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守り人は化け物の腕の中
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ヤンレイの手を引いた九魄は、その羽の内側に仕舞い込むようにして禁書室から消えた。
突き放されたはずだ。ヤンレイは、確かに愛想が尽きたと言われたはずである。言動と行動が重ならない、まるで守るように私室へと移動した九魄へと、ヤンレイがほのかな期待を込めた目を向ける。しかし、その体は寝台へ向けて突き飛ばされた。
「う、……っ」
「タイランから任せると言われた俺へ嫌悪でもあるのか」
「ない、ないから……あっ!」
薄い肩を寝台へと押し付ける。口付けはしても、体を重ねたことはなかった。九魄の行動に、ヤンレイの瞳は戸惑いに揺れた。
妖魔と人が行為をするなど御法度だろうと知っていたからだ。寝台を軋ませるように、九魄の掌がヤンレイの顔の横につく。濡れた狼の瞳を見下ろすその瞳は、猛禽のものに変わっていた。
「また頭でっかちか。人型の妖魔とて性欲はある。ただ、人と体を重ねることを忌諱される理由くらいは、教えてやってもいい」
「な、に……」
「……誓うといえ。話はそれからだ。俺に見捨てられたくないのなら、お前はただ何も言わずに誓うと」
「そ、そんなことできるわけ、っ」
「ならどうする。契約をやめてもいいのだぞ」
ヤンレイの細い喉元が上下する。妖魔から離れていけば、ヤンレイは守城ではなくなる。
しかし安易に妖魔の誘いに乗れば、その身はより力の大きな妖魔に縛られる。だからこそ、安易な誓いは御法度だった。
それこそ、任命式に同席した九魄が知らぬわけがない。つまり、それほどまでにヤンレイは九魄を怒らせた。安易な己の行動が、こうして立場を追い詰めているのだ。
今まで、行動に文句をつけられたことがない。だから、どうせばれても何も変わらないだろうと思ったのだ。それが、どうしてこうなった。
嗚咽が漏れそうになるのを堪える。ヤンレイは震える唇を開くと、ぎこちなく言葉を紡ぐ。
「しゅ、守城が妖魔に誓うのは許されない……それは、お前も知っていることだろう……?」
「……なら、誓わずとも構わない」
「え……」
もしかしたら、わかってくれたのかもしれない。きっと、口ではああ入っていても、九魄はヤンレイを見捨てたりはしないと。
だからこそ余計に、その言葉に心を穿たれたのかもしれない。
「勝手を振る舞う。話を聞かぬお前の言うことなど、聞く気はない」
ヤンレイを見下ろすように起き上がった九魄が、籠手を外して床に投げた。初めて見る、脚鱗で覆われた腕でヤンレイの手を一纏めにすると、九魄は悲鳴を飲み込むようにしてヤンレイに深く口付けた。
差し込む月灯りは部屋を青く染め上げる。広い一室、寝台の下には九魄の鎧と、体液で汚れた上掛けが乱雑に落とされている。
寝台の布地をたぐるように、細い足が指先で布に筋を作った。脚鱗が浮く腕が、担ぎ上げるようにヤンレイの足を肩に乗せる。
片腕一本の力で引き寄せられた腰には、猛禽の鉤爪が食い込んだあとがいくつも残っていた。
「ぅ、うう、う、……ぅ、う……」
小さな子供の嗚咽のような声が、部屋に静かに響いている。
粘着質な音が聴覚を奪い、思考を怪しく染め上げる。虚な狼の瞳は顎を逸らすように寝台の天井を眺めていた。だらしなく開いた唇からは唾液をこぼし、美しい黒髪は白磁の肌に根を張るように張り付いている。
歪に膨らんだ腹を、鉤爪が愛しげに撫でる。腰で持ち上げるようにゆすってやれば、ヤンレイは喜んで雌になる。
「ぃ、んあ、ぁーー……っ、は、んん……ぉ、おぐ……も、もっと……っ」
「なんだ、ここに欲しいのか」
「きゃ、ぅ、あ、……っひ、ひぅ、……っ」
九魄の先端が、ぐぷんと結腸を抜いていた。弛緩した尻を叱咤するように時折叩くせいで、ヤンレイの尻は赤く腫れている。乳輪をふくりと膨らませ、小ぶりな性器から漏れた情けない量の精液が、ぬめりとした光沢で薄い腹を引き立てる。
首筋も、肩口も全て、人目につくところは暴力を振るわれたように赤く染まっていた。
九魄によって、何度も何度も啄まれたのだ。人で言うと甘噛みなのだろう、それでも犬歯の穿つ痕が目立つ薄い肩は、人が見れば眉を顰めるほどの有様だった。
「口を開けろヤンレイ」
「ぁ、あ……っ」
「妖魔の精は毒のようだろう。ふは、あまり吸うな。そんなに急かさずとも、いくらでもくれてやる」
結合部から溢れた精を拭った九魄の指は、ヤンレイの舌を押し込むようにして口内を甚振る。そんな無骨な指先へと、赤子が乳を欲するように甘く吸い付いた。
どろりとした青臭いそれが、美味いわけもない。それなのに、抗いがたい酩酊感を求めるように九魄の精液を欲した。
ヤンレイの腰の下は、潮と九魄の精液とでぐっしょりと濡れそぼっていた。何度も腹で受け止め、下腹部がぱつりと張っている。まるで掘削するかのような律動がイムジンの余韻を打ち消し、その腹に上等な雄の味を教え込んだのだ。
「ちゅ、ふ……ぁ、も、……もと、っ……」
「良い面だな。生意気な顔よりも似合っている」
「ぁ、あい、ぃイ、ぐ……っで、でぅ、あ、ぁーー……っ」
「器用なことをする……」
か細い悲鳴をあげながら、ぎゅう、と性器を締め付ける。何度目かのそれは確実にヤンレイの思考力を奪っていた。
生々しい、熱い肉が内臓を摩擦するのがこんなにも心地よい。イムジンとは違う、時折、雛鳥を甘やかすように九魄は抱くのだ。
「ぉ、おなが……、っ……く、ぅし……」
「腹が痛いのか、なら中のものを出さないとな」
「ぅ、ふ……ぅあ、っ」
腕を引かれるようにして起こされる。胡座をかく九魄の膝に腰を落ち着けるように挿入を深めたヤンレイの口から、ケポリと胃液が溢れる。
汚いと罵られてもいいひどい状態なのだ。それなのに、九魄は口を汚すそれにさえ舌を這わす。まるで、お前に汚いものなんてないというように。
突き放されたはずだ。ヤンレイは、確かに愛想が尽きたと言われたはずである。言動と行動が重ならない、まるで守るように私室へと移動した九魄へと、ヤンレイがほのかな期待を込めた目を向ける。しかし、その体は寝台へ向けて突き飛ばされた。
「う、……っ」
「タイランから任せると言われた俺へ嫌悪でもあるのか」
「ない、ないから……あっ!」
薄い肩を寝台へと押し付ける。口付けはしても、体を重ねたことはなかった。九魄の行動に、ヤンレイの瞳は戸惑いに揺れた。
妖魔と人が行為をするなど御法度だろうと知っていたからだ。寝台を軋ませるように、九魄の掌がヤンレイの顔の横につく。濡れた狼の瞳を見下ろすその瞳は、猛禽のものに変わっていた。
「また頭でっかちか。人型の妖魔とて性欲はある。ただ、人と体を重ねることを忌諱される理由くらいは、教えてやってもいい」
「な、に……」
「……誓うといえ。話はそれからだ。俺に見捨てられたくないのなら、お前はただ何も言わずに誓うと」
「そ、そんなことできるわけ、っ」
「ならどうする。契約をやめてもいいのだぞ」
ヤンレイの細い喉元が上下する。妖魔から離れていけば、ヤンレイは守城ではなくなる。
しかし安易に妖魔の誘いに乗れば、その身はより力の大きな妖魔に縛られる。だからこそ、安易な誓いは御法度だった。
それこそ、任命式に同席した九魄が知らぬわけがない。つまり、それほどまでにヤンレイは九魄を怒らせた。安易な己の行動が、こうして立場を追い詰めているのだ。
今まで、行動に文句をつけられたことがない。だから、どうせばれても何も変わらないだろうと思ったのだ。それが、どうしてこうなった。
嗚咽が漏れそうになるのを堪える。ヤンレイは震える唇を開くと、ぎこちなく言葉を紡ぐ。
「しゅ、守城が妖魔に誓うのは許されない……それは、お前も知っていることだろう……?」
「……なら、誓わずとも構わない」
「え……」
もしかしたら、わかってくれたのかもしれない。きっと、口ではああ入っていても、九魄はヤンレイを見捨てたりはしないと。
だからこそ余計に、その言葉に心を穿たれたのかもしれない。
「勝手を振る舞う。話を聞かぬお前の言うことなど、聞く気はない」
ヤンレイを見下ろすように起き上がった九魄が、籠手を外して床に投げた。初めて見る、脚鱗で覆われた腕でヤンレイの手を一纏めにすると、九魄は悲鳴を飲み込むようにしてヤンレイに深く口付けた。
差し込む月灯りは部屋を青く染め上げる。広い一室、寝台の下には九魄の鎧と、体液で汚れた上掛けが乱雑に落とされている。
寝台の布地をたぐるように、細い足が指先で布に筋を作った。脚鱗が浮く腕が、担ぎ上げるようにヤンレイの足を肩に乗せる。
片腕一本の力で引き寄せられた腰には、猛禽の鉤爪が食い込んだあとがいくつも残っていた。
「ぅ、うう、う、……ぅ、う……」
小さな子供の嗚咽のような声が、部屋に静かに響いている。
粘着質な音が聴覚を奪い、思考を怪しく染め上げる。虚な狼の瞳は顎を逸らすように寝台の天井を眺めていた。だらしなく開いた唇からは唾液をこぼし、美しい黒髪は白磁の肌に根を張るように張り付いている。
歪に膨らんだ腹を、鉤爪が愛しげに撫でる。腰で持ち上げるようにゆすってやれば、ヤンレイは喜んで雌になる。
「ぃ、んあ、ぁーー……っ、は、んん……ぉ、おぐ……も、もっと……っ」
「なんだ、ここに欲しいのか」
「きゃ、ぅ、あ、……っひ、ひぅ、……っ」
九魄の先端が、ぐぷんと結腸を抜いていた。弛緩した尻を叱咤するように時折叩くせいで、ヤンレイの尻は赤く腫れている。乳輪をふくりと膨らませ、小ぶりな性器から漏れた情けない量の精液が、ぬめりとした光沢で薄い腹を引き立てる。
首筋も、肩口も全て、人目につくところは暴力を振るわれたように赤く染まっていた。
九魄によって、何度も何度も啄まれたのだ。人で言うと甘噛みなのだろう、それでも犬歯の穿つ痕が目立つ薄い肩は、人が見れば眉を顰めるほどの有様だった。
「口を開けろヤンレイ」
「ぁ、あ……っ」
「妖魔の精は毒のようだろう。ふは、あまり吸うな。そんなに急かさずとも、いくらでもくれてやる」
結合部から溢れた精を拭った九魄の指は、ヤンレイの舌を押し込むようにして口内を甚振る。そんな無骨な指先へと、赤子が乳を欲するように甘く吸い付いた。
どろりとした青臭いそれが、美味いわけもない。それなのに、抗いがたい酩酊感を求めるように九魄の精液を欲した。
ヤンレイの腰の下は、潮と九魄の精液とでぐっしょりと濡れそぼっていた。何度も腹で受け止め、下腹部がぱつりと張っている。まるで掘削するかのような律動がイムジンの余韻を打ち消し、その腹に上等な雄の味を教え込んだのだ。
「ちゅ、ふ……ぁ、も、……もと、っ……」
「良い面だな。生意気な顔よりも似合っている」
「ぁ、あい、ぃイ、ぐ……っで、でぅ、あ、ぁーー……っ」
「器用なことをする……」
か細い悲鳴をあげながら、ぎゅう、と性器を締め付ける。何度目かのそれは確実にヤンレイの思考力を奪っていた。
生々しい、熱い肉が内臓を摩擦するのがこんなにも心地よい。イムジンとは違う、時折、雛鳥を甘やかすように九魄は抱くのだ。
「ぉ、おなが……、っ……く、ぅし……」
「腹が痛いのか、なら中のものを出さないとな」
「ぅ、ふ……ぅあ、っ」
腕を引かれるようにして起こされる。胡座をかく九魄の膝に腰を落ち着けるように挿入を深めたヤンレイの口から、ケポリと胃液が溢れる。
汚いと罵られてもいいひどい状態なのだ。それなのに、九魄は口を汚すそれにさえ舌を這わす。まるで、お前に汚いものなんてないというように。
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