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その他一話完結短編集
番外編 油彩の箱庭ー久慈sideー※※※ 🆕
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リクエスト作品、油彩の箱庭番外編、受けの失禁、嘔吐描写。余裕のない攻めが受けを物理的に貪る話、
存在を認められる方法はいくつかある。それは手に職だったり、表現だったり、物事を突き詰めた先の名声。でも、不確定なものもある。それは、愛だ。
愛には、決まりがない。いつだって流動性のあるもので、時に激しく、時に苦しく、悲しく、だからこそ、愛で存在を認められることがなによりも至上だと思ってしまう。
愛とは契約だ、愛こそが認められた存在に与えられる称号だというものもいる。人によって様々だ。様々だからこそ、みな求める形が違う。
答えが出ないもの。でも、その曖昧な輪郭を整えるとしたら、愛は呪いだと思う。
異国の血を思わせる白い髪の隙間から、蛍石の瞳がわずかに細まる。久慈の手元には、磨き上げられた銀食器。滑らかなスプーンの曲線に映り込む歪んだ姿が、己の心の有り様を晒されているような気さえした。
形の良い耳が、微かな音を拾う。この屋敷には愚かな主と久慈の二人のみ。人目をはばかるように暮らすのは、主である佐一郎が絵を生業とする芸術家だからだ。
殻に引きこもる、誰からの干渉も受けないように、やせ細った体を縮めて生きる見苦しい蛹。それが、主への評価であった。
久慈は磨き終えたスプーンを、かけたパズルを埋めるように慎重に戻す。
頭上は佐一郎の部屋だ。久慈を照らす光が、時折ブツ、と瞬きをする。久慈の影が滑らかに動き、カンテラを手に部屋を後にする。手袋越しからでもわかる無骨な指先がライトの息の根を容易く止めると、部屋は暗転した。
「また、蛹になっているのですか」
重い扉の向こう、極彩色の花畑の中央に佐一郎はいた。
華奢な体を縮めて、細く呼吸をしている。久慈の持つカンテラの光だけが、ゆらゆらと部屋を照らしていた。
「三日。あなたは絵に熱中するあまり人としての営みを疎かにした」
久慈の声には苛立ちが含まれていた。冷たい瞳が向けられるのは、佐一郎を狂わせた女の肖像。
灰色の部屋を照らそうと、室内灯のスイッチへと手を伸ばす。しかし久慈の望むままに灯りがつくことはなかった。目端に留めたのは、粉々になった室内灯の無残な姿。
「……風呂に入り、食事をとってください。三日分の命を蔑ろにして描いた絵が満足のいくものでないのなら、もう現実に戻りなさい」
極彩色の油彩の花畑を踏みつける。久慈の手が佐一郎の襟首を掴んだ。襟がずれて、白く細い首が晒される。そこには一つの鬱血痕が残されていた。
「しね」
「生憎あなたより先に死ぬつもりはない」
己を睨みつける佐一郎を前に、久慈は笑った。気力をここまで失ってもなお、佐一郎から向けられる瞳には感情が宿っていた。たとえその残光が己への苛立ちだとしても、感情をむき出しにして輝く佐一郎は美しい。
久慈の手が佐一郎の首元の鬱血痕を隠すように伸ばされる。不満が手に乗ったのは無意識だ。気がつけば、久慈は乱暴に佐一郎を引き寄せていた。
「あなたが俺の手間を増やすんですよ」
「やめろ! 離せ、気持ち悪いんだよ!」
少しだけ泣きそうな声を出す。佐一郎が不安定な原因は、誰よりも久慈が理解していた。
「ああ、そう。またその姉に縋るのか」
久慈の大きな手のひらで、容易く折ってしまえそうな細い首。佐一郎の唇が戦慄いて、一枚の絵画を目に映す。極彩色の中に置かれたイーゼルには、モノトーンで描かれた一枚の婦人画。久慈の主人である、佐一郎によく似た女がそこにあった。
「翡翠に、なりたかったくせに」
「……っ……」
久慈の一言は、佐一郎の心の傷を広げるには実に適していた。
この女は、翡翠だ。佐一郎の作り上げた、なりたかった理想像。
久慈の白い手袋をはめた手に、佐一郎の手が重なった。まるで、蜘蛛の巣に絡め取られた獲物のように必死で離れようと爪を立てる。
そんな非力さで、こんなにも薄い体で。久慈の前から逃げようとする。明確な拒絶は、それほどまでに知られたくない事実を晒されたことによるものだろう。
薄い腹に回した手のひらで、下腹部を抑える。佐一郎が描いてまでなりたかった女の証が、この腹にはないと言うのに。
「俺はお前に付き合って、お前の望み通りに振る舞っていた。ただそれだけなのにな」
「くそ、クソ野郎、しね。お前なんてこの家に必要ない、この……俺に食わせてもらっていることを忘れるな‼︎」
「人並みの生活が一人では送れないお前が俺を食わせている? なら料理の一つでも作ってみろ。お前の体は、俺によって生かされていることを忘れるな」
「お前なんかいなくても、俺は生きていける! 俺は社会不適合者なんかじゃない、俺は、俺は俺は……‼︎」
なんて可愛い生き物なのだろうと、久慈は思った。込み上げてくる笑いを堪えるのに骨が折れた。
佐一郎は愚かだ。愚かで、自ら描いた道化に身を滅ぼされたのだ。
(俺がいなければ、女にもなれないくせに)
久慈の美しい瞳に映すのは、翡翠の姿。
(佐一郎の無様を愛でるのは、この俺だけでいい)
「ぅ、く」
細い顎は、久慈の手によって不躾に掴まれた。この世には存在しない翡翠も、翡翠を演じる佐一郎も全て偽物だ。この絵が、存在が。呪いのように佐一郎を縛り付ける。それが許せなかった。佐一郎の体は、細胞の一粒まで久慈が触れたもので構成されねばならない。この才能を、無垢な心を、純粋な涙を、肉の薄い体を。こうして縛り付けていると言うのに、心だけが手に入らない。それが、とてつもなく久慈は腹立たく感じていた。
磨き上げられた革靴の黒が、佐一郎の花畑を踏み躙る。胸糞悪い芳醇な香りの海へと、二人はもつれあうように堕ちていく。
「ぁ、っ」
「もう弔ったはずでしょう、佐一郎。あなたは翡翠を弔った」
佐一郎の心が壊れた日に、全てが終わったあの日に。
「死んだ、もう、俺が、殺した」
(それなのに、なんで堕ちてこない。もう縋るものは一つしかないのに、何故俺を選ばない)
「そうだよ佐一郎。お前が殺した。お前が作り上げて、お前が殺した」
「俺は、だって俺は、……女になれば、愛されると思った」
震える声で、助けてほしいと心は悲鳴をあげているくせに。佐一郎の瞳は久慈を映しはしなかった。
涙で歪んだ視界に、歪んだ虚像を閉じ込める。
「お前の気持ちを否定されて、可哀想に」
それは、精一杯の久慈の虚勢だった。
「心を破かれて、一気にハリボテが崩れた。可哀想な佐一郎、嘘を現実にしようと……こんな絵まで作り上げて」
久慈の手のひらが、女にはない膨らみへと這わされる。手の内側に柔らかく触れるものを指先で圧迫すれば、佐一郎の足に力が入る。
その反応は、久慈を喜ばせるだけだと言うのも知らずに。
「抱かれたかった? 画商の男に。お前は女のように組み敷かれて、情けなく喘ぎたかった?」
「違う、違うそんなことはない……」
「お前の顔は上等だよ、佐一郎。だけど体は変えられない、騙せるのは、せいぜいベットまでだ。わかるだろう?」
「やめろ、触るなクソ野郎……‼︎」
久慈は笑った。怯え混じりの苛立ちを向けてくる姿を。あの時、佐一郎の心が壊れた嵐の夜。光の明滅に照らされた絶望の顔が、久慈を狂わせた。
奥底に潜めていた歪んだ情欲を露呈させたのは、他でもない。佐一郎だ。ずっと、久慈は見つめてきた。まどろむ夢の行き末を、未だあの男に囚われる盲目を、狭い箱の中を虚像で満たして信仰する愚かを。
(醜いお前の姿を見つめ続けたのは、他でもない俺だと言うのに)
男を、そして佐一郎自身を。騙してまで実らせたかった恋の終わりは、枝葉が落ちるよりも呆気ないものだった。
蛾は、蝶にはなれない。ましてや、存在しないものに擬態するだなんて、ひどく滑稽な話であった。
久慈は見つめつづけた。低い声を誤魔化す姿も、喉仏を隠すためのスカーフに好みがあることも。長く伸ばした髪を手入れする香油の、似合わない花の香りも、女のふりをするたびにすり減っていく佐一郎の姿も全部。
塗り潰されていく。低俗な画商の男のために、佐一郎の心が。絵筆にのる色彩が弔いの色に変わり、すり減った心を油彩に溶かして完成させた美しい女の絵は、佐一郎の心の投影そのものだ。
愚かな主人の振舞いを、その蛍石の瞳で見つめ続けてきた。胸元に布を詰めたコルセットを佐一郎に纏わせるたびに、汗の滲む頸に舌を這わせたいと思っていた。
擬態していたのかもしれない。久慈も、佐一郎へと向ける心を偽っていたのかもしれない。
愚かな主人に毒された。美しい翡翠に磨き上げたのは久慈だ。それでも、佐一郎の唇に紅を引くことは許されなかった。その唇の柔らかさを、長くそばに仕えてきた久慈よりも先に知ったのはあの男だ。
お前は、佐一郎を知らないくせに。その行き場のない苛立ちが嫉妬だと、久慈に教えてくれたのは画商の男だ。
「あの男はお前を否定した。本物ではない、本物になれない佐一郎、お前を否定したんだよ」
「うるさい、うるさい」
「お前が男を隠して生きてきた二年の歳月で、お前はお前の心すらも殺して。愚かで可哀想な佐一郎」
ヒック、佐一郎の声から、嗚咽が漏れた。今もきっと、押し倒した久慈を画商の男と重ねている。
あの夜を知らない、久慈は知る権利もなかったからだ。佐一郎の唇の柔らかさを知り、素肌に触れた男。この、箱の中のような狭い部屋に閉じ込めたのは、佐一郎の後悔。女の体ではない、服を脱げば当然わかることなのに。なぜ男をこの部屋に招いたのか。
ハリボテの姿で描いた夢を、幻を、現実と見誤って突き落とされる。悪夢に成り下がったあの夢から佐一郎を引き摺り出せるのは、あの夜に画商の男が捨てた権利を拾った久慈だけだ。
脳裏を、嵐の夜が支配していく。佐一郎を罵り、久慈にぶつかるように出ていった男を、許しはしなかった夜。雷鳴が空に根をはり、轟いた。画商の男の姿が消えて、久慈は屋敷に戻ったのだ。
灯りもつけない部屋で、小窓から差し込む雷の光に時折照らされる佐一郎は静かに泣いていた。あの時の美しさ、そして歪さは。久慈は決して忘れることができないだろう。
「女になりたかった。あの男に抱かれて、体と心をつなげたかった?」
「う、ぅう、う……っ……」
「腹に子を宿せれば、誰にも取られないと思った?」
「ぅる、さ……い……」
「望まれる体で、生まれたかった?」
「うるさい……!!」
この体は、心は、最初から佐一郎で縛られているというのに。
久慈の手が、佐一郎の顔を翡翠へと向けさせる。決して、目を逸らすことは許さない。佐一郎が作り上げた虚構を、愚かを、過去を、後悔として身に宿せばいい。一生、怯えて人と関わらなければいい。このせまい箱の中で、久慈だけに心を許し、久慈だけに縋ればいい。やっと回ってきたこの機を、一体誰が邪魔するというのか。
「お前はこれになりたかった。だから描いた。なりきるために、お前はキャンバスに翡翠を閉じ込めた」
──── この絵は久慈にとっての呪いだ。
「筆を取れ佐一郎。塗りつぶせ、懺悔するのはこの絵にじゃない。お前は、蔑ろにしてきたお前に謝れ」
そして、最後に縋るのは俺だけでいい。久慈は、笑みを浮かべていた。佐一郎にとってそれは、ひどく歪で、決して笑みとは言い難いものであったが。
佐一郎の足が、イーゼルに当たる。暴れる体を押さえつけるのは容易い。大きな音が立って、翡翠の絵画が油彩の花畑に堕ちていく。佐一郎の、長く伸びた黒髪が墨のように侵食した極彩色の中で、久慈の姿も全てを隠す夜を宿していた。
久慈の腕が、薄い体をキツく抱きしめた。抵抗は、もうなかった。ただ虚空を見つめ、何かに囚われたように瞳を彷徨わせる佐一郎を、久慈はただ己の欲を貫くために抱きしめたのだ。
これが、愛情を持つ優しい抱擁なら、何かが変わったのだろうか。脈打つ鼓動は早いのに、死んだように無抵抗の白い体。生きたものの匂いがした。体温が、ある。
鼻先を首筋に滑らせる。佐一郎が慰め続けた胸の尖りを指に挟むと、ようやく久慈が何をしようとしているのかを理解したようだった。
「お前は男で、女にはなれない」
「うう、ぅ……」
「あれはお前の見栄えだけを愛していた。だから、あいつは体に触れなかった」
睦言を囁くような関係ではない。本来ならば、久慈の行動は許されぬことのはずだ。けれど、そんなことはどうでも良かった。
「姉を偽り、近づいた。恋愛ごっこはお前を確かに美しくさせた。それでも……それでも、結局あの男は、お前の心を殺して出て行った」
久慈は、捨てられた佐一郎の心を拾った。ただそれだけだ。
だから、久慈は己のものにする。待ち望んでも巡ってこないだろう、そう思っていた機会だ。今度こそ、誰にも触らせるつもりなんてなかった。
「お前を追い出した親と何も変わらない。一体何を学んで活かしたのだ」
震える体を抱きしめる。体温を分け与えるように、甘やかすように優しく、背中に久慈をなじませるように手を回す。細い首筋に歯を立てた。埋め込んだ犬歯から滲む甘さに、くらくらした。
「は、ぁ……っ」
佐一郎の熱のこもった呼気が、涙が、嗚咽が耳元を掠めるたび、久慈は己が醜い化け物になっていく心地になった。こんなにも傷ついて。深く悲しんでいる。腕の中の、行き場のない捨てられた佐一郎が。あの、久慈をないもののように扱っていた佐一郎が。
「く、じっ……」
「大人しく泣け」
「ぃい、っ……!」
今、久慈を瞳に閉じ込めたのだ。
艶めく瞳の中の己の顔が、人間のままならいい。久慈はそう願った。きっと、これから身も蓋もなく獣になるだろう。佐一郎が泣き喚いても、離してはやれないだろう。
華奢な体が強張っている、怯えられている。底辺に落ちているのは久慈の方かもしれない。それでも構わなかった。この狂った関係性が崩れることはない。だから、だから────
「綺麗、だ」
静謐な部屋に、ポトリと落とされた佐一郎の言葉に、久慈は目を見張った。
細い指先が、久慈の目元をそっと撫でる。途端に、口にしたばかりの佐一郎の血の味が鮮明になった。
「……ならずっと見ていろ」
「は……っ……」
決して口付けだけはしないつもりだった。それでも、己で課した約束を違えるほど、向けられた佐一郎の言葉に堪らなくなってしまった。
心の揺らぎを佐一郎に汲まれることが恐ろしかった。気がつけば、久慈は佐一郎の一呼吸を奪うように口付けを深くしていた。
薄い唇を割り開き、舌を差し込む。佐一郎の手が久慈のジャケットに皺を寄せて、久慈の唾液を飲み込んだ。頭痛がした。熱で頭がぼやけて、まるでまどろんでいるかのような心地だった。もしかしたら、酸欠に陥っているのかもしれない。
佐一郎の薄い舌が、恐る恐る久慈の舌に答える。その熱く、滑る肉を唇で挟み甘く吸う。鼻にかかった声が聞こえて、久慈の性器は痛いほどに張り詰めた。
「ふ、っ……ぅ、く、っ……」
涙交じりの佐一郎の声に、久慈は口付けを緩める。触れた肌を通して伝わってくる佐一郎の緊張は、きっと、存在を否定された夜を重ねているからだろう。腹が立った。今こうして触れているのは久慈だというのに、佐一郎はあの画商の男と久慈が同じだと怯えている。
弱々しい抵抗が物語る、こんなにも口付けを通して男の熱を求めているというのに。まだ。
「ひ、っく」
幼い嗚咽を耳にして、久慈の手のひらが佐一郎の黒髪に差し込まれる。後頭部を支えるように、口付けの角度を変える。細い喉元が唾液を嚥下して、
空気を取り込むようにわずかに開いた口端から、飲み込みきれなかった唾液が伝う。
こんなにも舌先に感情を乗せているというのに、佐一郎には届かない。それが、久慈を惨めにさせるのだ。こんなもの、愛情なんかじゃない。愛情は、互いが同じ気持ちを差し出すことをいう。涙の味を覚えさせられた。佐一郎の、悲しい涙の味を。気がつけば互いの吐息が混じり合い、室内は乱れた呼吸音が静かに混じる。
「ぁ、ぁ、っく」
「声は我慢しなくていい」
まるで睦言のように響く言葉に、久慈は自嘲した。愛ではないと言い聞かせていたはずだろう、と。濡れた瞳に宿る弱々しい光が、再び久慈を映す。
赤くなった目元に、口付けを落としてやりたかった。その勇気を、久慈は持たないくせにだ。
佐一郎の性器を、柔らかく握り込む。芯を持ち、手の中で形を変える。確かな男の部分を収めているというのに、嫌悪感は微塵も湧いてはこなかった。手の内側で滲む先走りを塗り込むように刺激する。佐一郎の上擦った声が聞こえて、口の中に溜まった唾液を飲み下す。
「そん、なとこ……ぁっ、」
「自分で育てた場所だろう」
目の前に晒された、男にしてはぽてりとした胸の粒へと唇を寄せる。久慈の舌の動きに合わせるように粒を転がせば、佐一郎の薄い胸は香るように色づいていく。
堪えていたのだろう濡れた声は、嗚咽交じりの嬌声へと変わっていた。脳が焼き切れそうだった。佐一郎のこの声を、あの男に聞かせていたかもしれないと思うだけで。久慈のはらわたは煮えくりかえりそうだった。
薄い手のひらが久慈の腕に添えられる。向けられた瞳に、もう怯えは感じられなかった。
「俺に面影を重ねるな」
「か、さねてな……い……」
「ならいい」
悲しそうに顔を歪める、その心を知りたかった。背けられた顔、佐一郎の耳は真っ赤に染め上がっていた。触れたいと思った。手袋越しではなく、その滑らかな素肌に触れたいと。
久慈にとっての手袋は、己への牽制でもあった。触れられぬ存在として佐一郎をおくことで、抱え込んでいた思慕を殺していたのかもしれない。それを、久慈は取り払う。晒された久慈の無骨な手のひらは、そっと佐一郎の薄い胸に置かれた。
「な、んで……」
「黙れ」
その問いかけに応える勇気はまだない。だからこそ久慈は、指先で伝える。汗でしっとりとした肌は手のひらに吸い付き、骨ばった薄い体に触れる。柔らかな太腿の肉が久慈の手首を挟み、薄い腹が震えた。直に握りしめた佐一郎の性器が熱をおび、久慈の手の内側で遂情する。
声のない悲鳴をあげた佐一郎の足がくたりと床に伸びて、精液は久慈の手を伝うように尻の合間へと流れていった。
「お前は急所で遂情するのか」
「っはぁ、……は……っ……」
呼吸に混じる、微かな甘い声が耳に毒だった。佐一郎の精液で手を濡らしたまま、久慈はまろい頬に触れる。濡れた佐一郎の性器が、三揃の服を汚すのも厭わぬまま身を寄せた。
だらしなく開かれた足を腰で押し開くように持ち上げる。薄い腹を手のひらで覆うと、久慈はグッ、と押し込んだ。女の腹ではないそこを、今から雌にするために。
「あ、あぁ……っ‼︎」
「今からお前を抱く」
「ぅ、うそ、だ、だ、抱けるわけ、ない……っ」
信じられないと言った表情を前に、久慈はネクタイを緩めた。
出来る訳が無いと宣う佐一郎の言葉は、久慈にとっては笑い話でしかない。こんなにも佐一郎の痴態に当てられたというのにだ。腹が立って、精液の味を教え込むように指先を小さな口に押し込んだ。
「ならそう思っていろ」
いつまでも、その瞳を揺らして怯えていればいい。
猛ったそこを、佐一郎の尻へと押しつける。細い足に力が入ったことを確認すると、久慈は見せつけるようにネクタイを解いた。ここから先は、もう佐一郎の執事ではないと示すように。
「ふ、んん……ん、んっ」
「ダメだ、目を背けるな。誰がお前を抱くのかを、覚えろ」
「ひ、ゃだ……」
精液の苦味を、舌に覚えさせる。骨ばった体を隠すように恥じらう佐一郎を押さえつけながら、久慈は教え込むように何度も唇を重ねた。親指の先を押し返すように主張する胸の突起は、押し潰すたびに慎ましい穴を収縮させる。
膨らんでしまった、はしたない互いの性器を布ごしに押し付け合う。眩暈がするようなもどかしい性感に、久慈の吐息にも熱が籠る。
いやらしい、いやらしい体だ。薄くて、骨張っていて、白い。女とは真逆の見窄らしい姿。久慈の腰を締め付ける足も、遠慮がちに服を握る小さな手も、全部。全部演技だというのだろうか。
声が聞きたい。端なく猫のようになく佐一郎の声が。
「は、ぁ……、おい……」
「ん、ふ……ちゅ、は……っ」
「っ……はあ、」
濡れた舌先に吸い付く。佐一郎の肉の味を舐るように堪能する。久慈のシャツがじわりと熱を広げて、佐一郎の数度目の遂情が性感を煽る。たまらなかった。余裕が、なかった。
舌と共に口内をいじめていた指先を引き抜き、久慈は己の股座へと手を伸ばした。ボトムスの布地を痛いほどに押し上げる。指先が触れたジッパーでさえ、熱を帯びている気がした。
「目を背けるな。誰がお前を抱くのか覚えろ」
「い、嫌だ……っは、恥ずかし、い」
「……お前、俺に恥じらうのか」
久慈の言葉に、佐一郎の目が見開いた。その反応は、ただ目の前の雄を喜ばせるだけだというのに。
細い首筋に歯をあてる。筋に沿って舌を這わせて、耳朶を喰む。久慈は己の猛った性器を外気に晒した。熱を帯び、先走りを垂らす太い雄の証を。指先で拭い取った先走りを佐一郎の尻へと塗りこむ。ここを今から久慈の形にするという想像だけで、果ててしまいそうだった。
「蔑ろにした俺に、恥じらうのか。そうか」
「ひ、んく……っ……」
「気分がいいな、はは」
楽しい。まるで、悪い薬を直接脳に打ち込まれた気分だった。指先で、縦に伸ばすように穴を刺激する。排泄器官としての役割を持つこの場所で、佐一郎は女になる。そこは、まだなんの手も加えられていないようだった。
濡れた久慈の指がゆっくりと侵入してくる。強張った身体を窘められるように、肩口に歯を立てる。佐一郎は、女のように身をすくませた。
「……ここは自分で慰めなかったのか」
「し、ない、汚い、とこだから」
「抱かれたかったのにか」
「ちが、っ……お、ぉれは、そうじゃなくて……」
言葉を詰まらせる姿に、久慈は目を細めた。その先を想像しなかったわけではないだろう。女の経験もないくせに……。とでかけた嫌味は、佐一郎の言葉によって飲み込まれた。
「あきらめた、のに……お前、がっ……」
それは、どう言う意味だと思った。
「……そうか、わかった」
「ぃあ、あっゃめ、やめて、っ」
一体、どんな感情で口にしているのかとさえ思った。動揺を悟られたくなくて、震える佐一郎の腹に唇を寄せるように上体を下げる。佐一郎はずるい。嫌だと言うくせに、期待を見せる。久慈の理性で塗り固めた欲を容易く溶かし、穿り出そうとしてくる。
まるで子供が無邪気に穴を掘るように、久慈の取り繕う内側を言葉一つで揺るがす。上擦った声がした。目の奥が痛い。固く張り詰めた佐一郎の性器と、震える柔らかな肉。久慈の指先を飲み込んだ蕾が、呼吸に合わせて収縮する。
汗と、精液のにおい。佐一郎が雄である確かな証明。同じ場所を固くして、なにも実らない不毛な行為に興じている。
油彩の花弁に塗れたテイルコートを脱いで、執事からただの雄に成り下がる。視界の端に映した佐一郎は、ぼたぼたと涙をこぼしていた。
「く、じ……っぃ、いた、い……っ」
「佐一郎」
「ひ、ぃ……っ」
「……待っていろ」
久慈の鼻先が、佐一郎の性器の根本へと埋まるように袋を口に含む。甘く吸い、溢れた先走りを追いかけるように舌先で受け止める。脈打つ血管の一本を、弾力を確かめるように舌先で押してやれば、白濁が端ない音を立てて溢れ出す。
「ぃ、っ……い、ぃっ、た、っも、く、口、やめ、っ」
「まだだ」
「ぃや、あっ」
「まだ、お前は女になっていない」
きっと、久慈の言葉は届いていないだろう。それでも、佐一郎の体は求めていた快楽を喜ぶようにほぐれていった。本人の意思の聞かない、かわいそうな体。プラムのように張り詰めた先端を口に含み、ほのかな苦味のある残滓を口に含む。柔らかな尻を掴むようにして、腰を持ち上げる。情けなく勃ち上がった性器が、薄い腹を打ちつけた。
「な、に」
「……見ていろ」
「ぁ、あ、ああ、あ、そ、こ……っ」
久慈は舌先でこじ開けた。佐一郎ですら知らない、蕾の内側を。あれほどまでに指を締め付けていた窄まりは、久慈の舌を受け入れた。素直に肉が蠢いて奥まで招くのだ。口に含んだ精液を舌に纏わせ舐る。背徳的な現実に、晒された久慈の性器はだらしなく先走りをこぼしていた。
「く、じ……くじ、っ……くじ、ぃ……っ……嫌だ、あ、い…ぃい、……いい、っ……あ、いや、あ……っ」
「は……っ」
「ぁあ、あ、ぁ……っンっ……」
柔らかな佐一郎の太腿に挟まれる。とろめく肉が深い口付けに応えるように舌を締め付けて、汗と精液の混じりあう匂いが濃くなった。佐一郎は達していた。久慈に尻の内側を舐められて。雌のように達したのだ。
理性と性欲の間で溺れていた。舌で丹念にほぐされた中へと、久慈はゆっくりと指を含ませる。静かな部屋がうるさい。耳障りな音が粗い息遣いだと知って、久慈は笑いそうになった。
熱に浮かされているのは、久慈もまた同じだ。触れた薄い背中に滑りを感じて目を向ければ、久慈の性器から放たれた精液が白い背中を汚していた。あの時。佐一郎の肉が久慈の舌を締め付けた時に果てたのだろう。握りしめた己の性器はまだ熱く、芯を持っていた。
細い足を肩に担ぎ上げる。掴んだ柔らかな太腿に小さな手が触れて、蛍石の瞳が佐一郎を捉えた。
「あ……、……っ」
佐一郎の目は、窺っていた。久慈の表情を。
遠慮がちに握られた指に、奥歯を噛み締める。縋る勇気も持たないくせに、また背を向けられると思っている。
佐一郎の肉を舐り、無様に射精した男を、まだ疑っている。
「犯されたみたいな顔をするな」
「く、じ」
「お前はきちんと、女にされる」
きちんと、佐一郎は女だった。久慈の目の前では雌になれていた。その言葉の真意が伝わったかはわからない、けれど、佐一郎の浮かべた笑みを忘れることはできないだろう。
細い足を担ぎあげ、腰を引き寄せる。もう、抵抗はなかった。性器をあてがった蕾は、先端へ深い口付けを贈るように飲み込んでいった。
見つめていた。久慈は、己の白濁に塗れた性器がゆっくりと佐一郎の腹へと飲み込まれる様を、ただ黙って見つめていた。喉の渇きで、己の体温の上昇を知る。今、まともに表情を取り繕えているのだろうか。
佐一郎の表情は最初とは変わっていた。しかめていた眉が緩み、半開きの口からは赤い舌をのぞかせる。まどろんでいるかのような表情が、久慈を安心させた。
(抱いているのは画商の男ではない。俺だ)
「……ぅく、っ」
気をやってしまいそうなほど、気持ちが良かった。久慈が今まで抱いてきた女よりも、佐一郎の腹が一番心地よかった。軟い肉が絡みつき、粘液が空気を取り込んで卑猥な音を立てる。まるであつらえたかのような仕上がりは、きっと佐一郎の生まれ持った才能だとさえ思った。
「ふぁ、あ……ぁ、はい、っで、ゔ……っ」
「痛いか」
「ぁー……あ、あ、っ……あ、づ……っ」
「は……、……痛い、わけではなさそうだ……」
きっと、声が届いていないわけではない。久慈は腰を押し付けるように、固く張り詰めた前立腺を何度も摩擦する。柔らかな佐一郎の袋があたり、ヌルついた先端が何度も久慈の腹を汚す。小さな手はかろうじて止まっていたシャツのボタンを飛ばすほどにキツく生地を握りしめ、必死で性感を追いかけている。
「ぁ、い、ぃや、ら……もお、ゎ、かんぁ……っ……」
「何がわからない。この状況で、お前ができることは一つだけなのにか」
「ぅ、ぅえ……っく、ふ、んン……っ……」
「こうしてゆすると、心地いい……」
「は、ぁっく……っ」
ただ本能に任せていればいい。何も考えずに、久慈の背中に腕を回していればいい。
下手くそな呼吸を補助するように、久慈は唇を重ねる。甘く啄み、溢れた唾液を舐めとった。佐一郎の舌が求めるように伸ばされて、背中に回った腕に力が入る。それだけで久慈は、頭に血が登ってしまう。
柔らかな尻に腰を打ちつける。久慈の性器を追いかけるように絡みつくとろけた肉も、抱き込んだ体から滲み出す汗も、互いの体に広がる彩りも。全部が全部、非現実的だ。きっと佐一郎は、慰めとでも思っているのだろう。
深く繋がりたくて、骨盤を開くように腰を振り下ろす。体の傍で細い足が暴れて、久慈の腹にびちゃびちゃと精液がかかる。逃げようとする細い腰を掴んで引き寄せれば、久慈の性器に鋭い刺激が走った。
「ぁ、ぐ……っ」
「ひ、っ──── ……‼︎」
「ン……っ……っは、……」
肉の輪を抜けた感触がした。より一層狭い窄まりに、久慈の先端がぴたりとはまっている。目の前が明滅する。額から汗が吹き出し、腰が震えた。肩で息をして整えるだけで必死だった。眩暈のような酩酊感が襲って、腰を掴む手に思わず力が入る。出ている気がする。今、耐えきれないまま、久慈はまさしく佐一郎の狭いそこへと精液を吐き出していた。
「な、んだ……ここ……っ」
「ゔ、ごかぁ……い、れ……っ」
「……佐一郎」
「っぁ……し、し、んだ……から、ぁ……っ」
涙と涎と鼻水で顔を濡らす、顔を真っ赤にして死んだと虚に呟く口元に、久慈はそっと触れた。
「誰が死んだ」
「ひ、っ……ふ、ぃ……っひ、ひす、っぃ、っ」
「なら、お前は誰に抱かれている」
「っぁあ、あ……っゅずら、ない、でっ……あ、あっあっ」
「佐一郎」
溢れる唾液を受け止める指先は、優しかった。久慈の大きな手のひらが佐一郎の頬を撫でる。濡れた瞳に吸い寄せられるように唇を寄せると、久慈はベロリと佐一郎の目を舐めた。
「ひ、っ……ぁ……っ」
「俺に、命令できると思っているのか」
「ぁ、ご……ごぇ、あ……っさ、っ」
「っ……今、お前を抱いているのは」
佐一郎の震えを抑え込むように抱きしめた。久慈の腹に、暖かな水流が当たっている。腕の中の強張った体が嗚咽を漏らし、久慈のシャツを握りしめる手がブルブルと震えていた。
「ぅう、う、ぅ………あ……っ、あぁ、あ……っ」
「……お前は……」
「ひ、っく……っ、く、じ……っ、くじ、だ……っう、ぅう、うっ」
「…………」
失禁は、佐一郎の腰の下へ広がっていく。微かな水音を立てながら、佐一郎は子供のように泣きながら久慈を呼ぶ。この、心の糸を切ったのは久慈だ。
華奢な体を抱え上げる。油彩が張り付く白い背中を支えると、結合部からは久慈の掃き出した精液が漏れた。
「そうだ、よくできた」
「あ、ぁあ、あっま、っへ……っ」
「またない」
「お、ぁ……っ」
尻を鷲掴むように持ち上げた体を、再び性器の上に落とす。久慈の胡座に収まった佐一郎は、なすすべもなく揺さぶられる。久慈の耳元で苦しそうな声が聞こえて、うっとりと目を細めた。
酸欠のように顔を真っ赤にして、だらしなく泣いている顔が見たかった。立場の縛りが歪んだ欲から佐一郎を守っていたのに、今はこんなにも近い。
狭い肉を穿ち、佐一郎の腹を膨らませる。失禁は久慈の腹とスラックスを濡らし、性的な匂いを部屋に充満させる。
揮発性油の独特な匂いと、欲の匂いが入り混じる。聞くに耐えない音を立てながら、久慈は何度も佐一郎の体を腰の上で跳ねさせる。強弱をつけて、時折押し付けるように。濡れた佐一郎の顔に唇をよせ、鼻水を舐め取り、深く口付ける。下と上とで深く繋がった華奢な体の主導権を握り、何度も描いてきた欲をなぞるように腰を使う。
こんなに馬鹿みたいに腰を振り、無駄な精液を男の腹に流し込む。滑稽で、ひどく愚かな行為だ。
「ぁ、っン、んん、ぃ、い……っいい、ぃ、ぐ、っぃぎゅ、っ」
「そうだ、上手にイって見せろ、っ……」
「ぅああ、ぁっぐっ、ぅえ、えっあ、っい、っ…………‼︎」
「は、っ……」
一層強くこじ開ける。排泄感を伴った精液が久慈の性器から吹き出して、佐一郎の内側をびちゃびちゃと濡らす。目の焦点が合わなくなりそうなくらい、気持ちがいい。佐一郎の吐瀉物を背中で受け止めて、久慈のシャツは二度と着れなくなった。
久慈は何度も佐一郎を貪った。描いた翡翠の上で潮を吹かせ、嘔吐させた。何度も穿った佐一郎の蕾は馬鹿になり、性器を引き抜く頃にはポカリと口を開けて呼吸を繰り返していた。
二人揃って、現実と妄想の境目を行き来する夜を共にした。久慈は、物理的に佐一郎を女にしたのだ。描くほど恋焦がれていた、女の佐一郎にしてやった。
油臭い部屋に、生々しい精液の匂いが混じる。二人分の汗と、そして吐瀉物の匂い。獣の巣穴と同じような部屋の中へと、早朝の光がゆっくりと侵食していた。
爽やかな朝とは程遠い。骨身も心も軋む中、久慈は佐一郎の体液に塗れたテイルコートから煙草を取り出し燻らせる。
「癪に触った」
本音を吐露した口端が、窘めるようにちくりと傷んだ。佐一郎の下手な口付けが傷をつけた場所だ。それでも、久慈は気にしてはいなかった。
「お前が、俺をいないものとして扱うのが癪に触った。一人で生きているような顔をするのも嫌だった」
「だから、だいたの」
「ああ、抱いた。犯したのではなく」
「……そう」
久慈の指先が、佐一郎の首筋に散らした歯型をなぞる。
犯した、ではなく。抱いた。佐一郎の口から漏れた言葉を耳にして、久慈は満足そうに笑みを浮かべる。その顔は、今まで佐一郎が見てきた久慈の中で一番美しく、そしてあどけなさを滲ませていた。
手のひらが、佐一郎の頬を撫でて引き寄せる。無抵抗なのは抱き潰したからだろうか。久慈はそんなことを思ったが、考えることをやめた。
同じ香りを纏い、同じ色を纏っている。もし佐一郎がこの場面を描くのなら、一体どんな名をつけるのだろう。細い腕が久慈の肌に触れるように背中に回る。
「佐一郎、次は一体何を描く」
小さな窓から差し込んだ光が、額縁のように二人を閉じ込めていた。
存在を認められる方法はいくつかある。それは手に職だったり、表現だったり、物事を突き詰めた先の名声。でも、不確定なものもある。それは、愛だ。
愛には、決まりがない。いつだって流動性のあるもので、時に激しく、時に苦しく、悲しく、だからこそ、愛で存在を認められることがなによりも至上だと思ってしまう。
愛とは契約だ、愛こそが認められた存在に与えられる称号だというものもいる。人によって様々だ。様々だからこそ、みな求める形が違う。
答えが出ないもの。でも、その曖昧な輪郭を整えるとしたら、愛は呪いだと思う。
異国の血を思わせる白い髪の隙間から、蛍石の瞳がわずかに細まる。久慈の手元には、磨き上げられた銀食器。滑らかなスプーンの曲線に映り込む歪んだ姿が、己の心の有り様を晒されているような気さえした。
形の良い耳が、微かな音を拾う。この屋敷には愚かな主と久慈の二人のみ。人目をはばかるように暮らすのは、主である佐一郎が絵を生業とする芸術家だからだ。
殻に引きこもる、誰からの干渉も受けないように、やせ細った体を縮めて生きる見苦しい蛹。それが、主への評価であった。
久慈は磨き終えたスプーンを、かけたパズルを埋めるように慎重に戻す。
頭上は佐一郎の部屋だ。久慈を照らす光が、時折ブツ、と瞬きをする。久慈の影が滑らかに動き、カンテラを手に部屋を後にする。手袋越しからでもわかる無骨な指先がライトの息の根を容易く止めると、部屋は暗転した。
「また、蛹になっているのですか」
重い扉の向こう、極彩色の花畑の中央に佐一郎はいた。
華奢な体を縮めて、細く呼吸をしている。久慈の持つカンテラの光だけが、ゆらゆらと部屋を照らしていた。
「三日。あなたは絵に熱中するあまり人としての営みを疎かにした」
久慈の声には苛立ちが含まれていた。冷たい瞳が向けられるのは、佐一郎を狂わせた女の肖像。
灰色の部屋を照らそうと、室内灯のスイッチへと手を伸ばす。しかし久慈の望むままに灯りがつくことはなかった。目端に留めたのは、粉々になった室内灯の無残な姿。
「……風呂に入り、食事をとってください。三日分の命を蔑ろにして描いた絵が満足のいくものでないのなら、もう現実に戻りなさい」
極彩色の油彩の花畑を踏みつける。久慈の手が佐一郎の襟首を掴んだ。襟がずれて、白く細い首が晒される。そこには一つの鬱血痕が残されていた。
「しね」
「生憎あなたより先に死ぬつもりはない」
己を睨みつける佐一郎を前に、久慈は笑った。気力をここまで失ってもなお、佐一郎から向けられる瞳には感情が宿っていた。たとえその残光が己への苛立ちだとしても、感情をむき出しにして輝く佐一郎は美しい。
久慈の手が佐一郎の首元の鬱血痕を隠すように伸ばされる。不満が手に乗ったのは無意識だ。気がつけば、久慈は乱暴に佐一郎を引き寄せていた。
「あなたが俺の手間を増やすんですよ」
「やめろ! 離せ、気持ち悪いんだよ!」
少しだけ泣きそうな声を出す。佐一郎が不安定な原因は、誰よりも久慈が理解していた。
「ああ、そう。またその姉に縋るのか」
久慈の大きな手のひらで、容易く折ってしまえそうな細い首。佐一郎の唇が戦慄いて、一枚の絵画を目に映す。極彩色の中に置かれたイーゼルには、モノトーンで描かれた一枚の婦人画。久慈の主人である、佐一郎によく似た女がそこにあった。
「翡翠に、なりたかったくせに」
「……っ……」
久慈の一言は、佐一郎の心の傷を広げるには実に適していた。
この女は、翡翠だ。佐一郎の作り上げた、なりたかった理想像。
久慈の白い手袋をはめた手に、佐一郎の手が重なった。まるで、蜘蛛の巣に絡め取られた獲物のように必死で離れようと爪を立てる。
そんな非力さで、こんなにも薄い体で。久慈の前から逃げようとする。明確な拒絶は、それほどまでに知られたくない事実を晒されたことによるものだろう。
薄い腹に回した手のひらで、下腹部を抑える。佐一郎が描いてまでなりたかった女の証が、この腹にはないと言うのに。
「俺はお前に付き合って、お前の望み通りに振る舞っていた。ただそれだけなのにな」
「くそ、クソ野郎、しね。お前なんてこの家に必要ない、この……俺に食わせてもらっていることを忘れるな‼︎」
「人並みの生活が一人では送れないお前が俺を食わせている? なら料理の一つでも作ってみろ。お前の体は、俺によって生かされていることを忘れるな」
「お前なんかいなくても、俺は生きていける! 俺は社会不適合者なんかじゃない、俺は、俺は俺は……‼︎」
なんて可愛い生き物なのだろうと、久慈は思った。込み上げてくる笑いを堪えるのに骨が折れた。
佐一郎は愚かだ。愚かで、自ら描いた道化に身を滅ぼされたのだ。
(俺がいなければ、女にもなれないくせに)
久慈の美しい瞳に映すのは、翡翠の姿。
(佐一郎の無様を愛でるのは、この俺だけでいい)
「ぅ、く」
細い顎は、久慈の手によって不躾に掴まれた。この世には存在しない翡翠も、翡翠を演じる佐一郎も全て偽物だ。この絵が、存在が。呪いのように佐一郎を縛り付ける。それが許せなかった。佐一郎の体は、細胞の一粒まで久慈が触れたもので構成されねばならない。この才能を、無垢な心を、純粋な涙を、肉の薄い体を。こうして縛り付けていると言うのに、心だけが手に入らない。それが、とてつもなく久慈は腹立たく感じていた。
磨き上げられた革靴の黒が、佐一郎の花畑を踏み躙る。胸糞悪い芳醇な香りの海へと、二人はもつれあうように堕ちていく。
「ぁ、っ」
「もう弔ったはずでしょう、佐一郎。あなたは翡翠を弔った」
佐一郎の心が壊れた日に、全てが終わったあの日に。
「死んだ、もう、俺が、殺した」
(それなのに、なんで堕ちてこない。もう縋るものは一つしかないのに、何故俺を選ばない)
「そうだよ佐一郎。お前が殺した。お前が作り上げて、お前が殺した」
「俺は、だって俺は、……女になれば、愛されると思った」
震える声で、助けてほしいと心は悲鳴をあげているくせに。佐一郎の瞳は久慈を映しはしなかった。
涙で歪んだ視界に、歪んだ虚像を閉じ込める。
「お前の気持ちを否定されて、可哀想に」
それは、精一杯の久慈の虚勢だった。
「心を破かれて、一気にハリボテが崩れた。可哀想な佐一郎、嘘を現実にしようと……こんな絵まで作り上げて」
久慈の手のひらが、女にはない膨らみへと這わされる。手の内側に柔らかく触れるものを指先で圧迫すれば、佐一郎の足に力が入る。
その反応は、久慈を喜ばせるだけだと言うのも知らずに。
「抱かれたかった? 画商の男に。お前は女のように組み敷かれて、情けなく喘ぎたかった?」
「違う、違うそんなことはない……」
「お前の顔は上等だよ、佐一郎。だけど体は変えられない、騙せるのは、せいぜいベットまでだ。わかるだろう?」
「やめろ、触るなクソ野郎……‼︎」
久慈は笑った。怯え混じりの苛立ちを向けてくる姿を。あの時、佐一郎の心が壊れた嵐の夜。光の明滅に照らされた絶望の顔が、久慈を狂わせた。
奥底に潜めていた歪んだ情欲を露呈させたのは、他でもない。佐一郎だ。ずっと、久慈は見つめてきた。まどろむ夢の行き末を、未だあの男に囚われる盲目を、狭い箱の中を虚像で満たして信仰する愚かを。
(醜いお前の姿を見つめ続けたのは、他でもない俺だと言うのに)
男を、そして佐一郎自身を。騙してまで実らせたかった恋の終わりは、枝葉が落ちるよりも呆気ないものだった。
蛾は、蝶にはなれない。ましてや、存在しないものに擬態するだなんて、ひどく滑稽な話であった。
久慈は見つめつづけた。低い声を誤魔化す姿も、喉仏を隠すためのスカーフに好みがあることも。長く伸ばした髪を手入れする香油の、似合わない花の香りも、女のふりをするたびにすり減っていく佐一郎の姿も全部。
塗り潰されていく。低俗な画商の男のために、佐一郎の心が。絵筆にのる色彩が弔いの色に変わり、すり減った心を油彩に溶かして完成させた美しい女の絵は、佐一郎の心の投影そのものだ。
愚かな主人の振舞いを、その蛍石の瞳で見つめ続けてきた。胸元に布を詰めたコルセットを佐一郎に纏わせるたびに、汗の滲む頸に舌を這わせたいと思っていた。
擬態していたのかもしれない。久慈も、佐一郎へと向ける心を偽っていたのかもしれない。
愚かな主人に毒された。美しい翡翠に磨き上げたのは久慈だ。それでも、佐一郎の唇に紅を引くことは許されなかった。その唇の柔らかさを、長くそばに仕えてきた久慈よりも先に知ったのはあの男だ。
お前は、佐一郎を知らないくせに。その行き場のない苛立ちが嫉妬だと、久慈に教えてくれたのは画商の男だ。
「あの男はお前を否定した。本物ではない、本物になれない佐一郎、お前を否定したんだよ」
「うるさい、うるさい」
「お前が男を隠して生きてきた二年の歳月で、お前はお前の心すらも殺して。愚かで可哀想な佐一郎」
ヒック、佐一郎の声から、嗚咽が漏れた。今もきっと、押し倒した久慈を画商の男と重ねている。
あの夜を知らない、久慈は知る権利もなかったからだ。佐一郎の唇の柔らかさを知り、素肌に触れた男。この、箱の中のような狭い部屋に閉じ込めたのは、佐一郎の後悔。女の体ではない、服を脱げば当然わかることなのに。なぜ男をこの部屋に招いたのか。
ハリボテの姿で描いた夢を、幻を、現実と見誤って突き落とされる。悪夢に成り下がったあの夢から佐一郎を引き摺り出せるのは、あの夜に画商の男が捨てた権利を拾った久慈だけだ。
脳裏を、嵐の夜が支配していく。佐一郎を罵り、久慈にぶつかるように出ていった男を、許しはしなかった夜。雷鳴が空に根をはり、轟いた。画商の男の姿が消えて、久慈は屋敷に戻ったのだ。
灯りもつけない部屋で、小窓から差し込む雷の光に時折照らされる佐一郎は静かに泣いていた。あの時の美しさ、そして歪さは。久慈は決して忘れることができないだろう。
「女になりたかった。あの男に抱かれて、体と心をつなげたかった?」
「う、ぅう、う……っ……」
「腹に子を宿せれば、誰にも取られないと思った?」
「ぅる、さ……い……」
「望まれる体で、生まれたかった?」
「うるさい……!!」
この体は、心は、最初から佐一郎で縛られているというのに。
久慈の手が、佐一郎の顔を翡翠へと向けさせる。決して、目を逸らすことは許さない。佐一郎が作り上げた虚構を、愚かを、過去を、後悔として身に宿せばいい。一生、怯えて人と関わらなければいい。このせまい箱の中で、久慈だけに心を許し、久慈だけに縋ればいい。やっと回ってきたこの機を、一体誰が邪魔するというのか。
「お前はこれになりたかった。だから描いた。なりきるために、お前はキャンバスに翡翠を閉じ込めた」
──── この絵は久慈にとっての呪いだ。
「筆を取れ佐一郎。塗りつぶせ、懺悔するのはこの絵にじゃない。お前は、蔑ろにしてきたお前に謝れ」
そして、最後に縋るのは俺だけでいい。久慈は、笑みを浮かべていた。佐一郎にとってそれは、ひどく歪で、決して笑みとは言い難いものであったが。
佐一郎の足が、イーゼルに当たる。暴れる体を押さえつけるのは容易い。大きな音が立って、翡翠の絵画が油彩の花畑に堕ちていく。佐一郎の、長く伸びた黒髪が墨のように侵食した極彩色の中で、久慈の姿も全てを隠す夜を宿していた。
久慈の腕が、薄い体をキツく抱きしめた。抵抗は、もうなかった。ただ虚空を見つめ、何かに囚われたように瞳を彷徨わせる佐一郎を、久慈はただ己の欲を貫くために抱きしめたのだ。
これが、愛情を持つ優しい抱擁なら、何かが変わったのだろうか。脈打つ鼓動は早いのに、死んだように無抵抗の白い体。生きたものの匂いがした。体温が、ある。
鼻先を首筋に滑らせる。佐一郎が慰め続けた胸の尖りを指に挟むと、ようやく久慈が何をしようとしているのかを理解したようだった。
「お前は男で、女にはなれない」
「うう、ぅ……」
「あれはお前の見栄えだけを愛していた。だから、あいつは体に触れなかった」
睦言を囁くような関係ではない。本来ならば、久慈の行動は許されぬことのはずだ。けれど、そんなことはどうでも良かった。
「姉を偽り、近づいた。恋愛ごっこはお前を確かに美しくさせた。それでも……それでも、結局あの男は、お前の心を殺して出て行った」
久慈は、捨てられた佐一郎の心を拾った。ただそれだけだ。
だから、久慈は己のものにする。待ち望んでも巡ってこないだろう、そう思っていた機会だ。今度こそ、誰にも触らせるつもりなんてなかった。
「お前を追い出した親と何も変わらない。一体何を学んで活かしたのだ」
震える体を抱きしめる。体温を分け与えるように、甘やかすように優しく、背中に久慈をなじませるように手を回す。細い首筋に歯を立てた。埋め込んだ犬歯から滲む甘さに、くらくらした。
「は、ぁ……っ」
佐一郎の熱のこもった呼気が、涙が、嗚咽が耳元を掠めるたび、久慈は己が醜い化け物になっていく心地になった。こんなにも傷ついて。深く悲しんでいる。腕の中の、行き場のない捨てられた佐一郎が。あの、久慈をないもののように扱っていた佐一郎が。
「く、じっ……」
「大人しく泣け」
「ぃい、っ……!」
今、久慈を瞳に閉じ込めたのだ。
艶めく瞳の中の己の顔が、人間のままならいい。久慈はそう願った。きっと、これから身も蓋もなく獣になるだろう。佐一郎が泣き喚いても、離してはやれないだろう。
華奢な体が強張っている、怯えられている。底辺に落ちているのは久慈の方かもしれない。それでも構わなかった。この狂った関係性が崩れることはない。だから、だから────
「綺麗、だ」
静謐な部屋に、ポトリと落とされた佐一郎の言葉に、久慈は目を見張った。
細い指先が、久慈の目元をそっと撫でる。途端に、口にしたばかりの佐一郎の血の味が鮮明になった。
「……ならずっと見ていろ」
「は……っ……」
決して口付けだけはしないつもりだった。それでも、己で課した約束を違えるほど、向けられた佐一郎の言葉に堪らなくなってしまった。
心の揺らぎを佐一郎に汲まれることが恐ろしかった。気がつけば、久慈は佐一郎の一呼吸を奪うように口付けを深くしていた。
薄い唇を割り開き、舌を差し込む。佐一郎の手が久慈のジャケットに皺を寄せて、久慈の唾液を飲み込んだ。頭痛がした。熱で頭がぼやけて、まるでまどろんでいるかのような心地だった。もしかしたら、酸欠に陥っているのかもしれない。
佐一郎の薄い舌が、恐る恐る久慈の舌に答える。その熱く、滑る肉を唇で挟み甘く吸う。鼻にかかった声が聞こえて、久慈の性器は痛いほどに張り詰めた。
「ふ、っ……ぅ、く、っ……」
涙交じりの佐一郎の声に、久慈は口付けを緩める。触れた肌を通して伝わってくる佐一郎の緊張は、きっと、存在を否定された夜を重ねているからだろう。腹が立った。今こうして触れているのは久慈だというのに、佐一郎はあの画商の男と久慈が同じだと怯えている。
弱々しい抵抗が物語る、こんなにも口付けを通して男の熱を求めているというのに。まだ。
「ひ、っく」
幼い嗚咽を耳にして、久慈の手のひらが佐一郎の黒髪に差し込まれる。後頭部を支えるように、口付けの角度を変える。細い喉元が唾液を嚥下して、
空気を取り込むようにわずかに開いた口端から、飲み込みきれなかった唾液が伝う。
こんなにも舌先に感情を乗せているというのに、佐一郎には届かない。それが、久慈を惨めにさせるのだ。こんなもの、愛情なんかじゃない。愛情は、互いが同じ気持ちを差し出すことをいう。涙の味を覚えさせられた。佐一郎の、悲しい涙の味を。気がつけば互いの吐息が混じり合い、室内は乱れた呼吸音が静かに混じる。
「ぁ、ぁ、っく」
「声は我慢しなくていい」
まるで睦言のように響く言葉に、久慈は自嘲した。愛ではないと言い聞かせていたはずだろう、と。濡れた瞳に宿る弱々しい光が、再び久慈を映す。
赤くなった目元に、口付けを落としてやりたかった。その勇気を、久慈は持たないくせにだ。
佐一郎の性器を、柔らかく握り込む。芯を持ち、手の中で形を変える。確かな男の部分を収めているというのに、嫌悪感は微塵も湧いてはこなかった。手の内側で滲む先走りを塗り込むように刺激する。佐一郎の上擦った声が聞こえて、口の中に溜まった唾液を飲み下す。
「そん、なとこ……ぁっ、」
「自分で育てた場所だろう」
目の前に晒された、男にしてはぽてりとした胸の粒へと唇を寄せる。久慈の舌の動きに合わせるように粒を転がせば、佐一郎の薄い胸は香るように色づいていく。
堪えていたのだろう濡れた声は、嗚咽交じりの嬌声へと変わっていた。脳が焼き切れそうだった。佐一郎のこの声を、あの男に聞かせていたかもしれないと思うだけで。久慈のはらわたは煮えくりかえりそうだった。
薄い手のひらが久慈の腕に添えられる。向けられた瞳に、もう怯えは感じられなかった。
「俺に面影を重ねるな」
「か、さねてな……い……」
「ならいい」
悲しそうに顔を歪める、その心を知りたかった。背けられた顔、佐一郎の耳は真っ赤に染め上がっていた。触れたいと思った。手袋越しではなく、その滑らかな素肌に触れたいと。
久慈にとっての手袋は、己への牽制でもあった。触れられぬ存在として佐一郎をおくことで、抱え込んでいた思慕を殺していたのかもしれない。それを、久慈は取り払う。晒された久慈の無骨な手のひらは、そっと佐一郎の薄い胸に置かれた。
「な、んで……」
「黙れ」
その問いかけに応える勇気はまだない。だからこそ久慈は、指先で伝える。汗でしっとりとした肌は手のひらに吸い付き、骨ばった薄い体に触れる。柔らかな太腿の肉が久慈の手首を挟み、薄い腹が震えた。直に握りしめた佐一郎の性器が熱をおび、久慈の手の内側で遂情する。
声のない悲鳴をあげた佐一郎の足がくたりと床に伸びて、精液は久慈の手を伝うように尻の合間へと流れていった。
「お前は急所で遂情するのか」
「っはぁ、……は……っ……」
呼吸に混じる、微かな甘い声が耳に毒だった。佐一郎の精液で手を濡らしたまま、久慈はまろい頬に触れる。濡れた佐一郎の性器が、三揃の服を汚すのも厭わぬまま身を寄せた。
だらしなく開かれた足を腰で押し開くように持ち上げる。薄い腹を手のひらで覆うと、久慈はグッ、と押し込んだ。女の腹ではないそこを、今から雌にするために。
「あ、あぁ……っ‼︎」
「今からお前を抱く」
「ぅ、うそ、だ、だ、抱けるわけ、ない……っ」
信じられないと言った表情を前に、久慈はネクタイを緩めた。
出来る訳が無いと宣う佐一郎の言葉は、久慈にとっては笑い話でしかない。こんなにも佐一郎の痴態に当てられたというのにだ。腹が立って、精液の味を教え込むように指先を小さな口に押し込んだ。
「ならそう思っていろ」
いつまでも、その瞳を揺らして怯えていればいい。
猛ったそこを、佐一郎の尻へと押しつける。細い足に力が入ったことを確認すると、久慈は見せつけるようにネクタイを解いた。ここから先は、もう佐一郎の執事ではないと示すように。
「ふ、んん……ん、んっ」
「ダメだ、目を背けるな。誰がお前を抱くのかを、覚えろ」
「ひ、ゃだ……」
精液の苦味を、舌に覚えさせる。骨ばった体を隠すように恥じらう佐一郎を押さえつけながら、久慈は教え込むように何度も唇を重ねた。親指の先を押し返すように主張する胸の突起は、押し潰すたびに慎ましい穴を収縮させる。
膨らんでしまった、はしたない互いの性器を布ごしに押し付け合う。眩暈がするようなもどかしい性感に、久慈の吐息にも熱が籠る。
いやらしい、いやらしい体だ。薄くて、骨張っていて、白い。女とは真逆の見窄らしい姿。久慈の腰を締め付ける足も、遠慮がちに服を握る小さな手も、全部。全部演技だというのだろうか。
声が聞きたい。端なく猫のようになく佐一郎の声が。
「は、ぁ……、おい……」
「ん、ふ……ちゅ、は……っ」
「っ……はあ、」
濡れた舌先に吸い付く。佐一郎の肉の味を舐るように堪能する。久慈のシャツがじわりと熱を広げて、佐一郎の数度目の遂情が性感を煽る。たまらなかった。余裕が、なかった。
舌と共に口内をいじめていた指先を引き抜き、久慈は己の股座へと手を伸ばした。ボトムスの布地を痛いほどに押し上げる。指先が触れたジッパーでさえ、熱を帯びている気がした。
「目を背けるな。誰がお前を抱くのか覚えろ」
「い、嫌だ……っは、恥ずかし、い」
「……お前、俺に恥じらうのか」
久慈の言葉に、佐一郎の目が見開いた。その反応は、ただ目の前の雄を喜ばせるだけだというのに。
細い首筋に歯をあてる。筋に沿って舌を這わせて、耳朶を喰む。久慈は己の猛った性器を外気に晒した。熱を帯び、先走りを垂らす太い雄の証を。指先で拭い取った先走りを佐一郎の尻へと塗りこむ。ここを今から久慈の形にするという想像だけで、果ててしまいそうだった。
「蔑ろにした俺に、恥じらうのか。そうか」
「ひ、んく……っ……」
「気分がいいな、はは」
楽しい。まるで、悪い薬を直接脳に打ち込まれた気分だった。指先で、縦に伸ばすように穴を刺激する。排泄器官としての役割を持つこの場所で、佐一郎は女になる。そこは、まだなんの手も加えられていないようだった。
濡れた久慈の指がゆっくりと侵入してくる。強張った身体を窘められるように、肩口に歯を立てる。佐一郎は、女のように身をすくませた。
「……ここは自分で慰めなかったのか」
「し、ない、汚い、とこだから」
「抱かれたかったのにか」
「ちが、っ……お、ぉれは、そうじゃなくて……」
言葉を詰まらせる姿に、久慈は目を細めた。その先を想像しなかったわけではないだろう。女の経験もないくせに……。とでかけた嫌味は、佐一郎の言葉によって飲み込まれた。
「あきらめた、のに……お前、がっ……」
それは、どう言う意味だと思った。
「……そうか、わかった」
「ぃあ、あっゃめ、やめて、っ」
一体、どんな感情で口にしているのかとさえ思った。動揺を悟られたくなくて、震える佐一郎の腹に唇を寄せるように上体を下げる。佐一郎はずるい。嫌だと言うくせに、期待を見せる。久慈の理性で塗り固めた欲を容易く溶かし、穿り出そうとしてくる。
まるで子供が無邪気に穴を掘るように、久慈の取り繕う内側を言葉一つで揺るがす。上擦った声がした。目の奥が痛い。固く張り詰めた佐一郎の性器と、震える柔らかな肉。久慈の指先を飲み込んだ蕾が、呼吸に合わせて収縮する。
汗と、精液のにおい。佐一郎が雄である確かな証明。同じ場所を固くして、なにも実らない不毛な行為に興じている。
油彩の花弁に塗れたテイルコートを脱いで、執事からただの雄に成り下がる。視界の端に映した佐一郎は、ぼたぼたと涙をこぼしていた。
「く、じ……っぃ、いた、い……っ」
「佐一郎」
「ひ、ぃ……っ」
「……待っていろ」
久慈の鼻先が、佐一郎の性器の根本へと埋まるように袋を口に含む。甘く吸い、溢れた先走りを追いかけるように舌先で受け止める。脈打つ血管の一本を、弾力を確かめるように舌先で押してやれば、白濁が端ない音を立てて溢れ出す。
「ぃ、っ……い、ぃっ、た、っも、く、口、やめ、っ」
「まだだ」
「ぃや、あっ」
「まだ、お前は女になっていない」
きっと、久慈の言葉は届いていないだろう。それでも、佐一郎の体は求めていた快楽を喜ぶようにほぐれていった。本人の意思の聞かない、かわいそうな体。プラムのように張り詰めた先端を口に含み、ほのかな苦味のある残滓を口に含む。柔らかな尻を掴むようにして、腰を持ち上げる。情けなく勃ち上がった性器が、薄い腹を打ちつけた。
「な、に」
「……見ていろ」
「ぁ、あ、ああ、あ、そ、こ……っ」
久慈は舌先でこじ開けた。佐一郎ですら知らない、蕾の内側を。あれほどまでに指を締め付けていた窄まりは、久慈の舌を受け入れた。素直に肉が蠢いて奥まで招くのだ。口に含んだ精液を舌に纏わせ舐る。背徳的な現実に、晒された久慈の性器はだらしなく先走りをこぼしていた。
「く、じ……くじ、っ……くじ、ぃ……っ……嫌だ、あ、い…ぃい、……いい、っ……あ、いや、あ……っ」
「は……っ」
「ぁあ、あ、ぁ……っンっ……」
柔らかな佐一郎の太腿に挟まれる。とろめく肉が深い口付けに応えるように舌を締め付けて、汗と精液の混じりあう匂いが濃くなった。佐一郎は達していた。久慈に尻の内側を舐められて。雌のように達したのだ。
理性と性欲の間で溺れていた。舌で丹念にほぐされた中へと、久慈はゆっくりと指を含ませる。静かな部屋がうるさい。耳障りな音が粗い息遣いだと知って、久慈は笑いそうになった。
熱に浮かされているのは、久慈もまた同じだ。触れた薄い背中に滑りを感じて目を向ければ、久慈の性器から放たれた精液が白い背中を汚していた。あの時。佐一郎の肉が久慈の舌を締め付けた時に果てたのだろう。握りしめた己の性器はまだ熱く、芯を持っていた。
細い足を肩に担ぎ上げる。掴んだ柔らかな太腿に小さな手が触れて、蛍石の瞳が佐一郎を捉えた。
「あ……、……っ」
佐一郎の目は、窺っていた。久慈の表情を。
遠慮がちに握られた指に、奥歯を噛み締める。縋る勇気も持たないくせに、また背を向けられると思っている。
佐一郎の肉を舐り、無様に射精した男を、まだ疑っている。
「犯されたみたいな顔をするな」
「く、じ」
「お前はきちんと、女にされる」
きちんと、佐一郎は女だった。久慈の目の前では雌になれていた。その言葉の真意が伝わったかはわからない、けれど、佐一郎の浮かべた笑みを忘れることはできないだろう。
細い足を担ぎあげ、腰を引き寄せる。もう、抵抗はなかった。性器をあてがった蕾は、先端へ深い口付けを贈るように飲み込んでいった。
見つめていた。久慈は、己の白濁に塗れた性器がゆっくりと佐一郎の腹へと飲み込まれる様を、ただ黙って見つめていた。喉の渇きで、己の体温の上昇を知る。今、まともに表情を取り繕えているのだろうか。
佐一郎の表情は最初とは変わっていた。しかめていた眉が緩み、半開きの口からは赤い舌をのぞかせる。まどろんでいるかのような表情が、久慈を安心させた。
(抱いているのは画商の男ではない。俺だ)
「……ぅく、っ」
気をやってしまいそうなほど、気持ちが良かった。久慈が今まで抱いてきた女よりも、佐一郎の腹が一番心地よかった。軟い肉が絡みつき、粘液が空気を取り込んで卑猥な音を立てる。まるであつらえたかのような仕上がりは、きっと佐一郎の生まれ持った才能だとさえ思った。
「ふぁ、あ……ぁ、はい、っで、ゔ……っ」
「痛いか」
「ぁー……あ、あ、っ……あ、づ……っ」
「は……、……痛い、わけではなさそうだ……」
きっと、声が届いていないわけではない。久慈は腰を押し付けるように、固く張り詰めた前立腺を何度も摩擦する。柔らかな佐一郎の袋があたり、ヌルついた先端が何度も久慈の腹を汚す。小さな手はかろうじて止まっていたシャツのボタンを飛ばすほどにキツく生地を握りしめ、必死で性感を追いかけている。
「ぁ、い、ぃや、ら……もお、ゎ、かんぁ……っ……」
「何がわからない。この状況で、お前ができることは一つだけなのにか」
「ぅ、ぅえ……っく、ふ、んン……っ……」
「こうしてゆすると、心地いい……」
「は、ぁっく……っ」
ただ本能に任せていればいい。何も考えずに、久慈の背中に腕を回していればいい。
下手くそな呼吸を補助するように、久慈は唇を重ねる。甘く啄み、溢れた唾液を舐めとった。佐一郎の舌が求めるように伸ばされて、背中に回った腕に力が入る。それだけで久慈は、頭に血が登ってしまう。
柔らかな尻に腰を打ちつける。久慈の性器を追いかけるように絡みつくとろけた肉も、抱き込んだ体から滲み出す汗も、互いの体に広がる彩りも。全部が全部、非現実的だ。きっと佐一郎は、慰めとでも思っているのだろう。
深く繋がりたくて、骨盤を開くように腰を振り下ろす。体の傍で細い足が暴れて、久慈の腹にびちゃびちゃと精液がかかる。逃げようとする細い腰を掴んで引き寄せれば、久慈の性器に鋭い刺激が走った。
「ぁ、ぐ……っ」
「ひ、っ──── ……‼︎」
「ン……っ……っは、……」
肉の輪を抜けた感触がした。より一層狭い窄まりに、久慈の先端がぴたりとはまっている。目の前が明滅する。額から汗が吹き出し、腰が震えた。肩で息をして整えるだけで必死だった。眩暈のような酩酊感が襲って、腰を掴む手に思わず力が入る。出ている気がする。今、耐えきれないまま、久慈はまさしく佐一郎の狭いそこへと精液を吐き出していた。
「な、んだ……ここ……っ」
「ゔ、ごかぁ……い、れ……っ」
「……佐一郎」
「っぁ……し、し、んだ……から、ぁ……っ」
涙と涎と鼻水で顔を濡らす、顔を真っ赤にして死んだと虚に呟く口元に、久慈はそっと触れた。
「誰が死んだ」
「ひ、っ……ふ、ぃ……っひ、ひす、っぃ、っ」
「なら、お前は誰に抱かれている」
「っぁあ、あ……っゅずら、ない、でっ……あ、あっあっ」
「佐一郎」
溢れる唾液を受け止める指先は、優しかった。久慈の大きな手のひらが佐一郎の頬を撫でる。濡れた瞳に吸い寄せられるように唇を寄せると、久慈はベロリと佐一郎の目を舐めた。
「ひ、っ……ぁ……っ」
「俺に、命令できると思っているのか」
「ぁ、ご……ごぇ、あ……っさ、っ」
「っ……今、お前を抱いているのは」
佐一郎の震えを抑え込むように抱きしめた。久慈の腹に、暖かな水流が当たっている。腕の中の強張った体が嗚咽を漏らし、久慈のシャツを握りしめる手がブルブルと震えていた。
「ぅう、う、ぅ………あ……っ、あぁ、あ……っ」
「……お前は……」
「ひ、っく……っ、く、じ……っ、くじ、だ……っう、ぅう、うっ」
「…………」
失禁は、佐一郎の腰の下へ広がっていく。微かな水音を立てながら、佐一郎は子供のように泣きながら久慈を呼ぶ。この、心の糸を切ったのは久慈だ。
華奢な体を抱え上げる。油彩が張り付く白い背中を支えると、結合部からは久慈の掃き出した精液が漏れた。
「そうだ、よくできた」
「あ、ぁあ、あっま、っへ……っ」
「またない」
「お、ぁ……っ」
尻を鷲掴むように持ち上げた体を、再び性器の上に落とす。久慈の胡座に収まった佐一郎は、なすすべもなく揺さぶられる。久慈の耳元で苦しそうな声が聞こえて、うっとりと目を細めた。
酸欠のように顔を真っ赤にして、だらしなく泣いている顔が見たかった。立場の縛りが歪んだ欲から佐一郎を守っていたのに、今はこんなにも近い。
狭い肉を穿ち、佐一郎の腹を膨らませる。失禁は久慈の腹とスラックスを濡らし、性的な匂いを部屋に充満させる。
揮発性油の独特な匂いと、欲の匂いが入り混じる。聞くに耐えない音を立てながら、久慈は何度も佐一郎の体を腰の上で跳ねさせる。強弱をつけて、時折押し付けるように。濡れた佐一郎の顔に唇をよせ、鼻水を舐め取り、深く口付ける。下と上とで深く繋がった華奢な体の主導権を握り、何度も描いてきた欲をなぞるように腰を使う。
こんなに馬鹿みたいに腰を振り、無駄な精液を男の腹に流し込む。滑稽で、ひどく愚かな行為だ。
「ぁ、っン、んん、ぃ、い……っいい、ぃ、ぐ、っぃぎゅ、っ」
「そうだ、上手にイって見せろ、っ……」
「ぅああ、ぁっぐっ、ぅえ、えっあ、っい、っ…………‼︎」
「は、っ……」
一層強くこじ開ける。排泄感を伴った精液が久慈の性器から吹き出して、佐一郎の内側をびちゃびちゃと濡らす。目の焦点が合わなくなりそうなくらい、気持ちがいい。佐一郎の吐瀉物を背中で受け止めて、久慈のシャツは二度と着れなくなった。
久慈は何度も佐一郎を貪った。描いた翡翠の上で潮を吹かせ、嘔吐させた。何度も穿った佐一郎の蕾は馬鹿になり、性器を引き抜く頃にはポカリと口を開けて呼吸を繰り返していた。
二人揃って、現実と妄想の境目を行き来する夜を共にした。久慈は、物理的に佐一郎を女にしたのだ。描くほど恋焦がれていた、女の佐一郎にしてやった。
油臭い部屋に、生々しい精液の匂いが混じる。二人分の汗と、そして吐瀉物の匂い。獣の巣穴と同じような部屋の中へと、早朝の光がゆっくりと侵食していた。
爽やかな朝とは程遠い。骨身も心も軋む中、久慈は佐一郎の体液に塗れたテイルコートから煙草を取り出し燻らせる。
「癪に触った」
本音を吐露した口端が、窘めるようにちくりと傷んだ。佐一郎の下手な口付けが傷をつけた場所だ。それでも、久慈は気にしてはいなかった。
「お前が、俺をいないものとして扱うのが癪に触った。一人で生きているような顔をするのも嫌だった」
「だから、だいたの」
「ああ、抱いた。犯したのではなく」
「……そう」
久慈の指先が、佐一郎の首筋に散らした歯型をなぞる。
犯した、ではなく。抱いた。佐一郎の口から漏れた言葉を耳にして、久慈は満足そうに笑みを浮かべる。その顔は、今まで佐一郎が見てきた久慈の中で一番美しく、そしてあどけなさを滲ませていた。
手のひらが、佐一郎の頬を撫でて引き寄せる。無抵抗なのは抱き潰したからだろうか。久慈はそんなことを思ったが、考えることをやめた。
同じ香りを纏い、同じ色を纏っている。もし佐一郎がこの場面を描くのなら、一体どんな名をつけるのだろう。細い腕が久慈の肌に触れるように背中に回る。
「佐一郎、次は一体何を描く」
小さな窓から差し込んだ光が、額縁のように二人を閉じ込めていた。
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