睡蓮はそれが知りたくて、つい涙目で琥珀を見つめた。怯えたような顔で、その癖先を期待するような欲を見せる。脳髄まで満たされる琥珀の征服欲を正しく煽るその様子に、つい喉を鳴らす。くそ、可愛い。こいつが庇護欲か。ぎらつく瞳の奥で、相反する心情がぐつぐつと煮える。堪えるように噛み締めた口端から、一筋伝った赤い血に、睡蓮はぎょっとした。
「こは、ち、がっ」
「これも、お前のせい。」
上体を上げ、のしかかるようにして細い体を全身で抑えつけた。暗い部屋の中でもわかるくらい体が熱い。顔を寄せた琥珀の、その血の滲んだ口端を睡蓮がぺしょりと舐める。
目を細めた。その薄い舌を知っているのは自分だけでいいのだ。労るように舐め取る睡蓮の舌に、自分のそれを絡ませる。びくりと跳ねた体を抱きしめながら、琥珀は熱くなったそこを押し付けるように睡蓮の下肢に擦り付ける。
片手で下履きから取り出すと、その先端に滲んだ先走りを、蕾に塗り付けた。
「ああ、食っちまいてえなあ…」
はふはふと呼吸をする睡蓮の肩口に顔を埋める。ぐるりと本能的な声が漏れる。ゆっくりと深呼吸をすると、甘い花の香した。
声色は震えていた。発情期のせいで、言葉も舌ったらずで少しばかし恥ずかしい。睡蓮は、琥珀の胸元に手を添えながら、とくとくと早鐘を打つ心臓が、自分だけじゃないのだと知った。
「琥珀、あの…、」
「うん、」
「う、うんじゃ、わかんないよ、琥珀、」
何がどうなってしまったのだ。睡蓮の背に回された琥珀の腕に、甘えてしまいたくなる。いいのだろうか、恋人でもない睡蓮が琥珀に触れても。そう思って、こくりと不安を飲み下す。右腕をゆっくりと背中に回した。指先に当たったのは、そこだけ皮膚がひきつれたような感触だった。
「こ、琥珀、せ、背中に…」
「今は、いいから。」
「痛くないの…」
「うん、…睡蓮、あのよ」
「なあに…」
鼻先が擦れあう。ヒクリと喉が震えた。少しでも顔を傾けて仕舞えば、唇が触れ合ってしまう。そうしたら、僕はきっと死んでしまうかもしれない。じんわりと涙を滲ませた睡蓮の表情に、琥珀が瞳を揺らす。悲しいとか、嬉しいとか、そういう顔ではない。甘い吐息と共に、齎されたそれは、睡蓮の込み上げてくる甘やかな感情によるもので、その涙が溢れそうになるたびに、睡蓮の花の香りが強まる。
「触れたい、ダメか。」
「ふ、…っ…、」
切なそうな顔をして、琥珀が、優しい声色で言葉を漏らす。胸の疼痛に歪ませた表情は、睡蓮の知らない顔であった。嬉しかった。睡蓮は琥珀に触れたいと言われて、本当に嬉しくて、一粒涙を溢してしまった。
「その涙は、どういう意味だ。」
「わ、わかン…ぁ、い…」
「教えて、お前が泣くのは、痛い。」
苦しそうな琥珀の声が、睡蓮の耳に届いた。ああ、僕の涙ひとつで、琥珀が不安になってくれるのが、こんなにも嬉しいだなんて。きゅうん、と甘く喉が鳴る。切なそうに顔を歪めた琥珀の口端に、そっと触れるだけの口付けをした。それが、睡蓮の精一杯であった。
「お前が、良いなら…俺は、」
「ン、うん…っ、ぅん、…っ、」
「睡蓮、」
堪えて、絞り出すような声色だった。琥珀の掌が、動かない睡蓮の左手をとる。力の入らぬ指の合間をたやすく開き、絡ませ、そうして握りしめた。胸が痛い、痛くて、切なくて、涙が出る。悲しい時の気持ちと、嬉しくて涙が出る時の感覚は、なんでこんなにも似ているのだろう。睡蓮は、ヒック、と情けない嗚咽を漏らしそうになった、けれど、それはできなかった。
「う、ンっ…」
睡蓮の溢れそうになった気持ちを、琥珀が唇で受け止める。泣きそうな睡蓮を甘やかすかのように、熱い舌がそっと唇を割り開く。柔らかくて、震えていて、そして唾液は甘かった。
「ふ…、っ…」
「んだよ、もう泣くなよ、」
「ふ、ぅ…、うっ、あ、す、好き、好き…こはく、っ…」
「くそ、んな、声出すな…ああ、くそ、チキショウ、」
優しく、慰めるようなそれが、徐々に欲を孕む。互いの唾液を交換し合うかのように、睡蓮は与えられるそれで喉を濡らし、静かな室内に微かに弾ける水音に身を震わす。
ちゅ、くちり、そういった、耳に毒な濡れた音である。睡蓮の小さな赤い舌と、厚みのある琥珀の熱い舌は、味蕾を擦り合わせるかのように何度も互いを蕩けさせ、体を開いていく。
「睡蓮、すいれ、ん…」
「ふぁ、っ…あ、こ、こは、く…っ」
熱い掌が、欲を持って睡蓮に触れる。小さな頤を舐め上げる琥珀は、まるで今にも腹に収めてやろうと言った具合に、獣じみた目で睡蓮を見下ろす。琥珀の唇を濡らしているのは、睡蓮の唾液だ。大きな鳶に囚われた兎は、まるでその捕食を待つかのように、赤い瞳を揺らすのだ。
「俺が、お前を抱く。他の誰でもねえ、俺がそう決めた。だから、いいな。」
「うん…っ、」
捕食とは、こういうことを言うのかもしれない。琥珀の本能の部分を揺さぶる目の前の獲物は、まるでそれが望みだと言わんばかりに体を差し出す。ああ、血が沸騰しそうだ。喉から鳴る本能的な声が、己が獣だということを自覚させる。
「っ、嗚呼…頭ん中、くそあっちぃな…、っ」
「きゅ、う…っン、っ」
がじりと肩口に噛みつかれ、睡蓮は身体を跳ねさせた。痛い、痛いのに、その余裕のなさが嬉しい。琥珀の腕が、睡蓮の足を開かせる。何も纏っていないのだ。引き締まった身体が足の間に入り込み、大きな手のひらが睡蓮の細い腰を掴む。
「あっ、」
「ん、っ…ここ、に、いれるから、」
「ひぅ、っ…」
琥珀の、余裕のない掠れた声が睡蓮の耳を刺激する。口に溜まる唾液を何度も飲み下しながら、琥珀の手の平がやわらかな尻の合間を指でなぞるように悪戯をする。
そこはじんわりと濡れており、期待をしていることがありありとわかる様子だった。生白く、それでいて色付いて己を待っている。あの時掴んだ睡蓮の、柔らかな肉の感触を思い出した。
「う、ぅあ、あっや、」
やだ、と言いかけて口を抑える。嫌じゃない、反射的に出そうになった言葉を、睡蓮は必死で噛み締めた。駄目だ、やめてほしくない。だから、言わないようにしなきゃ、指の隙間から漏れる吐息に、睡蓮の散慢した思考を感じ取る。琥珀はそれに目を細めると、その足を肩に抱えたまま、上体を倒した。
「お前が嫌だっていっても止める気ねえから、今はこっちに集中しておけ。」
「う、ぅそま、まって、」
「待つわけねえ。」
大きな手のひらが、睡蓮の濡れた性器に触れた。指を絡められ、フルリと震えながら先走りを零す先端を摩擦するように親指でいじられる。ひくんと震える薄い腹に、睡蓮を己の手で揺らがせているという愉悦に浸る。
「握ったの二回目だろうが、」
「ぁ、あれと、い、ぃみが、ちがっ、」
「ああ、これはそうさな。」
赤い瞳に、余裕のなさが見て取れる琥珀の意地悪な笑みが映った。ああ、好きだなあと思う。睡蓮は、ぴこりと尾を揺らしてしまう。素直な短いオッポの反応に、琥珀の胸は知らぬ音を立てて甘く鳴くのだ。成程、可愛いと素直に思える感情が、己自身にもあったのだと思った。
「心臓、すげえばくついてる。」
「う、か、体震えちゃう、よ」
「お前はただ寝てるだけで構わねえよ。」
ちゅ、と頬に唇を当てられ、甘やかしてくる琥珀の様子に、睡蓮は照れと羞恥で唇を噤む。少しだけカサついた手が触れる己の慎ましやかな性器には、もう既にとろみのある先走りが塗り付けられ、その垂れた一筋がしっとりと尾の付け根を濡らすのだ。
「ふ、ぅあ、ぁっや、」
「雄なら弄るだろう、」
「か、かわやくらいだよっ」
「なら覚えな。」
「ひぅっ、」
琥珀の手の平が、己のそこを握っているだけでもいけないのに、薄暗い部屋で、まるで己が雌になったかのような感覚に陥り、薄い肩を震わしながら腰を跳ねさせる。
聞くに堪えない水音も、意思に反して揺れる腰も、全部が全部睡蓮の五感を刺激して、頭の中で気持ちいいが渋滞して馬鹿になる。
「う、ぅあ、ぁっこ、こは、も、もっと、あっ」
「ん?」
「も、もっと、もっとして、えっぁ、あっき、きも、ちぃ…から、っ」
犬歯を覗かせて笑う。琥珀の金眼は怪しく光り、睡蓮の細腰を鷲掴むと、ぐいと持ち上げ引き寄せる。尻の合間に硬く張ったものを挟むと、胸元の粒をべろりと舐め上げた。
「ひぅっ、あ、あっあっ!」
「お前の薄い腹に入るかね、破いちまいそうだ。」
「ぁ、あっは、はぃ、るっ、から、ぁっ」
「そうかい、でも慣らさにゃ無理そうだ。」
「ぁう、っ、な、ぁあ、あっ!」
ぢぅ、と胸に強く吸い付かれ、睡蓮の性器からは精液が散る。引くつく腹を辿るように筋が伝い、臍にそっと辿り着く。琥珀の瞳には、その煽情的な様子が映っていた。腹に溜まったその滑りを指で拭い取り、馴染ませる。そうして尻のあわいの慎ましい穴に、ねとりと塗りつけた。
「せめぇな、」
「う、うっ、ぁ、」
「こら、締めるな。食い千切る気か。」
「ま、まって、こ、こゎ、いっ、」
「だろうな。」
節ばった無骨な指が、ゆっくりと縁を開いていく。たった一本でも酷く苦しくて、睡蓮は顔を隠すようにして、怯えた様子で琥珀を見る。腹の奥はこんなに寂しいのに、睡蓮の体の準備が追いつかない。琥珀はそれがわかったようで、その柔らかな太腿の肉をがじりと齧ると、こぶりな性器をべろりと舐め上げた。
「ゃ、ひぅ、んっ!」
「お前は辛いかもしれねえけど、俺のがもっと辛いんだぞ。」
「へぁ、っ」
「まじで、俺が堪えるのはお前だからだぞ。」
「んぁ、あっこ、こはっ、」
なんでそんな怖い顔してるの、睡蓮はそれが知りたくて、つい涙目で琥珀を見つめた。怯えたような顔で、その癖先を期待するような欲を見せる。脳髄まで満たされる琥珀の征服欲を正しく煽るその様子に、つい喉を鳴らす。くそ、可愛い。こいつが庇護欲か。ぎらつく瞳の奥で、相反する心情がぐつぐつと煮える。堪えるように噛み締めた口端から、一筋伝った赤い血に、睡蓮はぎょっとした。
「こは、ち、がっ」
「これも、お前のせい。」
上体を上げ、のしかかるようにして細い体を全身で抑えつけた。暗い部屋の中でもわかるくらい体が熱い。顔を寄せた琥珀の、その血の滲んだ口端を睡蓮がぺしょりと舐める。
目を細めた。その薄い舌を知っているのは自分だけでいいのだ。労るように舐め取る睡蓮の舌に、自分のそれを絡ませる。びくりと跳ねた体を抱きしめながら、琥珀は熱くなったそこを押し付けるように睡蓮の下肢に擦り付ける。
片手で下履きから取り出すと、その先端に滲んだ先走りを、蕾に塗り付けた。
「ああ、食っちまいてえなあ…」
はふはふと呼吸をする睡蓮の肩口に顔を埋める。ぐるりと本能的な声が漏れる。ゆっくりと深呼吸をすると、甘い花の香した。
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