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こっち向いて、運命。ー半神騎士と猪突猛進男子が幸せになるまでのお話ー
ナナシがエルマーにお仕置きをされる話***
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※特殊性癖有り
※リクエスト作品
※残酷描写有り
※背後注意
「うやぁあああぁあえるうぅーー‼︎」
情けないナナシの悲鳴が、森の中に響いた。
普段なら受けないはずの回収依頼のために、ナナシと共に森を訪れたのがいけないかった。要するに気を抜いていたのだ。まさか、下級の植物魔物に囚われるわけがないと鷹を括っていた。
「なんでお前はいっつもわんぱくしちまうんだーー‼︎」
「ふぇええぇーー……‼︎」
こめかみに青筋を浮かばせたエルマーが怒鳴る。それも無理はない、ついてくるのなら、ナナシはいい子にしていなければいけなかったからだ。しかし好奇心旺盛なナナシがいい子にできたのは、森に入ってからの最初の三十分程度。二人に構ってもらおうとするようについてきた触手型の魔物が気になって、つい呑気に触手の一本に触れてしまった。そうして冒頭に戻るわけである。
細い腰に絡みつくように、幾つもの膨らみをつけた触手がナナシを持ち上げる。植物魔物の中でも特に弱い。故に、そこまで大きな危険はない。しかし、触手に遊ばれるように絡め取られたナナシを前に、エルマーは手を出しあぐねていた。
「くっそエロい」
「ぅわぁあぁーーん‼︎」
苛立ちと欲望がないまぜになったエルマーの顔は、露骨にキレていた。人のものに手を出すなという主張と、滅多にみられないだろうナナシの痴態をもう少し見ていたいという、しょうもない男の性がぶつかり合っているのだ。
「ぁうう……っ」
「はっ」
「ぇ、える、ぅ」
動きやすい格好で連れてきたのもまずかった。ナナシの着ていたチュニックの隙間から、触手が入り込む。服の下を弄るように細い体を締め付けるのだ。
弱い魔物故の生きる知恵か、触手には催淫系の分泌液で敵を腑抜けにさせる特徴があった。エルマーの目の前で、触手から分泌された粘液がナナシの服を濡らす。細いながら肉付きのいい足へと絡まると、エルマーへと見せつけるようにナナシの両足を割ひらく。
「わかってやがる」
「た、たすけっえ、えるぅ‼︎」
「お前まじで、ああくそ……なんでも博愛精神出すなって」
「わ、わかんぁ……きゅうぅっ」
何かを引きずる音がして、魔物の本体である蕾がゆっくりと頭をもたげた。サジの操るシンディのような見た目のそれは、ナナシの体へとゆっくり近づいた。
体の色も相まって、大きな爬虫類に懐かれているようにも見える。粘液を塗り込まれるように、ナナシの頬へと擦り寄ってくる。敵意はないのだろう、本当に遊んでいるだけなのかもしれない。
エルマーは危険度がないと判断すると、ナナシを絡め取る触手の根元を叩いた。
「遊んでんのかも知んねえけど、図体考えろよてめえ。あとナナシが苦しそうだから程々にしてくれ」
「ひぃん……」
呆れたように魔物へと語りかける。目の前でエルマーが宥めてくれているが、ナナシとしては一刻も早く下ろしてもらいたいのが現状だった。
先ほどから、実を連ねたような触手が胸元を弄るたびに体が反応してしまう。分泌物が作用しているのだろうか。連なりの隙間に引っ掛けるように胸の突起を刺激され、つい濡れた吐息をこぼしてしまう。
エルマーに愛撫されるのとは、また違う感覚が身を苛んでいる。敏感に仕立て上げられた体は、甘い締め付けだけでも素直になってしまうのだ。
きっと、こんなはしたない気持ちになっているのをエルマーにバレてしまったら、ナナシは怒られてしまうかもしれない。じわりと涙が滲んで、大きなお耳がションモリと下がる。
好意を示してくる魔物には悪いが、早く下ろして欲しかった。
「……ナナシ、お前もしかしなくても感じてないか」
「ひぅ、っ」
いつもよりも暗いエルマーの声が、ナナシの耳に届いた。金色のお目目を丸くして見下ろせば、仄暗い闇を孕むような瞳で見つめ返される。もしかしたら、怒らせたのだろうか。じわりと涙が滲んで、誤魔化すように首を振る。
しかし、体は正直だった。
「ぁう、うぅ……ん……っ」
「お前……」
裾の広いボトムスから、足を伝って触手が侵入する。先端が下着の中へと入り込むと、ナナシの尾っぽがビョンと振り上げられた。
「あ、っ……」
「…………」
「ぁ、ゃあ、あ、あっ」
エルマーの顔が、わかりやすく怒っている。それなのに、触手はナナシの願いを聞き届けない。体で遊ぶように離してはくれない。小ぶりな袋を持ち上げるように蠢いて、蕾に実の一つを押し付けられる。金色の瞳が見開かれて、かふりと吐息が漏れた。エルマーの頬にナナシの体液がぽたりと落ちた瞬間、恐ろしいほどの魔力が一気に膨らんだ。
ナナシの耳に、魔物の断末魔の悲鳴が響いた瞬間。触手によって弄ばれていた体は解放された。重力に引き寄せられるように落ちる体を、エルマーが危なげなく受け止める。ぐったりとした体を抱えたまま、底の厚いエルマーのブーツが魔物の頭を踏み潰した。
「程々にしろって言ったろう、くそが」
「ひっく……ふぅ、うっ……」
「ナナシ、お前には危機感を教えなきゃなんねえなあ」
「ぇ、える、ま……っ」
エルマーによって、無理やり引き抜かれたのだろう魔物の根が地べたに晒され、その頭は原型も留めぬほどに潰されていた。苛立ちがしっかりと現れている。ナナシは泣きそうな顔でエルマーを見上げる。いつもの優しい金色が、鋭く光っている。
悪い子にしたから、エルマーが怒ったんだ。ヒック、と情けない嗚咽が漏れて、弱々しく肩口に顔を埋める。
体が滑りを纏っていて気持ちが悪い。だから、ナナシは早くさっぱりとしたかった。きっと、エルマーはお家に帰るだろう。そう思っていたのに、ナナシは魔物の死骸が見えるその場所で降ろされた。
「悪いけど……まぁだ納得いってねえんだあ。後でクソほど文句聞くから、今は我慢してくれえ」
「へ、んぅ、うっ……」
地べたに足をついたばかりのナナシの体を、エルマーは腰を支えるように地べたへと組み敷いた。着ていた外套がナナシの背中を優しく包みこむ。文句を許さないとでもいうように深く口付けられた舌の熱さが、ナナシの中で燻っていた欲に火を灯した。
「っぃや、ら……お、おんも、だよ、ぉ……っ」
「人の雌を目の前で好き勝手されて……っ、許容できる雄がいるか……? ナナシ、結界張れ。認識阻害重ねがけすっから」
「っゃ……」
「やれ、今すぐ」
エルマーの金色が、獣のようにギラリと光っている。怖い目をしているのに、仕上げられたナナシははしたなく胸を疼かせてしまうから始末に追えない。
結局、ナナシがエルマーのいうことを聞かないことなんてないのだ。行き場のない怒りの出どころも、ナナシのせいなのだと理解しているからというのもある。そんな余裕のないエルマーが少しだけ可愛いとか思ってしまったのだから、もうナナシの負けであった。
「ん……んく、……ぅ、う……っ」
「は……、もっと口開けろ。……舌よこせ」
「ぁ、んん……っぇ、う……っ」
言われるままに差し出した舌に吸いつかれる。唾液を絡め、はしたない水音を立てながらの獣のような口付け。魔物によって、催淫作用のある粘液を塗りたくられた体へと触れるのだ。エルマーもまた、ナナシのようにいつもの余裕をなくしていた。
結界の上から、認識阻害術を重ねがけすることはできた。しかし、二人から見える景色は何も変わらないのだ。野外で、しかも魔物の死骸の隣という最低な環境での行為。
余裕をなくしたエルマーが、細い首筋に吸い付きながらベルトを外す。その金属のすれあう音を耳にするだけで、ナナシの後ろは疼いてしまう。
無骨な手が、引き抜いたベルトを地べたに投げ捨てる。味蕾を摩擦するような、脳みそがバカになる口付けを交わしながら、エルマーは猛った性器を布越しに押し付けた。
「どこ触られた……なあ、言って。むかつきすぎて頭痛えの」
「お、おむね……っ」
「どんなふうに? お前は何されて、この小せえのたたせたんだよ」
「ぁう……っ」
エルマーの唇が、胸の突起へと運ばれる。歯で先端を掠めるように刺激されたかと思えば、突起を唇で挟むようにしてねぶられる。サディンの授乳で膨らんでしまったそこは、しっかりと敏感になっていた。
魔物の粘液をこそげとるように舌を這わされ、甘く吸いつかれる。刺激が強くて、エルマーの唇を遮るように指先を這わせれば、がじりと甘く噛まれる。
「嫌だ、邪魔すんな」
「っふ……ゃ……か、かむ、の……ぃた、い」
「……じゃあ、お前はどうして欲しい」
薄い胸元に鼻先を埋めて、エルマーが見つめてくる。熱で瞳が濡れていて、興奮を如実に表している。その顔が、可愛い。ナナシは小さな手のひらでエルマーの頬を包むと、もじりと膝を擦り合わせた。
「ゃ……ゃさし、くして……」
「ん」
「い、いぱい……さわってほし」
「どこを」
金色に愉悦が混じる。エルマーが、楽しそうな顔をしているのだ。ナナシの体で楽しくなっているのは可愛い。それを口にする余裕はないのだけれど。
「ち……ちん、ちん……」
「そこも触られた?」
「う、ぅ……あ、っ」
「なら、愛でてやんなきゃなあ……」
きちんと言えたことを褒めるように、鼻の頭に口付けをされる。厚みのある唇が、ナナシの薄いお腹を甘やかすように啄んだ。膨らんでしまったそこへと口付けられて、つい腰が浮いてしまう。無意識の期待が体に現れてしまったナナシの雄の部分を前に、エルマーは小さく笑った。
無骨な手が、ナナシのボトムスを脱がせる。甘い香りと共に、熱を持った小ぶりな性器がふるりと外気に晒される。先端にかけて薄く色づいた性器は蜜を漏らして、エルマーを誘う。エルマーの手で隠れてしまうくらいの大きさのそれをそっと口に含むと、細い腰がひくんと跳ねる。
「ひゃ……んく、っぁ、あっ」
白い太腿がエルマーの顔を挟む。熱で体を火照らせたナナシの微かな汗の匂いと、甘い香りに誘われるように深く咥え込む。
熱い口内で、性器が溶けてしまうかと思った。幹全体に唾液を絡められ、時折強く吸いつかれるのだ。その度に背筋を鋭い快感が走り、ナナシは蕾を収縮させる。
エルマーの唾液が、袋を伝って会陰を濡らす。たったそれだけの微かな刺激だけでも声が漏れてしまう。
子猫が泣くような甘い声に、エルマーの性器に血が集まった。
「は、ぅ……も、い……い、いく、ぅ……」
「ん、……」
「きゅ……ぅう、っ」
泣きそうな濡れた声と共に口内を満たしたナナシの精を、喉を鳴らして飲み込んだ。柔らかな尻を掴んで持ち上げる。割開いた先で、赤く腫れてひくつくそこに残滓が吸い込まれていった。
無防備に身を投げ出し、薄い胸を上下させるナナシを前に、エルマーはゆっくりと蕾に舌を這わせる。
「そ、そこ……ゃ……ら、っ」
「やだじゃねえ」
「ひゃ、やら、ぁあ、あっ」
エルマーの舌が、ナナシの目の前でゆっくりと中を暴いていく。熱く濡れた舌の感触が、背筋を泡立たせる。これがお仕置きだと分かっていても、恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。小さな手は現実から目を背けるように視界を隠す。それでも、エルマーが許してくれる気配はなかった。
ぐぷ、と聞くに耐えない水音を、ナナシの敏感な聴覚が拾う。どれくらいほぐされていたのかはわからない。蕾は舐られ、愛でられたおかげかしっかりとひくついていた。赤い媚肉が、誘うように呼吸をくり返している。ぽてりと腫れたそこは、痺れてしまって感覚がない。薄い腹には何度も散らされた精が、形のいいヘソに溜まっていた。
エルマーの濡れた舌と、ナナシの蕾が唾液の糸で繋がった。大きな手のひらに腰を鷲掴まれ、簡単に引き寄せられる。
ナナシの足を抱え上げるエルマーの姿を前に、微かに期待を抱くとろけた目を向けた。しかし、あてがわれたものは待ち望んでいたものではなかった。
「ぅ……あゃ……な、なに、ぃ……?」
「なんだと思う」
つるりとしたものが押し付けられている。エルマーの性器なら、もっと熱いはずだった。恐る恐る、ナナシは確かめるように視線を向けた。金色の濡れた瞳が写したもの。それは、エルマーが倒した魔物の触手の一本であった。
「ぅ、うあ……っゃ、やあ……やだあ……っ」
「俺のよりほせえから、痛くねえよ」
「ゃ、やああ、え、える、ま……、あ、あっン」
「一個入った。ほら、まだいけんだろう」
ナナシを抱き込むようにして覆い被さるエルマーの指が、一つずつ連なる実を押し込んでいく。広がっては飲み込んでいく蕾の動きが、無意識の収縮に変わるまで時間はかからなかった。エルマーの腰を挟むように開かれた細い足が、一つまた一つと種を腹に収めるたびに跳ね上がる。
宥めるように施される口付けに答えながら、ナナシの腹で種子を温める。お腹の中を不規則にコツコツと刺激されて、頭がどうにかなってしまいそうだった。
「よだれ、すげえな」
「ぁ、あう……っ……お、ぉな、か……へ、へん……っ」
「気持ちい?」
「ぁ……き……きも、ひ……」
涙と涎で顔はぐちゃぐちゃだ。エルマーはナナシの口端から垂れる唾液を舐め上げては甘やかすように口付ける。性器は張り詰め痛いのに、それでもデロデロに溶けるナナシを見るのが楽しくて仕方がない。
必死で縋りついてくる小さな手が可愛い。ナナシの一挙手一投足が、全部可愛くて仕方がない。大きな手のひらで薄い腹に触れる。サディンが入っていた腹に、今は違うものが入っている。手で軽く押してやれば、どこまで入り込んでいるかがわかる。子宮までは許していない。その手前でナナシを溶かす役割だけを許したのだ。
「腹で温められて、発芽でもすんのかな」
「ぅ……ゆ……っ……」
「そうなる前に掻き出してやる。ふは、お前溶けちまっててかぁわい……」
欲の孕んだ瞳でうっとりと見つめるエルマーに、ナナシの尾は本能的にパタパタと揺れる。頭はバカになって、気持ちが良くて脳みそが溶けきっているというのに。上手にエルマーを喜ばせることができるのだ。
ファスナーが擦れ合う音がして、エルマーの手が猛った性器を取り出した。連なる種子で膨らんだナナシのお腹へと、ずしりと思いそれがのせられる。小さな手のひらが伸ばされるのを好きにさせながら、エルマーはナナシの細い首筋にいくつもの痕を散らす。
「はあ……ヘロヘロになってかわいいのな……」
「え、える、の……も、ほし……」
「ほしいんか、ああ……どうすっかなあ……」
くつくつと笑う時のエルマーは、だいたいナナシに意地悪をする。仕込まれた体は、好きにしてとでもいうように差し出されている。ナナシの腕が、ゆるゆるとエルマーの背中に回った。厚みのある唇をぺしょりと舐めるのは、ご機嫌伺いも兼ねていた。
「ぅ、う?」
「なあ、お前はどこまで我慢できんだあ」
「あ、あっ」
エルマーの性器が、触手が入ったままの蕾へとあてがわれた。一緒になんて、入るはずもない。それなのに、ナナシの返事なんて必要ないと言わんばかりに唇を優しく啄まれて、また頭が溶けていく。
小さな手が、エルマーの外套にシワを作る。啄むだけの口付けが気持ちよくて、力が抜けないようにするのに必死だったのだ。時折、くすぐるように差し込まれる舌に応える。頭を撫でられて、熱い吐息の交換を繰り返した。小さな圧迫感を感じて、エルマーの背に回した手に力が入った。押し開かれるように入ってきたエルマーの熱い性器に、ナナシのお腹がひくんと痙攣する。
「ぁく、ぅ、う……っ……ぅや、ぁあ、あ……っ……」
「っあーー……、すげ、ゴリゴリって……っきっつ……」
「く、ぅし……っえ、えぅ、こ、こぁ、い……っ」
「ン……こうすりゃ、抜けっから……」
「ひ、ぃあ……っ」
エルマーの性器が押し込まれて、ゆっくりと腰を引かれる。緩やかな抽挿によって、ナナシの腹の中で種子が動く。前立腺を押しつぶし、エルマーの性器までを圧迫する。腰をゆっくりと動かすたびに、蕾の外へと逃げようとする。それが、背筋を震えさせるのだ。
種だって頭の中で分かっているはずなのに、排泄感にも似たそれが羞恥を煽る。薄い手のひらが拒むようにエルマーの髪を引くと、余計にキツく抱き込まれて逃がしてくれない。
「ぃ、いゃあ、あっあ、え、えぅ、ゃ、やらっ、あ、あっも、もぇう、うぁ、ああっああぁンっ」
「すっげ、中うねってる……っ、は、どうなってんだ、これ……っ」
「ゃ、めっ、ゃめ、へ……っと、とま、ってぇ、えっいゃあ、あっ」
「い、や、だ」
「ひ、っぅ……ぁあ、あっ、ああ、ぁ、ゃら、あ、ぁっ」
しがみつく力を強める。ナナシの悲鳴混じりの声が、エルマーの嗜虐心を煽るのだ。大きな獣の耳に舌を這わせる。へちょりと下がった耳の根元へと歯を立てると、熱い胎内が再びうねる。
エルマーの腹筋を濡らすように、粘度の高い精液が散らされる。赤い舌をだらしなく見せたまま、涙と唾液でgぐずぐずになったナナシが下手くそに呼吸をしている。
「イクなら、言わねえと。なあ」
「ひ、ぃあ、あっく、イ、ぃちゃ、ぁ、あうう……っ」
「気持ちいなら、なんていうんだ」
「ぁ、も……っ、もっ、と……っお、おぐ、ほし、ぃ、っ」
泣きそうな濡れた声がエルマーを煽る。媚肉はエルマーの性器を上手に高めていくのだ。腰を押し付けるように進めれば、ぶぽ、と情けない音を立てて種子が飛び出る。粘液を纏いながら、エルマーの抜き差しで吐き出されていく種子の動きが、ナナシの膀胱を圧迫する。
「ぇ、える、ぁ……っ、も、もぇ、う……っ」
「ああ、また一個でたなあ……ほら、何が出るんだ。種か?」
「しっ、こっ……も、、でひゃ、うぅ……っ」
エルマーの性器が、先程から子宮口を摩擦するように先端を擦り付けるのだ。つるりとして、狭いナナシの奥の部屋。そこが何度もエルマーの先端を飲み込もうと口を開く。強く腰を打ちつけたら、きっと気持ちがいいのだろう。エルマーは熱に浮かされた思考のまま、ナナシの足を抱え直す。細い腰を引き寄せると、蕾から溢れた種子の連なりを掴んだ。
「邪魔くせ、……ナナシ、力抜いてな」
「ぃ、いゃら……え、ぇる、ゃだ……っま、まっへ、ま、まっ……ぁ、ああ、あああーーーー‼︎」
「ぐ、……っ」
ナナシの中に入れたそれを、エルマーが一気に引き抜いた。いくつもの連なりが勢いよく動くと同時に、胎内を馴染みのない刺激が支配する。ナナシの細い足は跳ね上がり、エルマーの腹目掛けて暖かな水を吐き出した。
薄桃色の先端から、ぱちゃぱちゃと漏らしている。気絶するように上半身を投げ出したナナシは、気がついているのだろうか。
腹筋に力を入れて、射精を堪えたらしい。引き絞られるようにしっかりと浮かび上がった筋肉に走る血管が、エルマーの余裕のなさを表している。思考の覚束ないナナシの薄い腹を覆うように、エルマーが手のひらで抑えた。圧迫されたことで噴き上げた尿が手を濡らしても、気にもしない。指先で圧迫するのは、エルマーの性器が当たっている腹の奥だ。
ナナシの尻の下に敷いた外套のシミが広がった。身を屈めるようにナナシを抱き込むと、がじりと細い首に噛みついた。
「かひゅ、……っぅあ、あっ」
「っ……動くな、っ、……まだ終わりじゃねえ」
「あ、ああ、あっ、ぇ、う……っ」
「っぁーー……くそ、頭ばかんなりそ……っ」
エルマーの性器が、ナナシの肉に絞られるようにゆっくり引き抜かれた。先端だけを残して、幹を外気に晒したのは一瞬だけ。まるで振り下ろすように深く腰を打ち付ければ、細い足は再び衝撃に応えるように振り上げられた。
キツく抱き込まれ、ナナシの小さな性器はエルマーの腹筋によって押しつぶされている。何度も、奥を掘削されるように腰を打ちつけられて、蕾の下にエルマーの重い袋を押しつけられる。
腹の奥を殴るような律動だ。行きすぎた性感が辛くて、ナナシは先程から下手くそな呼吸しかできていなかった。
結界の向こう側で、木々がさわめいて、鳥が飛んでいる。薄い皮膜を一枚隔てて、日常が確かにそこにあるのに。ナナシは魔物の死骸の横で、エルマーにお仕置きのように犯されている。
気持ちがいい、気持ちが良くて、もう全部がどうだっていい。喉から汚い悲鳴混じりの声が漏れて、エルマーを飲み込む蕾はブチュブチュとはしたない水音を漏らしている。いつの間にか膀胱が軽くなって、腰回りが冷たい。
唾液を垂らすように激しく欲を追いかけるエルマーのそれを舌で受け止めては、噛み付くような口付けをされる。
魔物の催淫が、二人をバカにさせたのだ。
「ぁぐ、う、ぅう、うあぁ、や、やっあ、ああ、ア、アぁい、いっぐ、ま、まだ、い、ぐ……っぇ、える、ぁっ」
「ぁあ、あくそ、でる、なあ、奥……っ、奥にだす、っな、なし……っ、ナナ、シ……っ」
「ひ、っぎ……っぁ……あ、つぃ……っ……」
お腹に上手に力が入って、ナナシの奥のお部屋にエルマーが入り込む。血液が沸騰したかのように汗が噴き出て、息もできないくらいの鋭い感覚にのけぞった。荒い呼吸が結界の中で聞こえていた。びたびたと濃い精液が、ナナシの腹の内側を満たしていく。
きていたエルマーのシャツは、ナナシの性器から出るあらゆる体液で濡れそぼっていた。
骨抜けだ。もう、グデグデだった。腰を震わして、茂みを蕾に押し付ける。熱で頭が溶けたのはエルマーもまた同じだったらしい。虚な視線で、顔を真っ赤にしてナナシの唇をベロリと舐める。
ケポリと吐き出した胃液までも、エルマーは舌先で舐め取って腰を押し付ける。柔らかなナナシの尻は腰の打ち付けで赤くなり、今はエルマーの腰だけで支えている状態だった。
「いき、て……るか……」
掠れた声で、エルマーが気遣う。肩口やら首筋やら。ナナシの白い肌は噛み跡だらけで見るに耐えないというのに今更だ。
エルマーの背中から、ぽてりとナナシの手が落ちた。爪先は赤く染まっていて、エルマーに皮膚がわずかにひっかかっている。
やりすぎた。これはみまごうことなき暴走の結果だ。
獣が鼻先で獲物の様子を伺うように、エルマーはそっとナナシに鼻先を寄せる。口端の汚れを舐めて清めて、まぶたに口付ける。小さな体が反応を示したことに安心をしたらしい。華奢な体を引き寄せるようにして起き上がった。
「ナナシ」
「ぅ……あ……?」
「ごめん」
「ん、ん……」
ナナシが許してくれるのをわかってて、エルマーはやりすぎた。謝るくせに、いじ汚く性器は収めたままなのだが。ナナシの中を散々遊んだ種子が、体液に濡れそぼったまま転がっていた。エルマーはそれを持ち上げると、種子から溢れた粘液がでろりと草地を濡らした。
頭が冴えてくると、ようやく本来の目的というものも思い出してくる。そういえば、採集依頼はなんだったっけか。ナナシの体をもたれかからせたまま、エルマーはインベントリから布を取り出す。
濡れた体を優しく拭う。確か、研究用に逃げ出した植物魔物の保護及び回収だったか。
聞き慣れない魔物だったから、サジに特徴を記したものをもらったのだ。何の気なしに広げた布。どうやら、サジはそこに魔物の特徴を書いて渡したらしい。ナナシの体を見れば、滲んだインクが白い肌についていた。
「んだよ、適当なもんに書きすぎだろう……」
「んむ……」
「動けるか? 無理しなくていいぜ」
もぞりと動いたナナシの顔を覗き込む。まだ呆けている額に口付けると、エルマーは布をほっぽらかして、再びナナシの汚れを拭うための何かを探し出す。もうこの際、帰るだけだ。エルマーの着替えをそのまま着せればいいだろう。
インベントリからずるりと替えのシャツを取り出した。そんなエルマーの膝の上で、ナナシはぼんやりとエルマーが落とした布を広げていた。
「う……?」
ナナシのお目目が、まじまじと布をうつす。意外と絵心のあるサジが描いた魔物には、随分と見覚えがあった。
ナナシの目が、ちろりと魔物の死骸へと向けられる。描かれている魔物にも、似たような触手があった。
「ぇる……これ、あれ?」
「なんだあ?」
「いぱいでこぼこしてるやつ、あれ?」
「ああ?」
ナナシが見せてくる布に描かれた魔物と、隣でくたばっている魔物を見比べる。エルマーの気だるげな目が、五回目の確認のあとゆっくりと見開かれた。
まずい。やっちまった。エルマーの顔には、わかりやすくそう書かれていた。確か、依頼の達成条件は生け取りである。エルマーの記憶が都合よく改竄されていなければ、確か頭をしっかりと踏み潰して殺してしまった。骸は、徐々に魔素になって消え始めている。エルマーは慌てて触手を鷲掴むと、インベントリに突っ込んだ。
「どしたのう」
「一旦帰ってサジんとこ行くぞ」
「ふお……あそびにいくのう? すぐ?」
「すぐいったらアロンダートにしばかれるから、通りあえず風呂入ってからな」
エルマーは立ち上がると、ナナシの体に替えのシャツを被せて抱き上げた。足元に魔力が集まってくる。この森に来た時と同じように転移で家に帰るのだ。
まさか、エルマーが依頼をどう誤魔化すかで頭を働かせているとは思わない。ナナシはエルマーの機嫌が戻ったことに気がつくと、小さな頭を首筋に押し付けるようにして甘えたのであった。
「俺が駆けつけた頃には、もうこい、ジュペッタちゃんは何者かにヤラレっちまってたんだあ。すまねえ、だけど、ジュペッタちゃんを潰した馬鹿野郎は俺がしばいておいたから」
「そうですか……いや、命あるものはいずれ尽きる運命……ジュペッタちゃんが無事に私の手元に戻ってこなかったのは誠に遺憾ではありますが、ケージの外に出してしまった私にも落ち度はあるのでしょう……」
「いいや、あんたはなんも悪くねえ。ジュペッタちゃんはちいとばかし親の元を離れて見たかった。そういう年頃が生んじまった、悲しい悲劇ってやつだあ」
魔物植物学者のロータスがいる研究室。エルマーはそこにいた。背後では、アロンダートとサジと共に、ナナシが呑気に道の蟻を眺めている。何やらエルマーは難しい大人のお話をしなきゃいけないから、ナナシはそこでいい子に待っていなさいと言われたのだ。
「いいかナナシ。お前は大丈夫だと思うが、これからもっと頭が良くなったとしても、あんな大人にだけはなるなよ」
「えるみたいに?」
「滑らかで淀みのない嘘をつく大人にはなるなということだ。みろあのエルマーの演技を。まるで討伐したのは俺じゃないと言わんばかりである」
「むづかしいはなし、いぱいしてるのわかるよ」
アロンダートにワシワシと頭を撫でられる。ご機嫌な尻尾はパタパタと揺れて、瞳は真っ直ぐにエルマーの背中を映す。何を言っているのかはさっぱりわからないが、エルマーのあの様子を見る限り問題はなさそうである。
「全く、種子を持ってきたかと思えば魔物を産ませろだなんて。気が狂ったのかと思ったわ」
「まあいいじゃないか。産まれた魔物は、……まあ少し特殊ではあるが」
サジがそういうのも無理はない。エルマーはあの後、ナナシと共にサジのねぐらまで再び戻ってきたのだ。くたびれた種子を突き出して、今すぐこいつを発芽させろお‼︎ と、いつになく焦った顔で言ったのだ。蓋を開けてみれば、ナナシにいたずらをした魔物を潰したら、それが回収依頼の魔物だったというオチだった。
「な、なんと……っ‼︎ ジュペッタちゃんの忘れがたみ……⁉︎」
ロータスの悲鳴まじりの声が上がった。その理由は、エルマーがインベントリから取り出したジュペッタの幼体であった。
キイキイと甲高い声をあげる幼体は、七本の触手をエルマーの腕に絡ませるようにして懐いている。問題は、本来ジュペッタと同じ魔物に生まれるはずが、精霊として生まれてきてしまったということだろう。言わずもがな、ナナシの魔力を染み込ませたからである。
「きっとペロタの日頃の行いがいいから精霊として生まれ直したんだと思うね。つまりはそうとしか考えられねえ。なあ、ひとまずこれで依頼達成といかねえか」
「ジュペッタです。いやしかし……そうですね……いつまでも彼女の面影を追いかけているわけにもいきますまい……。いいでしょう。依頼は達成です」
「おっしゃ、話がわかる大人は好きだぜ。じゃあこれお前にやるわ」
やり切った感を滲ませる笑顔が、いつになく爽やかであった。エルマーは、ジュペッタの幼体をロータスへと押し付けた。しかし、触手は腕に絡みついてなかなかに離れない。
「んだよ、お前の飼い主は俺じゃなくて……」
「パ」
「あ?」
「パーパ」
幼体の頭だろう、蕾の部分に切れ込みが入るようにして、ニタアと笑う。複音の、魔物らしい声色で幼体が宣った瞬間。エルマーの腕から全身へと、一気に鳥肌が走った。
「わあ‼︎ ジュペッタベイビーちゃんおしゃべりができるのかい! あ、待ちなさい君‼︎ そんな急いでどこへ行く‼︎」
「だあああああああ‼︎」
自業自得とはこういうことを言うのかもしれない。真っ青な顔で三人の元へとかけてきたエルマーに、ナナシがパタパタとオッポを振る。勢いを緩めぬままナナシへと抱きつくものだから、べちょりと二人して地べたへと転がった。
「ひゃぃんっ」
「パパパパパ、パパって言ったぞあいつ俺のことパパって言ったなんだああきめえええええ‼︎」
「そうか、ずっと不思議に思っていたんだ。なんで発芽した幼体が精霊化するほどナナシの魔力を含んでいたのかを」
「は⁉︎ 今はそんなことどうだって……」
ナナシにしがみつくエルマーの襟首を、アロンダートの逞しい腕がしっかりと掴んだ。まるで親猫が子猫を運ぶかのように軽々と持ち上げられて、エルマーは悟った。これはもしかしなくても、非常にまずい展開であると。
笑顔のアロンダートほど怖いものはない。エルマーはぎこちなく顔を逸らしたが、視線の先にはしっかりとナナシを抱きしめているサジがいた。
「サジは知っておるぞ。何せよくやっていたからなあ。可愛い子を文字通り腹で馴染ませる。エルマー、つまりあの日、お前はナナシと何をして遊んだんだ」
「な、にをって、お前そりゃ」
「お外でピクニック。とでも言うつもりか? ふふ、それともナナシに聞くべきか」
「う?」
引き攣り笑みを浮かべる。エルマーはぎこちなくナナシへと視線を向けると、無言で助けを求めた。
口裏を合わせようとしたのだ。しかし、ナナシはエルマーの育て方もあってか、実に無垢で素直であった。言葉を促されるように、サジに顎下をくすぐられている。やめろ、懐柔をされるな。そんなエルマーの必死な祈りも、大好きなサジとアロンダートを前にしては難しかった。
「えるが、た、たのしそうだったよう……」
たった一言だ。頬を染め、赤く色づいた唇で紡がれた素直な言葉は、あの日の森の中でのエルマーの姿を思い返している。普通なら、何がと聞き返されるような曖昧な言葉でも、長年旅を共にしてきたサジとアロンダートの目の前では無意味に等しかった。
「死刑」
「ちょっとまっぉごっ……‼︎」
土に穴が開く大きな音がして、木々で羽を休めていた小鳥たちが飛び立った。エルマーは地べたから飛び出したマイコニドのマイコが繰り出す拳を、言い訳も許されぬまま顎で受け止めたのであった。
※リクエスト作品
※残酷描写有り
※背後注意
「うやぁあああぁあえるうぅーー‼︎」
情けないナナシの悲鳴が、森の中に響いた。
普段なら受けないはずの回収依頼のために、ナナシと共に森を訪れたのがいけないかった。要するに気を抜いていたのだ。まさか、下級の植物魔物に囚われるわけがないと鷹を括っていた。
「なんでお前はいっつもわんぱくしちまうんだーー‼︎」
「ふぇええぇーー……‼︎」
こめかみに青筋を浮かばせたエルマーが怒鳴る。それも無理はない、ついてくるのなら、ナナシはいい子にしていなければいけなかったからだ。しかし好奇心旺盛なナナシがいい子にできたのは、森に入ってからの最初の三十分程度。二人に構ってもらおうとするようについてきた触手型の魔物が気になって、つい呑気に触手の一本に触れてしまった。そうして冒頭に戻るわけである。
細い腰に絡みつくように、幾つもの膨らみをつけた触手がナナシを持ち上げる。植物魔物の中でも特に弱い。故に、そこまで大きな危険はない。しかし、触手に遊ばれるように絡め取られたナナシを前に、エルマーは手を出しあぐねていた。
「くっそエロい」
「ぅわぁあぁーーん‼︎」
苛立ちと欲望がないまぜになったエルマーの顔は、露骨にキレていた。人のものに手を出すなという主張と、滅多にみられないだろうナナシの痴態をもう少し見ていたいという、しょうもない男の性がぶつかり合っているのだ。
「ぁうう……っ」
「はっ」
「ぇ、える、ぅ」
動きやすい格好で連れてきたのもまずかった。ナナシの着ていたチュニックの隙間から、触手が入り込む。服の下を弄るように細い体を締め付けるのだ。
弱い魔物故の生きる知恵か、触手には催淫系の分泌液で敵を腑抜けにさせる特徴があった。エルマーの目の前で、触手から分泌された粘液がナナシの服を濡らす。細いながら肉付きのいい足へと絡まると、エルマーへと見せつけるようにナナシの両足を割ひらく。
「わかってやがる」
「た、たすけっえ、えるぅ‼︎」
「お前まじで、ああくそ……なんでも博愛精神出すなって」
「わ、わかんぁ……きゅうぅっ」
何かを引きずる音がして、魔物の本体である蕾がゆっくりと頭をもたげた。サジの操るシンディのような見た目のそれは、ナナシの体へとゆっくり近づいた。
体の色も相まって、大きな爬虫類に懐かれているようにも見える。粘液を塗り込まれるように、ナナシの頬へと擦り寄ってくる。敵意はないのだろう、本当に遊んでいるだけなのかもしれない。
エルマーは危険度がないと判断すると、ナナシを絡め取る触手の根元を叩いた。
「遊んでんのかも知んねえけど、図体考えろよてめえ。あとナナシが苦しそうだから程々にしてくれ」
「ひぃん……」
呆れたように魔物へと語りかける。目の前でエルマーが宥めてくれているが、ナナシとしては一刻も早く下ろしてもらいたいのが現状だった。
先ほどから、実を連ねたような触手が胸元を弄るたびに体が反応してしまう。分泌物が作用しているのだろうか。連なりの隙間に引っ掛けるように胸の突起を刺激され、つい濡れた吐息をこぼしてしまう。
エルマーに愛撫されるのとは、また違う感覚が身を苛んでいる。敏感に仕立て上げられた体は、甘い締め付けだけでも素直になってしまうのだ。
きっと、こんなはしたない気持ちになっているのをエルマーにバレてしまったら、ナナシは怒られてしまうかもしれない。じわりと涙が滲んで、大きなお耳がションモリと下がる。
好意を示してくる魔物には悪いが、早く下ろして欲しかった。
「……ナナシ、お前もしかしなくても感じてないか」
「ひぅ、っ」
いつもよりも暗いエルマーの声が、ナナシの耳に届いた。金色のお目目を丸くして見下ろせば、仄暗い闇を孕むような瞳で見つめ返される。もしかしたら、怒らせたのだろうか。じわりと涙が滲んで、誤魔化すように首を振る。
しかし、体は正直だった。
「ぁう、うぅ……ん……っ」
「お前……」
裾の広いボトムスから、足を伝って触手が侵入する。先端が下着の中へと入り込むと、ナナシの尾っぽがビョンと振り上げられた。
「あ、っ……」
「…………」
「ぁ、ゃあ、あ、あっ」
エルマーの顔が、わかりやすく怒っている。それなのに、触手はナナシの願いを聞き届けない。体で遊ぶように離してはくれない。小ぶりな袋を持ち上げるように蠢いて、蕾に実の一つを押し付けられる。金色の瞳が見開かれて、かふりと吐息が漏れた。エルマーの頬にナナシの体液がぽたりと落ちた瞬間、恐ろしいほどの魔力が一気に膨らんだ。
ナナシの耳に、魔物の断末魔の悲鳴が響いた瞬間。触手によって弄ばれていた体は解放された。重力に引き寄せられるように落ちる体を、エルマーが危なげなく受け止める。ぐったりとした体を抱えたまま、底の厚いエルマーのブーツが魔物の頭を踏み潰した。
「程々にしろって言ったろう、くそが」
「ひっく……ふぅ、うっ……」
「ナナシ、お前には危機感を教えなきゃなんねえなあ」
「ぇ、える、ま……っ」
エルマーによって、無理やり引き抜かれたのだろう魔物の根が地べたに晒され、その頭は原型も留めぬほどに潰されていた。苛立ちがしっかりと現れている。ナナシは泣きそうな顔でエルマーを見上げる。いつもの優しい金色が、鋭く光っている。
悪い子にしたから、エルマーが怒ったんだ。ヒック、と情けない嗚咽が漏れて、弱々しく肩口に顔を埋める。
体が滑りを纏っていて気持ちが悪い。だから、ナナシは早くさっぱりとしたかった。きっと、エルマーはお家に帰るだろう。そう思っていたのに、ナナシは魔物の死骸が見えるその場所で降ろされた。
「悪いけど……まぁだ納得いってねえんだあ。後でクソほど文句聞くから、今は我慢してくれえ」
「へ、んぅ、うっ……」
地べたに足をついたばかりのナナシの体を、エルマーは腰を支えるように地べたへと組み敷いた。着ていた外套がナナシの背中を優しく包みこむ。文句を許さないとでもいうように深く口付けられた舌の熱さが、ナナシの中で燻っていた欲に火を灯した。
「っぃや、ら……お、おんも、だよ、ぉ……っ」
「人の雌を目の前で好き勝手されて……っ、許容できる雄がいるか……? ナナシ、結界張れ。認識阻害重ねがけすっから」
「っゃ……」
「やれ、今すぐ」
エルマーの金色が、獣のようにギラリと光っている。怖い目をしているのに、仕上げられたナナシははしたなく胸を疼かせてしまうから始末に追えない。
結局、ナナシがエルマーのいうことを聞かないことなんてないのだ。行き場のない怒りの出どころも、ナナシのせいなのだと理解しているからというのもある。そんな余裕のないエルマーが少しだけ可愛いとか思ってしまったのだから、もうナナシの負けであった。
「ん……んく、……ぅ、う……っ」
「は……、もっと口開けろ。……舌よこせ」
「ぁ、んん……っぇ、う……っ」
言われるままに差し出した舌に吸いつかれる。唾液を絡め、はしたない水音を立てながらの獣のような口付け。魔物によって、催淫作用のある粘液を塗りたくられた体へと触れるのだ。エルマーもまた、ナナシのようにいつもの余裕をなくしていた。
結界の上から、認識阻害術を重ねがけすることはできた。しかし、二人から見える景色は何も変わらないのだ。野外で、しかも魔物の死骸の隣という最低な環境での行為。
余裕をなくしたエルマーが、細い首筋に吸い付きながらベルトを外す。その金属のすれあう音を耳にするだけで、ナナシの後ろは疼いてしまう。
無骨な手が、引き抜いたベルトを地べたに投げ捨てる。味蕾を摩擦するような、脳みそがバカになる口付けを交わしながら、エルマーは猛った性器を布越しに押し付けた。
「どこ触られた……なあ、言って。むかつきすぎて頭痛えの」
「お、おむね……っ」
「どんなふうに? お前は何されて、この小せえのたたせたんだよ」
「ぁう……っ」
エルマーの唇が、胸の突起へと運ばれる。歯で先端を掠めるように刺激されたかと思えば、突起を唇で挟むようにしてねぶられる。サディンの授乳で膨らんでしまったそこは、しっかりと敏感になっていた。
魔物の粘液をこそげとるように舌を這わされ、甘く吸いつかれる。刺激が強くて、エルマーの唇を遮るように指先を這わせれば、がじりと甘く噛まれる。
「嫌だ、邪魔すんな」
「っふ……ゃ……か、かむ、の……ぃた、い」
「……じゃあ、お前はどうして欲しい」
薄い胸元に鼻先を埋めて、エルマーが見つめてくる。熱で瞳が濡れていて、興奮を如実に表している。その顔が、可愛い。ナナシは小さな手のひらでエルマーの頬を包むと、もじりと膝を擦り合わせた。
「ゃ……ゃさし、くして……」
「ん」
「い、いぱい……さわってほし」
「どこを」
金色に愉悦が混じる。エルマーが、楽しそうな顔をしているのだ。ナナシの体で楽しくなっているのは可愛い。それを口にする余裕はないのだけれど。
「ち……ちん、ちん……」
「そこも触られた?」
「う、ぅ……あ、っ」
「なら、愛でてやんなきゃなあ……」
きちんと言えたことを褒めるように、鼻の頭に口付けをされる。厚みのある唇が、ナナシの薄いお腹を甘やかすように啄んだ。膨らんでしまったそこへと口付けられて、つい腰が浮いてしまう。無意識の期待が体に現れてしまったナナシの雄の部分を前に、エルマーは小さく笑った。
無骨な手が、ナナシのボトムスを脱がせる。甘い香りと共に、熱を持った小ぶりな性器がふるりと外気に晒される。先端にかけて薄く色づいた性器は蜜を漏らして、エルマーを誘う。エルマーの手で隠れてしまうくらいの大きさのそれをそっと口に含むと、細い腰がひくんと跳ねる。
「ひゃ……んく、っぁ、あっ」
白い太腿がエルマーの顔を挟む。熱で体を火照らせたナナシの微かな汗の匂いと、甘い香りに誘われるように深く咥え込む。
熱い口内で、性器が溶けてしまうかと思った。幹全体に唾液を絡められ、時折強く吸いつかれるのだ。その度に背筋を鋭い快感が走り、ナナシは蕾を収縮させる。
エルマーの唾液が、袋を伝って会陰を濡らす。たったそれだけの微かな刺激だけでも声が漏れてしまう。
子猫が泣くような甘い声に、エルマーの性器に血が集まった。
「は、ぅ……も、い……い、いく、ぅ……」
「ん、……」
「きゅ……ぅう、っ」
泣きそうな濡れた声と共に口内を満たしたナナシの精を、喉を鳴らして飲み込んだ。柔らかな尻を掴んで持ち上げる。割開いた先で、赤く腫れてひくつくそこに残滓が吸い込まれていった。
無防備に身を投げ出し、薄い胸を上下させるナナシを前に、エルマーはゆっくりと蕾に舌を這わせる。
「そ、そこ……ゃ……ら、っ」
「やだじゃねえ」
「ひゃ、やら、ぁあ、あっ」
エルマーの舌が、ナナシの目の前でゆっくりと中を暴いていく。熱く濡れた舌の感触が、背筋を泡立たせる。これがお仕置きだと分かっていても、恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。小さな手は現実から目を背けるように視界を隠す。それでも、エルマーが許してくれる気配はなかった。
ぐぷ、と聞くに耐えない水音を、ナナシの敏感な聴覚が拾う。どれくらいほぐされていたのかはわからない。蕾は舐られ、愛でられたおかげかしっかりとひくついていた。赤い媚肉が、誘うように呼吸をくり返している。ぽてりと腫れたそこは、痺れてしまって感覚がない。薄い腹には何度も散らされた精が、形のいいヘソに溜まっていた。
エルマーの濡れた舌と、ナナシの蕾が唾液の糸で繋がった。大きな手のひらに腰を鷲掴まれ、簡単に引き寄せられる。
ナナシの足を抱え上げるエルマーの姿を前に、微かに期待を抱くとろけた目を向けた。しかし、あてがわれたものは待ち望んでいたものではなかった。
「ぅ……あゃ……な、なに、ぃ……?」
「なんだと思う」
つるりとしたものが押し付けられている。エルマーの性器なら、もっと熱いはずだった。恐る恐る、ナナシは確かめるように視線を向けた。金色の濡れた瞳が写したもの。それは、エルマーが倒した魔物の触手の一本であった。
「ぅ、うあ……っゃ、やあ……やだあ……っ」
「俺のよりほせえから、痛くねえよ」
「ゃ、やああ、え、える、ま……、あ、あっン」
「一個入った。ほら、まだいけんだろう」
ナナシを抱き込むようにして覆い被さるエルマーの指が、一つずつ連なる実を押し込んでいく。広がっては飲み込んでいく蕾の動きが、無意識の収縮に変わるまで時間はかからなかった。エルマーの腰を挟むように開かれた細い足が、一つまた一つと種を腹に収めるたびに跳ね上がる。
宥めるように施される口付けに答えながら、ナナシの腹で種子を温める。お腹の中を不規則にコツコツと刺激されて、頭がどうにかなってしまいそうだった。
「よだれ、すげえな」
「ぁ、あう……っ……お、ぉな、か……へ、へん……っ」
「気持ちい?」
「ぁ……き……きも、ひ……」
涙と涎で顔はぐちゃぐちゃだ。エルマーはナナシの口端から垂れる唾液を舐め上げては甘やかすように口付ける。性器は張り詰め痛いのに、それでもデロデロに溶けるナナシを見るのが楽しくて仕方がない。
必死で縋りついてくる小さな手が可愛い。ナナシの一挙手一投足が、全部可愛くて仕方がない。大きな手のひらで薄い腹に触れる。サディンが入っていた腹に、今は違うものが入っている。手で軽く押してやれば、どこまで入り込んでいるかがわかる。子宮までは許していない。その手前でナナシを溶かす役割だけを許したのだ。
「腹で温められて、発芽でもすんのかな」
「ぅ……ゆ……っ……」
「そうなる前に掻き出してやる。ふは、お前溶けちまっててかぁわい……」
欲の孕んだ瞳でうっとりと見つめるエルマーに、ナナシの尾は本能的にパタパタと揺れる。頭はバカになって、気持ちが良くて脳みそが溶けきっているというのに。上手にエルマーを喜ばせることができるのだ。
ファスナーが擦れ合う音がして、エルマーの手が猛った性器を取り出した。連なる種子で膨らんだナナシのお腹へと、ずしりと思いそれがのせられる。小さな手のひらが伸ばされるのを好きにさせながら、エルマーはナナシの細い首筋にいくつもの痕を散らす。
「はあ……ヘロヘロになってかわいいのな……」
「え、える、の……も、ほし……」
「ほしいんか、ああ……どうすっかなあ……」
くつくつと笑う時のエルマーは、だいたいナナシに意地悪をする。仕込まれた体は、好きにしてとでもいうように差し出されている。ナナシの腕が、ゆるゆるとエルマーの背中に回った。厚みのある唇をぺしょりと舐めるのは、ご機嫌伺いも兼ねていた。
「ぅ、う?」
「なあ、お前はどこまで我慢できんだあ」
「あ、あっ」
エルマーの性器が、触手が入ったままの蕾へとあてがわれた。一緒になんて、入るはずもない。それなのに、ナナシの返事なんて必要ないと言わんばかりに唇を優しく啄まれて、また頭が溶けていく。
小さな手が、エルマーの外套にシワを作る。啄むだけの口付けが気持ちよくて、力が抜けないようにするのに必死だったのだ。時折、くすぐるように差し込まれる舌に応える。頭を撫でられて、熱い吐息の交換を繰り返した。小さな圧迫感を感じて、エルマーの背に回した手に力が入った。押し開かれるように入ってきたエルマーの熱い性器に、ナナシのお腹がひくんと痙攣する。
「ぁく、ぅ、う……っ……ぅや、ぁあ、あ……っ……」
「っあーー……、すげ、ゴリゴリって……っきっつ……」
「く、ぅし……っえ、えぅ、こ、こぁ、い……っ」
「ン……こうすりゃ、抜けっから……」
「ひ、ぃあ……っ」
エルマーの性器が押し込まれて、ゆっくりと腰を引かれる。緩やかな抽挿によって、ナナシの腹の中で種子が動く。前立腺を押しつぶし、エルマーの性器までを圧迫する。腰をゆっくりと動かすたびに、蕾の外へと逃げようとする。それが、背筋を震えさせるのだ。
種だって頭の中で分かっているはずなのに、排泄感にも似たそれが羞恥を煽る。薄い手のひらが拒むようにエルマーの髪を引くと、余計にキツく抱き込まれて逃がしてくれない。
「ぃ、いゃあ、あっあ、え、えぅ、ゃ、やらっ、あ、あっも、もぇう、うぁ、ああっああぁンっ」
「すっげ、中うねってる……っ、は、どうなってんだ、これ……っ」
「ゃ、めっ、ゃめ、へ……っと、とま、ってぇ、えっいゃあ、あっ」
「い、や、だ」
「ひ、っぅ……ぁあ、あっ、ああ、ぁ、ゃら、あ、ぁっ」
しがみつく力を強める。ナナシの悲鳴混じりの声が、エルマーの嗜虐心を煽るのだ。大きな獣の耳に舌を這わせる。へちょりと下がった耳の根元へと歯を立てると、熱い胎内が再びうねる。
エルマーの腹筋を濡らすように、粘度の高い精液が散らされる。赤い舌をだらしなく見せたまま、涙と唾液でgぐずぐずになったナナシが下手くそに呼吸をしている。
「イクなら、言わねえと。なあ」
「ひ、ぃあ、あっく、イ、ぃちゃ、ぁ、あうう……っ」
「気持ちいなら、なんていうんだ」
「ぁ、も……っ、もっ、と……っお、おぐ、ほし、ぃ、っ」
泣きそうな濡れた声がエルマーを煽る。媚肉はエルマーの性器を上手に高めていくのだ。腰を押し付けるように進めれば、ぶぽ、と情けない音を立てて種子が飛び出る。粘液を纏いながら、エルマーの抜き差しで吐き出されていく種子の動きが、ナナシの膀胱を圧迫する。
「ぇ、える、ぁ……っ、も、もぇ、う……っ」
「ああ、また一個でたなあ……ほら、何が出るんだ。種か?」
「しっ、こっ……も、、でひゃ、うぅ……っ」
エルマーの性器が、先程から子宮口を摩擦するように先端を擦り付けるのだ。つるりとして、狭いナナシの奥の部屋。そこが何度もエルマーの先端を飲み込もうと口を開く。強く腰を打ちつけたら、きっと気持ちがいいのだろう。エルマーは熱に浮かされた思考のまま、ナナシの足を抱え直す。細い腰を引き寄せると、蕾から溢れた種子の連なりを掴んだ。
「邪魔くせ、……ナナシ、力抜いてな」
「ぃ、いゃら……え、ぇる、ゃだ……っま、まっへ、ま、まっ……ぁ、ああ、あああーーーー‼︎」
「ぐ、……っ」
ナナシの中に入れたそれを、エルマーが一気に引き抜いた。いくつもの連なりが勢いよく動くと同時に、胎内を馴染みのない刺激が支配する。ナナシの細い足は跳ね上がり、エルマーの腹目掛けて暖かな水を吐き出した。
薄桃色の先端から、ぱちゃぱちゃと漏らしている。気絶するように上半身を投げ出したナナシは、気がついているのだろうか。
腹筋に力を入れて、射精を堪えたらしい。引き絞られるようにしっかりと浮かび上がった筋肉に走る血管が、エルマーの余裕のなさを表している。思考の覚束ないナナシの薄い腹を覆うように、エルマーが手のひらで抑えた。圧迫されたことで噴き上げた尿が手を濡らしても、気にもしない。指先で圧迫するのは、エルマーの性器が当たっている腹の奥だ。
ナナシの尻の下に敷いた外套のシミが広がった。身を屈めるようにナナシを抱き込むと、がじりと細い首に噛みついた。
「かひゅ、……っぅあ、あっ」
「っ……動くな、っ、……まだ終わりじゃねえ」
「あ、ああ、あっ、ぇ、う……っ」
「っぁーー……くそ、頭ばかんなりそ……っ」
エルマーの性器が、ナナシの肉に絞られるようにゆっくり引き抜かれた。先端だけを残して、幹を外気に晒したのは一瞬だけ。まるで振り下ろすように深く腰を打ち付ければ、細い足は再び衝撃に応えるように振り上げられた。
キツく抱き込まれ、ナナシの小さな性器はエルマーの腹筋によって押しつぶされている。何度も、奥を掘削されるように腰を打ちつけられて、蕾の下にエルマーの重い袋を押しつけられる。
腹の奥を殴るような律動だ。行きすぎた性感が辛くて、ナナシは先程から下手くそな呼吸しかできていなかった。
結界の向こう側で、木々がさわめいて、鳥が飛んでいる。薄い皮膜を一枚隔てて、日常が確かにそこにあるのに。ナナシは魔物の死骸の横で、エルマーにお仕置きのように犯されている。
気持ちがいい、気持ちが良くて、もう全部がどうだっていい。喉から汚い悲鳴混じりの声が漏れて、エルマーを飲み込む蕾はブチュブチュとはしたない水音を漏らしている。いつの間にか膀胱が軽くなって、腰回りが冷たい。
唾液を垂らすように激しく欲を追いかけるエルマーのそれを舌で受け止めては、噛み付くような口付けをされる。
魔物の催淫が、二人をバカにさせたのだ。
「ぁぐ、う、ぅう、うあぁ、や、やっあ、ああ、ア、アぁい、いっぐ、ま、まだ、い、ぐ……っぇ、える、ぁっ」
「ぁあ、あくそ、でる、なあ、奥……っ、奥にだす、っな、なし……っ、ナナ、シ……っ」
「ひ、っぎ……っぁ……あ、つぃ……っ……」
お腹に上手に力が入って、ナナシの奥のお部屋にエルマーが入り込む。血液が沸騰したかのように汗が噴き出て、息もできないくらいの鋭い感覚にのけぞった。荒い呼吸が結界の中で聞こえていた。びたびたと濃い精液が、ナナシの腹の内側を満たしていく。
きていたエルマーのシャツは、ナナシの性器から出るあらゆる体液で濡れそぼっていた。
骨抜けだ。もう、グデグデだった。腰を震わして、茂みを蕾に押し付ける。熱で頭が溶けたのはエルマーもまた同じだったらしい。虚な視線で、顔を真っ赤にしてナナシの唇をベロリと舐める。
ケポリと吐き出した胃液までも、エルマーは舌先で舐め取って腰を押し付ける。柔らかなナナシの尻は腰の打ち付けで赤くなり、今はエルマーの腰だけで支えている状態だった。
「いき、て……るか……」
掠れた声で、エルマーが気遣う。肩口やら首筋やら。ナナシの白い肌は噛み跡だらけで見るに耐えないというのに今更だ。
エルマーの背中から、ぽてりとナナシの手が落ちた。爪先は赤く染まっていて、エルマーに皮膚がわずかにひっかかっている。
やりすぎた。これはみまごうことなき暴走の結果だ。
獣が鼻先で獲物の様子を伺うように、エルマーはそっとナナシに鼻先を寄せる。口端の汚れを舐めて清めて、まぶたに口付ける。小さな体が反応を示したことに安心をしたらしい。華奢な体を引き寄せるようにして起き上がった。
「ナナシ」
「ぅ……あ……?」
「ごめん」
「ん、ん……」
ナナシが許してくれるのをわかってて、エルマーはやりすぎた。謝るくせに、いじ汚く性器は収めたままなのだが。ナナシの中を散々遊んだ種子が、体液に濡れそぼったまま転がっていた。エルマーはそれを持ち上げると、種子から溢れた粘液がでろりと草地を濡らした。
頭が冴えてくると、ようやく本来の目的というものも思い出してくる。そういえば、採集依頼はなんだったっけか。ナナシの体をもたれかからせたまま、エルマーはインベントリから布を取り出す。
濡れた体を優しく拭う。確か、研究用に逃げ出した植物魔物の保護及び回収だったか。
聞き慣れない魔物だったから、サジに特徴を記したものをもらったのだ。何の気なしに広げた布。どうやら、サジはそこに魔物の特徴を書いて渡したらしい。ナナシの体を見れば、滲んだインクが白い肌についていた。
「んだよ、適当なもんに書きすぎだろう……」
「んむ……」
「動けるか? 無理しなくていいぜ」
もぞりと動いたナナシの顔を覗き込む。まだ呆けている額に口付けると、エルマーは布をほっぽらかして、再びナナシの汚れを拭うための何かを探し出す。もうこの際、帰るだけだ。エルマーの着替えをそのまま着せればいいだろう。
インベントリからずるりと替えのシャツを取り出した。そんなエルマーの膝の上で、ナナシはぼんやりとエルマーが落とした布を広げていた。
「う……?」
ナナシのお目目が、まじまじと布をうつす。意外と絵心のあるサジが描いた魔物には、随分と見覚えがあった。
ナナシの目が、ちろりと魔物の死骸へと向けられる。描かれている魔物にも、似たような触手があった。
「ぇる……これ、あれ?」
「なんだあ?」
「いぱいでこぼこしてるやつ、あれ?」
「ああ?」
ナナシが見せてくる布に描かれた魔物と、隣でくたばっている魔物を見比べる。エルマーの気だるげな目が、五回目の確認のあとゆっくりと見開かれた。
まずい。やっちまった。エルマーの顔には、わかりやすくそう書かれていた。確か、依頼の達成条件は生け取りである。エルマーの記憶が都合よく改竄されていなければ、確か頭をしっかりと踏み潰して殺してしまった。骸は、徐々に魔素になって消え始めている。エルマーは慌てて触手を鷲掴むと、インベントリに突っ込んだ。
「どしたのう」
「一旦帰ってサジんとこ行くぞ」
「ふお……あそびにいくのう? すぐ?」
「すぐいったらアロンダートにしばかれるから、通りあえず風呂入ってからな」
エルマーは立ち上がると、ナナシの体に替えのシャツを被せて抱き上げた。足元に魔力が集まってくる。この森に来た時と同じように転移で家に帰るのだ。
まさか、エルマーが依頼をどう誤魔化すかで頭を働かせているとは思わない。ナナシはエルマーの機嫌が戻ったことに気がつくと、小さな頭を首筋に押し付けるようにして甘えたのであった。
「俺が駆けつけた頃には、もうこい、ジュペッタちゃんは何者かにヤラレっちまってたんだあ。すまねえ、だけど、ジュペッタちゃんを潰した馬鹿野郎は俺がしばいておいたから」
「そうですか……いや、命あるものはいずれ尽きる運命……ジュペッタちゃんが無事に私の手元に戻ってこなかったのは誠に遺憾ではありますが、ケージの外に出してしまった私にも落ち度はあるのでしょう……」
「いいや、あんたはなんも悪くねえ。ジュペッタちゃんはちいとばかし親の元を離れて見たかった。そういう年頃が生んじまった、悲しい悲劇ってやつだあ」
魔物植物学者のロータスがいる研究室。エルマーはそこにいた。背後では、アロンダートとサジと共に、ナナシが呑気に道の蟻を眺めている。何やらエルマーは難しい大人のお話をしなきゃいけないから、ナナシはそこでいい子に待っていなさいと言われたのだ。
「いいかナナシ。お前は大丈夫だと思うが、これからもっと頭が良くなったとしても、あんな大人にだけはなるなよ」
「えるみたいに?」
「滑らかで淀みのない嘘をつく大人にはなるなということだ。みろあのエルマーの演技を。まるで討伐したのは俺じゃないと言わんばかりである」
「むづかしいはなし、いぱいしてるのわかるよ」
アロンダートにワシワシと頭を撫でられる。ご機嫌な尻尾はパタパタと揺れて、瞳は真っ直ぐにエルマーの背中を映す。何を言っているのかはさっぱりわからないが、エルマーのあの様子を見る限り問題はなさそうである。
「全く、種子を持ってきたかと思えば魔物を産ませろだなんて。気が狂ったのかと思ったわ」
「まあいいじゃないか。産まれた魔物は、……まあ少し特殊ではあるが」
サジがそういうのも無理はない。エルマーはあの後、ナナシと共にサジのねぐらまで再び戻ってきたのだ。くたびれた種子を突き出して、今すぐこいつを発芽させろお‼︎ と、いつになく焦った顔で言ったのだ。蓋を開けてみれば、ナナシにいたずらをした魔物を潰したら、それが回収依頼の魔物だったというオチだった。
「な、なんと……っ‼︎ ジュペッタちゃんの忘れがたみ……⁉︎」
ロータスの悲鳴まじりの声が上がった。その理由は、エルマーがインベントリから取り出したジュペッタの幼体であった。
キイキイと甲高い声をあげる幼体は、七本の触手をエルマーの腕に絡ませるようにして懐いている。問題は、本来ジュペッタと同じ魔物に生まれるはずが、精霊として生まれてきてしまったということだろう。言わずもがな、ナナシの魔力を染み込ませたからである。
「きっとペロタの日頃の行いがいいから精霊として生まれ直したんだと思うね。つまりはそうとしか考えられねえ。なあ、ひとまずこれで依頼達成といかねえか」
「ジュペッタです。いやしかし……そうですね……いつまでも彼女の面影を追いかけているわけにもいきますまい……。いいでしょう。依頼は達成です」
「おっしゃ、話がわかる大人は好きだぜ。じゃあこれお前にやるわ」
やり切った感を滲ませる笑顔が、いつになく爽やかであった。エルマーは、ジュペッタの幼体をロータスへと押し付けた。しかし、触手は腕に絡みついてなかなかに離れない。
「んだよ、お前の飼い主は俺じゃなくて……」
「パ」
「あ?」
「パーパ」
幼体の頭だろう、蕾の部分に切れ込みが入るようにして、ニタアと笑う。複音の、魔物らしい声色で幼体が宣った瞬間。エルマーの腕から全身へと、一気に鳥肌が走った。
「わあ‼︎ ジュペッタベイビーちゃんおしゃべりができるのかい! あ、待ちなさい君‼︎ そんな急いでどこへ行く‼︎」
「だあああああああ‼︎」
自業自得とはこういうことを言うのかもしれない。真っ青な顔で三人の元へとかけてきたエルマーに、ナナシがパタパタとオッポを振る。勢いを緩めぬままナナシへと抱きつくものだから、べちょりと二人して地べたへと転がった。
「ひゃぃんっ」
「パパパパパ、パパって言ったぞあいつ俺のことパパって言ったなんだああきめえええええ‼︎」
「そうか、ずっと不思議に思っていたんだ。なんで発芽した幼体が精霊化するほどナナシの魔力を含んでいたのかを」
「は⁉︎ 今はそんなことどうだって……」
ナナシにしがみつくエルマーの襟首を、アロンダートの逞しい腕がしっかりと掴んだ。まるで親猫が子猫を運ぶかのように軽々と持ち上げられて、エルマーは悟った。これはもしかしなくても、非常にまずい展開であると。
笑顔のアロンダートほど怖いものはない。エルマーはぎこちなく顔を逸らしたが、視線の先にはしっかりとナナシを抱きしめているサジがいた。
「サジは知っておるぞ。何せよくやっていたからなあ。可愛い子を文字通り腹で馴染ませる。エルマー、つまりあの日、お前はナナシと何をして遊んだんだ」
「な、にをって、お前そりゃ」
「お外でピクニック。とでも言うつもりか? ふふ、それともナナシに聞くべきか」
「う?」
引き攣り笑みを浮かべる。エルマーはぎこちなくナナシへと視線を向けると、無言で助けを求めた。
口裏を合わせようとしたのだ。しかし、ナナシはエルマーの育て方もあってか、実に無垢で素直であった。言葉を促されるように、サジに顎下をくすぐられている。やめろ、懐柔をされるな。そんなエルマーの必死な祈りも、大好きなサジとアロンダートを前にしては難しかった。
「えるが、た、たのしそうだったよう……」
たった一言だ。頬を染め、赤く色づいた唇で紡がれた素直な言葉は、あの日の森の中でのエルマーの姿を思い返している。普通なら、何がと聞き返されるような曖昧な言葉でも、長年旅を共にしてきたサジとアロンダートの目の前では無意味に等しかった。
「死刑」
「ちょっとまっぉごっ……‼︎」
土に穴が開く大きな音がして、木々で羽を休めていた小鳥たちが飛び立った。エルマーは地べたから飛び出したマイコニドのマイコが繰り出す拳を、言い訳も許されぬまま顎で受け止めたのであった。
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