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火種の原因

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「お前らが、俺たちを遠巻きにするくせに…」
「えっえっ、」
「そんなんだから…こんなんなっちゃうんだろう!?」
「えええええご、ごめんなかないでえ?そんなに!?!?」
「うううぐわぁぁあばかやろおおおお!!」
「あいてー!!ちょ、力強いね!?いたいいたい!」

吉崎の威嚇からの即落ち2コマばりの情緒で大号泣し始める。だが泣いても男の子である。正面にいた僕をボコスカ叩きながら本音を吐き出した。いわく、高校デビューしたらお友達が沢山できると思ったらしい。

偏った吉崎の考えは、ヤンキーイコール友達百人みたいな数式だったらしく、憧れの人気者のような格好をしたはずなのに、周りからは麗しきツンデレと捉えられたようである。なんとなくわかるわ!!

吉崎は口調こそ悪いが美少年だ。髪色こそヤンキー定番の金髪だが、白く肌理の細かい肌にはほんのりとチークが乗せられ、ナース服の効果も相まってロリナース的な背徳感がある。

えっ。君高校デビューにしては完成されすぎてない!?って考えてる場合じゃない!

吉崎は、ひぐひぐと変な呼吸をしながら暴れるもんだから、顔も酸欠気味で赤くなっている。
このまま俊君とこ行く前に過呼吸で保健室にGO!など大変に面倒になること間違いなしなので、僕は少しの逡巡の後吉崎の手を掴んで思い切り胸に抱き締めた。


「!?!?!?」
「ごめんね、ちょっとだけ落ち着こうか。」
「ひぐ、」


まあ僕も吉崎の大暴れっぷりに動揺したのもあるけれど、手近に袋もないしでひゃっくりのように驚かせたら落ち着くのではないかと思ったのだ。予想通り、ひっと変な声を出すと、そのまま座り込もうとする。
吉崎の小柄な体を抱きしめて胸に顔をうずめた状態だったので、あわや尻もちは免れた。

「吉崎?へいき?」
「ひ、ひう。」

まだ駄目みたいである。しかしそのまま支えるのもあれなので下駄箱を背に一緒に座ると落ち着かせるために髪を撫で梳く。僕がパニックになったときにオカンがやってくれたのを思い出したのだ。まあ、子供の頃だけども。
吉崎はおとなしく足の間に収まって呆然としているが、まだ呼吸が整わないようで髪を撫でる反対の手で背を優しく叩いた。


「ほら、いいこだから深呼吸して、できる?」
「う、う…おう」
「よしよし、いいこ。」


すー、はー、と上手に呼吸を整えようと努力をしている様子に安心した。吉崎はキレるとゴリラばりの大暴れをするのは昼でわかったはずなのに、こればっかりは僕が悪い。
やがて胸元じゃ居心地が悪かったのか、首元に顔の位置を移動させると、そのまま収まりが良いところに落ち着く。

う、動きずらい。

というか吉崎は多分だろうに、そんな首元を晒して警戒感はないのかと心配になる。まぁ僕も人のこと言えないけど。

とりあえず動かなくなっちゃった吉崎をよいせ、と抱きかかえると、腰に足を絡ませてしがみつかれる。

「別にいいけど…落ちないでよ?」
「おう。」

なんか急にいいこになってる気がする、けどこれ以上俊君待たせるのもあれなので、仕方ないからそのままの状態で校門まで歩くことにした。
ずる、と滑りそうになるたびに首に抱きつかれた腕に締められながら、何回か抱え直した。

抱きつく側もうまいヘタがあるなら、絶対吉崎は下手な気がする。
僕の腰が翌日悲鳴を上げるんではないかばりに絡まれた足のせいで、さっきから僕も必死である。
逆S字にならいように背筋と背骨よ今は耐えてくれ!

シャトルランばりに走り回って、最後の最後で人を抱き上げたまま移動するとか、自衛隊の訓練みたいだなぁ…と、4回目の抱え直しの時、益子が見えてきた。

「い、いやぁ!!」
「は?」

益子は乙女のような悲鳴をあげ、カメラのシャッターを切りながらのたうち回っている。器用ダネ毎回。

俊くんはというと、それはもう爽やかである。白Tとダメージデニムだけでキメるとか海外セレブかな?まじで格好いいけどなんかムッとしてる、なんでキレてんの!ごめんねおまたせ!

「俊君!」
「親亀子亀みてーな登場だな?」
「いや泣かせちゃったらへたっちゃって」
「は?お前我らが読経姫泣かせたとか絶許」
「読経姫ってなんだゴラァ!」
「うっっせ!耳元はやめてええ」

キーンという音が耳に響く。読経姫は君だよ君!とりあえず腰も肩も腕もヘロヘロだったのでゆっくりと地面に下ろす。まったく大人しくなったらまたプンプンするとか君は幼児か!オギャる丸っていうぞまじで。

吉崎は初めて地面に降り立ったコアラの子供のようにおろおろしながらも、素早い動きでなぜか僕の後ろに隠れた。なんでよ、そこ安地認定されたの?

「………。」
「えっ?なんで?そんな待った?ごめんてー!!」

謎に俊君がキレているきがする…はわ…
子供の頃に喧嘩みたいなのはしたことあるけど、こんな理由が見えない感じでムッとしている顔を見ると、なんだかんだ大人びて見えても同い年なんだなぁとしみじみおもってしまう。

「とりあえず姫に説明しとけば?」
「あだだだ締まってる締まってる!吉崎くん腕の力緩めてくんない!?」
「話ってなんだよ!ていうかそこにいんのって」

後ろから激しく抱きつかれてるけど、多分これサバ折りだよね?なんでそんな喧嘩殺法会得してんの!?せめて後ろからならあすなろ抱きがあだだだだ。

「学。」

僕が吉崎によって強制シャットダウンさせられかけている時に、ひどく機嫌が悪そうな声で俊くんは名前を呼んだ。
吉崎が思いを馳せていた俊くんの登場だと言うのに、昼間あった時とはちがう怒りの匂いに敏感に反応したのか、ひどく戸惑いながら僕の背後から顔を出す。わかる。僕もその顔はちょっち怖いもの。

「…なに」
「きいちから離れろ。」

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