248 / 273
2章
末永と!
しおりを挟む
「いやぁあーー!!!」
全速力で走って逃げたと思ったのに。まるで戦車のような威圧感と恐ろしいくらいのバイタリティーを秘めた瞳に捉えられ、気づけばいかついオカマによって学は可愛いくメイクを施された。
先程の悲鳴は、事件の根源であるカズ隊長とか呼ばれたオカマのもので、何でも安っぽいメイド服が許せなかったらしい。
「し、しんじらんないわ!!あんたみたいな逸材が、こんなチープな宴会衣装に身を包んでいるでなんてし、しんじらんないつ!!」
「俺はお前の格好のほうがしんじらんねえよ…」
「なんかいったかしら?」
「アッイエナニモ…」
学はというと、メイクが終わったからと縛り付けられていたパイプ椅子からやっと開放されていた。暴れたせいでシワになったスカートの裾を適当に治し、恐る恐る備え付けの鏡を覗き込む。
無理やりつけられた金髪のつけ毛もあいまって、見事に女の子である。いかんせん歩き方は普通に男なので、別途隊長の指導は入る予定だが。
「うける。俺かわいー‥」
「あんた達全員素材がいいもの。きいちくんが蓮なら葵ちゃんら百合、あんたは薔薇ってかんじ。」
「あんだよ、刺々しいって?」
「可愛い顔に騙されちゃう男からしてみたら、あながち間違いじゃなくてよ。」
パチンとポーチを鞄にしまうと、さも当たり前かのように和葉は控え室のパイプ椅子に腰掛けた。
どうやら居座る気満々らしい。ミスコンの後に商品説明もかねてあんたたち使うわねと不穏なことを抜かしていたので、恐らく葵も壇上に連れてこられるのは決定のようだった。
「ほら、もうおいきなさい。整ったあんたにはもう用はないわ。」
「ったくなんなんだよもー、まじでこええわ。」
葵はパソコンを開くと、そのままカタカタと仕事を始めてしまった。ミスコン開始時刻までに紹介予定の商品をサイトにアップするらしい。ミスコンをみた、で割引になるようにするらしく、もはや商魂逞しくて抜け目もない。常に先回りするのがモットーらしく、ギフト用のセットまで作る予定だという。
学はしばらく自分の変わりようをまじまじと見つめていたが、やがてせっかくなら末永にもみせるかと思い至ったらしく、仕事中の和葉にサンキュー!と言ってから部屋をあとにした。
「…むりやりやったとはいえ、まさかサンキューと言われるとは思わなかったわ。」
あの子って意外と素直で可愛いじゃない。ポロリと溢した後、少しだけご機嫌になるのだった。
ところかわって、末永である。
手にした進行表通りに段取りも終わった。ミスコンまでの一時間、末永は高校最後の文化祭を学と二人で回りたかった。
しかし先程から連絡が途絶えたのだ。なにか忙しくしているのだろうか、それともきいちがくるとしってそっちに行っているのか。
末永は番になっても、自分の優先順位がきいちより下なのではと思うところがあり、そこがなんとなく悔しい。まあ嫉妬なのだが、きいちじしんも良いやつなのであからさまに態度に出すことはしなかった。
ただ、なんというかすこしだけ
「末永みっけ!」
寂しい。そうおもったときだった。
背中に小柄な体がどんと飛びついてきて、末永はニヤつく口元を誤魔化してから、くるりと振り替えった。
「まな、…」
「ミスコン、これででようとおもうんだけど…どーよ。」
目の前の金髪美少女から学の声がする。末永は瞬きせずにまじまじと学だろう美少女を見ると、その視線がいやだったのか頬を染めながら目をそらした。
「かっっっっ、」
「あ?」
「んんっ、うん。よく似合っている。」
危なかった。可愛いと言おうものならあしげにされていたにちがいない。ココ最近で学の扱い方はよく知っていた。可愛いは公共の場ではNGワードだ。慌てて言い換えた末永に、学は長いまつ毛を瞬かせて、少しだけ照れながらはにかんだ。
「かわいい!!!!」
「か、かわいくねえ!!!!」
「いたい!!」
ずびしとものすごい勢いのパンチが脇に入る。いかん。学をみてつい叫んだのが照れたらしい。照れた顔から恥ずかしいからやめろといった顔色に変化している。
「キスしたい。していいか学」
「だめにきまってんだろ!」
「だって誰もいないぞ。」
「だからってどこだと思ってんだお前!」
体育館の舞台幕の内側ですが、なにか。
後一時間後には開幕するということもあり、舞台セッティングが済んだ今、その他の生徒は体育館の席に座り時間を潰す者や、クラスに戻るもの。出店を回るもので席を外しており、学と末永は舞台幕の内側、まあ舞台袖の方なのだが、そこで二人きりだった。
人気がいないため、学も末永に抱きついたのだけれど、まさかここまで末永が食いついてくるとは思わず、腰を引き寄せられて体が密着すると、いよいよ末永の本気度が伺えた。
「ちょ、まってってば…キスしたら口紅がよれるたろ…」
「構わない。」
「俺が構うんだわ!!」
学のちいさな手が末永の口元を抑える。そりゃあ、最後の文化祭だ。学だって思い出つくりはしたい。なんならこの格好で致したっていいわけだ。やけにぎらつく末永に、こんな顔をさせてるのは俺という優越感だってある。
手の平の裏側を、べろりと舐め上げられた。まじかよこいつ。じわりと耳が赤くなったのがバレたようで、末永は学を包み込むようにしてぎゅう、と抱きしめた。
「とても似合ってる、ああ…誰にも見せたくないな」
「食券もらうためだからな」
「なあ、終わったらまた、着てくれるか?」
「ん、またあの時みたいに…シてえの?」
小さい手が末永の頬を撫でる。頬を染めながら見上げた瞳の奥は、仄かに欲を孕んだ色をしていた。
学の細い足の間を、末永の長い脚が詰めるようにして差し込まれる。思わずよろめいて壁際まで追い詰められると、口端に甘く吸い付かれた。
「んんっ、」
「舌だけでいい、だめか?」
「…しかたねーな。」
かすかに反応する素直な末永に、学の体がじくんと熱をともした。いわれるがままに薄くみずみずしい舌を差し出すと、末永の口がしゃぶるようにそれを口に含む。ちゅ、と吸い付いて学の唾液を飲み込むと、あぐ、と肩口に歯型を残してべろりと舐め上げた。
「ぁ、っ、…も、ばかやろ…」
「はあ、くそかわいい。犯してやりたい。」
「っん、だめ…帰ったらな。」
「む…仕方ない。」
よほど高ぶったのか、セックスをする時のように荒い言葉を呟く。窘めた学の言うことを渋々聞くと、そっと体を離した。
「ああ、勃起した。どうしよう。」
「ブッ、あははは!!!」
心底弱った。といった顔でテントを貼った下肢を見つめる末永がなんだかものすごく間抜けでおもしろい。
欲なんて知りませんといった精悍な顔立ちのイケメンが、真顔で勃起したそこを目の前に途方に暮れているシチュエーションも、ある意味忘れられない文化祭の爪痕になったのだった。
全速力で走って逃げたと思ったのに。まるで戦車のような威圧感と恐ろしいくらいのバイタリティーを秘めた瞳に捉えられ、気づけばいかついオカマによって学は可愛いくメイクを施された。
先程の悲鳴は、事件の根源であるカズ隊長とか呼ばれたオカマのもので、何でも安っぽいメイド服が許せなかったらしい。
「し、しんじらんないわ!!あんたみたいな逸材が、こんなチープな宴会衣装に身を包んでいるでなんてし、しんじらんないつ!!」
「俺はお前の格好のほうがしんじらんねえよ…」
「なんかいったかしら?」
「アッイエナニモ…」
学はというと、メイクが終わったからと縛り付けられていたパイプ椅子からやっと開放されていた。暴れたせいでシワになったスカートの裾を適当に治し、恐る恐る備え付けの鏡を覗き込む。
無理やりつけられた金髪のつけ毛もあいまって、見事に女の子である。いかんせん歩き方は普通に男なので、別途隊長の指導は入る予定だが。
「うける。俺かわいー‥」
「あんた達全員素材がいいもの。きいちくんが蓮なら葵ちゃんら百合、あんたは薔薇ってかんじ。」
「あんだよ、刺々しいって?」
「可愛い顔に騙されちゃう男からしてみたら、あながち間違いじゃなくてよ。」
パチンとポーチを鞄にしまうと、さも当たり前かのように和葉は控え室のパイプ椅子に腰掛けた。
どうやら居座る気満々らしい。ミスコンの後に商品説明もかねてあんたたち使うわねと不穏なことを抜かしていたので、恐らく葵も壇上に連れてこられるのは決定のようだった。
「ほら、もうおいきなさい。整ったあんたにはもう用はないわ。」
「ったくなんなんだよもー、まじでこええわ。」
葵はパソコンを開くと、そのままカタカタと仕事を始めてしまった。ミスコン開始時刻までに紹介予定の商品をサイトにアップするらしい。ミスコンをみた、で割引になるようにするらしく、もはや商魂逞しくて抜け目もない。常に先回りするのがモットーらしく、ギフト用のセットまで作る予定だという。
学はしばらく自分の変わりようをまじまじと見つめていたが、やがてせっかくなら末永にもみせるかと思い至ったらしく、仕事中の和葉にサンキュー!と言ってから部屋をあとにした。
「…むりやりやったとはいえ、まさかサンキューと言われるとは思わなかったわ。」
あの子って意外と素直で可愛いじゃない。ポロリと溢した後、少しだけご機嫌になるのだった。
ところかわって、末永である。
手にした進行表通りに段取りも終わった。ミスコンまでの一時間、末永は高校最後の文化祭を学と二人で回りたかった。
しかし先程から連絡が途絶えたのだ。なにか忙しくしているのだろうか、それともきいちがくるとしってそっちに行っているのか。
末永は番になっても、自分の優先順位がきいちより下なのではと思うところがあり、そこがなんとなく悔しい。まあ嫉妬なのだが、きいちじしんも良いやつなのであからさまに態度に出すことはしなかった。
ただ、なんというかすこしだけ
「末永みっけ!」
寂しい。そうおもったときだった。
背中に小柄な体がどんと飛びついてきて、末永はニヤつく口元を誤魔化してから、くるりと振り替えった。
「まな、…」
「ミスコン、これででようとおもうんだけど…どーよ。」
目の前の金髪美少女から学の声がする。末永は瞬きせずにまじまじと学だろう美少女を見ると、その視線がいやだったのか頬を染めながら目をそらした。
「かっっっっ、」
「あ?」
「んんっ、うん。よく似合っている。」
危なかった。可愛いと言おうものならあしげにされていたにちがいない。ココ最近で学の扱い方はよく知っていた。可愛いは公共の場ではNGワードだ。慌てて言い換えた末永に、学は長いまつ毛を瞬かせて、少しだけ照れながらはにかんだ。
「かわいい!!!!」
「か、かわいくねえ!!!!」
「いたい!!」
ずびしとものすごい勢いのパンチが脇に入る。いかん。学をみてつい叫んだのが照れたらしい。照れた顔から恥ずかしいからやめろといった顔色に変化している。
「キスしたい。していいか学」
「だめにきまってんだろ!」
「だって誰もいないぞ。」
「だからってどこだと思ってんだお前!」
体育館の舞台幕の内側ですが、なにか。
後一時間後には開幕するということもあり、舞台セッティングが済んだ今、その他の生徒は体育館の席に座り時間を潰す者や、クラスに戻るもの。出店を回るもので席を外しており、学と末永は舞台幕の内側、まあ舞台袖の方なのだが、そこで二人きりだった。
人気がいないため、学も末永に抱きついたのだけれど、まさかここまで末永が食いついてくるとは思わず、腰を引き寄せられて体が密着すると、いよいよ末永の本気度が伺えた。
「ちょ、まってってば…キスしたら口紅がよれるたろ…」
「構わない。」
「俺が構うんだわ!!」
学のちいさな手が末永の口元を抑える。そりゃあ、最後の文化祭だ。学だって思い出つくりはしたい。なんならこの格好で致したっていいわけだ。やけにぎらつく末永に、こんな顔をさせてるのは俺という優越感だってある。
手の平の裏側を、べろりと舐め上げられた。まじかよこいつ。じわりと耳が赤くなったのがバレたようで、末永は学を包み込むようにしてぎゅう、と抱きしめた。
「とても似合ってる、ああ…誰にも見せたくないな」
「食券もらうためだからな」
「なあ、終わったらまた、着てくれるか?」
「ん、またあの時みたいに…シてえの?」
小さい手が末永の頬を撫でる。頬を染めながら見上げた瞳の奥は、仄かに欲を孕んだ色をしていた。
学の細い足の間を、末永の長い脚が詰めるようにして差し込まれる。思わずよろめいて壁際まで追い詰められると、口端に甘く吸い付かれた。
「んんっ、」
「舌だけでいい、だめか?」
「…しかたねーな。」
かすかに反応する素直な末永に、学の体がじくんと熱をともした。いわれるがままに薄くみずみずしい舌を差し出すと、末永の口がしゃぶるようにそれを口に含む。ちゅ、と吸い付いて学の唾液を飲み込むと、あぐ、と肩口に歯型を残してべろりと舐め上げた。
「ぁ、っ、…も、ばかやろ…」
「はあ、くそかわいい。犯してやりたい。」
「っん、だめ…帰ったらな。」
「む…仕方ない。」
よほど高ぶったのか、セックスをする時のように荒い言葉を呟く。窘めた学の言うことを渋々聞くと、そっと体を離した。
「ああ、勃起した。どうしよう。」
「ブッ、あははは!!!」
心底弱った。といった顔でテントを貼った下肢を見つめる末永がなんだかものすごく間抜けでおもしろい。
欲なんて知りませんといった精悍な顔立ちのイケメンが、真顔で勃起したそこを目の前に途方に暮れているシチュエーションも、ある意味忘れられない文化祭の爪痕になったのだった。
9
お気に入りに追加
714
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
トップアイドルα様は平凡βを運命にする
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。
ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。
翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。
運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
もし、運命の番になれたのなら。
天井つむぎ
BL
春。守谷 奏斗(α)に振られ、精神的なショックで声を失った遊佐 水樹(Ω)は一年振りに高校三年生になった。
まだ奏斗に想いを寄せている水樹の前に現れたのは、守谷 彼方という転校生だ。優しい性格と笑顔を絶やさないところ以外は奏斗とそっくりの彼方から「友達になってくれるかな?」とお願いされる水樹。
水樹は奏斗にはされたことのない優しさを彼方からたくさんもらい、初めてで温かい友情関係に戸惑いが隠せない。
そんなある日、水樹の十九の誕生日がやってきて──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる