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2章

無慈悲すぎやしませんか *

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「っ、ん…きいち、」
「しゅ、んぅ…」
「んん、まて、っ…」

ちゅ、ちゅ、と唇を擦り合わせるように何度も重ねながら、ソファーの背もたれからずりずりと下がる。ついに俺に乗り上げたきいちの腰を支えながら、そっと体制を入れ替えた。

「あ、っ」
「馬鹿、腹に負担かけるだろうが。」
「んん…ごめん…」

跨がられるのは好きだが、今はだめだ。きいちの腰の下にクッションを置くと、おずおずと収まりのいい位置に動かしてぱかりと脚を開いた。

「どうした?やけに積極的だな。」
「うん、…なんかそういう気分…」
「大歓迎だ。ほら、足回せ。」

きいちの足を腰に絡めさせると、そっときていたシャツのボタンを外す。胸元だけ開けさせると、きいちの手は自然と布越しの性器を確かめるように俺の足の間に伸ばされた。

「ん、えっちだな。」
「ふぁ、熱い…」

さすさすと触られれば、ぐっと質量を増す。開けさせた胸元から手を差し入れ、少しだけ膨らんだ乳首を摘んだ。ムニッとした弾力を持つようになったそこは、妊娠してから突起が少しだけぽってりとしていて、酷くいやらしくなった。
口にはしないが、こんなにいやらしい体になってしまったのだ、絶対に人前では脱がせられない。夏のプールとかは絶対に服を着せなくてはいけない。まじで。
無言でもにもにと感触を楽しんでいると、ひくん、と肩をはねさせながら感じ入る。全く無抵抗になったきいちの手は、そのまま俺の性器をボトムスから取り出すと、優しく握りこんでゆるゆると扱う。

「は、…」
「ちんちんきもちい?」
「ばっっ、」
「んぇ、っ!」

突然の単語にビックリしすぎて誤射しそうになるのを慌てて腹筋を締めて止める。きいちの口から破壊力の強い言葉を発せられるとは思わず、そのままイくのを止めたせいか、きいちの手の中でビキリと一回り大きく膨らませてしまった。

「あ…、強い…」
「おま、なんつー‥」

うっとりと性器を握り締めるきいちの手をそっと離させると、指を絡めて繋ぎながら覆いかぶさる。その単語の出どころを確かめると、どうやら新庄先生らしかった。

「ん…もうすぐ性別わかるって、こないだ言ってたから…」

お腹をさすりながら照れた顔をしてつぶやく。どうやらきいち的には別になにも恥ずかしいことを言っていたわけではないらしい。完全になんの意図もなく、ただ純粋に聞いただけらしく、思春期のように派手に反応してしまった己の情けなさに少しだけ自己嫌悪した。

「だめ?ちんちんってへん?」
「いや、変じゃねーけど…今はまずいだろ。」
「だって、今まで言う余裕なんてなかったよ。ずっと思ってただけだもん。」

もんとかいうな、もんとか。
頬を染めながら困ったように言うと、俺の指先に口付ける。ずっと俊のちんちんきもちいって思ってたよ。とボソリと呟かれ、ペッティングしか出来ないのだから、頼むから煽らないでくれと天を仰いだ。
挿入を含まない行為で性感を高めるために口づけをする時間は長くなったが、そのせいか新たな性癖に目覚めそうで困る。
きいちの声で言われた単語がぐるぐると頭の中を廻る。物欲しそうに、手を解いてまで俺の性器を握りしめると、ちゅこちゅこと先走りを塗り付けるかのように刺激した。

「っ、…」
「ふは、ぬるぬる…」
「ん…、すげ、いい…」

きいちの手にこすりつけるようにして腰を揺らめかせる。好きなようにさせながら、あぐ、とシャツを口で退かすと、ぽてりとした胸の突起に吸い付いた。ちぅ、と音を立てれば、小さく声を漏らしながら優しく髪を撫でる。
そっと腹にかかる服も捲ろうとして、がしりと手首を摑まれた。

「そ、そこ…だめ。」
「……なんで?」
「お、お腹冷えちゃう…から?」
「ベッドいくか?」
「えぁ、え、う、…」

あわあわと服の裾を握りしめたまま、オロオロと視線をさまよわせる。そっと服越しに腹を撫でながらジィっと見つめていると、観念したのな顔を手で隠しながらボソボソと呟いた。

「ぉ…、か…ぇる、…ゃだ」
「ん?おかえり?」
「~~っ、ちがう!」
「ん?」

言いたい事が分からず首を傾げる、なんだかそういう雰囲気ではなくなってしまったので、そのまま自身をしまうと少しだけ残念そうな顔をする。
その様子に再び兆しそうになるのをなんとか堪え、まずは何が嫌なのかを確認してからと切り替える。
今まで嫌だと言ってもここまで露骨な態度を取ったことがなかったのだ。腹の具合が悪いと大変だし、もしかしたら胸も痛ければ辞めないといけない。
覆いかぶさったままだった体をゆっくり離すと、指の隙間から微かに見えた表情が泣きそうに歪んだ。

「おい、どうした?腹の調子でもわるいのか?」
「ちがぅ…ぅう、…」
 
ぐすっと鼻を鳴らして首を振る。そのまま両手を上げてきたので抱き上げて膝に跨がらせると、首に腕を絡めてひしりと抱き着いてくる。
腰のあたりを撫でながら暫くあやすと、漸く顔を上げる。
頬を撫でて言葉の続きを促すと、予想外の言葉が帰ってきた。

「…お腹出ちゃったから、裸見られるの恥ずかしい。」
「え。」

なんだ、そんなこと?と言うくらい俺にとっては些末なことだった。そもそも妊娠しているのだから腹が膨らむのは当たり前である。
体型が変わったことを気にしているのはなんとなく気づいていたが、それだけ順調に育っているということにもつながるので、個人的には喜んでいたのだ。

「お腹も胸も、前と違うからみられるのやだ…でもやらしいことしたい…うぅ、」
「やらしいことしたい。」

思わず復唱してしまう。いかん、せっかくきいちが心の中を見せてくれたというのに、俺が真面目に聞いてやらないでどうする。

「別に気にすることなんかないだろ。当たり前のことだ。」
「でもおっぱいだってさ?乳首が膨らんで変だよ…」
「いいおっぱいだとおもうぞ。」
「や、やめてぇ!俊くんの口からおっぱいとか面白すぎるからぁ!」

きいちだってちんちんと言っていたのに、何故俺だけ。とは思ったが、俺の言葉に恥ずかしそうに慌てる姿がなんだか可愛くて口をつぐむ。お腹を撫でながらおずおずと見上げると、困ったように眉を下げた。

「お腹おっきくなるの嬉しいのに、やらしいことしたくなるのも、へん?」
「へんじゃない。全然、まったくもって。」

上目遣いやめろと声を大にして叫びたい。跨ったきいちの柔らかな尻が、さっきから股間を優しく包むのだ。やらしいだのおっぱいだのちんちんだの、さっきから理性を試されるような単語しか言わない。

「でもポコってしてるお腹やじゃない?ちんちん元気出る?」
「出る出る、むしろお前のお漏らしも興奮するのに今更だろう。」
「ばっ、ばかぁあ!なんで今それ言うのぉお」
「だって事実だか、わかったもう言わん!だから機嫌直せって!」

むしろ今の反応で露骨にビクリと膨らんでしまった。
きいちの尻の下の性器も、元気に存在感を示しているというのに、どうやら比較の選択を間違えたらしい。よほど恥ずかしかったのか期限を損ねたようだった。

結局今日はもうやらしいことしない!とぶすくれたきいちの慈悲のない言葉と、俺の迂闊な一言によって高ぶってしまった性器をソロプレイで鎮めることになりそうだ。

「きいちー‥」
「しませんっ!」

元気になった俺の性器を物欲しそうに見てたのを知っている分、挽回のチャンスがあると思ってたのだが、気持ちの切り替えの早いきいちはシャワーも別ねと酷いことを言ってから寝室に消えていく、。

「なん、だと…」

妊娠中の番はデリケートだからね、といった新庄先生の言葉の意味を、お預けという形で知らしめられた瞬間だった。


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