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2章
こんな僕でも
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「きいち、」
「んえ…?」
そっと髪を避けられて頬を撫でられる。枕の片側が少しだけ重みで凹んで軋む音で、僕はゆっくりとその声の主を探すようにぺたぺたとシーツを探る。
くすりと小さく笑う声がして、薄ぼんやりとした思考のまま目を開くと、僕に覆い被さったまま笑いを堪えた俊くんがいた。
「ほあ!?!?」
「お、っと…凪が起きる。本格的に寝るなら歯を磨け。」
「あ、ああ、あ!は、歯磨き!!歯磨きね!」
うたた寝したままだったことを思いだし、恐らくベッドまで運んでくれたんだろう、ゆっくり起き上がると、僕の隣でぷうぷうと寝息を立てた凪がいた。
「凪見とくから、洗面所でさっぱりしてこい。もう歯磨き粉はつけといたから。」
「うん、ありがと…」
凪を起こさないようにそっと起き上がって、寝室を出て洗面所にいく。まるで押し倒されでもしたかのようなシチュエーションに、不覚にもどきりと心臓は跳ねてしまったのだ。
俊くんが用意してくれていた歯ブラシでしゃこしゃこと歯を磨く。僕はさっき、何を想像した?凪の為にもしっかりしなきゃいけないのに、浮ついた思考が少しでもよぎってしまいまった。
欲を孕んだ瞳で見つめられたわけじゃない。純粋に、親切でおこしてくれたのに、
「なんか、はしたなくてやだな…」
少し顔が熱い。そういえば昼間に裸で抱き合ったんだっけ。ここで、俊くんは痩せて面白みもなくなってしまったこの体に反応までしてくれていた。
口を濯ぎ、鏡に映った僕の顔はわかりやすい位赤らんでおり、あのときのことを思い出してしまったせいか、じゅわりと唾液が口の中に溜まる。キスしたかったなと考えたらもう駄目で、無意識に自分の唇に触れてしまっていた。
「うあ、うそ…」
じく、と昼間のことを考えただけで性器は緩く立ち上がってしまい、そういえば凪の夜泣きや初めての経験でドタバタと忙しない日々を過ごしていた為、全然自慰をする暇もなかった。妊娠して、一度だけセックスをしたあのとき以来、出してすらない。
昼間の時はどうやって収めたんだっけ。ああ、誤魔化したままだったんだ。ぐるりと渦巻く熱に、恐る恐る下肢を見る。借りたスウェットの布地を押し上げるようにして勃起している僕の性器に、なんだか情けないやら恥ずかしいやらで泣きたくなる。
寝室に戻らなきゃ行けないのに、どうしよう。意識するともうだめで、じくじくと熱が渦巻くせいで思考もしづらい。もういっそトイレで抜いてしまおうか。少し迷った挙げ句、結局扉に手をかけ中に入る。服の裾をくわえてスウェットを下に落とすようにして脱ぐと、トイレに鍵をしっかりかけてから便座に腰を下ろした。
「うう…なさけない…」
自分がすることを見たくなくて、ギュッと目を瞑ったままトロトロと先走りを零すそこに触れる。なるべく音を立てたくなくて、息を殺しながら震える手でにゅくにゅくと事務的に手を動かす。
先走りが手の動きを助けてくれるのに、イけるかといったら刺激が足りない。
「は…んっ…、な、なんで…」
僕ってこんなに下手だったっけ?と思うくらい決め手にかける。出したいのに、全然だせない。はふはふと息を漏らしながらにゅるんと先端を刺激しても、滞留する熱がいたずらに煽られるばかり。なんだかわけがわからなくなって、手をベタベタにしたままゴンと扉に頭をぶつけた。
「ばかじゃん…両手汚しちゃった…」
あーあ、とべたべたな手を見て溜息を吐いたときだった。
「おい、大丈夫か?」
「ひぇっ」
コンコンとノックの音とともに俊くんの声がした。そりゃそうだ、歯磨きしてくると言ってからなかなか戻ってこなければ心配もするだろう。あれから15分位たってるかもしれない、やばい。こんな情けない姿、見られたらしぬ。
「きいち?具合悪いのか?」
「あ、や、ちが、あの…お、お腹痛くて…」
「…ほんとに?」
「もち!!!あはは、た、食べすぎたかなぁ…いてててて…」
うわはは、扉の向こう側で明らかに不審げなオーラを感じるよねえ。あわあわしながら汚した手をトイレットペーパーで拭くと、まだすこしじんじんする性器を無理やり押し込めてトイレから出る。流れる水とともに僕の罪悪感も消えてくれればいいのに、どうやらそんな都合良くは行かないみたいだ。
ガチャリと扉を開いてこそりと顔を覗かせると、心配そうな顔をした俊くんがそこにいた。
「もういいのか?」
「うん…、心配かけやした…」
まじまじと見つめられ、頬が熱くなる。おかずにしたのがバレたら気まずいので、顔が赤いのがバレないように俯きながらそそくさとトイレからでると、ぽんぽんと頭を撫でられた。
どうしよう、キレの心配をされていたら。出るか出ないかでいったら違う意味で出なかったのでキレが悪いっちゃあわるいのだが、まだ若干元気なままなので、お腹を擦るふりをして前屈みでこそこそと寝室に向かう。
番に下の心配をされるのがすごく恥ずかしい。ベッドの上で大の字で寝ている凪をみて冷静になったけど、うっ…余計に罪悪感が…
「まだ腹の調子が悪いのか…?」
「ひ、」
さす、と優しく腰を撫でられてじくんと体の奥が疼く。ばばばば、ばかめ!!!そう叫んでもうひとりの僕を咎めたいのにそんな事をできるわけもない。これ以上嘘をつくのが切なくなってきて、曖昧にこくんと頷くと、そうか、辛いな…と心底案じてくれている様子でそっと促されるようにベッドに座らされる。
「凪の夜泣きは授乳以外なら俺がやるから、きいちは寝ろ。辛くなったら起こせ、な?」
「う、うん…」
下肢が辛いんですとは言えない。ぷうぷう可愛い寝息を立てている凪をベビーベッドに移す。リビングからがらがらと運んできたそれは移動式の優れもので、僕の家にも同じものがある。俊くんちにあるのは正親さんがレンタルしたものらしい。
凪の寝るベッドが変わらないように配慮してくれたらしく、今度きちんとお礼をしなくては。
そんなことを思いながら、お腹を抱えるようにベッドの上で小さくなって横になる。バクバクする心臓がやかましい。産後も一緒に寝たのに、なんでこんなに緊張するのか。
俊くんの重みでベッドが沈む。僕の体に優しく布団をかけてくれると、お腹を抑える僕の手に重ねるようにして、俊くんの大きな手が重なった。
「いつも任せっきりでごめんな、ありがとう。」
「ん…実家だし、全然平気だよ?」
俊くんに、そう感謝されるとなんだかすごくくすぐったい。まさかそんなことを言われるとも思わず、なんだか照れてしまい、重ねた俊くんの節ばった指を撫でるように弄ぶ。
短く切られた爪も、僕や凪を傷つけないようにするためだ。凪のお尻を一抱えできてしまう大きな手も、こんなにかっこいいのに男指のその手がカワウソの手みたいでなんだか可愛い。
すりすりと遊んでいるうちに、だんだん僕の熱も引いてくれて、やっと落ち着きを取り戻してきた。
背中に感じる俊くんの体温も、つむじに当たる鼻先も、なんだか心地よくて俊くんの体にぴたりとくっつくように後ろに下がる。
僕のやりたいことに気づいた俊くんが、大きな手でお腹を引き寄せて腰もくっつけると、長い足を絡めて後ろから抱きしめてくれる。
「ふふ、あったか…」
「…おう。」
尻の間に、より強い熱源を感じる。懐かしいこの感覚に、しばし熟考した僕は、盛大な墓穴を掘ってしまったことに気付いて、思わず両手で顔を覆ってしまった。
「はわ……、」
「や、すまん。無視してくれていいから。」
なんだか楽しくなって甘えたせいか、ごりごりとその存在を主張する俊くんの性器を知らぬ間に尻で刺激してしまったらしい。
お腹に回った大きな手が熱い。僕の顔も、熱い。
「…い、今の僕で勃つんだ…」
「当たり前だろ…好きなやつと寝てんだぞ。」
すり、と甘えるように俊くんの鼻先が後頭部に埋まる。僕の心臓は、まるで馬鹿になったかのようにばこんばこんと喧しい音を立てて、指先も震えるレベルだ。好きなやつ、その言葉がグルグルとせわしなく頭を巡り、じわりと目の奥が熱くなった。
「んえ…?」
そっと髪を避けられて頬を撫でられる。枕の片側が少しだけ重みで凹んで軋む音で、僕はゆっくりとその声の主を探すようにぺたぺたとシーツを探る。
くすりと小さく笑う声がして、薄ぼんやりとした思考のまま目を開くと、僕に覆い被さったまま笑いを堪えた俊くんがいた。
「ほあ!?!?」
「お、っと…凪が起きる。本格的に寝るなら歯を磨け。」
「あ、ああ、あ!は、歯磨き!!歯磨きね!」
うたた寝したままだったことを思いだし、恐らくベッドまで運んでくれたんだろう、ゆっくり起き上がると、僕の隣でぷうぷうと寝息を立てた凪がいた。
「凪見とくから、洗面所でさっぱりしてこい。もう歯磨き粉はつけといたから。」
「うん、ありがと…」
凪を起こさないようにそっと起き上がって、寝室を出て洗面所にいく。まるで押し倒されでもしたかのようなシチュエーションに、不覚にもどきりと心臓は跳ねてしまったのだ。
俊くんが用意してくれていた歯ブラシでしゃこしゃこと歯を磨く。僕はさっき、何を想像した?凪の為にもしっかりしなきゃいけないのに、浮ついた思考が少しでもよぎってしまいまった。
欲を孕んだ瞳で見つめられたわけじゃない。純粋に、親切でおこしてくれたのに、
「なんか、はしたなくてやだな…」
少し顔が熱い。そういえば昼間に裸で抱き合ったんだっけ。ここで、俊くんは痩せて面白みもなくなってしまったこの体に反応までしてくれていた。
口を濯ぎ、鏡に映った僕の顔はわかりやすい位赤らんでおり、あのときのことを思い出してしまったせいか、じゅわりと唾液が口の中に溜まる。キスしたかったなと考えたらもう駄目で、無意識に自分の唇に触れてしまっていた。
「うあ、うそ…」
じく、と昼間のことを考えただけで性器は緩く立ち上がってしまい、そういえば凪の夜泣きや初めての経験でドタバタと忙しない日々を過ごしていた為、全然自慰をする暇もなかった。妊娠して、一度だけセックスをしたあのとき以来、出してすらない。
昼間の時はどうやって収めたんだっけ。ああ、誤魔化したままだったんだ。ぐるりと渦巻く熱に、恐る恐る下肢を見る。借りたスウェットの布地を押し上げるようにして勃起している僕の性器に、なんだか情けないやら恥ずかしいやらで泣きたくなる。
寝室に戻らなきゃ行けないのに、どうしよう。意識するともうだめで、じくじくと熱が渦巻くせいで思考もしづらい。もういっそトイレで抜いてしまおうか。少し迷った挙げ句、結局扉に手をかけ中に入る。服の裾をくわえてスウェットを下に落とすようにして脱ぐと、トイレに鍵をしっかりかけてから便座に腰を下ろした。
「うう…なさけない…」
自分がすることを見たくなくて、ギュッと目を瞑ったままトロトロと先走りを零すそこに触れる。なるべく音を立てたくなくて、息を殺しながら震える手でにゅくにゅくと事務的に手を動かす。
先走りが手の動きを助けてくれるのに、イけるかといったら刺激が足りない。
「は…んっ…、な、なんで…」
僕ってこんなに下手だったっけ?と思うくらい決め手にかける。出したいのに、全然だせない。はふはふと息を漏らしながらにゅるんと先端を刺激しても、滞留する熱がいたずらに煽られるばかり。なんだかわけがわからなくなって、手をベタベタにしたままゴンと扉に頭をぶつけた。
「ばかじゃん…両手汚しちゃった…」
あーあ、とべたべたな手を見て溜息を吐いたときだった。
「おい、大丈夫か?」
「ひぇっ」
コンコンとノックの音とともに俊くんの声がした。そりゃそうだ、歯磨きしてくると言ってからなかなか戻ってこなければ心配もするだろう。あれから15分位たってるかもしれない、やばい。こんな情けない姿、見られたらしぬ。
「きいち?具合悪いのか?」
「あ、や、ちが、あの…お、お腹痛くて…」
「…ほんとに?」
「もち!!!あはは、た、食べすぎたかなぁ…いてててて…」
うわはは、扉の向こう側で明らかに不審げなオーラを感じるよねえ。あわあわしながら汚した手をトイレットペーパーで拭くと、まだすこしじんじんする性器を無理やり押し込めてトイレから出る。流れる水とともに僕の罪悪感も消えてくれればいいのに、どうやらそんな都合良くは行かないみたいだ。
ガチャリと扉を開いてこそりと顔を覗かせると、心配そうな顔をした俊くんがそこにいた。
「もういいのか?」
「うん…、心配かけやした…」
まじまじと見つめられ、頬が熱くなる。おかずにしたのがバレたら気まずいので、顔が赤いのがバレないように俯きながらそそくさとトイレからでると、ぽんぽんと頭を撫でられた。
どうしよう、キレの心配をされていたら。出るか出ないかでいったら違う意味で出なかったのでキレが悪いっちゃあわるいのだが、まだ若干元気なままなので、お腹を擦るふりをして前屈みでこそこそと寝室に向かう。
番に下の心配をされるのがすごく恥ずかしい。ベッドの上で大の字で寝ている凪をみて冷静になったけど、うっ…余計に罪悪感が…
「まだ腹の調子が悪いのか…?」
「ひ、」
さす、と優しく腰を撫でられてじくんと体の奥が疼く。ばばばば、ばかめ!!!そう叫んでもうひとりの僕を咎めたいのにそんな事をできるわけもない。これ以上嘘をつくのが切なくなってきて、曖昧にこくんと頷くと、そうか、辛いな…と心底案じてくれている様子でそっと促されるようにベッドに座らされる。
「凪の夜泣きは授乳以外なら俺がやるから、きいちは寝ろ。辛くなったら起こせ、な?」
「う、うん…」
下肢が辛いんですとは言えない。ぷうぷう可愛い寝息を立てている凪をベビーベッドに移す。リビングからがらがらと運んできたそれは移動式の優れもので、僕の家にも同じものがある。俊くんちにあるのは正親さんがレンタルしたものらしい。
凪の寝るベッドが変わらないように配慮してくれたらしく、今度きちんとお礼をしなくては。
そんなことを思いながら、お腹を抱えるようにベッドの上で小さくなって横になる。バクバクする心臓がやかましい。産後も一緒に寝たのに、なんでこんなに緊張するのか。
俊くんの重みでベッドが沈む。僕の体に優しく布団をかけてくれると、お腹を抑える僕の手に重ねるようにして、俊くんの大きな手が重なった。
「いつも任せっきりでごめんな、ありがとう。」
「ん…実家だし、全然平気だよ?」
俊くんに、そう感謝されるとなんだかすごくくすぐったい。まさかそんなことを言われるとも思わず、なんだか照れてしまい、重ねた俊くんの節ばった指を撫でるように弄ぶ。
短く切られた爪も、僕や凪を傷つけないようにするためだ。凪のお尻を一抱えできてしまう大きな手も、こんなにかっこいいのに男指のその手がカワウソの手みたいでなんだか可愛い。
すりすりと遊んでいるうちに、だんだん僕の熱も引いてくれて、やっと落ち着きを取り戻してきた。
背中に感じる俊くんの体温も、つむじに当たる鼻先も、なんだか心地よくて俊くんの体にぴたりとくっつくように後ろに下がる。
僕のやりたいことに気づいた俊くんが、大きな手でお腹を引き寄せて腰もくっつけると、長い足を絡めて後ろから抱きしめてくれる。
「ふふ、あったか…」
「…おう。」
尻の間に、より強い熱源を感じる。懐かしいこの感覚に、しばし熟考した僕は、盛大な墓穴を掘ってしまったことに気付いて、思わず両手で顔を覆ってしまった。
「はわ……、」
「や、すまん。無視してくれていいから。」
なんだか楽しくなって甘えたせいか、ごりごりとその存在を主張する俊くんの性器を知らぬ間に尻で刺激してしまったらしい。
お腹に回った大きな手が熱い。僕の顔も、熱い。
「…い、今の僕で勃つんだ…」
「当たり前だろ…好きなやつと寝てんだぞ。」
すり、と甘えるように俊くんの鼻先が後頭部に埋まる。僕の心臓は、まるで馬鹿になったかのようにばこんばこんと喧しい音を立てて、指先も震えるレベルだ。好きなやつ、その言葉がグルグルとせわしなく頭を巡り、じわりと目の奥が熱くなった。
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