上 下
161 / 273
2章

3人揃えば

しおりを挟む
「き、緊急招集ー!!!!!」

朝から元気に走ってクラスに飛び込んできたのは学だ。何やらひどく慌てた様子でわけのわからないことを言っていると思ったら、わらわらと野球部三人が集まってきた。うそだろ、親衛隊を集めるのはご本人なのかよ。

「なんだなんだ、」

三浦くんが立ち上がって木戸くんと吹田くんを手招きする。わらわらと集まってきたガタイの良い三人が学ぶを囲むとカツアゲのように見えて若干治安が悪い。

「お前ら知恵かせ!!3人の坊さん揃ったら坊主の知恵なんだろ!?」
「坊さんっつーかぼうずだけどな。」
「坊さんつーか文殊が正解だけどな。」
「どーだっていいんだわ!!!男って何もらったら嬉しいの!?あいつ誕生日が卒業式なんだってよおお!!」

言うのおせぇんだよクソが!!と、頭を抱えて喚く学に、俊くんは4月だったなと思い出す。というよりも学も男なので自分が欲しいものを渡せばいいのでは?とかおもいながらも、俊くんが向いてくれたバナナをぱくりと頬張った。

「俊くんなにほしい?4月。」
「んー、とくにねぇな。きいちは?」
「僕もないんだよねぇ。」

もくもくと食べながら、時折聞こえてくる悲鳴やら笑い声をバックミュージックに朝のひとときを過ごす。剥いたバナナの皮は俊くんがクラスのごみ箱に捨てた。ゴキブリでたら多分俊くんのせいだと思う。

「誕プレかぁ…」

益子が天井を見ながら言う。年上の忽那さんと付き合っているから、なんだか大人っぽいものとかおくりそうである。野球部の木戸くんはエロ本がほしいとか言って早急に却下されていた。

わいわいと喧しく騒いで欲しい欲しくないと論争を続けていても時間は立つわけで、結局先生が入ってきた事で緊急招集も終わりとなった。

学が教科書で死角を作りながらスマホでギフトの検索をしているけども実りはなさそうである。僕だったら何がほしいかなぁ、と考えてみたけど、今や自分のものというよりもお腹の子が生まれてきたときに使えるものくらいだ。

腹を撫でる僕の手を、俊くんがじっと見つめていたようだが、黒板をぼけっと見つめている僕はその視線に気づくことはなかった。





「やっぱりさぁ、男のロマンだと思うんだよねぇ、プレゼントは俺って。」

ちうちうと牛乳を飲みながら、俊くんに寄りかかって学をみる。僕がギブアップしたパンをもぐもぐと食べている俊くんが、顔を向けてきたタイミングで口元に牛乳を運ぶ。僕ら阿吽の呼吸もばっちしである。ごくんと最後のひとくちを飲み込んだ俊くんが、めちゃくちゃいい声で呟いた。

「シチュエーションも大切だろうが。」

昼休み、いつもの四人で集まったのは、朝の続きを話すためだ。学は自分が欲しいものを上げるというパターンで行こうと思ったらしいのだが、学の欲しいものを聞くと最新型のゲーム機だったので、それは流石に買えないと諦めたそうな。

というよりも末永くんゲームするのか?そんなイメージはまったくないからどっちにしろ却下である。

「シチュエーションかぁ、」
「保険医は保健室、団地妻には団地。そういうふうに相場は決まってるぜ。」
「目には目を、歯には歯をみたいに言う…」

益子の例えは明らかにアダルトビデオ参照ですね。それにしても俊くんが白衣着て保健室にいたら滾るかもしれない…おっとよだれが。

「はっ‥生徒会長には…生徒会室…?」
「閃いちゃったかぁ~」

キュピーンと、背後に稲妻を走らすかのごとくハッとした様子の学に、今までの理論で行くと抱かれる側に付随するシチュエーションなのでは?と思ったけども細かいことはいい。

「れ、冷静になってみ?生徒会室でしてバレたら不味くない?」
「ふ、きいち。男はいつまでも忘れらんねぇもんがあんのよ。」 
「一応聞くから行ってみ…」
「冒険心だよ…そう、これっきゃねえ!!!」

はっはー!!と急にボルテージが上がってきたのか、先程までの追い詰められた表情からは一転して、いまは益子と肩を組んでワイルドにソフトドリンクを呷っている。ぶどうジュースなのに、なんだか目の前の絵面の治安の悪さよ!これもしかして僕のせいになるのだろうか?
僕が安易に、学がプレゼントって言えばとか言ったから?でもここまで予測できるかぁ!
たすけを求めるように俊くんを見上げると、俊くんは俊くんでシチュエーションプレイかとか意味深なことを呟いている。おっとぉ、知らないうちに僕自身の死亡フラグも立ててしまっているねこれは。

「あ、や、ほら。僕もね?もうママだし今はそういうのはね?」
「ああ、ママだもんな。」

めちゃくちゃいい声で普通のことを言っているのにいやらしい気配がするぞ。おい誰かこの場を纏めてくれ。とりあえず 流れ弾を運んできた学は許さん。

「ていうか、そんな猥談話が平気になるくらいエッチしたんだ。」
「おうっふ」

益子のニヤニヤ顔で見つめられた学は、盛大に墓穴をほったようでガチンと固まった。そうじゃん!
盛大に目を泳がした学は、スッ、と指を3本立てた。

「えっすくな。」
「すくない!?うそだろもう3回もしてんだぞ!?」
「僕のときとか最初から複数回したよね?」
「まあ、ヒートだったし番だってわかってたからな。」
「そ、そういうもんなのか…」

顔を真っ赤にしながら慌てる学に、別に少ないだけで変でもないし、人によることをフォローしておく。でもよく考えたら僕も益子も番の家を行き来してたのと、思春期故のやりたいさかりだったからかもしれん。

「でも、4回目がシチュエーションプレイってのは流石だわ。」
「ウッ」
「きいち、それとどめだわ。」
「あり?」

俊くんの言葉に学の顔を見ると、今まで見たことのないようななんとも言えない表情で固まっていた。
あれ?もしかして余計な事言った?でも多分大丈夫でしょ、末永くんむっつりそうだし。


しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】あなたの恋人(Ω)になれますか?〜後天性オメガの僕〜

MEIKO
BL
この世界には3つの性がある。アルファ、ベータ、オメガ。その中でもオメガは希少な存在で。そのオメガで更に希少なのは┉僕、後天性オメガだ。ある瞬間、僕は恋をした!その人はアルファでオメガに対して強い拒否感を抱いている┉そんな人だった。もちろん僕をあなたの恋人(Ω)になんてしてくれませんよね? 前作「あなたの妻(Ω)辞めます!」スピンオフ作品です。こちら単独でも内容的には大丈夫です。でも両方読む方がより楽しんでいただけると思いますので、未読の方はそちらも読んでいただけると嬉しいです! 後天性オメガの平凡受け✕心に傷ありアルファの恋愛 ※独自のオメガバース設定有り

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

処理中です...