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番外編

閑話休題 出られない部屋

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読者200人記念小説
ツイッターでよくあるアレを攻め二人、受け二人でやって見ました!時間軸設定としてはきいちの妊娠前だと思ってください。
ギャグです、お楽しみ頂けたら嬉しいです。
………………………………………………………………………

学校帰りに立ち寄った商店街で、きいちが筆箱を変えたいんだよねぇ、とかいうので買いに来た時だった。

「福引?へぇ、これで引けるんだぁ。」
「五百円以上買ってもらった人に渡しててねぇ、お兄ちゃんくじ運強そうだし、やってみたらどうかしらぁ。」

文房具店のおばさんから商品とともに受け取った紙ッペら。裏面を見ると特賞はリゾートホテルペア宿泊券らしい。2等はエステ、3等は米俵となかなかに力の入っている様子がうかがえる。

「俊くんだったらどれがいい?僕は米俵かなぁ。」
「ホテルじゃなくていいのか?」
「いやほら、高望みすると絶対に当たんない気がするじゃん?だからあえての米俵。」

もらったくじをペらぺらと遊びながら、教えてもらった会場にむかう。いつも行くスーパーの駐車場かイベント会場らしく、なかなかに盛り上がりを見せていた。
カランカランというハンドベルの景気の良い音とともに、6等を当てた人がお菓子の詰め合わせをもらっていた。

「あれでもいいなぁ、かさばらないし。」
「俺はペアチケットがほしいけどな。」

まあ当たるかどうかは運次第である。他愛のない話をしながら進んていくと、いよいよ自分たちの番になる。チケットをかかりの人に手渡したあと、謎の気合を入れ、腕まくりをしてからガラガラの持ち手に手を添えた。

「こういうのってどっちに回すかわかんないんだよなぁ、僕。」
「そんなもん適当でいいだろ。」
「おっし、目指せ6等!!」
「気合い入れるとこ間違ってんだよなあ…」

そいやっとかけ声をしたと思えば、ガロガロと音を鳴らしてくじを引く。そのうちスポコーンと玉の出口から勢いよく飛び出したのは緑色の玉だった。
カン、コンと音を立てて出たものが何等なのかと二人でくじ結果のボードを見上げようとしたときだった。

「大当たりぃー!4等!」

カランカランカランと景気の良い音を鳴らして係の人がにこやかに祝福をしてくれる。
3等が米俵なので、割といいのでは?と二人して顔を見合わせる。係の人からドキドキしながら受け取ったのは白い封筒だった。

「二組四名様の体験ギフトだね!いやぁよかったよかった!おめでとう!」
「え、体験ギフトだって。なんかすげえね!」
「あ?ああ…」

この時俊くんは、なんでよかったよかったとホッとした様子で係の人が拍手をするのか、少しだけ腑に落ちていなかったのだが、番がワクワクしながらはしゃいでいた為、そちらに気を取られて深く追求することをやめていた。

この時の様子を見定めて、さらにきちんとその場で開封していれば、後の悲劇は起こらなかったのかもしれない。





週末、使用期限があった為早めに行こうという話になり、きいちは益子と葵を誘って四人で地元から電車に揺られて都内の方までやってきていた。

「本当に俺たちでよかったの?」
「もち、むしろ学も誘ったんだけど体験ゲームとかは興味無いらしくてさ…葵さんが快くオッケーしてくれてよかったよ!」

突然益子から、週末に楽しい事しにいかねえ?と如何わしい表現で誘われて、一体何のことかと思った葵だったが、蓋を開けてみればきいちが何やらチケットを余らせたからだという。

いわく、エンターテイメント系のイベントを多く提案する大手の企業が、新たに売りにしようとしているのが次世代シュミレーション型の体験ゲームだという。そこに所属する謎解きで有名なチームが開発したアトラクションは、予約が取れないほどの人気だ。
そんな有名企業の開発段階のモニターテストに参加できる上、謝礼まで出るという破格の待遇。
きいちがゲットしたチケットにはそう書かれていたのだ。

「なんかすごくね?モニターテストとか。響きがアレじゃん。かっこいくね。」
「二組で部屋に入って、出されるお題をクリアするまで出られない。か、なんかホラー映画でなかったか、こういうの。」
「あったあった、割と人気だったからあやかったんじゃね?そういや続編やるっていってたし。」
「もしかしたらタイアップなのかもしれないね。」


四人がそれぞれ想像を膨らませてエントランスに入る。中は広く、流石は大企業。名前も知らない改札機みたいなのが会社の中に設置されており、警備員の人がシャンとした背筋で立っていた。

チケットには、モニターの方は受け付けで手続きを済ましてくださいと書かれており、きいち達4人はゲストと書かれたカードホルダーを首から下げる。しばらくして受付にきたのは、いかにも研究者ですといった風体の痩せぎす眼鏡の男性が、人懐っこい笑みを浮かべて案内をしてくれた。

「実は今回君たちに体験して貰うのは、映画の配給会社とのタイアップで開発中の体験ゲームなんだ。絶対に〇〇しないと出られない部屋って映画聞いたことあるかな?」

佐藤と名乗った社員は、別室で茶菓子を用意してくれており、説明はそちらでという事だった。
白い部屋の壁には、先程葵が言った通りのタイアップのポスターが貼られており、その映画のタイトルはやはり知ったところであった。
様々なお題を出される部屋で、クリアしないと出られない。そんなまんまの内容だったが、その出題者であるAIをいかに欺き人としての尊厳を保つかといった心理戦だった気がする。CMが流れていたとき気にはなっていたのだが、きいちはホラーが苦手だったので見るかどうか迷っていたのだ。

「で、今回はランダムに組み合わせをAIが選んでくれるんだけど、そんなモラルに反することはないから安心してね。体験中にお願いしたいのは、心拍数を管理するブレスをつけてほしい。」
「ほわぁ、なんかSFっぽい。」

きいちが受け取ったのは、映画でも出てきた人を管理するブレスレットを模したものだった。四人分それをそれぞれが装着すると、体調不良がないかや体温、持病がないかの簡単な問診を終えたあと、体験モニターができるブースへと移動となった。

「お題はすべてランダムだから、時間制限がついているものもあれば、ないものもある。どちらにしろ気楽に考えてくれて構わないからね。」

カタカタとパソコンに必要事項を入力し終えると、長方形の大きな部屋のような、家具すらなにもない空間に案内された。
中はモニターが二つある。映画さながらの部屋に、葵のテンションは少しだけ上がる。

「なんか、どきどきしてきたね。ちょっと楽しみ。」
「どうする変なのでできたら!そしたら僕は俊くん犠牲にしてにーげよっと」

オメガ二人でくすくすと笑い合う。この組み合わせもAIが決めるとはいえ、二人とも番の選択欄にチェックをいれて俊くんと益子の事を書いたのだ。
だからきっと一緒になるだろうなと、勝手に想像して安心していた。

「じゃ、いくよー!」

モニターから、軽快なラッパの音とともにパッとお題と対象者が映し出された。

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