26 / 273
内側を写す
しおりを挟む
「キャァァァアア!!!」
絹を裂くようなかん高い声を上げて、周りの注目を一身に集めたのは、他でもない益子である。
「エッチ!!もう!!きいちさんのえっち!!ばかきらい!!!」
「はぁ!?益子がそんなとこで着替えてるからいけないんじゃんか!!」
「いやぁあ俺のおっぱいみないでぇええ!」
「誰かそんな甘納豆みたいな乳首に勃つかァ!」
文化祭がおわってから三日、僕は益子のいる写真部に先日の文化祭で撮影した写真を受け取りに来ていた。
もちろん愛しの親友俊くんの為に、彼が写ったものと、あの後吉崎もいれた3人で撮影したもの。
益子も一緒に映らないかと誘ったんだけども、タイマー設定より自分の腕を信じるとのことで今回は撮らなかったのだ。なにそれプロい。
「僕が来るってわかっててなんでそこで着替えるかな!?びっくりしたわまじで!」
「え、俺の乳首甘納豆?ほんとに?」
「もーさっさと前閉じろよぉー!ほら現像したやつもくれ。」
「無視?嘘でしょ?甘納豆っていっといてそこはもう触れないの?嘘でしょ?」
せめてもっと別のものに例えられないのか…と胸元を隠しながら絶望しているが、自分自身の語彙力がないのと、物事のたとえを素直すぎるくらいにビシバシ言うよなと俊くんのお墨付きもあり、今後もお世辞方面での成長は期待できないだろう。すまんの。
「あったあった、ってうわぁ…」
3人の集合写真の右上に益子の履歴書のように整った写真が小さく貼られている。修学旅行やイベントに行きそびれた奴らが受ける仕打ちを自らに科すセンスは流石だ。
「それおもろくね?俺的になかなかのギャグセンスだとおもっている。」
「右上の益子の主張のせいで爽やかな青春写真を淀ませてるよ…」
なにその真顔!と突っ込むも、本人は、至ってどこ吹く風。飄々としてるけどほんとにこれでいいのかお前は!
「てか益子はなんで脱いでたの?」
「現像液の制作をしようとしてちょっとな?」
「ほーん、」
「全然興味ないじゃん!?」
いわく、益子は以前からモノクロ写真に興味があるようで、卒業制作として一冊の本に出来るようにしたいということだった。
僕は帰宅部なので卒業制作だのは関係ないのだが、なんだかそういうのも青春ぽくていいなと少しだけ羨ましく思う。
「カリスマ帰宅部のきいちくん。手伝ってくれてもいいんだぜ?」
「あっそのうちー。」
「いつかとそのうちは一生来ないんだぜ!!」
わかる。
ひとまず益子から貰うもんはもらったので、あとはこれをわけて吉崎と俊くんに渡すだけ。んふふふ久しぶりのツーショットもあるぞ。これは生徒手帳に挟んでおこう。
まとまった写真の束は3人分ともなると結構な厚みで、なんならみんなで休みの日に遊ぶ約束でもして、そこで渡すのも有りかもななんて、え?わりとよくね?天才か自分。
そうと決まればぽちぽちとスマホを操作して吉崎に連絡をした。ちなみに登録名は読経姫だ!ここは譲らん。
「あ、学?いまどこにいんの?」
なにやら授業の途中で呼び出しがかかり生徒会の連中にドナドナされていった学は、本当なら放課後一緒に写真部に向かう予定であったのだが、その約束は守れそうになさそうだったのでしかたなく一人で来たのだった。
「え?今益子のいる写真部にいるー、おわったなら迎えに行く?」
「彼氏みたいなこという!」
「益子うるせ、ごめんなんでもない。」
学も用事が済んだのか、クラスに戻ったとのことだったので置いてきちゃったお詫びに迎えに行くことにした。益子の謎発言はまるっと無視させていただこう。僕等は男の友情なのだ!
「益子もくる?てか3人で帰る?」
「俺は読経姫と二人で帰りたい!!」
「欲に忠実なやつめ!僕も俊君とかえりたい!」
「頑張れ吉崎道のりは長いぞ…」
「え?なんて?」
イイエナニモ、と急に真顔に切り替えられるのほんとすごいと思う。益子は顔の筋肉酷使しすぎじゃね…、と余計なこと考えてると時間が立つので益子をおいて吉崎を迎えに行くことにした。
さらば益子、いつか吉崎と一緒に帰れるといいネ…!
益子はきいちが出ていった扉を見つめてひとつ、ため息を吐いた。
文化祭終わり、きいちが走り回っている最中に親しくなった俊君という、造形美の美しい同い年の男子とのやり取りを思い出していたからだ。
「なー、俊君はきいちのことすきなの?」
「ああ。ガキから一緒だったし、好意は露骨だからわかりやすい。」
「結局両想いかよ!」
「…あいつは自分の気持ちを自覚してないぞ多分。」
校門の柵に持たれ掛かりながら、何気ない一言みたいに告げられて動揺する。普通、高校生男子はこんな簡単に他人に好きな人のことをバラすのかと思ったからだ。もちろん、自分が水を向けたのも理解してはいるけども。それよりきいちが自分の気持ちを理解していないというのは、有り得そうな話で苦笑いするしかない。
「わかる。前もそんな感じだった。」
「え?あいつそんなもてんの?」
「もてる、ってか依存されるかんじ?」
「あんなちゃらんぽらんが?うそだろ…」
半ば信じきれなかったのは、浮いた話が在学中にほとんどなかったからだ。本人も、凄く優しい先輩がいる。とか言っていた。明らかに付き合っているのでは?と噂されるくらいだったのに、話を聞くと付き合ってないよ。と言われたときは動揺した。勿論、先輩もだ。結局勘違いさせたきいちが悪い、といわれて結構大事になったのは記憶に新しい。
「いいんだ、きいちは俺のだから」
「情熱的ぃ…言わんの?」
「まだその時じゃない。」
益子は初めてあったのに、まるで牽制するかのように思いを話してくる目の前の高校生が、なんだか異質なものに見えた。
お前も依存した一人なの?という言葉は口にでかけたがやめた。
ただ、言わんとしていることを理解しているとばかりに目があい微笑まれると、なんだかきいちがとんでもないやつに好意を抱かれているのでは…、とすこしだけ心配になった。
絹を裂くようなかん高い声を上げて、周りの注目を一身に集めたのは、他でもない益子である。
「エッチ!!もう!!きいちさんのえっち!!ばかきらい!!!」
「はぁ!?益子がそんなとこで着替えてるからいけないんじゃんか!!」
「いやぁあ俺のおっぱいみないでぇええ!」
「誰かそんな甘納豆みたいな乳首に勃つかァ!」
文化祭がおわってから三日、僕は益子のいる写真部に先日の文化祭で撮影した写真を受け取りに来ていた。
もちろん愛しの親友俊くんの為に、彼が写ったものと、あの後吉崎もいれた3人で撮影したもの。
益子も一緒に映らないかと誘ったんだけども、タイマー設定より自分の腕を信じるとのことで今回は撮らなかったのだ。なにそれプロい。
「僕が来るってわかっててなんでそこで着替えるかな!?びっくりしたわまじで!」
「え、俺の乳首甘納豆?ほんとに?」
「もーさっさと前閉じろよぉー!ほら現像したやつもくれ。」
「無視?嘘でしょ?甘納豆っていっといてそこはもう触れないの?嘘でしょ?」
せめてもっと別のものに例えられないのか…と胸元を隠しながら絶望しているが、自分自身の語彙力がないのと、物事のたとえを素直すぎるくらいにビシバシ言うよなと俊くんのお墨付きもあり、今後もお世辞方面での成長は期待できないだろう。すまんの。
「あったあった、ってうわぁ…」
3人の集合写真の右上に益子の履歴書のように整った写真が小さく貼られている。修学旅行やイベントに行きそびれた奴らが受ける仕打ちを自らに科すセンスは流石だ。
「それおもろくね?俺的になかなかのギャグセンスだとおもっている。」
「右上の益子の主張のせいで爽やかな青春写真を淀ませてるよ…」
なにその真顔!と突っ込むも、本人は、至ってどこ吹く風。飄々としてるけどほんとにこれでいいのかお前は!
「てか益子はなんで脱いでたの?」
「現像液の制作をしようとしてちょっとな?」
「ほーん、」
「全然興味ないじゃん!?」
いわく、益子は以前からモノクロ写真に興味があるようで、卒業制作として一冊の本に出来るようにしたいということだった。
僕は帰宅部なので卒業制作だのは関係ないのだが、なんだかそういうのも青春ぽくていいなと少しだけ羨ましく思う。
「カリスマ帰宅部のきいちくん。手伝ってくれてもいいんだぜ?」
「あっそのうちー。」
「いつかとそのうちは一生来ないんだぜ!!」
わかる。
ひとまず益子から貰うもんはもらったので、あとはこれをわけて吉崎と俊くんに渡すだけ。んふふふ久しぶりのツーショットもあるぞ。これは生徒手帳に挟んでおこう。
まとまった写真の束は3人分ともなると結構な厚みで、なんならみんなで休みの日に遊ぶ約束でもして、そこで渡すのも有りかもななんて、え?わりとよくね?天才か自分。
そうと決まればぽちぽちとスマホを操作して吉崎に連絡をした。ちなみに登録名は読経姫だ!ここは譲らん。
「あ、学?いまどこにいんの?」
なにやら授業の途中で呼び出しがかかり生徒会の連中にドナドナされていった学は、本当なら放課後一緒に写真部に向かう予定であったのだが、その約束は守れそうになさそうだったのでしかたなく一人で来たのだった。
「え?今益子のいる写真部にいるー、おわったなら迎えに行く?」
「彼氏みたいなこという!」
「益子うるせ、ごめんなんでもない。」
学も用事が済んだのか、クラスに戻ったとのことだったので置いてきちゃったお詫びに迎えに行くことにした。益子の謎発言はまるっと無視させていただこう。僕等は男の友情なのだ!
「益子もくる?てか3人で帰る?」
「俺は読経姫と二人で帰りたい!!」
「欲に忠実なやつめ!僕も俊君とかえりたい!」
「頑張れ吉崎道のりは長いぞ…」
「え?なんて?」
イイエナニモ、と急に真顔に切り替えられるのほんとすごいと思う。益子は顔の筋肉酷使しすぎじゃね…、と余計なこと考えてると時間が立つので益子をおいて吉崎を迎えに行くことにした。
さらば益子、いつか吉崎と一緒に帰れるといいネ…!
益子はきいちが出ていった扉を見つめてひとつ、ため息を吐いた。
文化祭終わり、きいちが走り回っている最中に親しくなった俊君という、造形美の美しい同い年の男子とのやり取りを思い出していたからだ。
「なー、俊君はきいちのことすきなの?」
「ああ。ガキから一緒だったし、好意は露骨だからわかりやすい。」
「結局両想いかよ!」
「…あいつは自分の気持ちを自覚してないぞ多分。」
校門の柵に持たれ掛かりながら、何気ない一言みたいに告げられて動揺する。普通、高校生男子はこんな簡単に他人に好きな人のことをバラすのかと思ったからだ。もちろん、自分が水を向けたのも理解してはいるけども。それよりきいちが自分の気持ちを理解していないというのは、有り得そうな話で苦笑いするしかない。
「わかる。前もそんな感じだった。」
「え?あいつそんなもてんの?」
「もてる、ってか依存されるかんじ?」
「あんなちゃらんぽらんが?うそだろ…」
半ば信じきれなかったのは、浮いた話が在学中にほとんどなかったからだ。本人も、凄く優しい先輩がいる。とか言っていた。明らかに付き合っているのでは?と噂されるくらいだったのに、話を聞くと付き合ってないよ。と言われたときは動揺した。勿論、先輩もだ。結局勘違いさせたきいちが悪い、といわれて結構大事になったのは記憶に新しい。
「いいんだ、きいちは俺のだから」
「情熱的ぃ…言わんの?」
「まだその時じゃない。」
益子は初めてあったのに、まるで牽制するかのように思いを話してくる目の前の高校生が、なんだか異質なものに見えた。
お前も依存した一人なの?という言葉は口にでかけたがやめた。
ただ、言わんとしていることを理解しているとばかりに目があい微笑まれると、なんだかきいちがとんでもないやつに好意を抱かれているのでは…、とすこしだけ心配になった。
8
お気に入りに追加
727
あなたにおすすめの小説

白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載

花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています

当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭

婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる