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物理的赤糸 *
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蘇芳は天嘉の体に教え込みながら、目の前の人である嫁が泣いている様子を見て、なんとも胸の内を締め付けられるような、そんな如何ともし難い気持ちに見舞われた。
この嫁は、体から甘い花のような香りを出して、こんなにも好意を見せてくれているのに、なぜそれを認めようとしないのか。
繋ぐ手の平から伝わる鼓動も、体温も、そして無意識に甘えてくるようなそんな愛らしい仕草まで、もしこれが計算のうちであれば、とんだ傾国である。
蘇芳はその華奢な身を抱き込みながら、耳の後ろへとそっと唇を寄せる。己の腕の中で、未だ幼児のように泣いている天嘉へと、染み渡る毒のような甘さを持つ声色で囁いた。
「天嘉、怖くしてすまない。俺はどうにも不器用らしい。泣かせたくはないのに、どうしてなかなかうまくはいかぬ。」
「っん…」
「お前を大切にしたいのに、なんとも難儀なものか。頼むから怖がってくれるな、天嘉、俺は、どうしたらいい…」
「ん、や…だ、あ、…」
声色は、本当に参ったという具合に、ほのかな愁傷の色を覗かせる。優しく、怖がらせない様にしながら、そっと耳朶をくすぐる様に言葉を紡ぐのだ。
天嘉は、蘇芳の言葉の意味に悲しいやら、寂しいと言った寂寥感が含まれていることを正しく理解した。
ああ、こいつ、俺にこんなことをしておいて、こんなふうに満たされない心を抱えながらも、俺に同じ好意を返して欲しいと願っているのか。
そのことを理解したときに、天嘉は自分はなんて酷いことをしているのだと、自分自身を責めた。
「す、お…後ろ、からやだ…」
「しかし、」
「前、…お前の顔…見ながらした、い…」
きちんと、今度こそ己の意思を受け入れて抱かれたいと思った。泣き顔を見られるのはいただけないが、蘇芳が天嘉の言葉を聞いて面食らっている様子を見るのは気分が良かった。
体を捻り、身じろぐように腕の中で体勢を入れ替えようとする天嘉に、慌てて蘇芳が手助けする。途中何度も蘇芳の性器を締め付け、墓穴だったかなと天嘉が後悔するくらいには良いところに当たってしまい、漏らすように情けない射精を見られてしまった。
天嘉が羞恥で顔を赤らめた。それだけの表情の変化を見るだけで、蘇芳が真剣な声色で可愛いなどと宣うのが始末に負えない。
馬鹿なんじゃねえかなこいつ。そう思うことができるほど、天嘉の理性が少しだけ戻ってきた。
散々泣かされはしたが、漸く天嘉は蘇芳の腕の檻の下で、足を開かされたまま、真っ直ぐに蘇芳を見上げた。
「前からで、腹は平気か…」
目線が絡まる。先ほどとは打って変わり、蘇芳の表情に微かに心配の色が混じった。
「…平気、あんま…こっちみんな、」
「俺の顔を見ながらしたいと言ったのは天嘉の方なのにか。」
「…、あの…」
そうなんだけど、指摘しないで欲しかった。じわりと耳が熱くなる。蘇芳の悲しげな声色を聞いた時から、天嘉は素直にならなくてはいけない様な気がしたのだ。
嫌いじゃない、こうして体を許すくらいには。
蘇芳の気持ちと、同じだけの気持ちを返す勇気はない、というか、言葉にするという勇気がない。成人してから一年しか立っていない天嘉にとって、もしかしたら好きかも、という感情だけで動くにはあまりにも常識から離れた関係だし、それに天嘉だって矜持がある。
一個一個、噛み砕いて飲み込んで、腹に収めなくてはダメなのだ。
そして、そんなややこしく、甘やかな痛みを伴う如何ともし難いこの感情を語彙に変換するくらいなら、天嘉は行動で表す。
「おいで、」
「おいで?」
「確かめなきゃ、俺は先に進めない…」
「天嘉…」
両手を広げて見上げてくる天嘉の言葉に、蘇芳の胸はぎゅっと引き絞られた。
光明だ。これは果て無く続く曇天を切り裂いて差し込んだ、一つの光明の光なのだ。
蘇芳は、今までは侍ってきた雌の求めてくるままに抱いてばかりであった。だから、自分から雌の腕の中に入ったことはない。
細く、白い体が受け入れようとしてくれている。蘇芳はそっと、押し潰さないように気をつけながら、その腕の中に体を収めた。
細い腕が緩く背中に回る。触れた手のひらでわかる。小さな手だ。天嘉の手に引き寄せられるがままにその身を寄せると、優しく背中に腕が回った。そして、まるで幼児を誉めるかのようにして頭を撫でられた。
「うぉ、お、おおう…」
「なんだその声…」
「いや、なんだ…面映い…」
照れた。まるで幼児を甘やかすかのように天嘉の手が蘇芳の髪を撫でるのだ。なんだ、これ。蘇芳は胸の鼓動が喧しくなった。やめろ、こんなにうるさいと、天嘉に笑われてしまうだろうが。止まれ、頼むから止まってくれ。
頭ではそう思いながらも、思考とは裏腹に蘇芳の下肢は非常に素直であった。
「ひゃ…っ、お、…おきく、すんな…ばか、」
「そんなの、無理だろう…」
顔を赤くし、急に口下手になった蘇芳の様子が面白い。天嘉は腹に埋まった性器の存在に、小さく身を震わせる。
こんな、上等な雄の性器が腹に埋まっている。こんななんの魅力もないだろう、痩せっぽちの天嘉の体を使って、せこせこと種をつけて孕ませる。本当に、なんて残念な奴なんだろう。そう思うと、バツが悪そうにしている蘇芳の顔が急に可愛く見えてくる。
どうやら俺は、ここにきて大概にバカになったらしい。天嘉は蘇芳の頬を両手で包むと、初めて自分から口付けをした。
「っ、…」
「ん、んぅ…、ふ…」
なんとも拙く、そして蘇芳にとってはとてつもない衝撃を伴った口付けだった。重ねた唇。今度のそれは薬湯の風味ではなく、天嘉の熱い体温に溶かされるような甘やかな唾液のとろみが、そっと拙く口の中に侵入してくる。
こんなの、無理に決まっているだろう。
頭の後ろが、カッと燃える様に熱くなる、蘇芳は下手くそな口付けをする天嘉の顎を己の手で固定すると、教え込むようにして押し込んだ舌で、天嘉の薄い舌を絡め取る。
「っふ、ん、ンん、んー…!」
「っは、…ああ、好きだ天嘉、すまない、もう辛抱ができん、すまん。」
「っぁ、は…や、う、ぅそ…あ、あ、あ、あっ」
ぷは、と唾液が口端からだらしなく垂れた。天嘉はその美しい黄昏の瞳に欲の灯火を灯す、番いである蘇芳の体に押さえつけらえるようにして、激しく体を揺さぶられた。それは、宙に投げ出した細い足を行き場なく遊ばせてしまうほど、激しい律動であった。
「ひ、ん…んぁ、や、あっだ、だぇ…ら、や、やあぁ、っ…」
「無理だろう、…っ、愛しきもの、からの、接吻だぞ…!今更せぬと言ってくれるなよ、天嘉…」
「ひぅ、ン…んぅ、ふ…」
にゅく、と割り開く様にして蘇芳の舌が侵入する。熱く、味蕾を擦り合わせるかのようなそれは、酒精を帯びてしまったかのような気持ちの良い酩酊感を伴った。
気持ちいい、この口付けは気持ちがいい。
足を無様に開かされ、明確に種を注ごうとする獰猛な雄の律動の下、天嘉は言外に雌だと腹に教え込まれる。
尻が縁が捲れ、今ここを犯しているのだと教え込む蘇芳の性器が、天嘉の内側を満たしていくようだった。
こんなにも不毛な行為をしているのに、蘇芳は何度も教え込む様に天嘉に口付け、髪を撫で、口付けの合間に名前を呼ぶ。こちらが切なくなってしまうほどの甘やかで優しい声色で、天嘉の名を紡ぐのだ。
ああ、こんなふうに、愛されたことなどなかったなあ。天嘉の眦が熱く濡れる。睫毛を震わし、縋るように強まった天嘉の腕の力に、蘇芳の喉がグルルとなった。
「ふ、ぅあ、あ…あ、んぃ、い…から、あ、…っ」
「天嘉…、」
「も、おまぇ…、の…好き、に…」
「天嘉…!!」
こんな貧相で、なんの取り柄もない俺を好きだっていうなら、もうそれでいいじゃないか。愛情を知らない俺が、そもそも好きかどうかの物差しで蘇芳のことを図ろうとすること自体が間違いなのだ。
天嘉は口付けを何度も受け入れ、赤くなった唇からだらしなく唾液を零しながら、蘇芳の髪を撫で、頬に擦り寄り、揺さぶられるままに全てを許した。
蘇芳の獰猛で、重く、それでいてまっすぐな愛情は、支配という形で天嘉の細い体を縛り付ける。
いいじゃないか、不器用同士、お似合いじゃないか。天嘉は自身の体が蘇芳によって雌にされていくのを、この身を持って喜びであると教え込まされた。この気持ちのいいことを教えてくれる、己の雄である蘇芳の大きな手のひらに触れられることを、体が喜んでしまったのだ。もう、受け入れる他はあるまい。幸福だ。そして、完全に降伏した。
この上等な雄が、俺にだけ情けなく腰を振るのなら、俺は一生優越感で飯が食える。そんな捻くれたことを思いながら、離すまいと縋りついた手によって、蘇芳の背中には赤い糸のような痕が刻まれた。
この嫁は、体から甘い花のような香りを出して、こんなにも好意を見せてくれているのに、なぜそれを認めようとしないのか。
繋ぐ手の平から伝わる鼓動も、体温も、そして無意識に甘えてくるようなそんな愛らしい仕草まで、もしこれが計算のうちであれば、とんだ傾国である。
蘇芳はその華奢な身を抱き込みながら、耳の後ろへとそっと唇を寄せる。己の腕の中で、未だ幼児のように泣いている天嘉へと、染み渡る毒のような甘さを持つ声色で囁いた。
「天嘉、怖くしてすまない。俺はどうにも不器用らしい。泣かせたくはないのに、どうしてなかなかうまくはいかぬ。」
「っん…」
「お前を大切にしたいのに、なんとも難儀なものか。頼むから怖がってくれるな、天嘉、俺は、どうしたらいい…」
「ん、や…だ、あ、…」
声色は、本当に参ったという具合に、ほのかな愁傷の色を覗かせる。優しく、怖がらせない様にしながら、そっと耳朶をくすぐる様に言葉を紡ぐのだ。
天嘉は、蘇芳の言葉の意味に悲しいやら、寂しいと言った寂寥感が含まれていることを正しく理解した。
ああ、こいつ、俺にこんなことをしておいて、こんなふうに満たされない心を抱えながらも、俺に同じ好意を返して欲しいと願っているのか。
そのことを理解したときに、天嘉は自分はなんて酷いことをしているのだと、自分自身を責めた。
「す、お…後ろ、からやだ…」
「しかし、」
「前、…お前の顔…見ながらした、い…」
きちんと、今度こそ己の意思を受け入れて抱かれたいと思った。泣き顔を見られるのはいただけないが、蘇芳が天嘉の言葉を聞いて面食らっている様子を見るのは気分が良かった。
体を捻り、身じろぐように腕の中で体勢を入れ替えようとする天嘉に、慌てて蘇芳が手助けする。途中何度も蘇芳の性器を締め付け、墓穴だったかなと天嘉が後悔するくらいには良いところに当たってしまい、漏らすように情けない射精を見られてしまった。
天嘉が羞恥で顔を赤らめた。それだけの表情の変化を見るだけで、蘇芳が真剣な声色で可愛いなどと宣うのが始末に負えない。
馬鹿なんじゃねえかなこいつ。そう思うことができるほど、天嘉の理性が少しだけ戻ってきた。
散々泣かされはしたが、漸く天嘉は蘇芳の腕の檻の下で、足を開かされたまま、真っ直ぐに蘇芳を見上げた。
「前からで、腹は平気か…」
目線が絡まる。先ほどとは打って変わり、蘇芳の表情に微かに心配の色が混じった。
「…平気、あんま…こっちみんな、」
「俺の顔を見ながらしたいと言ったのは天嘉の方なのにか。」
「…、あの…」
そうなんだけど、指摘しないで欲しかった。じわりと耳が熱くなる。蘇芳の悲しげな声色を聞いた時から、天嘉は素直にならなくてはいけない様な気がしたのだ。
嫌いじゃない、こうして体を許すくらいには。
蘇芳の気持ちと、同じだけの気持ちを返す勇気はない、というか、言葉にするという勇気がない。成人してから一年しか立っていない天嘉にとって、もしかしたら好きかも、という感情だけで動くにはあまりにも常識から離れた関係だし、それに天嘉だって矜持がある。
一個一個、噛み砕いて飲み込んで、腹に収めなくてはダメなのだ。
そして、そんなややこしく、甘やかな痛みを伴う如何ともし難いこの感情を語彙に変換するくらいなら、天嘉は行動で表す。
「おいで、」
「おいで?」
「確かめなきゃ、俺は先に進めない…」
「天嘉…」
両手を広げて見上げてくる天嘉の言葉に、蘇芳の胸はぎゅっと引き絞られた。
光明だ。これは果て無く続く曇天を切り裂いて差し込んだ、一つの光明の光なのだ。
蘇芳は、今までは侍ってきた雌の求めてくるままに抱いてばかりであった。だから、自分から雌の腕の中に入ったことはない。
細く、白い体が受け入れようとしてくれている。蘇芳はそっと、押し潰さないように気をつけながら、その腕の中に体を収めた。
細い腕が緩く背中に回る。触れた手のひらでわかる。小さな手だ。天嘉の手に引き寄せられるがままにその身を寄せると、優しく背中に腕が回った。そして、まるで幼児を誉めるかのようにして頭を撫でられた。
「うぉ、お、おおう…」
「なんだその声…」
「いや、なんだ…面映い…」
照れた。まるで幼児を甘やかすかのように天嘉の手が蘇芳の髪を撫でるのだ。なんだ、これ。蘇芳は胸の鼓動が喧しくなった。やめろ、こんなにうるさいと、天嘉に笑われてしまうだろうが。止まれ、頼むから止まってくれ。
頭ではそう思いながらも、思考とは裏腹に蘇芳の下肢は非常に素直であった。
「ひゃ…っ、お、…おきく、すんな…ばか、」
「そんなの、無理だろう…」
顔を赤くし、急に口下手になった蘇芳の様子が面白い。天嘉は腹に埋まった性器の存在に、小さく身を震わせる。
こんな、上等な雄の性器が腹に埋まっている。こんななんの魅力もないだろう、痩せっぽちの天嘉の体を使って、せこせこと種をつけて孕ませる。本当に、なんて残念な奴なんだろう。そう思うと、バツが悪そうにしている蘇芳の顔が急に可愛く見えてくる。
どうやら俺は、ここにきて大概にバカになったらしい。天嘉は蘇芳の頬を両手で包むと、初めて自分から口付けをした。
「っ、…」
「ん、んぅ…、ふ…」
なんとも拙く、そして蘇芳にとってはとてつもない衝撃を伴った口付けだった。重ねた唇。今度のそれは薬湯の風味ではなく、天嘉の熱い体温に溶かされるような甘やかな唾液のとろみが、そっと拙く口の中に侵入してくる。
こんなの、無理に決まっているだろう。
頭の後ろが、カッと燃える様に熱くなる、蘇芳は下手くそな口付けをする天嘉の顎を己の手で固定すると、教え込むようにして押し込んだ舌で、天嘉の薄い舌を絡め取る。
「っふ、ん、ンん、んー…!」
「っは、…ああ、好きだ天嘉、すまない、もう辛抱ができん、すまん。」
「っぁ、は…や、う、ぅそ…あ、あ、あ、あっ」
ぷは、と唾液が口端からだらしなく垂れた。天嘉はその美しい黄昏の瞳に欲の灯火を灯す、番いである蘇芳の体に押さえつけらえるようにして、激しく体を揺さぶられた。それは、宙に投げ出した細い足を行き場なく遊ばせてしまうほど、激しい律動であった。
「ひ、ん…んぁ、や、あっだ、だぇ…ら、や、やあぁ、っ…」
「無理だろう、…っ、愛しきもの、からの、接吻だぞ…!今更せぬと言ってくれるなよ、天嘉…」
「ひぅ、ン…んぅ、ふ…」
にゅく、と割り開く様にして蘇芳の舌が侵入する。熱く、味蕾を擦り合わせるかのようなそれは、酒精を帯びてしまったかのような気持ちの良い酩酊感を伴った。
気持ちいい、この口付けは気持ちがいい。
足を無様に開かされ、明確に種を注ごうとする獰猛な雄の律動の下、天嘉は言外に雌だと腹に教え込まれる。
尻が縁が捲れ、今ここを犯しているのだと教え込む蘇芳の性器が、天嘉の内側を満たしていくようだった。
こんなにも不毛な行為をしているのに、蘇芳は何度も教え込む様に天嘉に口付け、髪を撫で、口付けの合間に名前を呼ぶ。こちらが切なくなってしまうほどの甘やかで優しい声色で、天嘉の名を紡ぐのだ。
ああ、こんなふうに、愛されたことなどなかったなあ。天嘉の眦が熱く濡れる。睫毛を震わし、縋るように強まった天嘉の腕の力に、蘇芳の喉がグルルとなった。
「ふ、ぅあ、あ…あ、んぃ、い…から、あ、…っ」
「天嘉…、」
「も、おまぇ…、の…好き、に…」
「天嘉…!!」
こんな貧相で、なんの取り柄もない俺を好きだっていうなら、もうそれでいいじゃないか。愛情を知らない俺が、そもそも好きかどうかの物差しで蘇芳のことを図ろうとすること自体が間違いなのだ。
天嘉は口付けを何度も受け入れ、赤くなった唇からだらしなく唾液を零しながら、蘇芳の髪を撫で、頬に擦り寄り、揺さぶられるままに全てを許した。
蘇芳の獰猛で、重く、それでいてまっすぐな愛情は、支配という形で天嘉の細い体を縛り付ける。
いいじゃないか、不器用同士、お似合いじゃないか。天嘉は自身の体が蘇芳によって雌にされていくのを、この身を持って喜びであると教え込まされた。この気持ちのいいことを教えてくれる、己の雄である蘇芳の大きな手のひらに触れられることを、体が喜んでしまったのだ。もう、受け入れる他はあるまい。幸福だ。そして、完全に降伏した。
この上等な雄が、俺にだけ情けなく腰を振るのなら、俺は一生優越感で飯が食える。そんな捻くれたことを思いながら、離すまいと縋りついた手によって、蘇芳の背中には赤い糸のような痕が刻まれた。
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