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2章

ステルス機能は仕様ですか。

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「ひぇ、っ…」

桑原喜一、17歳。何ということでしょう。某高杉くんの一件から切れ痔疑惑を常に持っていたのだが、ついにこの時が来てしまったようである。

俊くんに激しく求められたということもあるかもしれない。むしろそっちでいてほしい。なんと少しの違和感を感じでトイレにいったら出血をしていました。お疲れさまです僕の尻。

ひりつく痛みはないけど、酷使されたりするそこは少し腫れていた。これは少しえっちはお休みしたほうがいい気がする。これは俊くんに要相談だ。

「ふぁー、あ…」

全く朝から踏んだり蹴ったりである。結局出血が続くなら病院で痔の薬でももらおうと決め、少し早く起きてしまった休日の朝、二度寝を決め込むために自分の部屋に戻るため階段を登る。

なんだかお腹はウズウズするのだ。無意識にさすってしまうくらいには調子は悪い。お腹を壊したつもりはないんだけど、なんだかなぁと念の為パジャマの裾をパンツに入れて布団に入った。

朝早く起きての二度寝、休みの日だと幸せを感じる瞬間だ。俊くんは今日テコンドーを練習するとかで朝早くから会社の地下にある道場に行っているらしい。
今日はそのまま正親さんに1日ついて回るとも行っていたので、次合うとしたら明後日だ。
最近はもっぱら俊くんちに入り浸っていたので、今日はおとなしくうちでゆっくりしよう。

「んん、…まじでつかれてるのかもしれん。」

眠たい目をこすりながら、布団の中に潜り込む。
だきまくらに着せた、俊くんちから借りてきたパーカーに顔をうずめて深呼吸をひとつ。
すり、とそれに擦り寄りながら、再び心地よいまどろみの中に意識を沈めていった。




「おらおきろー!」
「ぷぇ、っ!」

バサリと布団を捲られて夢の縁から叩き起こされる。渋々目をこすりながら起き上がると、腰に手を当てておかんがにこにこしていた。

「おはよ…今日休みの日だからもちっと寝てたいんだけどぉ…」
「なにいってんだ、期末のテスト勉強するとかで益子くんがきてんぞ。」
「はぁ!?」

なんだそれ約束してないんですけど!?
ボサボサの髪のまま起きると、慌てておかんの横を通り過ぎて階段を駆け下りる。
すると、玄関にはニコニコとした顔で参考書を一山抱えた益子が立っていた。

「おはよう!いい朝だね!」
「うわうるさ。朝から益子…なんで?約束してなくない?」
「してもしてなくても、俺とお前はマブダチだからな!助け合い精神大切だろ!」

ぐっ、と親指を立ててニコニコ笑う。なんだその爽やかキャラ!恐ろしいくらい似合ってない。

「とりあえず上がって…僕シャワー浴びて着替えてくるから。」
「おー!俺お前の部屋行ってていい?」
「いーよ、むしろベッドメイキングしてまってて。」

おかんが入れ違いで降りてきて、取りに行こうと思ってた下着と着替えを渡される。さすがである。僕の朝のルーティンをしっかり把握済みのおかん、仕事が早すぎる。
あんま益子くんまたすなよーと一言言われ、腑に落ちないものの浴室に行ってシャワーも寝癖を直すくらいで軽く浴びた。

デニム地の細みのスウェットパンツに長袖カットソーというラフな格好で頭にタオルをかぶせて部屋に戻ると、益子が床に寝っ転がりながら漫画を読んでいた。

「おい勉強してまってろし!」
「お前の部屋エロ本一冊もねぇのな?」
「しかも漁ってんじゃねー!」
「なははは!」

そら抜くほど溜まってなんかありませんし!?
益子は冗談だぴょんとか腹立つ事この上ない軽々しい言葉でやり過ごすと、ぴたんと両手のひらをくっつけて仰ぎ見てきた。

「たのむ、現代文!!これがまじでやべぇの、おしえてエロイ人!!」
「誰がエロイ人だこら!現代文とか教科書よんでりゃわかるでしょ。それより僕が数学教えてほしいわ!」
「わかるぅ!おれも数学教えてほしいー!」
「おい益子が数学も駄目なら僕にメリットなくね!?ぼくは誰に教わればいいわけ!?」

テヘペロ顔やめろ。
仕方なく僕は僕で数学の参考書を取り出して床に小さいテーブルをおく。
益子の向かいに座ると、かばんから現代文のノートと数学のノートを取りだした。期末が近いので教科書を持って帰ってきたのだ。というか置き勉できない。学は往生際悪く体育館履きの袋に教科書積めて誤魔化してたが、勉強しなくていいのかと思う。

「うおおこれだよこれ!!お前のノート丸写ししたらテスト勉強しなくてよくね!?」
「んなわけねー!教科書読み込んで作者が何を言いたかったのかとか、読み解けるようにしとけって。」
「おっけ、教科書かして。」
「お前まじで何しに来た!!」

なんで参考書しか持ってきてないのか疑問なんですけどー!?渋々教科書も手渡すと、僕はもう益子は気にせず数学に取り組むことにした。

平面上のベクトルだの、空間上のベクトルだの、矢印は一箇所にしぼれよと思う。点と平面の距離!?そんなもん知るか。メジャー持ってこい。僕が物理的に図ってやる。
大体微分積分も、式と証明も理解してないのに範囲を増やすな。なんで点が移動するんだ、車輪でもついてるのか。
そんなかんじで教科書をひらいてもちんぷんかんぷん。公式を当てはめたらすぐとか言うけど、何を根拠に!?公式を当てはめて答えが出るのは数学が得意なやつだけなんだよ!!僕なんか見てみろ、授業態度だけで1を回避している男だぞ。

「きいちは数学の参考書見るだけで眉間にシワ寄せるじゃん。」
「はあ…数字で表せないことだってあるよね?」
「すげぇくせ者みたいなこと言ってる。」

益子が若干引き気味に笑う。そういうお前も珍回答をしてるだろうが!なんだその作者の心理を読み解いた答え!!その手には乗らない、だと!?逆に作者が疑心暗鬼になってるじゃないか!
なんというか、バカが二人集まっても生み出せる答えはないのだ。せめて忽那さんとかに教えてもらえればいいのに。

「何だその目、そんな目で俺を見るな。」
「もしかしてさぁ、忽那さんとなんかあった?」

びくんと面白い位に体を跳ねさせると、スンッと取り繕うように真顔になる。なんでそれでごまかせると思った!?僕が無言でスマホを取り出すと、あからさまに慌てだす。

「ワ゛ー!!まてまて早まるな!!!葵にはかけるなってば!!」
「じゃあなにしたの。もー、あんな健気な人いじめたら僕が千切る。」
「何を!?!?」

結局益子は、今回もどうやらやらかしたらしい。やらかし過ぎてよく愛想つかされないよなぁとかおもいながら話を聞くと、どうやら夜のお話のようだった。

「ゴムをつけてない僕が言える話はない。」
「お前らって結構爛れてるよなぁ…」
「つけようというタイミングがないよね。気付いたら入ってるもの。」
「俊くんステルスチンコなの?」
「だははなにそれうける!」

ステルスチンコはやばい。益子の謎の発言の意味はわからなかったけど、面白かったので良しとする。
益子いわく、ゴム無しでも責任取るからまかせろというスタンスの益子VS学生に責任取らせるわけには行かないから避妊しろ忽那さんで、攻防を繰り返しているようだ。

益子の学生という身分を重んじる忽那さんが、自分自身を重荷に思っているような気がして、益子はそれが嫌だと言った。

僕たちオメガとアルファでは考え方が違うのか、答えの出ない悩みに直面したらしい。
なるほどそれで僕に聞こうとしたわけだ。同じつがいを持つものとして。

前までは猪突猛進、自分で決めて行動をしていたのに、その成長っぷりに少しだけ見直した。

「なんつーか、相談だけど、ある意味のろけだよねぇ」
「うっ……」

僕の一言に珍しく顔を赤らめた様子に、ちょっとだけしてやったり気分を味わった。

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