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2章

とある放課後

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「まじでか!!」

教室に学のテンションの上がった声が響く。
益子の番である葵さんも、ついにおめでたになったということで、今まで以上に体調面に気を配らねばならない。
益子は、もしなんかあったら欠席届け出を代筆してもらうかもしれないと僕達に言ったのだ。

「そりゃあもちろんいいけどさ、」
「そー、だから書類といえば学じゃん?書き方一応レクチャーしてもらおうと思ってな。」
「殊勝な態度だな!!いいぞ、仕方がねえから教えてやる!!」
「学は俺に対して当たり強くない!?」

益子と学のやり取りに笑いながらA4の書類のコピーを益子が取り出す。こういうところは真面目なのだ。学が赤ペンで、記入しなくてはいけないところに丸をつけ、それを追うように益子がサラサラとシャーペンを走らせていく。

「ここに病院と、担当医。あと別紙に診察券のコピーはっとけ。そこまで万全にしておけば大丈夫。」
「んー、なるほど。とりあえずこれは書き上げたら事務所提出か。んじゃ次、」
「欠席届けはもっと楽。事前に学校連絡いれとくのはマストだけど、備考欄には配偶者の病院付き添い、とか。ヒートの時は事前に書類提出しとけば急に休んでも電話だけでオッケー。」
「これこの間書いたやつだわ。おっけー、なんだ簡単じゃん。構えてて損したわ。」
「発情期休暇の書類書けば、あとはたいてい簡単に感じると思うぞ。」

ふむふむと書類を覗き込みながら頷く。僕はもう卒業までは書くことなさそうだ。あるとしたら産休?でも卒業するなら課題を在宅でこなすらしい。その書類もまたあるのだろうか。そんなことを考えていたら、学がまるで心を読んだかの様に言った。

「産休も欠席届けに病院から出る証明添付すれば休めるぞ。まあそれは旦那が書くだろうからきいちは覚えなくていいよ。」
「え、心読むの早くない?」
「いや、それしかねえかなって。」

学がぺたりと僕のお腹を触る。今日のベビ様はやけに大人しく、昨日活発だった分今日はお眠らしい。最近特にお腹が苦しくて腰も痛くなってきたせいか座ってばっかりだ。保健の先生からは、もはや産休取ればと言われてるのだが、家で課題をやるのが嫌すぎて通学している。

「すげぇ、ぱんぱんだもんなぁ。」
「来週で臨月だよ、やばいよねえ。痛いかな。」
「そりゃあ、痛いんじゃね?」
「晃さんなんつってたの?」
「骨盤叩き割られたかとおもったってさ!」

こっわ。学と益子が顔を青褪めさせて言う。わかるよお、一番怖いのぼくなんだけどねえ!?
頼むからスポンと産まれてくれよとお願いをするようにお腹を撫でる。
ガラリと扉が開いて、末永くんと俊くんがつかれた顔で帰ってきた。

「おー、すげえ疲れた顔してんじゃん。」
「いや疲れるわ…」
「きいち、こいつ一年女子に告白されてたぞ。」
「おん?浮気は許さんぞ!」
「末永てめえおぼえてろよ…」

どうやら先生に呼び出された帰りに末永くんといるところを捕まったらしい。まさか二人でいるときに告白されるとは思っていなかったらしく、なぜかナルホド。と答えたらしい。
末永くんもわけがわからなかったらしいが、俊くんが一番わけがわからなかったらしい。

「呼び止められて2秒で告白だぞ。どうしろと。」
「あ、すみません好きですって言われてたな。」
「ナルホド。」
「なるほどやめろ、その後断る前に走り去っていった。なんだあれ、罰ゲームじゃねえのか。」

そういえば前もあったな。俊くんが初恋キラーなのは例にも漏れずだが、番がいるとしっていて断られるのが当たり前というのが前提にくると、次の恋愛に行くために、あえて振られるための告白をするらしい。
その時は久しぶりに学と末永くんも混ざって食堂の一角でごはんをたべていたのだが、普段お目にかかれないレアな俊くんがご飯を食べていると大騒ぎになり、振られ待ちの女子やらオメガが列をなしたのだ。

「前にもあったね確か。」
「やめろ、あれ以来怖くて行ってねぇんだから、食堂。」
「途中から俊がラーメン食うの諦めて、虚ろな目でゴメンナサイ繰り返してたよな。」
「あれ以来ラーメンもくってないよね?」
「きいちがとめてくれりゃあよかったんじゃね…」
「いや、いつ途切れるのかなぁって見てたら止めるタイミング逃しちゃって…」

いやあ圧巻であった。未だにあのときの光景を思い出すと凄まじい。一応番の目の前での告白だったので、なぜかみんな律儀に僕にお辞儀をしてスッキリした顔で去っていった。彼らの心の中の思い出に残った俊くんの顔は、とっても草臥れていたことだろう。いいのかそれでとも思わなくもない。

「そういや、きいちは夏期講習受けるのか。」
「受けようか迷ってる。臨月になってるし、なんなら夏休みはゆっくりしようかなって。」
「むしろ夏休み中に産まれるかもしれねー。」
「予定日8月だっけ?」
「うーん、まあ順調にいけば8月末位にはスポーンと産めたらいいなあ。」

俊くんがよしよしとお腹を撫でる。あと2ヶ月位にはべびさんを抱いてるかもしれないのだ。なんだかどきどきである。ちなみに葵さんは2月頃だそうだ。まだ胎芽の状態でも、過保護の益子のことだから、きっと葵さんが辟易するくらい気を配るだろう。

「んー、あっつい…」

ぱたぱたとチュニックをはためかせる。腰痛いし苦しいし暑いしで、最近お腹の子が元気に育っていくにつれて僕の体調があんまり良くないのだ。何着ても暑い。お腹もなんだか張っている気がする。汗っかきではなかったはずなのに、なんだかなぁ。

俊くんが下敷きで仰いでくれる様子を見て、なんだか学が面白いものを見るような目でみてくる。

「なんだ。」

じっと見つめられて、居心地がわるかったのか俊くんが思わず聞くと、学はなんの気なしにいう。

「いやあ、尻に敷かれてるなと思って。」
「ぶはっ!!」

吹き出した益子は、言わなかったのに!!!と大爆笑だ。うっそまじで。敷いてるつもり無いんだけどな。
めっちゃ微妙な顔して俊くんが学を見る。そうだよねぇ、敷かれてるってか過保護の延長ってか。でもよく考えてみたら、俊くんに振られた彼女達はこんな姿を想像できないのだろう。

ふふっと思わず笑うと、お前まで?といった顔で見られてので慌てて顔をそらした。
そのやり取りに更に珍しく末永くんが吹き出すと、下校を催促するようにチャイムが鳴った。

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