なんだか泣きたくなってきた

2章

駄目なほどに燃えるやつ ＊＊

「や、なにぃ…これ、ぁ…っ」
「煽るなって、言っただろうが！」
「ひぁ、ぁ！や、やぁ、あっだめぇ、っ」

パチンと手際良くコンドームをつけた俊くんは、完全にキレていた。
ポタポタときいちの手を濡らす母乳に理性をぶっちぎられたといってもいい。目の前が真っ赤に染まるほどの昂奮は、まるで麻薬のようにトリップさせる。

きいちの静止とは裏腹に、ずぷりと内壁を擦り上げながら挿入する。きいちの蕾はぱつぱつに広がり、下生えが擦れるほどの深さに。きいちの意識は飛びそうになるくらいの強い快感に犯された。

「あぁ、ぁっ、ぁあっし、しゅん、しゅんだめぇ、っ！」
「奥、突っ込まねぇから…わりい」
「やぁ、ぁっ、だ、ぇ…っ、きもひぃ…ちが、やだぁ、ぁんっ」
「はぁ、っ…くそ、とける…っ…」
「あー‥っ、ぁ、ああっ、ゃ、でてぅ、やだぁっ！」

俊くんの律動が、激しくはないもののゆさゆさときいちの体を揺らした。それでも先程から続いていたゆっくりとした愛撫に高められた性感は、その身をとろけさせてきいちの胸の先端からぼたぼたと垂らす。
恥ずかしくて死にそうなのに、死にそうなくらい気持ちがいい。受け入れていなかった蕾もこなれてきて、じゅぽじゅぽとはしたない音を立てて嬉しそうに飲み込んでいくのだ。

「いやたぁ、っだめぇ、んぁ、ぁっ！でひゃ、うっ、きもち、んぁ、ぁっもぇう！おしっこでちゃうからぁあっ！」

前立腺をぐりぐりと押し上げられるたびに、膀胱が刺激される。ひどい快感に思考は馬鹿になる。だめだめと口にしているのに、出してしまったときの気持ちよさは、未だに忘れていないのだ。どうしょうもない。鼠径部を鷲掴まれ、あぐりと項に歯を建てられる。強い刺激で前後不覚になっている己の番の痴態を愛おしそうに見つめながら、俊くんの手がきいちの足を大きく開いた。

「漏らせ。」
「っぁ、」

ひときわ強く腰を打ちつけ、膀胱を突き上げた。
睫毛を震わし、酷く甘い声を零したかと思うと、そのまま力が抜けたきいちは俊くんのせいで恥ずかしい水音を立て始める。

「ぁー‥、ゃ…でひゃ、…た…」
「ん、お漏らし気持ちいな、可愛い…」
「ふぁ、ぁ…」

ちょろちょろと静かな音を立てながら、自分と俊くんの腰回りを温かい水流が範囲を広げていく。口はだらしなく開かれ、身震いし、俊くんは性器できいちの体を甘やかしながら袋を揉む。よくできたねと褒めるように頬に口づけると、その柔らかい唇が重なって、薄い舌が震えながら絡まる。

「ん、可愛い…きいち、かわいい…」
「ぁ、あー‥あ、っ、ぁっ、ひ、んっ…おっき、っ…ちんち、きもひぃ、ぁンっ、」
「ふ…、ここがすき？教えてきいち。」
「らぇ、っ…そこお、っ！んぁ、あ、っ、もっとぉ…！やぁあ、とけるぅ、うっ！」

快感に涙が止まらない。久しぶりのセックスはひどく気持ちが良くて、獣のようになんども貪った。さすがに結腸まで入れなかったが、なんども前立腺を磨り上げ、ぶしゃぶしゃと漏らし、俊くんの性器もコンドームを変えずに２回も射精して。

胸をむずがり、泣くきいちにせがまれて甘く喰んだ乳首から漏れ出たそれは酷く甘く、俊くんの舌を濡らした。獣のようにお互いが貪りあった後、ずろりと何時もよりも膨張していた性器を引き抜くと、ぐったりとシーツに身を投げだしたきいちに覆いかぶさる。

「ごめん、激しかったな…」

泣きぬれた頬に優しく口づけ抱きすくめる。すん、と鼻を鳴らしたきいちが、あぐっと顎に甘く噛みつく。少しだけの反抗心と甘えたが混じった可愛い抗議だった。

「きもち、かった…」

溶けた顔で噛んだ顎をぺしょりと舐める。まだ内腿はセックスの余韻でかすかに震え、腹を隠そうと折りたたまれた足は濡れたシーツの上に這う。
べしゃっとした感触に顔を赤らめる様子に少しだけ笑い、身なりを整えると俊くんは起き上がり、大きなバスタオルを持って戻ってきた。

「風呂行けるか？かたしとくから温まってこい。」
「…一緒にいかない？」
「また襲いかねない。それにこれ以上したら息子に蹴られそうだしな。」
「うぅ、わかった…」

もぞもぞと動いてなんとか腰を上げると、ひたりと濡れた足が床に触れる。ちらりとみたシーツに顔を真っ赤にすると、もらったタオルをもってペタペタと浴室に向かった。

そんな可愛い番の姿を見送ったあと、俊くんは深い深いため息を吐いた。

「最っっっっ高、だった…くそ…」

ぼそりと低い声でそう呟くと、視界に焼き付けた番の痴態を噛みしめる。鮮明に思い出すのは嫌だと言いながら縋ってくるシーンや、泣きながら胸を苛めてと甘えてきたときだった。
新庄先生から止められていなければ、恐らく出尽くすまで舐めて吸っていただろう。舌に残る味は仄かに甘かった。

悶々とした思考は、野暮な話だが出すものを出したらすっきりした。未だかつてないほど下半身がすっきりしている。コンドームの精液の吹き溜まりには、引くほどの量が捉えられていた。それが２つ。正直まだ出せる気がしてならないが、無理は禁物だ。
俊くんはなれた手付きでベッドメイクを整えると、いつもどおりの手順で汚れたシーツとシートを取り替える。
息子が生まれたあと、おねしょをしても焦らずに対応できるだろう。むしろきいちよりもうまいとおもう。そんなことを口にしたら、きっとまたお預けを食らうので言わないが。

汚れ物を洗濯機に突っ込み、きいちがまってる浴室にはいる。湯船にアヒルを浮かべてボケっと入っているきいちの頭を撫でると、照れたように膝を抱える。

「つめて、それ白いのも買ったのか。」
「うん、黄色だけじゃ寂しそうで。」

きいちを足の間に収める形で湯船に浸かると、一匹だったアヒル隊長が二匹に増えていた。なぜその柄がハートなのかはわからないが、きいちが可愛いと思うなら否やはない。

「元々いたのが文太で、二匹目のこれが大五郎。」
「渋いな…」

嘴を突きながら説明するのは可愛いが、絶望的にネーミングセンスがない。息子が産まれたらきちんと話し合ってから決めようと心に留める。

「僕と俊くんみたいに番にしよーと思って買った。べびちゃん産まれたらもう一匹買うんだ。」
「そうか。」

くふくふと楽しそうに笑いながら二匹を手のひらに乗せる。まつげの長い、間抜けな顔のアヒルの玩具は誇らしげで、指で押すとクケッと鳴いた。