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君へのギフト

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「という話があったのだ。」
「お前のクラスメイト愉快だな。」

所変わって俊くんちである。
最近は忍さんが仕事のときにお邪魔して一緒に過ごすことが多い。けして爛れたひとときを過ごしてるばかりじゃないぞ!なんてったってまだ3回しかしてないしな!何をって、言わせんな恥ずかしい。

俊くんは眼鏡をかけてパソコンで調べ物中だ。何やってんのか気になるけど邪魔するのも嫌なので僕は何故かそこらへんにあったチラシで折り紙をしながら先程の会話をしていたのである。

「そんでね?なんと益子は知らんまに童貞を脱していたらしい。やっぱ忽那さんとしたのかなぁ。」
「忽那さん?彼女でもできたのか。」
「うんにゃ、僕と同じ。」
「ああ、番…」

珍しく俊くんが興味深い顔をして聞き返してきたので、忽那さんが益子とどういう出会いをしたのかもかんたんに話した。マジもんのラブロマンスだ。

「なるほど、益子の言う近所のえっちなお兄さんは存在したのか。」
「そー、しかも写真舘しながらどっかの大家さんも兼ねてるらしい。めちゃ綺麗な人だよ。」
「へぇ、益子も頑張んねーとな。」

俊くんが眼鏡を外してパソコンを閉じる。どうやら調べ物も一段落したらしい。コピーしないのか聞いたらブクマしたので必要ないらしい。
僕もスマホを見ながら折ったザリガニを完成させたばかりだったのでちょうどよかった。なんとなく写メって益子と学に送っておいた。特に意味はない。

「んで、なんか話あるとか言ってなかったか?」
「童貞非処女やだ!脱童貞したい!」
「直球だな、なんでまたそんなこと思ったんだ…」
「益子が童貞じゃないからなんかくやしい。」

スンっとした顔で見つめると、呆れたようなため息をつかれた。それを言うなら益子だって処女だろうとか言ってたけど、それは想像できないというか、したくないのでまるっと聞かなかったふりをする。

「大体俺は抱かれるつもり無いぞ。」
「なんっで!?」
「逆になんで?」

うちの晃だって僕と同じで童貞非処女は嫌だとか言って本職のお姉さんに筆おろししてもらったとか言ってたのに!!正し結婚前、高校卒業してからきちんと吉信を説得したらしい。
ちなみに本職のお姉さんにも事情を説明したら大層笑われて、クソ真面目なイケメンオメガの筆おろしは取り合いになったとかならなかったとか。
おかんはたまにその時のことを楽しそうに振り返るけど、そのお姉さんと年賀状のやりとりしてるのは流石に面白すぎた。今やその人は2児の母らしい。
その日の夜にめちゃめちゃ死ぬ思いをしたと言っていたが。付いてるもん使わないのはもったいないだろうとか男らしい理由を言っていた。

「だからうちの晃だって非童貞なんだよぉ!」
「年賀状やばいな。さすが晃さん、まじで律儀すぎてやばい。」
「ちなみにお歳暮も送ってるぞ。」
「いやもうどこから突っ込んでいいのか。」
「僕も突っ込みたい!」
「やかましいわ。」

うわん!と泣いたふりをしても通じない。ぐぅ、むしろべチリと頬を両手で挟まれた。僕はどうせなら前も後ろも俊くんで始まって俊くんで終わりたいのである。おはようからおやすみまでも俊くん。なにそれ最高かよ。

「わかったわかった。だけど流石に本職のお姉さんに相手してもらうのは同意できん。」
「いれさせてくれるのぉ!?」
「阿呆。まあ考えがある。忍もそのへんで親父と揉めたらしいしな。なんかアドバイスは聞いてくるよ。」
「忍さんも男の子だもんなぁ…」

やはり、男オメガの脱童貞は死活問題である。学とかそこんところどうなんだろ。忽那さんがもしおなじ気持ちだったら益子は素直に尻を差し出すのだろうか。やめよう、ちょっと甘納豆のイメージが強すぎて笑う。

僕が期待に胸を馳せている中、まさか俊くんのスマホでリアルタイムに正親さんに連絡を入れているとは知らず、僕の脱童貞への野望を吉信にも知られることとなる。そして正親さんと吉信がアルファの心の安寧のために選んできた恐ろしいラブグッズが僕あてに届いて悲鳴を上げることとなるとは、このときの僕も、頼んだ俊くんでさえ思わなかったのである。











「なんだこれ。」

みかんの箱に高さを足したような長方形の紙のダンボールが僕あてに届いた。右から見ても、左から見てもまっさらなきれいな茶色である。ダンボールの表面からは何が送られてきたのか全くわからず、晃になんか頼んだかと聞いても知らんといわれた。

「化粧品…?」

送り状に記載されている文字にはそう書かれていた。これはもしかして世に言う詐欺なのだろうか…送りつけ商法とかなんとかニュースでやってた気がする。
重さはそこまでじゃないけど、何が入っているかわからないので、とりあえずリビングの端っこに置いとこう。触らぬ神になんとやらだ、こういうのは吉信に任せるに限る。

「トイレットペーパーストックするのにちょうど良さそうな箱だな…」
「えー?開けたら支払うことになるかもしれんじゃん。僕こんなの頼んでないし。」

オカン的にちょうど良さそうな箱の大きさだったようで物欲しそうに見つめている。そういや最近ライフハックにはまってたね、入れるのかこの箱に、むき身のトイレットペーパーを。

「なら吉信に聞こ。」

スマホで吉信に連絡を取るオカンを横目に、早々に興味をなくした僕は牛乳パックをはさみで長方形に切る。魚とか切るときにまな板を汚したくないらしいオカンが思いついた牛乳パックストックである。ものぐさが進化してエコロジーになっている。

「あ、そうなんだ。俺も使っていいって?化粧品って書いてあったけど?」

ちょきちょきとハサミでパックを切りながら聞き耳を立てる。なにやらオカンとシェアしてもいいらしい。なんだ、シャンプーとかか?よくわかんないけど悪いものじゃなさそうで、そうとなるとやっぱり気になってしまい再びすみに押しやった箱を見た。

なんとなくシンプルながら存在を主張するその箱。
通話を切ったオカンと目を合わせると、開けてみろとジェスチャーされた。

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