18 / 27
18 山主
しおりを挟む
「ドウメキ‼︎」
黒い煙が燻る中、影を引き摺るようにしてドウメキが駆けた。黒い深衣をはためかせ、岩屋戸を蹴るかのようにして飛び上がる。
その手には、タイランの血がついていた。
ドウメキの手がタイランを守った時、九魄の鉤爪によってつけられた傷口に触れたのだ。痛みに呻くタイランに気がつくなり、ドウメキはその身の妖力を膨らませるように激怒した。
「どけ喰録。それは俺のだ」
「グゥウ……!!」
「二匹いっぺんに相手をしてやろうか」
喰録が牙を剥き出しにするかのように唸り声を上げる。九魄に肉薄するように近づく姿を見上たタイランは、上空へはいけない。
九魄諸共もつれあうように地上へと向かって落ちる姿を前に、タイランは体の温度を一気に下げた。
何ができるかはわからない、せめてドウメキの体を受け止められないかと、タイランが錫杖を握ったまま駆け出そうとした時だった。
「小僧、それを離さぬということは、戦う意思があるということだな?」
「っ、くぁ……っ」
イムジンの声が聞こえたと同時に、タイランの体は吹き飛ばされた。
拳を捩じ込まれた腹が燃えるように熱い。黒髪を土で汚すように地べたを滑る。タイランの体を受け止めたのは、岩屋戸であった。
「ぇほ、っ……っ、っは、……」
ひゅうひゅうと喉がなる。内臓が破裂したかと思うほどの痛みが、全身を苛んだ。視界が明滅する。呼吸がうまくできない。指先が震えて、力が入らないのだ。
砂利を踏み締めるようにして近づくイムジンの背後に、喰録が降り立った。
木を揺らすようにして落下したドウメキと九魄を気にも留めずに、牙を剥き出しにするようにしてイムジンへと飛びかかる。
「タイランに何をする‼︎」
「呉暁」
「ぎゃ、……っ」
鈍い音と共に、大きな体はタイランの目の前から消えた。イムジンの影から現れた青白い人型の妖魔によって、喰録の巨躯は投げ飛ばされたのだ。
顔を六面体の筒で隠したその妖魔は、大きな体格からは予測もつかないような素早さで喰録へと肉薄した。
青白く、縫い目が走る四本の腕を駆使して喰録の翼を鷲掴む。金眼を見開いた喰録が抵抗をするように呉暁の肩へと鉤爪を食い込ませた瞬間、タイランは悲鳴交じりに叫んだ。
「喰録、散‼︎」
「タイラ、……‼︎」
喰録の瞳が驚愕を宿しタイランを見た。その体は瞬きの間に黒い霧が広がるようにかき消えた。あの時と同じ、守城が喰録を守った時と同じことをタイランはした。
喰録の翼が奪われないようにするには、こうする他はなかったのだ。
行き場をなくした呉暁の四つ腕が、乱暴に振り回される。獲物を失ったことに憤慨している様子だった。
「確かお前は、巫力がないはずじゃなかったか」
「俺も、そのつもりだった……っ」
「で、守ろうとした喰録を隠してお前はどうする。呉暁の相手をするつもりか」
呆れ混じりのイムジンの声に、なんの返しもできなかった。大きな体を揺らした呉暁が、次の獲物を定めるかのようにタイランへと振り向いた。
「屍人……」
「これは俺の弟だ。仲良くしてやってくれ」
「っ、……くそ!」
錫杖を杖代わりに、タイランはよろめきながら立ち上がった。腹の負担が、全身に響いている。
おぼつかない足取りで走った。体が痛い、全身がバラバラになってしまいそうだった。
なぶるのが趣味なのだろうか。呉暁は走ることもなく、ゆっくりとした歩みでタイランの後ろについてくる。
(何ができる、俺に、一体何が……っ)
枯れた土地が水を吸い上げるように、岩屋戸に触れたタイランの身に流れ込んで来たのは巫力であった。それが封呪を解いた守城の残り香なのかはわからない。
それでも、イムジンによって岩屋戸の近くに飛ばされていなければ、きっと喰録を守ることは叶わなかっただろう。まるで、力をうまく使えと言われているようだった。
(どうする、また、喰録を呼び出す? だけど、巫力が足りないかもしれない……)
「タイラン‼︎」
「っ、……ヤンレイ」
タイランの足を止めたのは、ヤンレイの苛立った声であった。刃先のような鋭さを纏い、目に見えて怒りに飲み込まれている。
深衣を翻すように呉暁の目の前を抜けると、白い手はタイランの胸ぐらに掴み掛かった。
「なんで邪魔をする‼︎ なんでお前は、俺の邪魔ばかりを……‼︎」
「ぅく、っ」
「タイラン‼︎」
「おっと、兄弟喧嘩に口を挟むなよ妖魔」
神経を逆撫でするような口調で、イムジンは宣った。
ヤンレイを背後に回すように立ち塞がる呉暁によって、駆けつけたドウメキが阻まれる。
胸ぐらを掴むヤンレイよりも、タイランは頭から血を流すドウメキの方が気になった。
「離せヤンレイ、っドウメキ、ドウメキ‼︎」
「なっ、……‼︎」
ヤンレイの狼の瞳が、驚愕に見開かれる。今までヤンレイの姿を目で追ってきたタイランが、初めて他の男を優先させたのだ。
目の前にいるヤンレイよりも、背後にいる訳のわからない妖魔の男を呼んだ。それは、ヤンレイにとっては侮辱と同じであった。
「九魄……っ、何をしている、姿を現せ‼︎」
「いるよヤンレイ」
炎を纏い姿を現した九魄の体は、ドウメキとの争いで消耗しているようだった。体は傷ついていても、表情からは疲労を感じさせない。
九魄は胸ぐらを掴まれているタイランへと顔を向けると、目を微かに見張らせた。
「……巫力が馴染んでいる」
「何を……」
「余計なことを口にするな。こいつを山主に食わせる……いいな」
「……はいはい」
ヤンレイの言葉にドウメキが反応を示した。その手に炎を纏うと、繰り出される呉暁の腕を避けるようにして後ろを取った。
六面体の筒で隠された頭を鷲掴む。ドウメキは長い両足で呉暁の腕の一対を拘束するなり、一息に締め上げた。
「やめろ……‼︎ タイランに触れるな……‼︎」
ドウメキの怒鳴り声と共に、木を捻り切るかのような鈍い音を立てて呉暁が崩れた。腕を壊されたのだ。
すぐさま体を離したドウメキへと、イムジンの鋭い槍が襲いかかる。
巫力で練り上げられた一本槍は、イムジンによって裁かれた妖魔の死が纏わり付くものだ。それが、空を切る音を立ててドウメキの頬を掠める。
赤い血を散らしながら、飛び退るようにして避ける。炎を纏う手を横になぐようにして、ドウメキは素早く火炎を放った。
「腕は予備がねぇんだぞ‼︎」
「なら貴様のを使えばいい」
火炎を避けるように体を逸らすイムジンの隙を、ドウメキは見逃さなかった。
紅い虹彩が残像を描いて追いかける。深衣の袖を絡めるように、襲い来る槍の動きを鈍らせた。
大きな手のひらで握り締めた槍の柄を軸に、体を捻るように飛び上がる。ドウメキの左足は振り上げられ、鞭がしなるようにイムジンの顔の側面を蹴り飛ばした。
「っ、耳が……っ……‼︎」
「タイラン‼︎」
耳から血を溢したイムジンの崩れる音と共に、ドウメキの悲痛な声が聞こえた。
タイランの琥珀の瞳に映るのは、ドウメキがこちらに手を伸ばす姿だった。
九魄の手が、タイランから遠ざけるようにヤンレイを背後へと投げた。
迫るドウメキが、咄嗟にヤンレイの体を受け止めたのを認めると、九魄は小さな声で何かを呟いた。
「覚悟を決めろ、守城」
「待て、どういう」
その瞬間、九魄によって作り出された強風が、タイランの体を岩屋戸の奥へと吹き飛ばした。
光が、ぐんぐんと小さくなる。まるで、闇へと落ちていくかのような浮遊感は、タイランの体に違和感をもたらした。
(何かが、体の上に這っている……っ)
服の下を、不快感が走る。視界が暗くて何もわからない。明確な恐怖と、身を任せろという二つの葛藤がタイランの思考をかき混ぜるのだ
生温い何かに包み込まれた体が、勢いを殺して地べたへと下される。入り口の光は消えていた。まるで、最初から何もなかったかのようであった。
一歩下がる。踵に何かが当たった気配がした。カロリと硬質なものが擦れ合うような音と共に、積み上げられたものが崩れる。タイランが跪くようにして地べたに手を這わせれば、指先に何かが触れた。
(これは、……石……?)
暗闇の中、輪郭を捉えようと目を凝らす。やがて見えてきたのは、十四もの積み石が、丁寧に横一列に並べられている光景であった。
タイランにはこれが何かすぐにわかった。震える手で、崩してしまった石の一つを積み直す。
大きさもチグハグなそれは丁寧に積みあげられ、長い年月を経たものは風化しかけている。それは墓標でもあり、偲ぶ気持ちの具現化にも見えた。
タイランは滲む涙を袖で拭った。この岩屋戸の中に潜むものの妖力は暖かい。これは、知っている妖力だ。まだ泣いてはいけない。本当に泣きたい奴が泣けていないのだ。
体にまとわりつく妖力に、もう怯えることはしなかった。山主の本当を、タイランは知ってしまった。
立ち上がり、虚空に手を伸ばす。指先が何かに触れた。大きく、質量のあるものが、人肌の温もりを纏ってそこにある。
(これは、手のひらだ……)
大きく、暖かい手のひらにタイランは頬を寄せた。
壊れ物に触れるかのような遠慮がちな手つきで、山主だろう妖魔はタイランの黒髪を撫でる。それに擦り寄るように応えれば、タイランの体はゆっくりと濃い妖力によって包まれていった。
気がつけば、タイランの薄い体は山主によって持ち上げられていた。暗い影から伸びたいくつもの腕によって、優しく抱き上げられたのだ。
ここは空間が歪んでいる。感じる山主の存在はタイランよりも大きく、時折岩屋戸の中を満たすように質量を変える。それでも、タイランへ触れる手つきはひどく優しかった。
「……山主、か……?」
守城とタイランを隔てた稲妻のような光、あれは獣の形をとった山主が守城を食ったからに違いない。確かめるように、タイランは手を伸ばす。
暗くてよく見えない。静かな呼吸音だけが支配するこの空間で、タイランの問いかける声色は緊張をはらんでいた。
「ぅ、……っ」
ぞわりとした感覚が、時折身を苛む。影によって体の中を検分されているような心地であった。明かりが欲しい、もっと近くで姿を捉えたい。タイランがそう願うと、わずかに視界が変わった気がした。
「守城」
「あっ」
複音の声が、タイランの体を内側から響かせる。血潮を震わせるような、反響音にもにた低い声。指先まで体を痺れさせたタイランが、山主の手に指を絡めるようにして握り返す。
力が入らない。へたり込みそうになる体を支えるように伸ばされたへと、タイランはもたれかかるように体を預けた。
「守城、守城……」
「ゎ、わかった……わかったから、待ってくれ、……っ」
「まった」
耳元で囁かれている。まるで、いたずらに首筋をくすぐられるような感覚であった。視界が、だんだんと暗闇に馴染んでくる。どこからか鎖の擦れる音がして、タイランがゆっくりと顔を上げた時だった。
「もう、じゅうぶんにまった」
「ひ、っ……!」
上擦った声が漏れた。赤く、大きな目玉がタイランを見つめていたのだ。
つるりとしたそれは暗闇の中でも怪しく輝いていた。驚愕を浮かべた己の顔が、目玉に反射するように写っている。人ではない、獣の目玉だ。
ぐる、と鳴る喉は、喰録が甘える時の音にも似ていた。目玉は黒い毛並みに覆われるように姿を消したかと思えば、影は形を帰るように人型をとる。
「は、ぁま、まって、」
長い腕に抱き込まれるように、首筋へと鼻先を埋められる。山主の肉厚な舌が、体の味を確かめるようにねとりと這わされた。
体の内側へ取り込もうとしているのかと思うほど、苦しいまでの抱擁だ。タイランは行き場のない手を落ち着かせようと、山主の体へとゆっくり回した。
山主の肩口から、赤い花が咲く。目を凝らしてみれば、それは赤い目玉であった。
気がつけば、戦いで疲弊したタイランの体は回復していた。身に流れこむ山主の妖力が、意思を持って体を癒してくれたのだ。
大きな手のひらが、タイランの背中を温めるように撫でる。熱い呼気が首筋にあたり、タイランがむずがるように天井を見上げた時だった。
「あ……」
夥しいほどの爪痕が、岩屋戸の天井を覆っていた。
でたい、ここからでたい、苦しい。
そんな気持ちが、爪痕で削れた岩の隙間から雨のように降ってくる。これは、山主の心情だ。温もりに縋り付きたかった山主の、数百年分の思いだ。
「ここにいた、ここで、まってた」
「う、ん」
「ここからでなければ、またくる。おまえが、あいにくる」
「うん、そう、だな……っ」
静かな声だった。孤独を埋めるように、山主はタイランに縋り付く。大きな体を受け止めるように抱きしめながらも、タイランは一点を見つめていた。あの時聞こえた鎖の音。山主の体を縛るように伸びたそれは、杭で貫かれた人骨へと繋がっていた。
「やま、ぬし……や、約束を果たしに、きた」
「やくそく」
「おまえを、助けに来た……、俺と外に出よう」
タイランの言葉に、山主の動きがぴたりととまった。岩屋戸の空気がざわめき、妖力が吹き荒ぶ風のように激しく流れる。タイランを抱きしめていた影にも似た黒い体は千切れるように闇にとけ、その体躯を大きな山犬の姿へと変化させた。
岩屋戸の中、窮屈そうに頭を下げて座っている。黒い毛並みに埋もれているが、その口は耳までグパリと裂けていた。
「あれが……人だったお前の姿だな……」
風化し、バラバラに砕けてもなおわかるのは、縫い止められている人骨の纏う気配が山主と同じということだ。
姿を持たないのではない。その多すぎる妖力を操り、自在に姿を変えることができるのだ。
本能のままにいる時は人の形を取り、怯えている時は獣の形を取る。守城を食らった時、山主は手をかける己に怯えていたのだ。
殺したくない、嫌だ、食いたくない。それでも、呪いは山主の悲しみを許しはしなかった。
「……こわいか」
「……こわくはないよ」
獣の鼻先に触れる。柔らかな毛並みに顔を埋めると、タイランは小さく呟いた。
死なせたくない、そう願う山主の前で、守城は何度も死んだ。その死にきちんと理由があったことも分かっていただろうに、長い年月を経るうちに真実は霞んでしまった。
残ったのは、山主の後悔と懺悔だけだった。
タイランの琥珀の瞳が、真っ直ぐに山主へと向けられる。
丸く紅い獣の瞳は、静かに光っていた。獣の口吻が、歪むようにして動く。聞き取りづらい声で、山主は宣った。
「おれ、おまえといたかった」
「ああ」
「おれのせいでしんだ、おまえといたかったんだ」
泣いているのだろうか。震える声で宣う山主を前に、胸が痛くなった。大粒の涙がこぼれ、足元を濡らすものだから、タイランもついに堪えきれなくなってしまった。
「お前ばかり、悲しい思いをさせてすまない……っ」
濡れる頬をそのままに、タイランは山主の口吻を抱きしめた。知っている、タイランは山主をよく知っている。
目を閉じれば、。慣れ親しんだ妖力がじんわりと体に入ってくるようだった。
「ドウメキ……」
タイランの言葉に、山主の赤い瞳はキュウと細まった。獣の体がふるりと震え、影は形を求めるかのように暴れだす。タイランの紡いだ名前に引きずられるように、ドウメキと呼ばれた山主の体に、いくつもの紅い瞳が咲き出した。
「みにくい、いやだ……、おまえに、しられたくはなかった……」
「醜くない、嫌いにもならない。おまえが健気に待ち続けてくれたから、俺は迎えに来れたのだ」
山主としての募る思いがタイランの体に入り込む。守城として生き、結界を張り直す儀式の度に命を落とす。
ドウメキとの儚い命のやり取りは、記憶で見たあの一度だけではなかったのだ。
十四の積み石。それは、ドウメキが死んだ守城を、弔ってきた回数だ。
「ここにくるなとねがっていた。だからおれは、おれにおもいをたくしたのに」
溢れそうな情念が、いつしか意志を宿せる体を作り上げた。それは山主としての自由な姿だったのだろう。
山主である己から守るために、もう一人の意識であるドウメキに命を託した。大切な守城の命を、己から守るために。
「わかっていたさ、だから俺はここにきたのだから……っ」
下手くそな笑い方だったかもしれない。守城へと向ける、ドウメキの不器用な愛情が切なくて、タイランはうまく表情が作れなかったのだ。
「すまなかった……、ドウメキ、……っ」
震える声で懺悔した。本当に苦しいのはドウメキであったはずなのに、ずっと守城に、タイランに悔い続けてきたのだ。
狭く暗い岩屋戸の中で、ドウメキは山主として、死に戻りをする守城とのわずかな邂逅を望み、そして悲しみに身を焼いていた。
結界を司る守城の一族によって、ドウメキは山主にされた。人身御供にされた犠牲者だ。
巫力が誰よりも多く、そして病に冒されていた。守城と同じ村に生まれた嫌われ者。その見目の醜さからついた男の名前こそが、ドウメキだった。
黒い煙が燻る中、影を引き摺るようにしてドウメキが駆けた。黒い深衣をはためかせ、岩屋戸を蹴るかのようにして飛び上がる。
その手には、タイランの血がついていた。
ドウメキの手がタイランを守った時、九魄の鉤爪によってつけられた傷口に触れたのだ。痛みに呻くタイランに気がつくなり、ドウメキはその身の妖力を膨らませるように激怒した。
「どけ喰録。それは俺のだ」
「グゥウ……!!」
「二匹いっぺんに相手をしてやろうか」
喰録が牙を剥き出しにするかのように唸り声を上げる。九魄に肉薄するように近づく姿を見上たタイランは、上空へはいけない。
九魄諸共もつれあうように地上へと向かって落ちる姿を前に、タイランは体の温度を一気に下げた。
何ができるかはわからない、せめてドウメキの体を受け止められないかと、タイランが錫杖を握ったまま駆け出そうとした時だった。
「小僧、それを離さぬということは、戦う意思があるということだな?」
「っ、くぁ……っ」
イムジンの声が聞こえたと同時に、タイランの体は吹き飛ばされた。
拳を捩じ込まれた腹が燃えるように熱い。黒髪を土で汚すように地べたを滑る。タイランの体を受け止めたのは、岩屋戸であった。
「ぇほ、っ……っ、っは、……」
ひゅうひゅうと喉がなる。内臓が破裂したかと思うほどの痛みが、全身を苛んだ。視界が明滅する。呼吸がうまくできない。指先が震えて、力が入らないのだ。
砂利を踏み締めるようにして近づくイムジンの背後に、喰録が降り立った。
木を揺らすようにして落下したドウメキと九魄を気にも留めずに、牙を剥き出しにするようにしてイムジンへと飛びかかる。
「タイランに何をする‼︎」
「呉暁」
「ぎゃ、……っ」
鈍い音と共に、大きな体はタイランの目の前から消えた。イムジンの影から現れた青白い人型の妖魔によって、喰録の巨躯は投げ飛ばされたのだ。
顔を六面体の筒で隠したその妖魔は、大きな体格からは予測もつかないような素早さで喰録へと肉薄した。
青白く、縫い目が走る四本の腕を駆使して喰録の翼を鷲掴む。金眼を見開いた喰録が抵抗をするように呉暁の肩へと鉤爪を食い込ませた瞬間、タイランは悲鳴交じりに叫んだ。
「喰録、散‼︎」
「タイラ、……‼︎」
喰録の瞳が驚愕を宿しタイランを見た。その体は瞬きの間に黒い霧が広がるようにかき消えた。あの時と同じ、守城が喰録を守った時と同じことをタイランはした。
喰録の翼が奪われないようにするには、こうする他はなかったのだ。
行き場をなくした呉暁の四つ腕が、乱暴に振り回される。獲物を失ったことに憤慨している様子だった。
「確かお前は、巫力がないはずじゃなかったか」
「俺も、そのつもりだった……っ」
「で、守ろうとした喰録を隠してお前はどうする。呉暁の相手をするつもりか」
呆れ混じりのイムジンの声に、なんの返しもできなかった。大きな体を揺らした呉暁が、次の獲物を定めるかのようにタイランへと振り向いた。
「屍人……」
「これは俺の弟だ。仲良くしてやってくれ」
「っ、……くそ!」
錫杖を杖代わりに、タイランはよろめきながら立ち上がった。腹の負担が、全身に響いている。
おぼつかない足取りで走った。体が痛い、全身がバラバラになってしまいそうだった。
なぶるのが趣味なのだろうか。呉暁は走ることもなく、ゆっくりとした歩みでタイランの後ろについてくる。
(何ができる、俺に、一体何が……っ)
枯れた土地が水を吸い上げるように、岩屋戸に触れたタイランの身に流れ込んで来たのは巫力であった。それが封呪を解いた守城の残り香なのかはわからない。
それでも、イムジンによって岩屋戸の近くに飛ばされていなければ、きっと喰録を守ることは叶わなかっただろう。まるで、力をうまく使えと言われているようだった。
(どうする、また、喰録を呼び出す? だけど、巫力が足りないかもしれない……)
「タイラン‼︎」
「っ、……ヤンレイ」
タイランの足を止めたのは、ヤンレイの苛立った声であった。刃先のような鋭さを纏い、目に見えて怒りに飲み込まれている。
深衣を翻すように呉暁の目の前を抜けると、白い手はタイランの胸ぐらに掴み掛かった。
「なんで邪魔をする‼︎ なんでお前は、俺の邪魔ばかりを……‼︎」
「ぅく、っ」
「タイラン‼︎」
「おっと、兄弟喧嘩に口を挟むなよ妖魔」
神経を逆撫でするような口調で、イムジンは宣った。
ヤンレイを背後に回すように立ち塞がる呉暁によって、駆けつけたドウメキが阻まれる。
胸ぐらを掴むヤンレイよりも、タイランは頭から血を流すドウメキの方が気になった。
「離せヤンレイ、っドウメキ、ドウメキ‼︎」
「なっ、……‼︎」
ヤンレイの狼の瞳が、驚愕に見開かれる。今までヤンレイの姿を目で追ってきたタイランが、初めて他の男を優先させたのだ。
目の前にいるヤンレイよりも、背後にいる訳のわからない妖魔の男を呼んだ。それは、ヤンレイにとっては侮辱と同じであった。
「九魄……っ、何をしている、姿を現せ‼︎」
「いるよヤンレイ」
炎を纏い姿を現した九魄の体は、ドウメキとの争いで消耗しているようだった。体は傷ついていても、表情からは疲労を感じさせない。
九魄は胸ぐらを掴まれているタイランへと顔を向けると、目を微かに見張らせた。
「……巫力が馴染んでいる」
「何を……」
「余計なことを口にするな。こいつを山主に食わせる……いいな」
「……はいはい」
ヤンレイの言葉にドウメキが反応を示した。その手に炎を纏うと、繰り出される呉暁の腕を避けるようにして後ろを取った。
六面体の筒で隠された頭を鷲掴む。ドウメキは長い両足で呉暁の腕の一対を拘束するなり、一息に締め上げた。
「やめろ……‼︎ タイランに触れるな……‼︎」
ドウメキの怒鳴り声と共に、木を捻り切るかのような鈍い音を立てて呉暁が崩れた。腕を壊されたのだ。
すぐさま体を離したドウメキへと、イムジンの鋭い槍が襲いかかる。
巫力で練り上げられた一本槍は、イムジンによって裁かれた妖魔の死が纏わり付くものだ。それが、空を切る音を立ててドウメキの頬を掠める。
赤い血を散らしながら、飛び退るようにして避ける。炎を纏う手を横になぐようにして、ドウメキは素早く火炎を放った。
「腕は予備がねぇんだぞ‼︎」
「なら貴様のを使えばいい」
火炎を避けるように体を逸らすイムジンの隙を、ドウメキは見逃さなかった。
紅い虹彩が残像を描いて追いかける。深衣の袖を絡めるように、襲い来る槍の動きを鈍らせた。
大きな手のひらで握り締めた槍の柄を軸に、体を捻るように飛び上がる。ドウメキの左足は振り上げられ、鞭がしなるようにイムジンの顔の側面を蹴り飛ばした。
「っ、耳が……っ……‼︎」
「タイラン‼︎」
耳から血を溢したイムジンの崩れる音と共に、ドウメキの悲痛な声が聞こえた。
タイランの琥珀の瞳に映るのは、ドウメキがこちらに手を伸ばす姿だった。
九魄の手が、タイランから遠ざけるようにヤンレイを背後へと投げた。
迫るドウメキが、咄嗟にヤンレイの体を受け止めたのを認めると、九魄は小さな声で何かを呟いた。
「覚悟を決めろ、守城」
「待て、どういう」
その瞬間、九魄によって作り出された強風が、タイランの体を岩屋戸の奥へと吹き飛ばした。
光が、ぐんぐんと小さくなる。まるで、闇へと落ちていくかのような浮遊感は、タイランの体に違和感をもたらした。
(何かが、体の上に這っている……っ)
服の下を、不快感が走る。視界が暗くて何もわからない。明確な恐怖と、身を任せろという二つの葛藤がタイランの思考をかき混ぜるのだ
生温い何かに包み込まれた体が、勢いを殺して地べたへと下される。入り口の光は消えていた。まるで、最初から何もなかったかのようであった。
一歩下がる。踵に何かが当たった気配がした。カロリと硬質なものが擦れ合うような音と共に、積み上げられたものが崩れる。タイランが跪くようにして地べたに手を這わせれば、指先に何かが触れた。
(これは、……石……?)
暗闇の中、輪郭を捉えようと目を凝らす。やがて見えてきたのは、十四もの積み石が、丁寧に横一列に並べられている光景であった。
タイランにはこれが何かすぐにわかった。震える手で、崩してしまった石の一つを積み直す。
大きさもチグハグなそれは丁寧に積みあげられ、長い年月を経たものは風化しかけている。それは墓標でもあり、偲ぶ気持ちの具現化にも見えた。
タイランは滲む涙を袖で拭った。この岩屋戸の中に潜むものの妖力は暖かい。これは、知っている妖力だ。まだ泣いてはいけない。本当に泣きたい奴が泣けていないのだ。
体にまとわりつく妖力に、もう怯えることはしなかった。山主の本当を、タイランは知ってしまった。
立ち上がり、虚空に手を伸ばす。指先が何かに触れた。大きく、質量のあるものが、人肌の温もりを纏ってそこにある。
(これは、手のひらだ……)
大きく、暖かい手のひらにタイランは頬を寄せた。
壊れ物に触れるかのような遠慮がちな手つきで、山主だろう妖魔はタイランの黒髪を撫でる。それに擦り寄るように応えれば、タイランの体はゆっくりと濃い妖力によって包まれていった。
気がつけば、タイランの薄い体は山主によって持ち上げられていた。暗い影から伸びたいくつもの腕によって、優しく抱き上げられたのだ。
ここは空間が歪んでいる。感じる山主の存在はタイランよりも大きく、時折岩屋戸の中を満たすように質量を変える。それでも、タイランへ触れる手つきはひどく優しかった。
「……山主、か……?」
守城とタイランを隔てた稲妻のような光、あれは獣の形をとった山主が守城を食ったからに違いない。確かめるように、タイランは手を伸ばす。
暗くてよく見えない。静かな呼吸音だけが支配するこの空間で、タイランの問いかける声色は緊張をはらんでいた。
「ぅ、……っ」
ぞわりとした感覚が、時折身を苛む。影によって体の中を検分されているような心地であった。明かりが欲しい、もっと近くで姿を捉えたい。タイランがそう願うと、わずかに視界が変わった気がした。
「守城」
「あっ」
複音の声が、タイランの体を内側から響かせる。血潮を震わせるような、反響音にもにた低い声。指先まで体を痺れさせたタイランが、山主の手に指を絡めるようにして握り返す。
力が入らない。へたり込みそうになる体を支えるように伸ばされたへと、タイランはもたれかかるように体を預けた。
「守城、守城……」
「ゎ、わかった……わかったから、待ってくれ、……っ」
「まった」
耳元で囁かれている。まるで、いたずらに首筋をくすぐられるような感覚であった。視界が、だんだんと暗闇に馴染んでくる。どこからか鎖の擦れる音がして、タイランがゆっくりと顔を上げた時だった。
「もう、じゅうぶんにまった」
「ひ、っ……!」
上擦った声が漏れた。赤く、大きな目玉がタイランを見つめていたのだ。
つるりとしたそれは暗闇の中でも怪しく輝いていた。驚愕を浮かべた己の顔が、目玉に反射するように写っている。人ではない、獣の目玉だ。
ぐる、と鳴る喉は、喰録が甘える時の音にも似ていた。目玉は黒い毛並みに覆われるように姿を消したかと思えば、影は形を帰るように人型をとる。
「は、ぁま、まって、」
長い腕に抱き込まれるように、首筋へと鼻先を埋められる。山主の肉厚な舌が、体の味を確かめるようにねとりと這わされた。
体の内側へ取り込もうとしているのかと思うほど、苦しいまでの抱擁だ。タイランは行き場のない手を落ち着かせようと、山主の体へとゆっくり回した。
山主の肩口から、赤い花が咲く。目を凝らしてみれば、それは赤い目玉であった。
気がつけば、戦いで疲弊したタイランの体は回復していた。身に流れこむ山主の妖力が、意思を持って体を癒してくれたのだ。
大きな手のひらが、タイランの背中を温めるように撫でる。熱い呼気が首筋にあたり、タイランがむずがるように天井を見上げた時だった。
「あ……」
夥しいほどの爪痕が、岩屋戸の天井を覆っていた。
でたい、ここからでたい、苦しい。
そんな気持ちが、爪痕で削れた岩の隙間から雨のように降ってくる。これは、山主の心情だ。温もりに縋り付きたかった山主の、数百年分の思いだ。
「ここにいた、ここで、まってた」
「う、ん」
「ここからでなければ、またくる。おまえが、あいにくる」
「うん、そう、だな……っ」
静かな声だった。孤独を埋めるように、山主はタイランに縋り付く。大きな体を受け止めるように抱きしめながらも、タイランは一点を見つめていた。あの時聞こえた鎖の音。山主の体を縛るように伸びたそれは、杭で貫かれた人骨へと繋がっていた。
「やま、ぬし……や、約束を果たしに、きた」
「やくそく」
「おまえを、助けに来た……、俺と外に出よう」
タイランの言葉に、山主の動きがぴたりととまった。岩屋戸の空気がざわめき、妖力が吹き荒ぶ風のように激しく流れる。タイランを抱きしめていた影にも似た黒い体は千切れるように闇にとけ、その体躯を大きな山犬の姿へと変化させた。
岩屋戸の中、窮屈そうに頭を下げて座っている。黒い毛並みに埋もれているが、その口は耳までグパリと裂けていた。
「あれが……人だったお前の姿だな……」
風化し、バラバラに砕けてもなおわかるのは、縫い止められている人骨の纏う気配が山主と同じということだ。
姿を持たないのではない。その多すぎる妖力を操り、自在に姿を変えることができるのだ。
本能のままにいる時は人の形を取り、怯えている時は獣の形を取る。守城を食らった時、山主は手をかける己に怯えていたのだ。
殺したくない、嫌だ、食いたくない。それでも、呪いは山主の悲しみを許しはしなかった。
「……こわいか」
「……こわくはないよ」
獣の鼻先に触れる。柔らかな毛並みに顔を埋めると、タイランは小さく呟いた。
死なせたくない、そう願う山主の前で、守城は何度も死んだ。その死にきちんと理由があったことも分かっていただろうに、長い年月を経るうちに真実は霞んでしまった。
残ったのは、山主の後悔と懺悔だけだった。
タイランの琥珀の瞳が、真っ直ぐに山主へと向けられる。
丸く紅い獣の瞳は、静かに光っていた。獣の口吻が、歪むようにして動く。聞き取りづらい声で、山主は宣った。
「おれ、おまえといたかった」
「ああ」
「おれのせいでしんだ、おまえといたかったんだ」
泣いているのだろうか。震える声で宣う山主を前に、胸が痛くなった。大粒の涙がこぼれ、足元を濡らすものだから、タイランもついに堪えきれなくなってしまった。
「お前ばかり、悲しい思いをさせてすまない……っ」
濡れる頬をそのままに、タイランは山主の口吻を抱きしめた。知っている、タイランは山主をよく知っている。
目を閉じれば、。慣れ親しんだ妖力がじんわりと体に入ってくるようだった。
「ドウメキ……」
タイランの言葉に、山主の赤い瞳はキュウと細まった。獣の体がふるりと震え、影は形を求めるかのように暴れだす。タイランの紡いだ名前に引きずられるように、ドウメキと呼ばれた山主の体に、いくつもの紅い瞳が咲き出した。
「みにくい、いやだ……、おまえに、しられたくはなかった……」
「醜くない、嫌いにもならない。おまえが健気に待ち続けてくれたから、俺は迎えに来れたのだ」
山主としての募る思いがタイランの体に入り込む。守城として生き、結界を張り直す儀式の度に命を落とす。
ドウメキとの儚い命のやり取りは、記憶で見たあの一度だけではなかったのだ。
十四の積み石。それは、ドウメキが死んだ守城を、弔ってきた回数だ。
「ここにくるなとねがっていた。だからおれは、おれにおもいをたくしたのに」
溢れそうな情念が、いつしか意志を宿せる体を作り上げた。それは山主としての自由な姿だったのだろう。
山主である己から守るために、もう一人の意識であるドウメキに命を託した。大切な守城の命を、己から守るために。
「わかっていたさ、だから俺はここにきたのだから……っ」
下手くそな笑い方だったかもしれない。守城へと向ける、ドウメキの不器用な愛情が切なくて、タイランはうまく表情が作れなかったのだ。
「すまなかった……、ドウメキ、……っ」
震える声で懺悔した。本当に苦しいのはドウメキであったはずなのに、ずっと守城に、タイランに悔い続けてきたのだ。
狭く暗い岩屋戸の中で、ドウメキは山主として、死に戻りをする守城とのわずかな邂逅を望み、そして悲しみに身を焼いていた。
結界を司る守城の一族によって、ドウメキは山主にされた。人身御供にされた犠牲者だ。
巫力が誰よりも多く、そして病に冒されていた。守城と同じ村に生まれた嫌われ者。その見目の醜さからついた男の名前こそが、ドウメキだった。
10
お気に入りに追加
207
あなたにおすすめの小説
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる