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2章
ちいさなきっかけ
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「おお、ピカピカ…」
「凪とお前が来るから徹底的にきれいにしてもらった。」
塵一つないはずだと誇らしげにしているが、頑張ったのはハウスクリーニングさんでぇす。
とまあ、なんとも気合を入れてくれたようで大変有り難いことである。お外から帰ってきたので、先に凪のオムツ変えてから沐浴するかとベビーカーからバックを出す。
「僕先に凪ちゃん沐浴させてくる。俊くんご飯食べててもいーよ?」
「ならみんなで入るか、風呂。」
「え。」
ま、まじでか。それはぁーちょーっと…、と僕のぎこちない誤魔化しを不審に思った俊くんの眉間のシワがよるわよるわ。
「なんだ、裸見られて困ることでもあるのか?」
「別にないけど、狭いしはずかしいから俊くんはゆっくり一人ではいりなよ、僕後ででいいし。」
「お前の尻の穴まで知ってるのに?」
「それでも、やなの!」
裸はとにかく見られたくなくて、ぶすっとして言い返すとしょんもりと眉を下げた。もしかしたら、入りたかったのだろうか。それなら悪いことをしたと思うけど、入るならもう少し太ってからにしたいのだ。
ほんとうに、しぶしぶといった具合に、わかった。と言った俊くんは、着替えてくるといって部屋に向かってしまった。
「っ、うー‥」
なんだかとても後味がよろしくない。今考えてみれば、こうして二人でゆっくりできるのも2ヶ月ぶり位なのに、なんでこんなふうな言い方しかできないんだろう。
少しだけ落ち込んで、浴室の扉を開ける。
バスタブの縁に並んだアヒルが2羽から3羽に増えていた。僕が買うって言ってたのをおぼえてたらしい。俊くんが用意してくれていたその3羽目は、少しだけ小さくて幼い顔をしていた。
「ぁー」
「ごめんねぇ、すぐ気持ちいしようねぇ。」
僕もついでにはいるかと、脱衣場で服を脱ぐ。沐浴用のベビーバスは空気を入れるだけなのですぐだ。
下着まで全部脱いで、鏡を見る。お腹の妊娠線だったものは薄くてわかりづらいけど、少し肉を寄せると途端にひび割れたようになる。
腰回りは骨盤が開いたのか少し肉付き、そのわりに肩とかは何となく骨ばってるような気がしてならない。胸元は授乳してるせいかそこだけ腫れて赤くなってるし、なんか、歪だ。
よっと脱がした凪を抱き上げると、突然ガラリと脱衣場の扉が開いた。
「っ!」
「あ?わり…」
慌てて凪を抱っこしたまま勢いよくしゃがむ。体をできるだけ小さくしていると、無言で俊くんが立ちつくしたままだった。
「な、なんでっ…や、やだっていった!」
「や、だってお前は後で入るみたいなこと言うから…」
「いっ、…」
言ったわ。そういや僕は後でいいからって言ったんだった。胸に抱かれた凪が、はぷっと乳首に吸い付く。まさかのタイミングすぎて、慌てて飲みやすいように抱き直すと、小さい手を胸に添えながらちゅむちゅむと口を動かす。
僕はなんだかもう恥ずかしすぎて、とにかく顔を見られたくなさすぎて、もそもそと俊くんに見えないように背を向けるとバスタオルを体にかけられた。
「それ、取るなよ。目に毒過ぎて襲いそうだ。」
かちゃかちゃと俊くんがベルトを外す音がして、服を脱ぐ衣擦れの音がした。僕は俊くんが言った言葉で頭がいっぱいになって、余計に顔に熱が集まってしまう。
キスもハグも、最近ぐんと減ってしまった。当然そういう行為だって妊娠してから全くしていない。
自分で見られたくないってわがままを言って傷つけたくせに、俊くんの一言で体は簡単に兆してしまう。
「ぅ、ぐすっ…」
なんて情けない。真っ裸で授乳しながらタオルにくるまって、僕の雄の部分は少しだけ反応してしまう。俊くんはバシャバシャと水音を立てながらシャワーを浴びている。どうしようこれ、なんとなくバレたくなくて膝をすり合わせる。凪を抱いてるのにそんなことできるわけもないのだ。
ガチャン、と扉が開く音がして、濡れた髪をかきあげた俊くんが眼を丸くして見下ろす。まだそこに座っていたのかといった感じだ。慌てて目を擦ったのがバレたのか、同じ目線までしゃがみ込む。
「どした、具合悪い?」
「ち、ちが…、」
「沐浴、俺がしとくからきいちは体温めな。見られたくないならここでやるから。」
「うぅ…、っ…」
気を使わせたくないのに、僕のわがままで振り回しちゃうのが申し訳なくて思わず涙声になる。心底弱ったといった顔の俊くんの濡れた髪を拭ってあげたくて、肩にかけてたタオルを渡す。意味を理解した俊くんが、小さくサンキュ、と言ってガシガシと髪を拭う。
「おわ、っと…きいち?」
凪を抱いたまま片手で俊くんに抱きつく。凪は僕と俊くんに挟まれて少しだけ楽しそうにしていた。
少し濡れた俊くんの温かい体に、ぴとりとくっついて肩口に頬を擦り寄せる。ぐすぐすと愚図る僕に溜息を吐くと、タオルで包むようにギュッと抱きしめてくれた。
「体、見られたくねーとかいってなかったか。」
「うん、」
「凪居なかったら襲ってるぞまじで。」
「うん、」
まったく、と小さく呟いた俊くんの無骨な手のひらが、そっと背中を撫でた。恐る恐る撫でたと思ったら、今度は確かめるように手の平をぴたりと肌に添えて。腰回りを少しだけ揉むように触れると、そのまま両腕で包むように抱きしめてくれる。
「…痩せただろ、やっぱり。」
「貧相になって、ごめんね。」
「なんで謝る?頑張ってる魅力的な体だろうが。」
「そうかな、胸だってなんか、へんだよ。」
「やめろ、意識して勃起させねーようにしてんだから。あんま煽るな。」
「俊くん今の僕でげんきになるの…?」
「…そりゃあ、なるだろ。」
そっと腰を抱き寄せられ、あたる俊くんのそれは微かに兆していて、ぶわりと体中の熱が顔に集中する。た、勃つんだこの体で…
「……。」
「おい、黙って照れるな。」
「ぁぶ」
「な、凪のお風呂しなきゃだから…」
「おう、」
気恥ずかしくなって、そっと胸を押して体を離す。素直に腕を解いた俊くんが少しだけ満足そうに笑って、僕の体に新しいタオルをかけてくれた。
「温まってからな、飯の支度して待ってるから。」
「あ、うん…」
まるで気持ちは処女になってしまったのではと思うくらい、心臓がばくばくだ。
触れ合いをしてなかったから、こんなに素肌で距離が近くなると、もうだめだ。
ドキドキを誤魔化したくて、無心になって凪の沐浴を済ませると、ポロリと凪のお腹から乾いたへその緒がとれた。
慌てて無くさないようにそっとそれを手に取ると、凪は痛くないようで呑気にあくびをしていた。
「と、とれた…凪のへその緒…」
いつもおへそ周りはケアしてたけど、中々取れる気配がなかったのに。
「へっ、くし…っ…と、とりあえずへその緒と凪を俊くんに預けよ…」
自分の体を構わなさすぎて、気づけば結構冷えていた。うとうとしている凪を抱きながら、腰にタオルだけ巻き付けてリビングに行く。
まだ入ってなかったのかと目を丸くする俊くんに、今しがたゲットした僕の宝物を見せる。
「と、とれた!凪のへその緒!」
「お、まじでか。ちょいまち、桐の箱あるから。」
「はわ、また宝物増えちゃった…」
手のひらにコロンと転がるそれが可愛い。ついにすよすよと寝始めた凪をそっとベッドに寝かせると、先生からもらった桐の箱を持ってきてくれた俊くんにお礼を言ってから、そっとそれを納める。
「ほら、お前はさっさと風呂。見惚れるのはあとからだ。」
「あ、っくちゅ…っ、うん、先食べててもいいからね!」
「待ってるから、早くしろ。」
くしゃみをする僕に苦笑いをして見送ってくれる俊くんを置いて、ぱたぱたと走って浴室に行く。
凪のへその緒に興奮しすぎて、気にしてた胸元を全く隠していないままだった。
もしかしたらグダグダ落ち込む僕を励ますために、凪がくれたきっかけだったのかもしれない。
俊くんが沸かしてくれた湯船にゆっくり浸かりながら、つんと新入りのアヒルの嘴をつついた。
「凪とお前が来るから徹底的にきれいにしてもらった。」
塵一つないはずだと誇らしげにしているが、頑張ったのはハウスクリーニングさんでぇす。
とまあ、なんとも気合を入れてくれたようで大変有り難いことである。お外から帰ってきたので、先に凪のオムツ変えてから沐浴するかとベビーカーからバックを出す。
「僕先に凪ちゃん沐浴させてくる。俊くんご飯食べててもいーよ?」
「ならみんなで入るか、風呂。」
「え。」
ま、まじでか。それはぁーちょーっと…、と僕のぎこちない誤魔化しを不審に思った俊くんの眉間のシワがよるわよるわ。
「なんだ、裸見られて困ることでもあるのか?」
「別にないけど、狭いしはずかしいから俊くんはゆっくり一人ではいりなよ、僕後ででいいし。」
「お前の尻の穴まで知ってるのに?」
「それでも、やなの!」
裸はとにかく見られたくなくて、ぶすっとして言い返すとしょんもりと眉を下げた。もしかしたら、入りたかったのだろうか。それなら悪いことをしたと思うけど、入るならもう少し太ってからにしたいのだ。
ほんとうに、しぶしぶといった具合に、わかった。と言った俊くんは、着替えてくるといって部屋に向かってしまった。
「っ、うー‥」
なんだかとても後味がよろしくない。今考えてみれば、こうして二人でゆっくりできるのも2ヶ月ぶり位なのに、なんでこんなふうな言い方しかできないんだろう。
少しだけ落ち込んで、浴室の扉を開ける。
バスタブの縁に並んだアヒルが2羽から3羽に増えていた。僕が買うって言ってたのをおぼえてたらしい。俊くんが用意してくれていたその3羽目は、少しだけ小さくて幼い顔をしていた。
「ぁー」
「ごめんねぇ、すぐ気持ちいしようねぇ。」
僕もついでにはいるかと、脱衣場で服を脱ぐ。沐浴用のベビーバスは空気を入れるだけなのですぐだ。
下着まで全部脱いで、鏡を見る。お腹の妊娠線だったものは薄くてわかりづらいけど、少し肉を寄せると途端にひび割れたようになる。
腰回りは骨盤が開いたのか少し肉付き、そのわりに肩とかは何となく骨ばってるような気がしてならない。胸元は授乳してるせいかそこだけ腫れて赤くなってるし、なんか、歪だ。
よっと脱がした凪を抱き上げると、突然ガラリと脱衣場の扉が開いた。
「っ!」
「あ?わり…」
慌てて凪を抱っこしたまま勢いよくしゃがむ。体をできるだけ小さくしていると、無言で俊くんが立ちつくしたままだった。
「な、なんでっ…や、やだっていった!」
「や、だってお前は後で入るみたいなこと言うから…」
「いっ、…」
言ったわ。そういや僕は後でいいからって言ったんだった。胸に抱かれた凪が、はぷっと乳首に吸い付く。まさかのタイミングすぎて、慌てて飲みやすいように抱き直すと、小さい手を胸に添えながらちゅむちゅむと口を動かす。
僕はなんだかもう恥ずかしすぎて、とにかく顔を見られたくなさすぎて、もそもそと俊くんに見えないように背を向けるとバスタオルを体にかけられた。
「それ、取るなよ。目に毒過ぎて襲いそうだ。」
かちゃかちゃと俊くんがベルトを外す音がして、服を脱ぐ衣擦れの音がした。僕は俊くんが言った言葉で頭がいっぱいになって、余計に顔に熱が集まってしまう。
キスもハグも、最近ぐんと減ってしまった。当然そういう行為だって妊娠してから全くしていない。
自分で見られたくないってわがままを言って傷つけたくせに、俊くんの一言で体は簡単に兆してしまう。
「ぅ、ぐすっ…」
なんて情けない。真っ裸で授乳しながらタオルにくるまって、僕の雄の部分は少しだけ反応してしまう。俊くんはバシャバシャと水音を立てながらシャワーを浴びている。どうしようこれ、なんとなくバレたくなくて膝をすり合わせる。凪を抱いてるのにそんなことできるわけもないのだ。
ガチャン、と扉が開く音がして、濡れた髪をかきあげた俊くんが眼を丸くして見下ろす。まだそこに座っていたのかといった感じだ。慌てて目を擦ったのがバレたのか、同じ目線までしゃがみ込む。
「どした、具合悪い?」
「ち、ちが…、」
「沐浴、俺がしとくからきいちは体温めな。見られたくないならここでやるから。」
「うぅ…、っ…」
気を使わせたくないのに、僕のわがままで振り回しちゃうのが申し訳なくて思わず涙声になる。心底弱ったといった顔の俊くんの濡れた髪を拭ってあげたくて、肩にかけてたタオルを渡す。意味を理解した俊くんが、小さくサンキュ、と言ってガシガシと髪を拭う。
「おわ、っと…きいち?」
凪を抱いたまま片手で俊くんに抱きつく。凪は僕と俊くんに挟まれて少しだけ楽しそうにしていた。
少し濡れた俊くんの温かい体に、ぴとりとくっついて肩口に頬を擦り寄せる。ぐすぐすと愚図る僕に溜息を吐くと、タオルで包むようにギュッと抱きしめてくれた。
「体、見られたくねーとかいってなかったか。」
「うん、」
「凪居なかったら襲ってるぞまじで。」
「うん、」
まったく、と小さく呟いた俊くんの無骨な手のひらが、そっと背中を撫でた。恐る恐る撫でたと思ったら、今度は確かめるように手の平をぴたりと肌に添えて。腰回りを少しだけ揉むように触れると、そのまま両腕で包むように抱きしめてくれる。
「…痩せただろ、やっぱり。」
「貧相になって、ごめんね。」
「なんで謝る?頑張ってる魅力的な体だろうが。」
「そうかな、胸だってなんか、へんだよ。」
「やめろ、意識して勃起させねーようにしてんだから。あんま煽るな。」
「俊くん今の僕でげんきになるの…?」
「…そりゃあ、なるだろ。」
そっと腰を抱き寄せられ、あたる俊くんのそれは微かに兆していて、ぶわりと体中の熱が顔に集中する。た、勃つんだこの体で…
「……。」
「おい、黙って照れるな。」
「ぁぶ」
「な、凪のお風呂しなきゃだから…」
「おう、」
気恥ずかしくなって、そっと胸を押して体を離す。素直に腕を解いた俊くんが少しだけ満足そうに笑って、僕の体に新しいタオルをかけてくれた。
「温まってからな、飯の支度して待ってるから。」
「あ、うん…」
まるで気持ちは処女になってしまったのではと思うくらい、心臓がばくばくだ。
触れ合いをしてなかったから、こんなに素肌で距離が近くなると、もうだめだ。
ドキドキを誤魔化したくて、無心になって凪の沐浴を済ませると、ポロリと凪のお腹から乾いたへその緒がとれた。
慌てて無くさないようにそっとそれを手に取ると、凪は痛くないようで呑気にあくびをしていた。
「と、とれた…凪のへその緒…」
いつもおへそ周りはケアしてたけど、中々取れる気配がなかったのに。
「へっ、くし…っ…と、とりあえずへその緒と凪を俊くんに預けよ…」
自分の体を構わなさすぎて、気づけば結構冷えていた。うとうとしている凪を抱きながら、腰にタオルだけ巻き付けてリビングに行く。
まだ入ってなかったのかと目を丸くする俊くんに、今しがたゲットした僕の宝物を見せる。
「と、とれた!凪のへその緒!」
「お、まじでか。ちょいまち、桐の箱あるから。」
「はわ、また宝物増えちゃった…」
手のひらにコロンと転がるそれが可愛い。ついにすよすよと寝始めた凪をそっとベッドに寝かせると、先生からもらった桐の箱を持ってきてくれた俊くんにお礼を言ってから、そっとそれを納める。
「ほら、お前はさっさと風呂。見惚れるのはあとからだ。」
「あ、っくちゅ…っ、うん、先食べててもいいからね!」
「待ってるから、早くしろ。」
くしゃみをする僕に苦笑いをして見送ってくれる俊くんを置いて、ぱたぱたと走って浴室に行く。
凪のへその緒に興奮しすぎて、気にしてた胸元を全く隠していないままだった。
もしかしたらグダグダ落ち込む僕を励ますために、凪がくれたきっかけだったのかもしれない。
俊くんが沸かしてくれた湯船にゆっくり浸かりながら、つんと新入りのアヒルの嘴をつついた。
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