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しおりを挟む「ぁあ、あっ……⁉︎」
悲鳴混じりの声が部屋に響いた。
タイランの声だ。それも、今まで出したことのない声色であった。
ドウメキによって、丁寧に蕾を慰められてからしばらくして、タイランの身に襲いかかってきたのは、意志のきかない鋭い快感だった。
神経が焼き切れてしまったかと思った。琥珀色の瞳は見開かれ、胸の突起を晒すようにして身を逸らす。薄い腹の上は、口にもしたくない体液で汚れていた。
「そのまま、身を任せていろ。訳がわからないまま、鳴いていれば良い」
「ひ、っ、ぁ……ゃ、ぃゃあ、だ、っあっあっ、ぁあ、あーーっ‼︎」
赤く上気した頬をに、幾筋もの涙が伝う。声を堪えずに泣いたのは久しぶりすぎて、どう情緒を落ち着けていいかわからない。
助けを求めるようにドウメキへと伸ばした手は、首の後ろに回されてしまった。前後不覚のまま、行き場の失った手はドウメキの頭を抱え込むことくらいしかできない。
ぬちぬちとした、はしたない音が聴覚を支配する。ドウメキの汗が首筋に伝うのを見て、たまらずに顔を埋めた。
「ひ、ンぅ、……ゃ、めて……っ、ぅあ…ぁ、っ……こゎ、い、ぃゃだぁ……っ……」
「今辞めたら、辛いのはタイランだぞ。それでも構わないのか」
「ぅえ、え……っ……そ、れも、ゃ、……ひぅ、う……っ」
勃ち上がった性器が、痛いほど張り詰めている。摩擦して、早く吐き出したかった。粘度の高い先走りを何度も吹きこぼして、タイランの腹の筋をなぞるかのように濡らしている。
ドウメキの指で刺激される、腹の内側の器官が全ての原因だ。己の体に、こんな場所があるだなんて知りたくもなかった。腹の奥がくちくなって、ドウメキの指を飲み込むように収縮する。
おぼつかない視界がとらえたのは、雄臭い顔をして、妖力を滲ませたドウメキの姿であった。
「ど……、ぅめき……つの、生えて、……」
「む、……」
「ふは、……っ……」
タイランの言葉に、慌てたように角に触れる。そんなドウメキの様子が可愛らしくて、つい笑ってしまった。
指先まで痺れて、布地が肌に触れるだけでも辛い。それでも、本能を全面に出した雄の姿を見ると、タイランは甘やかしてやりたいと思うのだ。
ドウメキの腰を挟む足に、力が入る。体を引き寄せようとしたことに気がついたのか、大きな手のひらに腰を掴まれる。
体を引き摺り下ろされるようにずらされると、ドウメキの顔がタイランの首筋に鼻先を寄せる。熱い性器が尻の合間に擦り付けられた。ああ、いよいよなのだと思った。
「タイラン、……辛い思いをさせてしまうかもしれない。もし……」
「ここにきて、くれ」
「……いいのか」
「ん……」
タイランの手のひらが、ドウメキの頬に触れた。その指先がこめかみを通り過ぎ、白い髪を撫で上げる。ドウメキの目は黒く染まり、虹彩だけが紅く光を放った。
ねじれた角の根元に触れる。チラリと見えた犬歯に気がつくと、食われてしまいそうだと小さく身を震わした。
「は、ぁ……っ……」
この牙で皮膚を破かれ、深く痕を残されたらどれだけいいだろう。気がつけば、タイランの指先はドウメキの唇に触れるように差しこまれ、犬歯の形を確かめるようにして牙を撫でる。
ドウメキの唾液で濡れた指先に、熱い舌が這わされた。そのまま、ドウメキは頬を手にすり寄せるようにして、タイランの手のひらの内側に口付けた。
「っ……、二言は、ないな」
「ぅ、ン……っ……ぁあ、あ、あっ」
「く、……っ」
タイランの足を開く手に力が込められた。太い指によって、蕾はぬちりと音を立てて開かれる。
ドウメキの、熱い性器がゆっくりとあてがわれると、それだけでタイランの性器は震えて蜜をこぼす。
ぱつんと張り詰めた先端が、媚肉を押し広げるかのように侵入をしてくる。内壁を、ぞり、と擦られるように含まされ、タイランの腰は逃げるように跳ねた。
「ぁ、ぅう、う、うっ……く、っ」
「っいた、いな、……っ、すまん」
「は、ぁあ、ぁ、……ひ、っく……っ」
「上手に、力が抜けている。大丈夫だ、そのまま待つから」
視界がぼやけて、ドウメキの顔が歪んで見える。腹が苦しくて、蕾がパツパツに引き伸ばされている。ドウメキの太い幹が熱を放ちながら、馬鹿みたいに乱れてしまう器官を押し潰している。
苦しい、辛い、痛い、気持ちいい。
忙しない感覚がタイランを前後不覚にさせるのだ。身を投げ出すように、ぐったりとしたタイランを見下ろすドウメキが、ぽこんと膨らんでしまった腹に触れる。内側から、へそを性器で持ち上げられているような感覚だ。薄い胸を上下させながら、タイランはドウメキを見つめた。
「……は」
大きな手のひらは、震えていた。その手がゆっくりと持ち上がると、ドウメキの顔の半分を隠すようにして覆う。
ふしばった指の隙間から見たドウメキは、笑っていた。まるで、込み上げる喜びを隠しきれないというような、妖魔らしい笑みで。
「お前を、もう二度と手放せない」
「ふ、ぁっ‼︎」
「ああ、タイラン……、タイラン……!」
「ぅく、ぁ、ま、ぅ、うご、か……っは、っ……」
長い腕で拘束されるように、タイランはドウメキに抱きこまれた。体の距離が縮まって、ドウメキの性器が一層奥へと差し込まれる。
跳ね上がった細い足。痙攣する薄い腹は、ドウメキの太い性器の輪郭を記憶するように収縮する。堪えきれず、ケポリとこぼれた胃液すら、ドウメキは気にもせずに指先で拭う。
「う、う、う……っ……」
目の前で光が弾ける。ドウメキの腹筋によって押しつぶされるタイランの性器から、じわじわと何かが漏れていた。
尻が馬鹿になったかもしれない。何度も痙攣しては、ドウメキの性器を揉み込むのだ。滑りを纏ったそれが、腰を引くようにして抜き差しされる。元の形に戻ろうと内壁が蠕動したその瞬間を逃さぬと、腰を押し付けるように再び挿入された。
「あっ」
ビョン、とタイランの両足が跳ね上がった。
一際大きな声を漏らしたと同時に、性器の中身を抜き取られるように、精液が弧を描いて吹き上げた。
ドウメキの腹に、ビシャリとかかる。割れた腹の筋を伝うように流れるそれすら気にもしない。
「腹を、俺の妖力で満たす。それが、どういう意味だからかるかタイラン」
「ぁ、あっ……あぅ、……ふ……」
「聞いていないか……」
ドウメキが何かを口にしていたのは理解していた。しかし、タイランはそれどころではなかったのだ。
(腹が、おかしい……っ……)
琥珀の瞳が、虚になる。精液を吹き上げた性器はだらしなく腹につき、ドウメキの腰の動きに揺さぶられるように腹の上で跳ねる。幹が引きぬかれ、再び腹の奥まで挿入されるだけで、タイランの口から勝手に声が溢れる。
「ぁあ、あっ、あっあっあっ……ァあ、あ……っ!」
「足に力を入れるな、っ……あぁ……いい顔を、している……」
「へ、ん……ぁあ、ゃ、へ、へっん、へん、ら、……と、とま、っへ……っ」
「無理だ」
「も、ぇう……っ、も、ぁあ、あっぅく、っど、どー……っめぎ、っぁ、ゃえ、っく、ぅあ、あ、ァー……っ」
ヒック、と喉が震えた。強い快楽は、暴力になるのだと初めて知った。子供が駄々をこねるように、タイランの話を聞かずに体を揺さぶるドウメキの背中を、力なく叩く。
ひぅひぅと情けなく泣きながら、濡れた頬に黒髪を貼り付けるようにして身も蓋もなく喘いだ。
尻たぶに押し付けられる重たい袋が、ドウメキの茂みが、今お前は抱かれているのだと知らしめてくる。
体が熱い。互いの汗で滑りそうになる手に、力を入れるようにしてしがみついた。
「ここだ、……っ、ほら、開いて、見せろ……っ」
「いゃ、ら、ぁあ、あっく、も、ゃだ、ゃ、や、んぃ、いっぐ、いぐ、ぁっ」
「だめだ開け。力を抜け、ここを誰にも教えるなよタイラン……‼︎」
「ぁぐっぁ、あああ、ああ、あーーっ‼︎」
奥を押し広げられるかのように、ドウメキの先端がタイランの最奥を叩いた。ぐぽんと音がして、開いてはいけないところを、力任せに押し広げられたのだ。
琥珀の瞳が、くるんと上を向く。微睡と、身を焼かれるような性感に体を支配され、タイランの足は揺さぶられるままに空を蹴る。
ドウメキの腹を汚した精液は、透明度の高い潮が、じょぱじょぱと律動に合わせるようにして噴き上げ洗い流した。
上半身を真っ赤に染め、喃語のような声しか出ない。そんなタイランを体で隠すように抱き込んで、ドウメキは無邪気に腰を打ちつける。
可愛い、可愛い。愛しい、愛している。
耳元で囁かれるドウメキの言葉に犯されて、俺はもしかしたら可愛いのかもしれないと馬鹿な刷り込みをされかけるくらいには、脳にも、体にも徹底的にドウメキという妖魔を教え込まれる。
「ぁ、た、いら……っん……」
「んん、ぐっ、ぁ……は、……は……っ!」
寝台が壊れるのではないかと思うほどの律動の中、最奥に叩きつけられた精液の量に、本気で孕ませられるかと思った。
長い射精は、内壁を内側から広げるかのように注ぎ込まれる。
薄い腹を膨らませ、内側からの圧力で臍がじくんと痛みを覚えるほど、腹の中の形を無理やり変えられたのだ。
身を投げだした。長い黒髪にまで白い欲を飛ばしたまま、タイランは指先の一本も動かせないままでいた。
ドウメキの手のひらが、タイランの手を開くようにして絡まった。ゆっくりと手を持ち上げるようにして、頭上で固定されたことに気が付くと、タイランの腹の奥で再びドウメキの性器が硬度を増した。
「へ、ぁ……っ」
「教えると、言ったろ……」
鼻先が触れ合う。甘やかな声色が囁いたのは、遠慮もない言葉だった。
初めてを捧げたばかりのタイランに、強要していいものではない。
首を左右に振るタイランの様子を、幼子の駄々のように受け取られたのか、ドウメキは宥めるように口付ける。
(ちがう、そうじゃない。もう体が)
「すまないが。今だけは聞こえないふりをさせてもらう」
タイランの心の声さえも遮って、ドウメキは宣った。
呆気に取られたように口を戦慄かせるタイランに、ドウメキはゆっくりと吐息を漏らす。
体に滲んだ痣が、興奮の証なのだろう。片腕でタイランの手を纏めると、がしりと尻を鷲掴まれた。
赤い舌が、獣のように犬歯を舐めるのを目の前にして、タイランは今日が命日かもしれないと思った。
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