なんだか泣きたくなってきた

だいきち

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番外編

バレンタインの悪魔 *

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「世にはびこる恋人たちのためのイベントといえば!?」

本日はバレンタインである!ふふ、なんてことだ。ずっと受け取る側に憧れていたこの僕が、なんと渡す側にまわるとは!!
勿論誰に渡すかって?俊くんに決まってるじゃないですか!!
オカンに茶化されながら前日の夜にセコセコと作ったガナッシュをこねこねと丸めてトリュフにしたものがこちらです。 
ちなみに試しに料理本を見ないで、ただ溶かして固めただけのチョコレートもあるが、クッキー型に並々とチョコレートを注いでしまった為に、固まったあとは歯では噛み砕けないほどの硬度をもつチョコレートが完成してしまったのだ。それが徳を積んでメタモルフォーゼした結果のトリュフ。愛だけは存分につまっている。

「トリュフ?きいちが作ったのか?」
「そう。紆余曲折あってその形になりもうした。」
「紆余曲折……?」

僕In俊くん家なうなのです。なんだか照れくさくて、玄関先で渡してグッバイするつもりが気づいたらInしてました。お邪魔しやーす。

俊くんは玄関から僕をひっつかんで部屋まで連れていくと、僕が包んだ可愛い花柄フィルムのそれを開け、一粒つまみだした。ココアパウダーをまぶしただけのシンプルなそれをまじまじとみやり、パクリ。と食べてくれた。

「どっすかどっすか!?んまい?デリシャス?」
「トリュフだ。全然固くない。柔い、甘い。」
「美味いか聞いてんですけどぉ!?」

僕の反応をみて、弄ぶかのようにしばし翻弄される。本日の俊くんは意地悪モードらしい。感想を聞きたがる僕の口の中に一粒、手作りトリュフを入れた。

「あ、いける。んまい!」
「だろ?作ってくれてありがとな。」

俊くんは嬉しそうに笑うと、僕の大好きな大きな手の平でわしゃりと頭をなでた。
その手に押し付けるように僕は自分の頭をぐりぐりと俊くんの手に擦り寄せると、犬みたいだなと笑われた。

「ふふ、僕本当はもらうほうに憧れていたはずだったのになぁ…」
「ん?もらったことないのか?」

キョトンとした顔で聞き返される。ナチュラルにマウントとるやんけ、僕だって男の子ぞ!オカンからも貰えないしな!?むしろオカンが貰ってるんだぞ。あ、オトンも貰ってんな。我が片平家では貰ってないの僕だけだ。ぴえん。

「ないよ!俊くんみたいにモテないし。本当俊くんは僕の初めてばーっか奪ってくんだから。」

でも、こういう小さなイベントも、少しずつ当たり前になっていく未来がこれから先にはあるのだろうか。もしそうだとしたら、それは幸せなことだな…と思う。
なんだか急に照れくさくなって顔を伏せると、するりと大きな俊くんの手で顔を持ち上げられる。恥ずかしいから顔そむけたのに!やはり俊くんはサド疑惑あるぞ。

「きいちの癖に、今のはキた。」
「え、なんて?…ん!?」

ガシリ、と両頬を大きな手で覆われるように顔を固定された。無理やり目線を合せられた僕の目には、悔しそうな顔で頬を赤らめた俊くんが居た。
そして、なにがきたのかわからないまま僕の疑問は俊くんの柔らな唇によって塞がれたのだ。

「っ、んん。む…っ」

ぬる、と咥内に熱くて甘い舌が入ってくる。ひくん、と思わず腰がはねてしまったことが恥ずかしい。同じ高校生なのかと思う位卓越したキスに、僕はされるがままこくこくと甘い唾液でのどを濡らす。溢れ、はしたなく口端から一筋垂れた。

「ふ、…は、ァっ…な、なに?」
「ん、ごめん。でもキスしたくなった。」

すり、とおでこが重なる。高い俊くんの鼻筋が僕の鼻と擦れるほどの至近距離で囁かれると、もう降参である。

「い、いよ…」

僕も、俊くんとのキス好きだし。と続けるつもりだったのだが、ポスンとそのままベッドに押し倒されていた。

「…ん?」
「ごめんな、」
「え?なになに!?」

見上げる俊くんの顔は照れているのか、少しだけ赤い。僕の番は今日もかっこいいなぁ、なんて見惚れてしまったが、そうじゃない。

「え、えええ、えろいことすんの!?」
「ん、したい。だめか?」

恥ずかしそうにしながら伺われる。そんな、ワンワンみたいな可愛い顔で言われると男心がしげきされるというか、まじで!?

「め、めっちやかわゆ…ずるいぞ、俊くんその顔は。」
「ん…したい。きいち。」
「僕が今から抱かれるんですよねこれ!?」

なんか勘違いしそう!!なんつースキルを身に着けていらっしゃるのかこの人は。なんで僕が照れながら混乱するという器用なことをしてるのを、多分なんとなく察したのだろう。俊くんは頬を染めながら困ったように笑った。

「きいち、俺を…尻で抱いて。」
「尻で、抱くとは…?え、あ、ちょ…、アーッ!!!!」

抱いてワードの使い方に、新たな方向性を見出した俊くん。
文字通り尻で抱いた僕は、ヒートでもないのに尻って濡れるのか…また一つお勉強させられることになったのだ。








(俊くんsite)


「ぁ、ン!うそ、何で僕濡れてんの…っ、」

きいちは、俺の番は馬鹿でアホで綺麗で可愛い。
流されやすい所が欠点だが、こういった色事に関する事では余計に煽ってくるのだ。しかも、無意識に。

「ひゃ、…ぁうっ…、ぼ、ぼくっ…」
「ん、…なに?」
「ヒートじゃ…ないのに、…っ」
「いや?」

シャツを託し上げ、ぷくりと主張する胸元の突起を唇で掠めてやると、差し出すように胸をそらす。
きいちは無意識なのだろう。あのときの行為がいい意味で体の芯に記憶させられたようで、支配欲が満たされる。

「や、じゃない…っ、けど…」
「ふ、…けど?」

舌で突起を押し上げるようにべろりと舐めあげる。ふるりと身を震わせ高い声を漏らすきいちがどうしようもなく愛おしい。
きいちの背に手を入れて胸をなめやすく反らすと、きいちが震える唇で続けた。

「ヒートじゃなくても濡れるの…っ…て、…へん?」
「っ…、」

きゅ、と俺がたくし上げたシャツを両手で握りしめながら聞いてくる。俺の手で快感を拾ってますと言わんばかりの言葉に、堕ちたのは俺の方だった。

「ぁ、や…!」
「きいち、…っ」

ぢぱっ、と強く胸の尖りを唇で喰むように刺激する。割り開き、足の間に主張するきいちの性器に自分のそこを押し付けるように体を密着させると、腰を刺激するような甘い声が帰ってくる。

「え、っち…する、の…っ」
「する。止められないだろ…もう。」
「っ、ン…ぁっ」

あぐ、と首筋を甘噛みしてやれば、じわ…ときいちのそこが布越しに遂情したのがわかった。

「ぁ…しゅ、んくっ…」
「うん、出ちゃったな…可愛い。」
「うぅ、っ…ン」

ずり、と緩く腰を揺らすとぬかるんだ音がした。顔を真っ赤にしながらゆるゆると背に腕を回されたら、もう、駄目だろ。





「ひぅ、っ…や、やぁ…っ」
「ン…、っ」

ゆるゆると指を3本飲み込んだきいちのそこは、きゅうきゅうと奥に誘い込むように吸い付いて離さない。
ぐぷぐぷと甘い香りのする蜜がさっきから俺の指を伝ってシーツにシミを作るのを見る。我慢出来ずに指で広げたその中に舌を差し入れ、蜜を拭うように舐めた。

「ぁ、っそ、そこやっ…な、めぁ…でぇ…っ」
「ん、ふ…気持ちよさそうなのに?」
「ゃ、やら…っぬるぬる…やぁ、…っ」

舌を抜き差ししてやると、呼応するかのように情けない音をたてて何度も射精する。
きいちの腹から伝った精液は、ぽたりとまた一つシーツにシミを作った。

「きいち…もういいか。」
「ぅ…っ…」

もう、顔も性感でとろとろだ。濡れた瞳で縋るように見つめられたら、答えない男なんていないだろう。

「ぁっ…ごむ、つけて…」
「わかった。おいで、」

きいちの濡れた唇に口付けながら、枕の下に手を差し込む。カサリとふれたアルミ箔のそれを口付けの合間に開封し、己の性器に合わせた。

見せつけるように、ゆるゆると自慰のように手を動かし装着すると、一部始終をみていたきいちの性器がふるりと震えた。

「力抜け、腕こっち回せ。」
「う、ん…」

首の後にきゅ、と腕を巻きつけ抱きつく背をあやすように撫でたあと、ひくつくきいちのぬかるみに腰を押し付けるようにして插入した。

「っ、ぅあ…熱…」

性器を押し付けるように進める度、粘度の高いそれがくぷくぷと結合部を濡らす。きいちの薄い腹はいやらしくひくつき、甘く俺のを締め付けた。

「ぁ、あ、あっ…ど、しよっ…」
「き、もち…な?」
「き、もひぃ…っひぅ、うーっ!」

無意識に腰を揺らめかせながら、奥へと誘い込む肉壁を穿つ。弾かれるように粘膜が何度となく濡れた音を立てながら下肢を濡らすたび、きいちの甘く泣いているような嬌声は、何度も俺の支配欲を煽る。
あとは、お互いがただ性感に忠実だった。

「イ、ぅ…も、やぁ…あ!」
「は、…っ」
「イ、ぁあ!っも、イ、てぇ…えっら、してぇ!」
「ん、ン…っぁ」

きゅうきゅうと奥まで上手に飲み込んだきいちを何度も揺さぶる。さっきからふるふると腹の間で揺れているきいちの性器からは、精液でない飛沫が律動とともに漏れ出ている。
健気に全身で快感を享受する様子が愛しくて、きいちの奥の奥まで押し付けた。

「ぁ、あ!あっそ、こぉ…っら、しへ…っ」
「ぅ、あっ…」
「ら、して…っしゅ、んっ…きゃ、うっ!ぁ、ああっンうっ」
「ーっ、!イ、く…っ」
「ぁ、…っ!」

ごり、と最奥に飲み込ませるように先端を奥深く捩じ込む。弾けるような強い刺激になすすべなくコンドームのなかに全てを吐き出すと、びくん!と大きく体をはねさせたきいちが、気づいたら動かなくなっていた。


「…、やりすぎた。」

ぐったりと力を抜き、体を投げ出したきいちは酷く扇情的だった。
誤算だったのは、己のそれが一度では足りんと下腹部でまだ元気なことであった。

「起きるまで。おあずけだな。」

ぐったりと力を抜いたきいちを抱き寄せると、目を覚ますまでは先程のチョコレートでも味わうか、と箱に手を伸ばす。

抜かなきゃとは思うのだが、もう少しだけこのままで。
もくりと貰ったチョコレートを食べながら、その数十分後に起きたきいちによって、セックスはイベントとヒートの時だけと勘違いされたままホワイトデーまでお触り禁止を言い渡されることになるとは、このときの俺はまだ知らない。









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