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2章

だから俺は好きにする

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葵の口から出た言葉の羅列は、不器用で、情けなくて、臆病。そんな言葉が綯い交ぜになってくすんでしまった淀みのようなものだった。
いつも余裕を持っていた葵とは違う、等身大のもうひとりの葵だ。

あいしてるから、とられたくないと泣く。

この細くて儚げで可愛らしい俺だけのオメガは、孕んだ子すら自分のエゴだと言い張って素直に喜べない可愛そうな男だった。
葵は全くわかってない。こんな惨めで哀れに震えながら全てを吐き出す様子を見て、心が震えるほど喜んでいる俺の顔を、見ようともしない。

見られなくてよかったかもしれない。葵の束縛がエゴだとしたら、こうなるとわかってて孕ませた俺は悪魔だろう。吐き出すように泣きながら、嗚咽混じりの濁った声で、愛を囁くその姿が、愛しくて愛しくて仕方がなかった。

「葵。」
「ひ、い、いやだぁ…、ぅ…いやだ、ききたくない…!!」
「大丈夫、大丈夫だから。」
「やだ、ぁ…っ、…ぇほっ…けほっ、…」

ふるふると頭を振りながら、顔をあげるのを拒む。震えながら、頭を抱えるようにして蹲る。こんなにも俺のことを考えるだけで臆病になる番のどこを嫌えと言うのか。葵はやっぱり綺麗で可愛くて馬鹿だ。

「っ、けほ、…っ、ひぅ、っ、っ…」
「葵?」
「ゆ、っ…、っ、かふっ、ひゅ…っ…けほっ、」
「っ、おい…落ち着いて、ゆっくり吐き出せ。」

荒い呼吸で必死に肺に空気を取り込ませようとして、吸うことしか出来なくなっていた。
パニックになったのか、ぶるぶると震える手で胸元を掻きむしりながら、酷く苦しそうに顔を赤らめる。

「っ…っ、ゅ、…や…、ごぇ、…ぁさ…」

顔を息苦しさで赤らめながら、息もまともに出来てないくせに謝る葵に、俺のほうが中てられた。

「ああ、もう…」
「ーーっ、………、っ…!」

乱暴に葵の後頭部を手で引き寄せると、震える唇を己の唇で塞ぐ。びくんと体を跳ねさせ、背中の服を引かれる。動揺して床を蹴る葵をそのまま床に押し付けると、全身で押さえ込んでゆっくりと頬を撫でながら逃げ惑う舌に強く吸い付いた。

「ン、…っ、…吐いて、」
「ひゅ、っ…はあ、あ、っ…」
「そう、…、ん、上手…もう一度、」
「ぁー‥、あ、ふ…ぅ、うっ…」

頬から頭にかけて、手の平でゆっくりと撫で上げながら震える舌を甘噛みし、薄く離した唇の隙間からゆっくりと呼吸をさせる。浮いた腰を支え、ぐちゅ、と互いの唾液を舌に絡ませながら、何度も何度も口付ける。

「ふ、ぅ…は、ァっ…はー‥、」
「良い子だな、偉いな葵。」
「はぁ、っは、ぁっ…う、う、っ」

どれ位そうしていたかは忘れた。葵の抵抗が弱まり、ゆっくりと肺を広げるように呼吸する葵に合わせて背中を撫でながら、頃合いと見計らいそっと唇を離した。

「…っん、…ごめ、ん…」

顔を涙と唾液で濡らしながら、呆けた目でぐったりとしながら謝る。行為で昂ってしまった自分の性器に頭を痛めながら、そっと頬にすり寄った。

「過呼吸になるくらい俺のことが好きなのか。」
「ちが、」
「ちがうのか?」
「…ちが、わない…。」

葵の答えに満足すると、きつく抱きしめた。
おずおずと背中に手を回す葵は、過呼吸で苦しかったくせにまたじわじわと泣きそうな様子で下手くそに甘える。不安症なくせに口下手で、大人ぶって独占欲を隠す酷いやつだ。

「葵の馬鹿野郎。こんなんなる前に言えよ、言わなきゃわかんねえだろ。」
「おも、」
「重いわけねえ、むしろ嬉しい。口下手で頑固で強情で、嫌味なくらい物わかり良すぎて大人ぶってん葵より、今のお前のほうが愛してる。」
「ひっ、く…う゛ぅ…酷っ…ぐす、っ…」

嗚咽を漏らしながら、肩口の服に噛み付いて必至で涙を堪える葵に苦笑いする。泣き虫で、も付け加えておけば良かったか。
あやす様に抱き起こすと膝に載せ、泣き止むまで背中を撫でながら好きなようにさせる。
葵の可愛らしい独占欲、そんなの俺はずっと前からお前を独り占めしたかったというのに。

「あー、なんか腹減ったなぁ。」
「んんっ、野菜スープ…悠也の好きなソーセージはいってるの…ある。」
「お、まじで。」
「ん、…」

服の裾で目を擦る手を止めさせてから抱き上げる。慌てて首に縋り付いた葵を支えながらキッチンに向かうと、美味しそうなスープが出来上がっていた。

「ゆ、悠也!おろせよ!」
「嫌だ。今日は寝るまで葵には甘やかされるというお仕置きを課す。」
「ええ…」

どろどろに甘やかして安心させてやりたいというのもあるけど、俺が満足したいからという方が大きい。
結局食事も、恥ずかしがる葵に全部口移しか、食べさせてもらうかで選択を迫り、膝に座らせたまま渋る葵の口元に運ぶ。おずおずと口を開いてもくりと咀嚼する様子が可愛くて、思わず口付けをして口内に舌を入れたらぶっ叩かれた。

「え、うそ…っや、やめっ」
「葵は、今日一日俺の甘やかしに付き合ってもらうから。ほら、」
「ちょ、とまっ!あ、あ、あー!!!」

お返しに葵が催すまで膝で甘やかし、さあトイレに行くからというタイミングで連れていく。
抵抗虚しくズボンを脱がして抱えあげてやれば、まるで子供のような格好で用を足す羽目になった葵に、違う意味で今度は泣かれた。

結局その日は寝るまでずっとそんな具合でどろどろに甘やかして、葵がもう分かったからと悲鳴を上げるまで色々なことをした。それはもう、いろんなことを。

「葵が大人ぶって我慢すんなら、俺はガキっぽくやりたいことをするまでだな。」
「う、ううっや、やだ…もうやだ、我慢しないから、もう、許してえ…」

息を荒らげながらすがり声をあげる葵の反応を見ながら、したくなったからすると言ってこぶりな尻を鷲摑み、蕾に舌を這わせていたらついに音を上げた。

「なんでだよ、ん、…気持ちよくないか?」
「ひゥ、っ…あ、も…おしりやめてぇ!」
「いつもここ嫌がるもんな。でも俺クソガキだから我慢しないわ。」
「あ、あ、あ、っ…」

濡れた音とともに、葵の悲鳴がベッドに吸い込まれる。妊娠したので乱暴はしないが、葵が震える手で自分で慰めるまで、俺は満足行くまで葵を堪能した。




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