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こっち向いて、運命。ー半神騎士と猪突猛進男子が幸せになるまでのお話ー
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輪郭を確かめるように、黒い手のひらがグレイシスの頬に触れた。
唐突なふれあいに動揺をしたことが癪で、グレイシスはうざったいと言わんばかりにジルバの手のひらを掴んでどかした。
「なんだ」
「久しぶりにお前の剣技を見た。少々気持ちが昂っている」
「ふん、世辞の一つをようやく覚えたか」
気持ちが昂った。という割に、顔は相変わらず感情すら読めない。グレイシスはジルバの肩を押すようにして体を離すと、執務室から繋がる自室への扉に手を伸ばそうとした。
「……今日、お前と久しぶりに共闘をして思った。やはり俺の番いはお前で間違いなかったと」
「間違いなかったなどと……、お前の子を孕ませておいてその言い草はなんだ」
「お前だから孕ませた」
「ぅわ、っ」
光る何かが向かってきたかと思うと、グレイシスの体はあっという間にジルバの元へと逆戻りした。不可視の蜘蛛の糸は、この国の王ですら関係なく本能のままに扱う。
勢いよく近づいた細い体を受け止めたのはジルバの片腕だ。結構な勢いで腕の中に体当たりしたというのに、体を揺らすこともない。毎回思うが、ジルバの体幹は一体どうなっているのだろうと、グレイシスは引き攣り笑みを浮かべた。
「ぇほ、っ……お、お前、引き止めるのならもう少し丁重に扱え」
「面白い、自ら丁重にというのか。さすが王としての自覚がある」
「嫌味なら聞かぬ。たく、なんだというのだ」
ジルバの腕を支えにするようにして体を起こす。
支えにしたジルバの腕を前にして、グレイシスは不意にアリシアとのやりとりを思い出してしまった。
女性の体に触れる手は、優しく見えた。男のグレイシスとは違う柔らかい体だ。アリシアに対して、ジルバが最後まで紳士的な振る舞いを貫き通していたかというと、そうではないのだが。
それでも、ジルバが己とは違う性別の、見知らぬ女へと触れたことを前に苛立ったのは事実だ。
大人しく黙りこくったグレイシスを不思議に思ったのだろう。ジルバは、片眉を上げるようにしてグレイシスへと顔を向けた。
「……おい、なんだそれは。一体どういう感情だ」
「うるさいぞジルバ」
「それは答えではないな」
グッ、と眉間に皺を寄せるようにして、グレイシスはジルバを睨みつけた。
結局浮気などではなかったが、女の影をちらつかせているかのように思わせたジルバにも落ち度はあると信じている。ジルバのせいで、情緒が乱されることが何よりも嫌いだ。グレイシスの感情の主導権を、勝手に握るなと罵ってしまいたくもある。
勝手に思い出して不機嫌になってしまったのはグレイシスが悪いかもしれないが、認めたくはない。
不機嫌さが深い皺として眉間に刻まれる。そんなグレイシスの様子を前に、何を思ったのか。ジルバは親指で馴染ませるようにしてグレイシスの眉間に触れた。
「なにか不服なことがあると、お前はいつもここに皺が寄る。本当にわかりやすいな」
「……」
「民の前では堂々としているのに、俺の前は思っていることを口にしない。それは意識しているからか」
「は⁉︎」
ジルバの言葉に、グレイシスはぎょっとしたように顔を上げた。
無論、そんなつもりは微塵もなかったし、なによりもその言いぐさはグレイシスがジルバの事を好いていると言っているようではないかと思ったのだ。
ジルバの言葉に、わかりやすく反応を示したのもまずかった。大きな手のひらが腰に回ると、足の間にジルバの足が差し込まれるようにして壁際に追い詰められた。
「ちょっとまて……っ」
「答えるな。俺が体に直接聞けばいい。そちらのほうがお前は素直になるだろう」
「ひっ」
ぬとりとした舌が、グレイシスの薄い耳に這わされた。わかりやすく上擦った声を抑えるように口を手で覆う。
ジルバの手のひらが着ていたシャツのボタンを外すと、襟元をくつろげるようにして首筋に顔を埋めてくる。カインが生まれてから、育児や政務に翻弄されてふれあいを怠っていた分、唐突な己の状況の変化にグレイシスはわかりやすく取り乱した。
「何をす、やめ、っ」
「やめない」
「い、いうことを聞け、っ」
「夫婦は同等だろう。ならば俺はお前のいうことは聞かない」
くつくつと笑うジルバの声色に加虐心を感じる。タチが悪い性格のせいで、グレイシスの抵抗すらもしっかりと楽しんでいる。
がじりと首筋に噛みつかれる。上擦った声が漏れた喉元を撫で上げるかのように、ジルバの大きな手のひらがグレイシスの顔を上へと向かせた。
どうしよう、どうすればいい。ふ、ふ、と繰り返す呼吸はグレイシスの緊張を如実に表していた。こういった行為に慣れている奴なんているのか。そんな具合に思考が逃避しようとするのを、ジルバの手が窘める。
なんの膨らみもないつまらない胸に、ジルバの手のひらが這わされた。ぺんだこのできた指先で挟むように胸を刺激をされて、つい情けない悲鳴が上がった。
「んぃ、っ……」
「何度も抱いているのにその反応か」
「よ、四回しかの間違い……っ」
「なんだ、もっと抱かれたいのならそう言えばいいだろうに」
「このうつけ、ぁあ、ちがう……っ馬鹿者、ん、っ」
馬鹿もうつけも同じ意味だろう。冷静なジルバの声色に文句を言う余裕もない。頭の中では突き飛ばせと命令してくるのに、腕に力が入らない。なんでだと考えたくても、体の距離が近くなるたびにヘナヘナと力が抜けてしまう。
何に当てられているのだろうと考えて、ようやく思い至った。きっとジルバは、グレイシスに何か術をかけているのかもしれないと。
「ひ、卑怯者……俺にかけた魅了を解け……」
「は?」
「は、じゃないわ……‼︎ お前に触れられると、っ、抵抗できん……」
「……グレイシス」
整った顔が、呆気に取られたようにグレイシスを見下ろす。この男がそんな顔をするのかと、グレイシスもまたジルバの表情を前にポカンとしてしまった。
二人して、動きを止めてしまったのだ。妙な空気がゆっくりと流れていく。
何か間違えたことを言っただろうか、と考えて、思い直す。思ったことを言っただけで何もおかしいことはない。戸惑うグレイシスを前に、ジルバはその灰の瞳をゆっくりと細めた。
「お前、本当に天邪鬼だな」
「はあ……っ何を、っんん……‼︎」
グレイシスの文句は、ジルバによって唇で塞がれた。美しい翡翠の瞳がくわりと見開かれた。キツく体を抱き込まれたかと思えば、瞬き一つで転移をしたらしい。見慣れた天井が目についたと思えば、グレイシスの体は柔らかな寝具へと押し付けられていた。
「ん、んく……ぃ、る……ばっ……っゃめ、っ」
「魅了魔法などかけていない」
「は、う、うそだ」
「お前が俺の手によって、そう言うふうに仕上がったと捉えている」
「あっ……‼︎」
グレイシスの太腿に、熱いものが押し当てられた。紛れもなくジルバの性器であろうその熱に、グレイシスの体はわかりやすく反応を示した。
じくん、と痛みを伴うような熱が下半身に滞留する。興奮に当てられたのだ。布地を押し上げる己の性器を隠そうと、震える膝を立てるようにして性器を隠そうとした。
「この腹に俺の子を孕み、母親の顔をしてカインを育てて慈しむお前が、俺のことを嫌いなわけがないだろう」
「今カインの名を出すな……‼︎」
「自惚れるなと怒鳴らぬのか。ならば俺は勝手をさせてもらう」
「ひゃ、や、やだ、だめだ……っ触れるな、っ」
ジルバの手のひらは、グレイシスのボトムスの前をくつろげた。隠そうとしていた勃ち上がった性器を外気へと晒される。熱を放ちながら先走りの滲む先端を、ジルバは労わるようにそっと撫でた。
「ぁ、ああ……っ……」
「女を知ることもないと言うのに、随分な面構えじゃないか」
「そこに顔などない……っ」
「ふは、比喩だ馬鹿者」
ファスナーの擦れ合う音がして、ジルバの性器がボトムスから弾かれるように飛び出した。育ち切った性器はグレイシスのよりもずっと大きい。こんなものを腹に収めて鳴されているのかと改めて自覚すると、口の中に溜まってしまった唾液をごくんと飲み込んだ。
ジルバの口元が緩く釣り上がる。微笑んだのは、己の性器を前にして切なそうな顔をしたグレイシスを見たからだ。矜持が高い割にもろく、繊細な番いの面倒臭いところも、ジルバは好んでいる。
グレイシスの胸元に馬乗りになるようにして、ジルバは見下ろした。顔の前に性器を見せつけるように持っていけば、ヒック、と情けない嗚咽のようなものを漏らした。
「ゃ、やめ……」
「どうするかは教えたろう。俺の求める答えではないな」
「ふ、……ぅ……っ……」
「いい顔をしている」
じわりと涙を滲ませるグレイシスの唇を割開くように、ジルバは親指を差し入れた。口内が熱い。グレイシスの体が出来上がった時と、同じ粘度の唾液がジルバの指にまとわりつく。
ぐちぐちと口内を指でいじめてやれば、簡単に堕ちるようにした体だ。小さな頭を支えるように引き寄せると、赤く光るグレイシスの舌に押し付けるように性器で口内を擦り上げた。
「っぅ、ん、んく、っ……く、っ」
「好きだろう」
「んぐ、っ……ぅ、うぅ、ぐ……っ……」
ジルバの熱い先端が、グレイシスの上顎を擦るように往復する。飲み込みきれない唾液が、口端から溢れる。ジルバによって支えられた頭を揺らすようにして、太く熱い性器がグレイシスの咽頭へと侵入する。
肺が震える。脳に酸素が回らないまま、涙だけが勝手に溢れてくる。苦しくて、喉を押し込まれるようで気持ちが悪い。それなのに、体はグレイシスの心とは裏腹にわかりやすく反応を示す。
「喉奥を広げろ。そうだ」
「ぁぐ、……っ、ぅ、」
「は……、本当に情けなくて愛おしい」
顔を真っ赤に染め上げたグレイシスの目から、ぼたぼたと涙が溢れる。喉を膨らませるようにしてジルバの性器を咥え込んだグレイシスの薄い腹はひくりと震え、静かな水音がジルバの耳を楽しませる。
グレイシスの頭が、ジルバによって馬鹿にされたのだ。数回程度のセックスで妊娠したグレイシスの腹は、しっかりと雌を教え込まれている。纏っていた深緑色のボトムスを黒く染めるようにして、グレイシスは寝具を汚す。
己の体に起きている現象を理解していないのか、喉はジルバを心地よく締め付けていた。
「ぅえ、……っぁ、あっ」
「だらしない顔で泣くな。どうして欲しいかは行動で示せと言っただろう」
「ひ、ぐ……っ、い、ぃゃだ……っ、こゎ、いのはぃゃだ……っ」
「俺がいつ怖いことをした。心外なことを言うな、こうして良さも教えてやったと言うのになあ」
グレイシスの立ち上がった胸の突起を、ジルバが親指で押し潰す。成人男性にしては膨らみ、ぽてりとしたそこはカインを育てたことによるものだ。人前では裸になれない理由は、他にもあった。
「こんな体では、女は抱けないな」
「ぁ、っあぁ、ゃ、っ」
失禁によって濡れて張り付いた生地を下ろされる。己の粗相にようやく気がついたグレイシスが、悲鳴じみた声を上げた。
勃ち上がった小ぶりな性器に、下生えは見当たらない。子供のようにつるりとしたそこから伸びる薄桃色の性器は、雌の味を覚えたせいか勃ち上がっても芯のないままであった。
「本当に男なら、ここは固くなるはずだ。しかしお前にはそれがない。どう言うことかわかるか」
「ひっ、く……っも、もぅ、やめ、て……っ」
「お前は前よりもこちらで上手に達せるからだ」
ジルバの手のひらが、柔らかなグレイシスの太腿を持ち上げる。己の腹を叩くように揺れる性器を前に、グレイシスの羞恥は頂点に達した。
唐突なふれあいに動揺をしたことが癪で、グレイシスはうざったいと言わんばかりにジルバの手のひらを掴んでどかした。
「なんだ」
「久しぶりにお前の剣技を見た。少々気持ちが昂っている」
「ふん、世辞の一つをようやく覚えたか」
気持ちが昂った。という割に、顔は相変わらず感情すら読めない。グレイシスはジルバの肩を押すようにして体を離すと、執務室から繋がる自室への扉に手を伸ばそうとした。
「……今日、お前と久しぶりに共闘をして思った。やはり俺の番いはお前で間違いなかったと」
「間違いなかったなどと……、お前の子を孕ませておいてその言い草はなんだ」
「お前だから孕ませた」
「ぅわ、っ」
光る何かが向かってきたかと思うと、グレイシスの体はあっという間にジルバの元へと逆戻りした。不可視の蜘蛛の糸は、この国の王ですら関係なく本能のままに扱う。
勢いよく近づいた細い体を受け止めたのはジルバの片腕だ。結構な勢いで腕の中に体当たりしたというのに、体を揺らすこともない。毎回思うが、ジルバの体幹は一体どうなっているのだろうと、グレイシスは引き攣り笑みを浮かべた。
「ぇほ、っ……お、お前、引き止めるのならもう少し丁重に扱え」
「面白い、自ら丁重にというのか。さすが王としての自覚がある」
「嫌味なら聞かぬ。たく、なんだというのだ」
ジルバの腕を支えにするようにして体を起こす。
支えにしたジルバの腕を前にして、グレイシスは不意にアリシアとのやりとりを思い出してしまった。
女性の体に触れる手は、優しく見えた。男のグレイシスとは違う柔らかい体だ。アリシアに対して、ジルバが最後まで紳士的な振る舞いを貫き通していたかというと、そうではないのだが。
それでも、ジルバが己とは違う性別の、見知らぬ女へと触れたことを前に苛立ったのは事実だ。
大人しく黙りこくったグレイシスを不思議に思ったのだろう。ジルバは、片眉を上げるようにしてグレイシスへと顔を向けた。
「……おい、なんだそれは。一体どういう感情だ」
「うるさいぞジルバ」
「それは答えではないな」
グッ、と眉間に皺を寄せるようにして、グレイシスはジルバを睨みつけた。
結局浮気などではなかったが、女の影をちらつかせているかのように思わせたジルバにも落ち度はあると信じている。ジルバのせいで、情緒が乱されることが何よりも嫌いだ。グレイシスの感情の主導権を、勝手に握るなと罵ってしまいたくもある。
勝手に思い出して不機嫌になってしまったのはグレイシスが悪いかもしれないが、認めたくはない。
不機嫌さが深い皺として眉間に刻まれる。そんなグレイシスの様子を前に、何を思ったのか。ジルバは親指で馴染ませるようにしてグレイシスの眉間に触れた。
「なにか不服なことがあると、お前はいつもここに皺が寄る。本当にわかりやすいな」
「……」
「民の前では堂々としているのに、俺の前は思っていることを口にしない。それは意識しているからか」
「は⁉︎」
ジルバの言葉に、グレイシスはぎょっとしたように顔を上げた。
無論、そんなつもりは微塵もなかったし、なによりもその言いぐさはグレイシスがジルバの事を好いていると言っているようではないかと思ったのだ。
ジルバの言葉に、わかりやすく反応を示したのもまずかった。大きな手のひらが腰に回ると、足の間にジルバの足が差し込まれるようにして壁際に追い詰められた。
「ちょっとまて……っ」
「答えるな。俺が体に直接聞けばいい。そちらのほうがお前は素直になるだろう」
「ひっ」
ぬとりとした舌が、グレイシスの薄い耳に這わされた。わかりやすく上擦った声を抑えるように口を手で覆う。
ジルバの手のひらが着ていたシャツのボタンを外すと、襟元をくつろげるようにして首筋に顔を埋めてくる。カインが生まれてから、育児や政務に翻弄されてふれあいを怠っていた分、唐突な己の状況の変化にグレイシスはわかりやすく取り乱した。
「何をす、やめ、っ」
「やめない」
「い、いうことを聞け、っ」
「夫婦は同等だろう。ならば俺はお前のいうことは聞かない」
くつくつと笑うジルバの声色に加虐心を感じる。タチが悪い性格のせいで、グレイシスの抵抗すらもしっかりと楽しんでいる。
がじりと首筋に噛みつかれる。上擦った声が漏れた喉元を撫で上げるかのように、ジルバの大きな手のひらがグレイシスの顔を上へと向かせた。
どうしよう、どうすればいい。ふ、ふ、と繰り返す呼吸はグレイシスの緊張を如実に表していた。こういった行為に慣れている奴なんているのか。そんな具合に思考が逃避しようとするのを、ジルバの手が窘める。
なんの膨らみもないつまらない胸に、ジルバの手のひらが這わされた。ぺんだこのできた指先で挟むように胸を刺激をされて、つい情けない悲鳴が上がった。
「んぃ、っ……」
「何度も抱いているのにその反応か」
「よ、四回しかの間違い……っ」
「なんだ、もっと抱かれたいのならそう言えばいいだろうに」
「このうつけ、ぁあ、ちがう……っ馬鹿者、ん、っ」
馬鹿もうつけも同じ意味だろう。冷静なジルバの声色に文句を言う余裕もない。頭の中では突き飛ばせと命令してくるのに、腕に力が入らない。なんでだと考えたくても、体の距離が近くなるたびにヘナヘナと力が抜けてしまう。
何に当てられているのだろうと考えて、ようやく思い至った。きっとジルバは、グレイシスに何か術をかけているのかもしれないと。
「ひ、卑怯者……俺にかけた魅了を解け……」
「は?」
「は、じゃないわ……‼︎ お前に触れられると、っ、抵抗できん……」
「……グレイシス」
整った顔が、呆気に取られたようにグレイシスを見下ろす。この男がそんな顔をするのかと、グレイシスもまたジルバの表情を前にポカンとしてしまった。
二人して、動きを止めてしまったのだ。妙な空気がゆっくりと流れていく。
何か間違えたことを言っただろうか、と考えて、思い直す。思ったことを言っただけで何もおかしいことはない。戸惑うグレイシスを前に、ジルバはその灰の瞳をゆっくりと細めた。
「お前、本当に天邪鬼だな」
「はあ……っ何を、っんん……‼︎」
グレイシスの文句は、ジルバによって唇で塞がれた。美しい翡翠の瞳がくわりと見開かれた。キツく体を抱き込まれたかと思えば、瞬き一つで転移をしたらしい。見慣れた天井が目についたと思えば、グレイシスの体は柔らかな寝具へと押し付けられていた。
「ん、んく……ぃ、る……ばっ……っゃめ、っ」
「魅了魔法などかけていない」
「は、う、うそだ」
「お前が俺の手によって、そう言うふうに仕上がったと捉えている」
「あっ……‼︎」
グレイシスの太腿に、熱いものが押し当てられた。紛れもなくジルバの性器であろうその熱に、グレイシスの体はわかりやすく反応を示した。
じくん、と痛みを伴うような熱が下半身に滞留する。興奮に当てられたのだ。布地を押し上げる己の性器を隠そうと、震える膝を立てるようにして性器を隠そうとした。
「この腹に俺の子を孕み、母親の顔をしてカインを育てて慈しむお前が、俺のことを嫌いなわけがないだろう」
「今カインの名を出すな……‼︎」
「自惚れるなと怒鳴らぬのか。ならば俺は勝手をさせてもらう」
「ひゃ、や、やだ、だめだ……っ触れるな、っ」
ジルバの手のひらは、グレイシスのボトムスの前をくつろげた。隠そうとしていた勃ち上がった性器を外気へと晒される。熱を放ちながら先走りの滲む先端を、ジルバは労わるようにそっと撫でた。
「ぁ、ああ……っ……」
「女を知ることもないと言うのに、随分な面構えじゃないか」
「そこに顔などない……っ」
「ふは、比喩だ馬鹿者」
ファスナーの擦れ合う音がして、ジルバの性器がボトムスから弾かれるように飛び出した。育ち切った性器はグレイシスのよりもずっと大きい。こんなものを腹に収めて鳴されているのかと改めて自覚すると、口の中に溜まってしまった唾液をごくんと飲み込んだ。
ジルバの口元が緩く釣り上がる。微笑んだのは、己の性器を前にして切なそうな顔をしたグレイシスを見たからだ。矜持が高い割にもろく、繊細な番いの面倒臭いところも、ジルバは好んでいる。
グレイシスの胸元に馬乗りになるようにして、ジルバは見下ろした。顔の前に性器を見せつけるように持っていけば、ヒック、と情けない嗚咽のようなものを漏らした。
「ゃ、やめ……」
「どうするかは教えたろう。俺の求める答えではないな」
「ふ、……ぅ……っ……」
「いい顔をしている」
じわりと涙を滲ませるグレイシスの唇を割開くように、ジルバは親指を差し入れた。口内が熱い。グレイシスの体が出来上がった時と、同じ粘度の唾液がジルバの指にまとわりつく。
ぐちぐちと口内を指でいじめてやれば、簡単に堕ちるようにした体だ。小さな頭を支えるように引き寄せると、赤く光るグレイシスの舌に押し付けるように性器で口内を擦り上げた。
「っぅ、ん、んく、っ……く、っ」
「好きだろう」
「んぐ、っ……ぅ、うぅ、ぐ……っ……」
ジルバの熱い先端が、グレイシスの上顎を擦るように往復する。飲み込みきれない唾液が、口端から溢れる。ジルバによって支えられた頭を揺らすようにして、太く熱い性器がグレイシスの咽頭へと侵入する。
肺が震える。脳に酸素が回らないまま、涙だけが勝手に溢れてくる。苦しくて、喉を押し込まれるようで気持ちが悪い。それなのに、体はグレイシスの心とは裏腹にわかりやすく反応を示す。
「喉奥を広げろ。そうだ」
「ぁぐ、……っ、ぅ、」
「は……、本当に情けなくて愛おしい」
顔を真っ赤に染め上げたグレイシスの目から、ぼたぼたと涙が溢れる。喉を膨らませるようにしてジルバの性器を咥え込んだグレイシスの薄い腹はひくりと震え、静かな水音がジルバの耳を楽しませる。
グレイシスの頭が、ジルバによって馬鹿にされたのだ。数回程度のセックスで妊娠したグレイシスの腹は、しっかりと雌を教え込まれている。纏っていた深緑色のボトムスを黒く染めるようにして、グレイシスは寝具を汚す。
己の体に起きている現象を理解していないのか、喉はジルバを心地よく締め付けていた。
「ぅえ、……っぁ、あっ」
「だらしない顔で泣くな。どうして欲しいかは行動で示せと言っただろう」
「ひ、ぐ……っ、い、ぃゃだ……っ、こゎ、いのはぃゃだ……っ」
「俺がいつ怖いことをした。心外なことを言うな、こうして良さも教えてやったと言うのになあ」
グレイシスの立ち上がった胸の突起を、ジルバが親指で押し潰す。成人男性にしては膨らみ、ぽてりとしたそこはカインを育てたことによるものだ。人前では裸になれない理由は、他にもあった。
「こんな体では、女は抱けないな」
「ぁ、っあぁ、ゃ、っ」
失禁によって濡れて張り付いた生地を下ろされる。己の粗相にようやく気がついたグレイシスが、悲鳴じみた声を上げた。
勃ち上がった小ぶりな性器に、下生えは見当たらない。子供のようにつるりとしたそこから伸びる薄桃色の性器は、雌の味を覚えたせいか勃ち上がっても芯のないままであった。
「本当に男なら、ここは固くなるはずだ。しかしお前にはそれがない。どう言うことかわかるか」
「ひっ、く……っも、もぅ、やめ、て……っ」
「お前は前よりもこちらで上手に達せるからだ」
ジルバの手のひらが、柔らかなグレイシスの太腿を持ち上げる。己の腹を叩くように揺れる性器を前に、グレイシスの羞恥は頂点に達した。
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