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守り人は化け物の腕の中

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「っ、ゲロでも足りねえかあ」
「ぅぐ、っ……う、ぅえ、っ」
「おい、ヤンレイ。ヤーンレイ、お前戻ってこい。おぉい?」

 顔を真っ赤に染め上げ、光を失った瞳のままぐったりとする。薄い腹はぽこりと膨らみ、イムジンの居場所を如実に示す。
 ぬちりと音がした。茂みを濡らすそれが、律動を助けるように摩擦する。腰を軽く揺するだけで、ヤンレイの小ぶりな性器は面白いほどに跳ねる。
 ぶち、グポ。こんなに上等な雌から出てはいけない音がして、イムジンはそれが愉快だった。
 ぶちゅぶちゅとした端ない音を立てながら、腰を振り下ろす。呉暁によって拘束された体は大男に押し潰されるようにして性器を受け止めていた。

「あ、あ、あ、あ、あ、あ」

 ヤンレイの半開きの唇から音が漏れる。腹を押し潰されて勝手に声が出てしまっているだ。
 太い性器はごちごちと腹の奥を掘削する。痛みと、快楽と、排泄感が繰り返し襲い、呉暁によって開かされたままの足には負荷がかかっていた。
 股関節が開き切っている。外れかけた足は素直に巨躯を受け止め、だらしなく体を開く。
 もう、吐くものもない。ヤンレイは掠れた悲鳴を漏らしながら、ただ早く終わってくれと願っていた。

「なんだか反応が薄いなあ、おい。報告書手伝ってやったんだからしっかり奉仕してくれよ」
「も、い……か、かえ、る……」
「帰らねえ。俺はまだイッてねえ」
「ぅゔ、ぐ……っ……」

 イムジンに下腹部を押し込まれ、苦しそうな呻き声を漏らした。ぶちゅ、と音がして、性器を咥え込んだ蕾から粘液を噴き上げる。溢れた先走りと腸液が混じったそれが尿とともに深衣を汚す。
 汗と、息切れの音。そして生臭い匂いが禁書室に充満した。イムジンが見下ろすようにヤンレイへ覆い被さる。薄い肩へと唇を寄せるように噛み付くと、その巨躯で押さえつけるように腰を振り下ろした。

「ぎ、ぃ……っ‼︎」
「っ、色気のねえ声……っ」
「ぅ、ゔぉ、えっゃ、やべ、て……っじ、ぬ、じぬ……っ‼︎」
「あー……っ、もう、ちょい……」
「ひぐ、っ……‼︎ く、くぁ、く……っ‼︎ た、助け、っ……クタ、……っ」

 気が遠のきそうなほどの暴力にもにた快楽と圧迫感に、ヤンレイは無意識下に助けを求めた。目玉がくるりと焦点をずらし、喃語のような悲鳴しかあげない。髪を振り乱すように拒んでも、その姿はイムジンの加虐心を煽るだけであった。
 性器が膨らむ。押し広げられる内壁に、ゴパリと胃液を吐き出した。加減を知らぬ行為に意識が朦朧とする中。ヤンレイへの拘束は突如として解放された。

「あ……?」
「次はお前の喉を捌く」
「く、……ぁ……」

 イムジンの首元に突きつけられた青黒い鋼の刃に、頬を滑る汗が染み込んだ。
 切り下ろされた呉暁の四つ腕が床に落ちる。イムジンはヤンレイの腹に性器を突き刺したまま、ゆっくりと顔を上げた。

「何か言うことはあるか、ヤンレイ」
「ひ、ぃ……っ、ひ……、っ……」
「面倒臭え痴話喧嘩に巻き込まれちまったのかァ?俺は……」

 情けない声を上げて涙をこぼすヤンレイの上で、イムジンは引き攣り笑みを浮かべた。腰を引くように性器を抜く。
 赤く張り詰めた性器に纏う粘液が、行為の激しさを物語っていた。

「悪いが当て馬はごめんだぜ。俺は唆しはしたが、乗ってきたのはこいつの方だ」
「ああ、だが金輪際はもうない」
「面白え、不貞を暴いた夫でもあるまいに」

 イムジンの目の前で、九魄は冷たい瞳をヤンレイへと向けた。それは、今まで向けられたことのない色だ。乱れた体に手を伸ばされるわけもない、ヤンレイは九魄の言いつけを破ったのだ。
 覚束ない思考の中で、じわじわと後悔だけが広がっていく。見放されたら、と思い浮かべては、己の首を愚かにも締め付ける。

「く、くた、……」
「黙れ。弁明は後で聞く。イムジン、さっさと出ていけ。禁書の棚を燃やされたいか」
「おいおい、貰い火だけは勘弁だぞ。ったく……」

 身だしなみを整えたイムジンは、渋い顔をして呉暁の落ちた腕を小脇に抱える。換えが見つかりにくいことを知っているくせにこの仕打ちである。
 イムジンは未だ横たわったまま表情を強張らせているヤンレイへと目を向ける。涙は乾いていたが、顔は青ざめていた。
 わかりやすい絶望の色は、あの山主との一件以来だろう。随分幼なげな顔をしていると、他人事のように思った。


 生々しい匂いが充満する部屋の中、九魄は机に仰向けになったまま動かないヤンレイを通り過ぎて、部屋の換気をする。
 外は間も無く夕刻に差し掛かろうと言う頃合いだった。窓枠に切り取られた陽の光が、四角くヤンレイの薄い体を照らしている。九魄は振り返ると、籠手のついた手を横に一振りした。

「ぁ……!?」

 ヤンレイの上擦った声が漏れた瞬間、乱れていた衣服が瞬く間に炎に包まれた。それはヤンレイの体を焼くことはなく、衣服だけを消失させる。朱色の炎が舐めた机も、床も、瞬く間に汚れは消え去って、何事もなかったように元通りになった。

「く、くた、く……!」
「俺の名を呼ぶなヤンレイ。お前にはほとほと愛想が尽きた。」
「え、……っ」
「この関係が信頼で成り立つことを忘れたのか」

 表情が抜け落ちた顔で九魄を見上げる。そんなヤンレイを、ただ静かに見下ろしていた。
 籠手のついた手でヤンレイの細腕を鷲掴む。そのまま乱暴に引き寄せれば、九魄はその手を首元に這わした。

「お前の命など、容易く扱えるのだぞ」

 まるで口付けをするかのように顔を寄せられた。鼻先が触れ合う距離で囁かれた言葉は、確かな威圧が混じっている。
 口を閉ざし、小さく震えるヤンレイの背後で鍵を差し込む音がした。イムジンが出たことで司書が掃除をしに来たらしい。鍵がゆっくりと確かめるように回される音がして、ヤンレイの体が強張る。
 カチン、と音がした。微かな煤だけを残し、人のいない禁書室はいつもの静かな様子を取り戻していた。

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