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宝物は腹の中。 **
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蘇芳の汗の匂いと、筋肉の動き。激しく揺さぶられながら縋りついた背は、滑らないようにと爪を立てるせいで情事の痕跡を色濃く残す。
天井のシミを数えているうちに終わるとか、昔のエロい人がいってたらしい。奥座敷の天井は小組格天井で、まるでワッフルのような四角い枡が長い梁で整えられて並んでいる。
シミじゃ無くて、うちの場合その枡を数える事になるのだろうなあ。
まあ、数えている余裕なんてないのだけれど。
「あ、あっ…!」
信じられない位情けない声が、奥座敷に響く。蘇芳の群青色の着物はだらし無く腰で溜まり、そこを足で挟むようにして受け入れた天嘉は、蘇芳と一つになっていた。
まるで蹴り上げるようにして振り上げられた天嘉の細い足。つい力が入ってしまって、蘇芳に尻を揉まれてゆっくりと力を抜くの繰り返しだ。
「ぁ、あ、あ、ぁあっあ、あ…」
「ふ、…く、っ…締める、な…」
「ごぇ、ぁ…さ、っ…ふぁ、あっあっあ!」
「よいよい、っ…気持ちいいのだな、ふふ、…」
楽しそうに蘇芳が笑ってる。笑うと涙袋が膨らんで、少しだけあどけない顔になるのだ。天嘉はぼやけた思考のまま、かわいい、かわいいなあととろけた顔で蘇芳の頬を手で挟む。
それを口付けを待っているのだと勘違いした蘇芳によって、甘やかすようにして唇に吸い付かれ、舐められ、舌を甘く噛まれるものだから、上も下もすべからく気持ちが良くて、どうにかなってしまいそうだった。
首にきつく吸い付かれては、胸の突起を弄られるものだから、首の疼きとそこが共鳴してしまう。
蘇芳の黒髪が悪戯に肌を撫でるだけで射精してしまうし、下生えを尻のそこに擦り付けるようにして腰を揺らすものだから、天嘉の奥の馬鹿になる部屋は無遠慮に押し上げられ、そのせいで喃語のようにぐずぐずと泣いては、こわいこわいといって縋り付く。
ばかにしてといったけれど、強い快楽はまだ怖い。
「ひぁ、あ、や、やぁ、ぁっや、やら、やぁ、ああっイ、う、イぐ、っ、い…ちゃ、あー‥あぁ、あ、あー‥!」
とんでもないくらい腹の中が熱い。蘇芳の性器によって与えられる火傷するような鋭い性感に、天嘉の腰はだらしなくかくかくと揺れ、性器からぴゅるぴゅると白濁を散らす。反り返った性器がそのたびにふるふると揺れては蘇芳の腹を叩くものだから、それが情けなくて愛おしい。
「またイったな、よいよい、好きなだけ垂れ流すといい。お前の痴態は俺を喜ばせるの…、ふふ。締まった。今のどこに興奮したのだ、天嘉。」
「は、は、は…あ、あっ、んん、ぅー‥、あ、あっ…あ、ンっ、ぐ、っ!」
「絞る…な、っ…急かさずとも、腹に出してやる…」
「ひぃ、いっ、あ、あっや、あ、あっ…」
背をそらし、太ももを震わしながら、射精の余韻で仰け反る。とろめく媚肉の蠕動に蘇芳が息を詰めれば、甘く囁くように意地悪なことを言う蘇芳の声を思い出して再び達する。射精の伴わないそれは、まるで雌のような達し方であり、脳の中が瞬き、弾けるほどに気持ちがいい。
蘇芳の両手で掴まれるようにして両脇を支えられ、親指でこねられるようにして乳首をいじられる。もうこれ以上擦られると服を着るときに響きそうなのに、天嘉は甘い声を上げて喜ぶのだ。
だらしなく開いた足を大きく開かされ、見下されながら垂らされた唾液を舌で受け止める。端なく、いやらしく、性感に溺れた雌の顔で赤い舌を見せ誘う嫁に、蘇芳の性器へぐっと血流が巡る。
「く、ぅひ……か、ぁ…も、やぇへ…っ、」
「つれぬことをいう。お前が誘ったのだぞ天嘉。責務を果たせ。」
「ぉ、ひり…も、ばか…に、なっ…ひゃ、う…」
「なればいい、垂れ流そうとも喜んで下の世話をしてやるさ。」
「やぁ、あー‥!」
しぬ、しんじゃう。そんな譫言を宣いながら、腹を粘液で濡らす。蘇芳は大きな手のひらで僅かに膨らみを帯びた天嘉の腹を撫でると、腰を上と突き上げて内側から腹を動かす。
ここまで入っているのだ。外側から見てもわかる程に、自身の性器で膨らんでいる。
かふりと溢した胃液を拭ってやれば、だらしない顔が愛おしくてつい喉に噛み付いた。
「ひぐ、っ…!」
「すまん、つい、本能がまさってしまった。」
赤く歯型がついたそこを、べろりと舐めて止血する。蘇芳の噛み癖は直らぬまま、首周りを歯型だらけにした天嘉は、蘇芳の征服欲に侵されながらも体は喜んでしまっていた。
痛い。痛いのに、俺だけにしかしないのだ。暴力のような強い快楽に溺れながら、天嘉は獰猛さを隠そうともしない蘇芳を前にへらりと笑う。嬉しい。雌にしてくれて、嬉しい。泣きながら甘えるように擦り寄る嫁に、蘇芳の妖力はぶわりと膨れ上がる。
「お前は、誰のものだ天嘉。」
「す、おう…の、」
「そうだ。ここを許すな、俺以外のものに抱かれたら殺してやる。お前は俺の嫁だ、何人たりとも体を許すな、良いな。」
「うん、…ぁ、あっ…も、と…、っ…もっと、ぁ、あっ!」
「煽るな馬鹿もの。優しくできぬぞ、…くそ。」
腹の中でぐるぐると渦巻いている。これはきっと、喜んでいるのだ。天嘉は胸をそらし、ふしゅりと潮を吹きながら、腹の子が妖力を受け止める感覚に酔いしれた。
俺の分まで食っていいから、元気に育て。半端もんの親でごめんな、大事にしたいのに、蘇芳、まじで雌にして。男をやめさせて。俺を女にして、母親にして。
「す、お…っ、…なか、だひてめす、に…っ、…」
「莫迦…が!!」
「くぁ、っ…う、うぁ、あ!あっ!あぁあだめぇ、えっ!!!」
がしりと爪を立てられる位に腰を鷲掴まれたかと思うと、まるで串刺しにするかのような激しい律動で揺さぶられる。叫びだしたくなる強い快楽に、天嘉の見開かれた眼からは大粒の涙が溢れた。
尻が馬鹿になる。こんな、きもちいいを教え込まれたら、もう脳が溶けてなくなっちまう。
開かされた足を抱え上げられ、覆い被さられる。近くなった蘇芳の体温にしがみつきながら、完全に性器となった天嘉の穴が、早くよこせとじゅるじゅると端なく蘇芳の性器に絡みつく。
イく、イってしまう。呼吸の間隔が短くなり、肌を弾く音も小刻みになる。蘇芳が小さく息を詰め、一際激しく尻肉を腰で叩いた瞬間。びゅるびゅると叩きつけるかの様な長い射精を腹の奥に注ぎ込まれた。
逆流し、飲み込みきれなかった精液がぶぴゅりと情けない音を立てて吹き出す。じょろじょろと小便を漏らしながら、だらしなく開いた足を閉じることもせずに気絶をした天嘉の体を、蘇芳はそっと抱き寄せた。
「俺のものだ、誰にも渡すものか。ああ、天嘉…天嘉…」
がじがじと歯型をつけながら、蘇芳は抱き込み擦り付けるようにして腰を揺らめかせる。
早く器を満たせ天嘉。そう教えこむように何度も注ぎ込んだのだ。
天嘉が男腹で孕んだ事に、悩んでいるのは気づいていた。その狼狽えが可愛くて仕方がない。不安があるならば蘇芳はこうして雌を教え込むだけである。
歪んでいると言われても構わない。それが蘇芳の愛の形だからだ。
激しい交わりの悲鳴じみた嬌声は、奥座敷の外へも響いていた。優秀な屋敷の者たちはみな、蘇芳が躾けているのだと理解をしている。
明日はきっと、天嘉は床の住民になるだろう。そんなことだけを気にかけながら。
金縛りにあったかのように、体が動かない。
汗の匂いと重だるい下肢。そして、おそらくではあるが、下肢は開き切って閉じていない気がする。天嘉は、使い倒された後孔の違和感に、その身をフルリと震わせた。
「起きたな天嘉。些末毎はどうなった。」
「さまつ、ごと…?」
「忘れたいと言っていたろう。どうだ。」
裸の蘇芳が、天嘉の体を抱き込んで甘やかす。
そうだ。自分が雌になってしまえば、悩みなんて忘れられると思ったのだ。
結局抱かれている間は確かに忘れていたが、それでも元のネガティブさは拭えない。
薄ぼんやりとした思考のまま、蘇芳に唇を啄まれながら腹に触れる。
今なら言える気がした。情事の余韻で、麻酔がかったようなこの思考のままなら。
「おとこだから…、ちゃんと、うめるかなあ…」
ぼんやりとした口調で、口付けの合間に天嘉が呟く。掠れた声で漏らされた吐露を、蘇芳は黙って聞いていた。
「しんだら、…だけ、ない…」
「…死なんさ。俺が連れ戻す。」
「あい、せるかな」
「俺とお前の子だぞ。可愛いにきまっている。」
蘇芳の鼻先に自分のをくっつけるようにして天嘉がすり寄る。細い肩を抱くように腕を回してやると、あごの下に顔を埋める。
「おやいないのに、おやできるかな…」
「お前一人で育てるわけではない。俺も親だぞ。」
「そ、かあ…」
なら、いいか。
蘇芳も一緒に育ててくれるのだ。そんな当たり前のことを失念していた。
微睡みが天嘉の口調を柔らかいものにする。
「がん、ばるから…、た、すけ…て…」
「お前、」
小さく掠れた声で呟かれた言葉に、蘇芳の胸は甘く鳴いた。
がんばる、がんばるといった。
迷い込んだこの世界で、番にさせられ、子を孕まされた天嘉が、これ以上なにをがんばるのだ。
がんばるのは、俺の方だというのに。お前は俺に助けてとも言う。
そもそも、きちんと産んであげられるのかと悩んでいる時点で、子を愛しく思っていない訳はないのだ。
蘇芳は震えた。嬉しくて震えた。やはりこの健気な番は俺の宝だ。腹の子も等しく、俺の宝だ。
前後不覚にならなければ本音も言えない可愛そうな子。
蘇芳は薄玻璃のように繊細な天嘉の心を、愛しいと思う。
死なせるものか。大丈夫だ、俺がいる。眠ってしまった天嘉の体を抱きしめながら、ゆっくりと背を撫でる。蘇芳のその姿は、まるでお気に入りを取られないように隠す、分別もつかぬ子供のようにも見えた。
天井のシミを数えているうちに終わるとか、昔のエロい人がいってたらしい。奥座敷の天井は小組格天井で、まるでワッフルのような四角い枡が長い梁で整えられて並んでいる。
シミじゃ無くて、うちの場合その枡を数える事になるのだろうなあ。
まあ、数えている余裕なんてないのだけれど。
「あ、あっ…!」
信じられない位情けない声が、奥座敷に響く。蘇芳の群青色の着物はだらし無く腰で溜まり、そこを足で挟むようにして受け入れた天嘉は、蘇芳と一つになっていた。
まるで蹴り上げるようにして振り上げられた天嘉の細い足。つい力が入ってしまって、蘇芳に尻を揉まれてゆっくりと力を抜くの繰り返しだ。
「ぁ、あ、あ、ぁあっあ、あ…」
「ふ、…く、っ…締める、な…」
「ごぇ、ぁ…さ、っ…ふぁ、あっあっあ!」
「よいよい、っ…気持ちいいのだな、ふふ、…」
楽しそうに蘇芳が笑ってる。笑うと涙袋が膨らんで、少しだけあどけない顔になるのだ。天嘉はぼやけた思考のまま、かわいい、かわいいなあととろけた顔で蘇芳の頬を手で挟む。
それを口付けを待っているのだと勘違いした蘇芳によって、甘やかすようにして唇に吸い付かれ、舐められ、舌を甘く噛まれるものだから、上も下もすべからく気持ちが良くて、どうにかなってしまいそうだった。
首にきつく吸い付かれては、胸の突起を弄られるものだから、首の疼きとそこが共鳴してしまう。
蘇芳の黒髪が悪戯に肌を撫でるだけで射精してしまうし、下生えを尻のそこに擦り付けるようにして腰を揺らすものだから、天嘉の奥の馬鹿になる部屋は無遠慮に押し上げられ、そのせいで喃語のようにぐずぐずと泣いては、こわいこわいといって縋り付く。
ばかにしてといったけれど、強い快楽はまだ怖い。
「ひぁ、あ、や、やぁ、ぁっや、やら、やぁ、ああっイ、う、イぐ、っ、い…ちゃ、あー‥あぁ、あ、あー‥!」
とんでもないくらい腹の中が熱い。蘇芳の性器によって与えられる火傷するような鋭い性感に、天嘉の腰はだらしなくかくかくと揺れ、性器からぴゅるぴゅると白濁を散らす。反り返った性器がそのたびにふるふると揺れては蘇芳の腹を叩くものだから、それが情けなくて愛おしい。
「またイったな、よいよい、好きなだけ垂れ流すといい。お前の痴態は俺を喜ばせるの…、ふふ。締まった。今のどこに興奮したのだ、天嘉。」
「は、は、は…あ、あっ、んん、ぅー‥、あ、あっ…あ、ンっ、ぐ、っ!」
「絞る…な、っ…急かさずとも、腹に出してやる…」
「ひぃ、いっ、あ、あっや、あ、あっ…」
背をそらし、太ももを震わしながら、射精の余韻で仰け反る。とろめく媚肉の蠕動に蘇芳が息を詰めれば、甘く囁くように意地悪なことを言う蘇芳の声を思い出して再び達する。射精の伴わないそれは、まるで雌のような達し方であり、脳の中が瞬き、弾けるほどに気持ちがいい。
蘇芳の両手で掴まれるようにして両脇を支えられ、親指でこねられるようにして乳首をいじられる。もうこれ以上擦られると服を着るときに響きそうなのに、天嘉は甘い声を上げて喜ぶのだ。
だらしなく開いた足を大きく開かされ、見下されながら垂らされた唾液を舌で受け止める。端なく、いやらしく、性感に溺れた雌の顔で赤い舌を見せ誘う嫁に、蘇芳の性器へぐっと血流が巡る。
「く、ぅひ……か、ぁ…も、やぇへ…っ、」
「つれぬことをいう。お前が誘ったのだぞ天嘉。責務を果たせ。」
「ぉ、ひり…も、ばか…に、なっ…ひゃ、う…」
「なればいい、垂れ流そうとも喜んで下の世話をしてやるさ。」
「やぁ、あー‥!」
しぬ、しんじゃう。そんな譫言を宣いながら、腹を粘液で濡らす。蘇芳は大きな手のひらで僅かに膨らみを帯びた天嘉の腹を撫でると、腰を上と突き上げて内側から腹を動かす。
ここまで入っているのだ。外側から見てもわかる程に、自身の性器で膨らんでいる。
かふりと溢した胃液を拭ってやれば、だらしない顔が愛おしくてつい喉に噛み付いた。
「ひぐ、っ…!」
「すまん、つい、本能がまさってしまった。」
赤く歯型がついたそこを、べろりと舐めて止血する。蘇芳の噛み癖は直らぬまま、首周りを歯型だらけにした天嘉は、蘇芳の征服欲に侵されながらも体は喜んでしまっていた。
痛い。痛いのに、俺だけにしかしないのだ。暴力のような強い快楽に溺れながら、天嘉は獰猛さを隠そうともしない蘇芳を前にへらりと笑う。嬉しい。雌にしてくれて、嬉しい。泣きながら甘えるように擦り寄る嫁に、蘇芳の妖力はぶわりと膨れ上がる。
「お前は、誰のものだ天嘉。」
「す、おう…の、」
「そうだ。ここを許すな、俺以外のものに抱かれたら殺してやる。お前は俺の嫁だ、何人たりとも体を許すな、良いな。」
「うん、…ぁ、あっ…も、と…、っ…もっと、ぁ、あっ!」
「煽るな馬鹿もの。優しくできぬぞ、…くそ。」
腹の中でぐるぐると渦巻いている。これはきっと、喜んでいるのだ。天嘉は胸をそらし、ふしゅりと潮を吹きながら、腹の子が妖力を受け止める感覚に酔いしれた。
俺の分まで食っていいから、元気に育て。半端もんの親でごめんな、大事にしたいのに、蘇芳、まじで雌にして。男をやめさせて。俺を女にして、母親にして。
「す、お…っ、…なか、だひてめす、に…っ、…」
「莫迦…が!!」
「くぁ、っ…う、うぁ、あ!あっ!あぁあだめぇ、えっ!!!」
がしりと爪を立てられる位に腰を鷲掴まれたかと思うと、まるで串刺しにするかのような激しい律動で揺さぶられる。叫びだしたくなる強い快楽に、天嘉の見開かれた眼からは大粒の涙が溢れた。
尻が馬鹿になる。こんな、きもちいいを教え込まれたら、もう脳が溶けてなくなっちまう。
開かされた足を抱え上げられ、覆い被さられる。近くなった蘇芳の体温にしがみつきながら、完全に性器となった天嘉の穴が、早くよこせとじゅるじゅると端なく蘇芳の性器に絡みつく。
イく、イってしまう。呼吸の間隔が短くなり、肌を弾く音も小刻みになる。蘇芳が小さく息を詰め、一際激しく尻肉を腰で叩いた瞬間。びゅるびゅると叩きつけるかの様な長い射精を腹の奥に注ぎ込まれた。
逆流し、飲み込みきれなかった精液がぶぴゅりと情けない音を立てて吹き出す。じょろじょろと小便を漏らしながら、だらしなく開いた足を閉じることもせずに気絶をした天嘉の体を、蘇芳はそっと抱き寄せた。
「俺のものだ、誰にも渡すものか。ああ、天嘉…天嘉…」
がじがじと歯型をつけながら、蘇芳は抱き込み擦り付けるようにして腰を揺らめかせる。
早く器を満たせ天嘉。そう教えこむように何度も注ぎ込んだのだ。
天嘉が男腹で孕んだ事に、悩んでいるのは気づいていた。その狼狽えが可愛くて仕方がない。不安があるならば蘇芳はこうして雌を教え込むだけである。
歪んでいると言われても構わない。それが蘇芳の愛の形だからだ。
激しい交わりの悲鳴じみた嬌声は、奥座敷の外へも響いていた。優秀な屋敷の者たちはみな、蘇芳が躾けているのだと理解をしている。
明日はきっと、天嘉は床の住民になるだろう。そんなことだけを気にかけながら。
金縛りにあったかのように、体が動かない。
汗の匂いと重だるい下肢。そして、おそらくではあるが、下肢は開き切って閉じていない気がする。天嘉は、使い倒された後孔の違和感に、その身をフルリと震わせた。
「起きたな天嘉。些末毎はどうなった。」
「さまつ、ごと…?」
「忘れたいと言っていたろう。どうだ。」
裸の蘇芳が、天嘉の体を抱き込んで甘やかす。
そうだ。自分が雌になってしまえば、悩みなんて忘れられると思ったのだ。
結局抱かれている間は確かに忘れていたが、それでも元のネガティブさは拭えない。
薄ぼんやりとした思考のまま、蘇芳に唇を啄まれながら腹に触れる。
今なら言える気がした。情事の余韻で、麻酔がかったようなこの思考のままなら。
「おとこだから…、ちゃんと、うめるかなあ…」
ぼんやりとした口調で、口付けの合間に天嘉が呟く。掠れた声で漏らされた吐露を、蘇芳は黙って聞いていた。
「しんだら、…だけ、ない…」
「…死なんさ。俺が連れ戻す。」
「あい、せるかな」
「俺とお前の子だぞ。可愛いにきまっている。」
蘇芳の鼻先に自分のをくっつけるようにして天嘉がすり寄る。細い肩を抱くように腕を回してやると、あごの下に顔を埋める。
「おやいないのに、おやできるかな…」
「お前一人で育てるわけではない。俺も親だぞ。」
「そ、かあ…」
なら、いいか。
蘇芳も一緒に育ててくれるのだ。そんな当たり前のことを失念していた。
微睡みが天嘉の口調を柔らかいものにする。
「がん、ばるから…、た、すけ…て…」
「お前、」
小さく掠れた声で呟かれた言葉に、蘇芳の胸は甘く鳴いた。
がんばる、がんばるといった。
迷い込んだこの世界で、番にさせられ、子を孕まされた天嘉が、これ以上なにをがんばるのだ。
がんばるのは、俺の方だというのに。お前は俺に助けてとも言う。
そもそも、きちんと産んであげられるのかと悩んでいる時点で、子を愛しく思っていない訳はないのだ。
蘇芳は震えた。嬉しくて震えた。やはりこの健気な番は俺の宝だ。腹の子も等しく、俺の宝だ。
前後不覚にならなければ本音も言えない可愛そうな子。
蘇芳は薄玻璃のように繊細な天嘉の心を、愛しいと思う。
死なせるものか。大丈夫だ、俺がいる。眠ってしまった天嘉の体を抱きしめながら、ゆっくりと背を撫でる。蘇芳のその姿は、まるでお気に入りを取られないように隠す、分別もつかぬ子供のようにも見えた。
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