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名無しの龍は愛されたい
ナナシがエルマーに初めて静かに怒った日 ***
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Twitterに先行公開していた短編です。時系列はサディンがまだ赤ちゃんの頃。
…………………………………………………………
これはエルマーがグレイシスの采配で騎士団にぶち込まれて、特別指導教官として渋々働き始めた頃の話である。
「死にそう。」
端的にそう宣った旦那様は、どうやら仕事でストレスを抱えているらしい。週末の二連休前日、ヘロヘロになって帰ってきたエルマーが、開口一番にそんなことを言うものだから、ナナシはぐったりとするエルマーの頭をいい子いい子と優しく撫でてやる。
己の愛しきお嫁のナナシの腰にぎゅうぎゅうと抱きつき、頭の上にサディンの小さなあんよを感じながら、エルマーは力一杯深呼吸をした。
「なんっで剣の腕に毛が生えた程度の馬鹿野郎どもが騎士団なんて勤めてるんだあ。ああ、向っ腹が立つ。根性ねえから根をあげんのが早えくせに、意見だけは一丁前の馬鹿どもばかり。あんなん根性叩き直せってつったって伸びしろなんかどこにもねえわああああ!!!」
などと、ワンブレスで宣う。実はエルマー。慣れぬ教官の仕事を押し付けられた挙句、グレイシスからは徹底的にこき下ろして良いとゴーサインまでいただいていた。なので、振るい落としも兼ねてしっかりとこき下ろしてやろうと体力測定をしたらしい。演習場での鎧をつけたままのランニング、陣取り合戦、剣を使わぬ場合の戦闘術やら身体強化魔法の効率のいい行使の仕方などエルマーなりに頑張った。これはひとえに愛しき家族が過ごす国が平和なものになるように、騎士団が頑張ってもらわねばならないから。そんな、エルマーにしては珍しい人道的な心での配慮であったのだが、まあ、皆の憧れる第一騎士団様ご一行は流石の一言であった。
「なああああにが粗野な平民の喧嘩術だあああああその喧嘩術にてめえらがコテンパンにされてんじゃねえか!!」
ーエルマー教官、失礼ながら我々は騎士団の中でも花形。己の剣に信念は宿しても、貴方の剥き身の剣のような粗野な志は宿せませぬ。
などと団長様から言われた。そして、エルマーは笑顔でキレた。団長様の発言に同意しようとした馬鹿どもに、誰がここでのルールかを示すために、その金髪巻毛の牛のような睫毛をしたそいつの鎧を、その剥き身の粗野な剣で叩き割ってやったのだ。フルスイングで。
「はわあ…える、ぷんぷんなのう…」
「ぷんぷん通り過ぎてブンブンだあ!!」
「ぱ!」
「あああサディン、お前のやらけえあんよが恋しかったぜええ!!」
「きゃあーっ」
剣の使い方がなってないと面倒を見ている馬鹿どもからは泣きながら喚かれた。その粗野な男らしい掌がナナシの腰を抱き寄せる。サディンはようやく短い単語を話せるようになり、今が可愛い盛りであった。だから、なおさらエルマーには貴族の馬鹿どもに割く時間がない。可愛い息子と嫁の成長を、毎日目を皿のようにして脳内に刻み込まねばならないのだから。
「サディン、きょううさぎさんゆびさすしてぱぱっていったんだよう」
「マジで。」
「にゃ、」
「えるはねこさんじゃないよう。」
「ああああ可愛いいいいいい」
ふくふくとした頬をヘニャヘニャと緩ませて、ちんまいおててがエルマーの顎に触れる。つい可愛くて、その手をはむりと咥えれば、キャッキャとはしゃぐようにしてサディンが笑った。
「だああ、だめだ。俺汗臭えからシャワー浴びてくる。飯の支度ちょっと待っててくれ。」
「きょう、アリシアとごはんつくるした!だからだいじょうぶだよう!」
「なら速攻上がるわ。悪いけど着替えだけ持ってきてくんね?」
「はぁい。」
ワシワシとエルマーに頭を撫でられたナナシが、いい子のお返事を返す。サディンの頬と、ナナシの額にそれぞれ口付けを送ったエルマーが、重そうなブーツを脱いで、浴室に向かいながら豪快にシャツなどを脱いでいく。ナナシは、その男らしい背中をちろりと見てモニョりと口を緩ませた後、パタパタと尾を揺らしながら着替えを取りに寝室へ向かった。
くつくつと煮込まれたシチューと、お裾分けでもらったパン。そしてナナシが一生懸命潰したサディンの離乳食に、エルマーが買ってきた果物が綺麗にカットされて食卓に並ぶ。長い髪を雑に拭ったエルマーが、湿ったまま髪を一つにまとめる。後頭部で丸められた髪型は、一緒に暮らすようになってからは見慣れた。形のいい額と、エルマーの上等な顔立ちがしっかりと見えるので、ナナシはその髪型が大好きであった。まあ、口にはしないのだが。
「ん、帰ってきて嫁の手料理が食える幸せ…」
エルマーのリラックスした表情が、言葉以上に物語る。大きなお口でバクリと食らいつくパンは二個目であった。
「サディン、すききらいない、とてもいいこ。」
「おーおー、口の周りベッタベタにしてよく食うわあ。」
「はわ…スプーンはなすしてください…おてて、ベタベタ…」
「自分で食いてえんかな。ほら、」
ちんまい手で匙を握るサディンの手を優しく外すと、ナナシがエルマーから渡されたタオルで拭ってやる。自己主張と言わんばかりに匙を握るくせに、小さなお口を開けてご飯を催促するのだ。ナナシはちょっとだけ笑うと、そのお口に離乳食を含ませる。
「あ!」
「いっぱいもぐもぐ、とてもいいこ。ゆっくしたべるしてください。」
「ほれ、ナナシも。」
「あー…」
「ブフっ…くく、んぐっ…」
ナナシの分はエルマーが給仕する。これがやめられないのは、ナナシの口元にご飯を運ぶと、サディンも小さなお口を開けてエルマーを見るのだ。それが可愛くてやめられない。
無論ナナシは気がついていない。なのでこれはエルマーだけが見れる楽しみの一つであった。
食後に果実をいただいて、本日もしっかりと栄養を腹に蓄えた。出産してからしばらく母乳の時期があったので、ナナシには沢山のものを食わせるようになっていた。その甲斐あってかようやく一人前を食べきれるようになったナナシは、エルマーから見たら実にいやらしい体つきになった。まあ、今でも細いのだが、腰回りの肉付きと、太もも周りの心配な隙間が改善され、今はその柔らかな体を毎日でも堪能したいぐらいにはいい雌になった。
まさか食後のお茶を飲みながら、そんなはしたないことを考えているとは思わない。そんなナナシはご機嫌にお皿を洗いながら、ふんふんと鼻歌を歌っている。
「あのちいせえ尻からサディンが出てきたんだぜ。」
「ぱぱ!うー!」
「うーってなんだあ、可愛いなおい食っちまうぞ。」
「う、まー!」
「ままは今手が離せねえんだあ。」
サディンをお膝に乗せたエルマーが、下手くそなリボンが巻きつくエプロンによって強調されたナナシの細腰を見つめる。そういえば一昨日の夜に手形がつくほど鷲掴んでしまったのだが、もう具合はいいのだろうか。なんとなくそれが気になって、エルマーはサディンが強請ったことを口実に、ナナシの背後に立つ。
「う?」
「ままんとこ行きてえってよ。」
「もちっとまつしてください、おわたらだっこするね。」
「まー!うにゃあぁー…!」
片腕で抱かれたサディンが、ふにゃあと泣き出した。どうやら今すぐの抱っこを御所望らしい。ナナシは、はわぁ…と少しだけ慌てはしたが、エルマーが慣れたようにあやしだしたのを見て、さっさと終わらせることにしたらしい。手早く残りの皿を洗い終えると、エルマーから上手にサディンを受け取った。
「いいこ、ちゃんとまつする、できるのえらいこ。」
「皿拭いとくから、サディン寝かしつけてくれば?」
「うん、おむつですね。すっきししておやすみしようね」
「マジでか、任せちまって悪い。」
「ううん、たのしい。」
ひしりとナナシの細い首に抱きついて、ミャアミャアと泣くサディンに、ナナシは母性を刺激されるらしい、尾を揺らしながらサディンと共に奥の部屋へと消えていく。
全く実にできた嫁である。エルマーが出勤して帰ってくるまで、ナナシに育児を任せきりにしてしまっているのを悪いと思っている。なのでこうして家事は分担しているのだが、エルマーが心配した育児に悩んで精神的に弱るなんてこともなく、サディンの言いたいことはなんとなくわかるらしいナナシが、こうしてサディンと共に少しずつお母さんとして成長していくのだ。実に感慨深いものがある。
エルマーはそれが嬉しいながらも、あの甘えたで臆病で、泣き虫で可愛らしいナナシが薄れていくのは少しだけ寂しいと感じていた。まさかこれが親心かとも思ったのだが、ナナシは妻であって子供ではない。じゃあ何心だと悩んだのだが、単に頼られなくなって寂しいのだろうと自分で思い至って、一人で顔を赤らめた。
「サディン生まれてから、俺の方がガキになって言ってる気がすんだよなあ…。」
拭い終えた皿を重ねて、戸棚にしまい込む。手持ち無沙汰になったのでナナシがサディンと共に消えていった奥の部屋に足を運んだ。決して一人が寂しかったというわけではない。決して。
「ナナシ?」
ドアを静かに開けて、そっと部屋を覗き込む。薄暗い二人の寝室には、大きなうさぎのぬいぐるみとサディンの子供用のベットが置いてある。今はそのぬいぐるみの間にギンイロが丸くなって眠っており、ナナシは二人のベットの上でサディンと一緒に横になっていた。
「える、」
「ん、寝そう?」
「うん。」
ちんまい指を口に含みながら、潤んだ金色が微睡んでいた。ナナシの上等な尻尾を贅沢にもお布団がわりにして、二人の愛しき息子様はチュムチュムと指を吸う。ぽこんとしたお腹を天井に向け、おむつを変えてもらってすっきりとしたサディンが、実に満足そうな顔で目を瞑る。やがて小さな寝息が聞こえてくると、エルマーとナナシは顔を見合わせた。
「おやすみ俺の宝物。」
「ナナシも、」
起こさないように、二人で頬に口付ける。これも出産後に二人で行ってからは、息子の夢見がいいものであることを願うように、二人の日課になった。サディンは実にいい子だ。一度眠るとなかなか起きないこともあり、サディンが眠ると夫婦の時間になる。小さい体を優しくベビーベットに移す。どうやら何かを察したらしいギンイロがむくりと起き上がると、やれやれといわんばかりに部屋を出る。全く空気の読める出来た妖精である。エルマーは去り際のギンイロの尻をポンポンと叩いて礼を言うと、べしりと尾でお返事を返された。ほどほどにしろよと言われている気分である。
「よっと、」
「ぁわ…」
エルマーがベットに乗り上げると、ペタンと座っていたナナシをひょいと抱え上げた。エプロンはそのままに、まるで囲うようにあぐらの上に乗せ、後ろからナナシを抱きしめる。愛しい体温の匂いを楽しむように、首筋を鼻先でなぞった。
「える、おしごとがんばた、いいこ。」
「あー…、だめだってわかってんだけどよー…」
「う?」
「お前に育児任せちまってるし、あんま無理させたくねえんだけどさ。」
ナナシの頬に頬を重ねるようにして、エルマーが抱き込む。なんだか甘えているようで、少しだけ可愛い。ナナシはエルマーの頭をポンポンと撫でてやると、える、かぁいい。などとご機嫌に宣う。
「前みたいに、お前も甘えてくんねえと、寂しいっつーか。」
肩口に顔を埋める。子を出産してからのナナシは、優しいふんわりとした甘い香りがして、エルマーはその匂いが好きだった。
「頼っちまってる俺が言うの、変だけど…。頼ってほしいっつーか。たまにでいいから、前みてえに世話させてほしいっつーか。」
「える、ナナシあまやかしたいのう?」
「甘やかしたいし、されてえ。」
「はゎ…むつかしいこという…」
むん…と柔らかな唇をもにりとさせて、いい方法はないかと悩み始めたナナシに、エルマーは胸が甘く鳴いた。己の馬鹿みたいなおねだりにも、こうしてナナシは誠意を持って返そうとしてくれる。これを愛と言わずしてなんという。エルマーはちゅ、ちゅ、と可愛らしいリップ音を立てながら、その首筋に唇を落とすと、真剣な顔をして悩むナナシの服の裾から、するりと自制の効かぬ手を差し込む。
真剣に悩んでくれてありがとう。ナナシが考えてくれるその時間を、エルマーは有効活用させてもらうことにしたのだ。
「うん、ぅ…あ、えっと、い、いぃこする…?」
「うん。」
「ひ、んぅ…っ…える、まいに、ち…っ…が、がんばる…、えらいですね…」
「うん、もっと褒めてくれえ。」
「ひゃ、っ…はゎ…ぁ、んっ!」
がじ、と甘くうなじを噛む。エルマーの剣だこがついた硬い指が、優しくナナシの柔らかな腹を撫で上げて、ふくりと主張する胸の突起を指で挟む。ナナシははふはふと与えられる甘やかな刺激に身を震わせながら、シーツを撫でるように尾を揺らす。ナナシのエルマーが可愛い。はぐはぐと肩や首筋を甘噛みしながら服を弄るのだ。ナナシにはそれが、赤ちゃんが寂しさを埋めるように胸に触れるような、そんな感じに思えて仕方がない。
「ふぁ、っ…え、える、ぁ、っい、ぃこ…っ、いつも、かこいい、りっぱ…っ」
「俺の股間も立派になっちまった…。」
「はゎ…っ!」
ナナシの肩口に顔を埋めたエルマーが、獣が唸るような低い声でしょうもないことを宣う。ナナシの尻の下には確かにエルマーのご立派様が存在を主張しており、先ほどから尻の間にぐりぐりと押し付けられている。
「ぇ、えっちするのう…?」
「ん、抱きてえ。だめか?」
「うー…、」
だめかって聞くの、すごくずるい。ナナシは、エルマーの整った顔がお伺いするように表情を変化させるのに弱かった。いつの間にかあぐらの上に横向きに抱え上げられ、エプロンの下で器用にナナシの胸の頂を揉みながら、まるで迷子の子供みたいな顔でナナシを見つめる。薄暗い部屋にエルマーの金色の目がキラキラと輝く。その瞳は捕食者のそれなのに、声色はまるで寂しんぼのようだった。
「ご褒美くれよ、褒めてくれるほど偉いんだろう?」
エルマーの悪い部分が顔を出す。ナナシの言葉尻をとって、こうしてうまいこと自分のやりたいことに付き合わせようとするのだ。
「なあ、」
「ひぅ…っ…」
ナナシのふかふかのお耳の、内側の柔らかい部分をべろりと舐め上げられる。ぞぞぞ、と思考を奪う甘やかなざわめきが全身に広がると、もうだめだった。
「いい、よぅ…」
か細い声だった。顔を真っ赤にして、悪い大人の毒牙にかかる。エルマーはナナシの肯定に嬉しそうに顔を緩めると、その一呼吸を奪うように、深く口付けた。
だからって、これはないと思う。
「ふわぁーーー!!やああえるのばかああーーー!!」
ひぃん…っ、とナナシが情けない顔でグスグスと泣く。その抗議混じりの悲鳴は、エルマーが空間遮蔽の術を施したおかげで、サディンの安眠を妨げるようなことにはならなかった。
「甘やかして、甘えさせてくれんだろう。一度やってみたかったんだあ。すげえ可愛い。」
「うぅ、やあ…ひぃん…っ、え、えるのばか、これやだなの…っ!」
「なんでよ、すんげえ可愛いじゃねえの。」
かさりとした音がする。あの後、ナナシがエルマーのおねだりを肯定したばっかりに、ナナシの尻には尊厳を奪うようにオムツがつけられていた。しかも、獣人用を律儀に買って来ていたらしい。ナナシご自慢の豊かな尾も、締め付けもなく実に快適だ。
「いやあ、一度やってみたかったんだあ。ああ、クソ可愛いな。マジで。」
「ぬぐぅ!!」
「脱がねえ。ここん中ならいくらでも漏らして構わねえから、付き合って。な?」
「やぁあ!」
エルマーはナナシを押し倒した後、口付けで思考を鈍らせている間に履かせてみせたのだ。
おかげでナナシは自分がうっかりやでは済まないくらい鈍感だと言うのを、身をもって体験した。下半身がスースーする。必死で服の裾を伸ばして隠そうとするが、その存在感は到底隠せそうになかった。
一体どんな仕打ちだ。ナナシは口をつぐんで己の下肢を見る。確かにサディンの育児でトイレに間に合わなくなることも数度あったが、ほとんどがエルマーのいない時間帯だから、バレていないと思っていたのに。
ナナシは顔を真っ赤にしたまま、泣きそうな顔でエルマーを見上げると、その表情は実に無邪気で、少年のような顔をしていた。
「俺がこんなことすんのはお前だけだし、こんな姿みてえなって思うのはお前だけだもの。悪いけど我慢して付き合ってくれや。」
「ひぅ…っ!」
エルマーの大きな手のひらが、押し倒したナナシの胸を逸らす。服を脱がさずに晒した胸の頂に唇を寄せると、唇で挟むようにして吸い付いた。熱くて滑りを纏った舌が、押し潰すようにしてナナシの突起を刺激する。腰が震えて、自然と持ち上がってしまう。エルマーはその反応に満足そうにしながら、ぢぅ、と強く吸った。
「ふゎ、あっぁっ!」
「ん、気持ちい?」
「はぅ…や、ぬ、ぬぐぅ…っあっあっ」
「着てん方がやらしくていいやな。」
くつくつと喉奥で笑いながら、そんな変態くさいことを言う。エルマーの性器はボトム越しからもわかるくらいに生地を持ち上げていた。ナナシは、胸からくる甘やかな刺激に身を震わせながら、そっと下肢を膝で擦るように触れると、エルマーの金眼が輝いた。
「何手練れぶってんだ、エロくなったなあお前。」
「んぅ、っ…ふぁ…」
ぴるぴるとお耳を震わしながら、エルマーの意地悪な声に応える。金属の擦れあう音がして、ナナシのお膝に熱い性器が押し付けられると、ひくんと腰を跳ねさせた。
ぱつんと張り詰めた性器の先端から、じんわりと先走りが玉となって滲む。ナナシの痴態に興奮していることが目に見えてわかってしまうから、こうしてナナシも嫌がっている割には自尊心を満たしてしまう。可愛い、ナナシの大好きなエルマーが、己の欲を恥じらいもなく曝け出す。それが嬉しくて、つい素直な尾がパタパタと揺れてしまった。
「奥さんがえっちすぎて参っちまうわ。本当に、かわい。」
「ぇ、る…っ、さ、ゎってほし…」
「もちっと上でイけるように、がんばろうなあナナシ。」
「ふぇ…っ!」
かくん、と揺れてしまった腰を宥めるように撫でられたかと思えば、尾の付け根をぐりぐりと押される。背筋がざわめくほど気持ちが良くなって、末端まで神経が鋭敏になる。ビクビクと身を跳ねさせたナナシに笑うと、再びねとりと胸に舌を這わせた。
「ひゃ、ぅっや、な、なんでぇ…っ!」
「いいだろ、あーあー、こんなにえっろい形になっちまってまあ…」
「いゎな、ばかぁ…!!」
歯でかすめるようにして、そこを刺激する。エルマーの唾液が胸をくすぐるよう伝うだけで、ナナシはトロトロと先走りをこぼしてしまう。触ってほしい、触って沢山気持ち良くしてほしいのに、エルマーは意地悪だ。
「っぅうー…!」
「く、…お前…」
にゅくりと握りしめたのは、エルマーの性器だ。手を伸ばしてキュッと握ると、先走りを拭うかのように先端を擦った。唾液の糸を胸の頂と繋げたエルマーが、少しだけ悔しそうな顔で引き攣り笑みを浮かべる。その吐息は、熱い。
「な、ナナシもする…える、いじわるやだなの、いくないですね…っ」
「怒りながらちんこ握るじゃねえか。いいけど。」
わたわたと起き上がったナナシが、抗議をすべくエルマーの性器に指を絡める。どうやら奉仕をしてくれるらしい。ならば喜んでとエルマーが後ろを向くように言う。妙なやる気を見せると、ナナシは輪をかけて阿呆な子になる。ぶんぶんと尾を振りながら尻を向けると、ナナシが気付かぬうちにと足の間に身を入れ込んだ。互いの下半身が顔の前にくるこの体制を、エルマーは気に入っていた。
「んン…ふ、…」
「っあー…」
まるで湯船に浸かった時のような声を漏らしながら、ナナシの暖かな口内に包まれた感覚を楽しむ。余程昂っているらしい。ねとりとした唾液がぬるつく舌と絡まって、エルマーの先走りを追うように舐め上げる。口淫を教えてから、どんどんと上手くなっていく。純粋で無垢だったナナシを雌にさせたエルマーは、その成長っぷりに感慨深いものを感じながら、随分と可愛くなってしまったナナシの尻に口付けた。
「ン、んぅ、ふ…っふぁ、や、っ!」
「ほら、びびってねえで。気持ちくしてくれんだろ?」
「うぅ…ん、んふ…っ…ちゅ、ぁ、っ」
自分の格好を思い出したらしいが、もう遅い。エルマーは紙オムツごしにガジガジとナナシの袋の部分であろうそこを甘く歯を立てれば、腰を震わしながら反応する。薄い腹がひくんひくんと収縮するのを見入る限り、どうやらイきそうなようだった。
「んぃ、あっあっ、ぁー…っ…」
「おっと、」
ピコンと尾が跳ね上がり、ナナシの甘やかな声がエルマーの耳を楽しませる。手を添えたそこには、紙越しでもわかるほど張り詰めるナナシの性器が、ひくんひくんと跳ねていた。
「ふは、どっち?」
「う、ゃ…やだもん…、」
「イった?」
「うぅ…っ…」
ぐすぐすとべそをかきながら、ぺしょぺしょと性器を舐める。エルマーは腹筋に力を入れて起き上がると、ナナシの唇から性器が離れる。名残惜しそうに追いかけるそぶりをしたナナシの上半身を下げさせ、尻だけ持ち上げた状態にしてやれば、エルマーはゆっくりと後ろから覆いかぶさった。
「じれってえ、もう挿れさせて。」
「ぅん、っえ、ぇえー!」
「ただし、こうな。」
期待したのとなんか違う!ナナシは顔を真っ赤にして声をあげた。だって、エルマーはあろうことかナナシの尾の付け根部分のみを破って、そこだけ露出させたのだ。信じられない。ナナシはてっきり、もうこんな恥ずかしいのを脱がしてくれると思ったのに。ビ、ビリリ、と聞こえちゃいけない音を立ててそんなことをしくさったエルマーは、まるでこれがやりたかったといわんばかりに、熱い性器をナナシの蕾に擦り付ける。
「昂ってきた。」
「ば、ばかあ!えるのばかああ、あ、ぁっン…っぅ、うーっ…!」
「ばかっていうの、逆効果だぜナナシぃ…!」
心底楽しそうに、エルマーが声を跳ねさせる。欲と加虐をないまぜにした雄の声に、ナナシの性器はそれだけでピュクリと精を漏らしてしまう。蕾の淵をわずかに巻き込みながら、じゅぷ、と熱い性器が内壁を擦りながら侵入を果たす。エルマーの形に、ナナシのそこが押し広げられていくのだ。待ち望んでいた感覚に、ピンと立った尾はエルマーの顔を誉めるようにくすぐる。
「ぶっ、待て、毛ぇ口ん中に入った。」
「ぇる、ぅ…っ、き、もひ…ぃ、っ…」
「っあー…んとに、やらしくて参るぜったく…。」
がしりと掴んだ尾がこれ以上顔を撫でないように脇の下に挟み込む。薄い腹を大きな掌で撫でるように下腹部を押すと、ぐっと性器が茂みの縁を撫でるくらいまで入れ込んだ。
「ひっ、ぐ…!ンぁ、あ、ああー…!」
「んは…、ここ子宮…?なあ、あってる?」
「ぅあ、あ、ってぅ…あ、や、ぅうー…っ…」
「あ。」
エルマーの低く掠れた声が、ナナシのお耳をいじめるのだ。弱いところを舐められ、しびびびっと骨抜きにされると、ナナシは内股を震わしながら腰砕けになってしまった。
腰が落ちそうになるのを、エルマーの手が支えて止める。じんわりと触れたナナシの下肢の内側が熱くなり、ああ、漏らしたのだなあと理解した。
「ふぁ、あう…っ…」
「しといてよかったろ、おむつ。」
「ひぅ…っあ、ぁー…っ…」
「聞いてねえなあ、」
エルマーが可愛く笑っている。ナナシは腰が抜けるほど気持ちが良くて、おむつの中の熱い水流が、自分の性器を撫でるのにも反応してしまう。頭の中がかすみがかったように、何にも考えられなくなる。気持ちいいで沢山になって、ひくんと腰を跳ねさせるたびにエルマーの先端がコツンと子宮を押し上げる。
「ふぁ、ぅ…っ…ちっこ、あ、れちゃ…ひん…っ…」
「気持ちくなれて偉いなあ。ほうら、もっと俺に可愛いとこ見せてくんねえと。」
「ひ、ぅあ…っ」
エルマーの男らしい腕が、後ろから抱き締めるようにナナシの胸元に回った。指で舌を擦るようにナナシの口を開かせれば、その指先でわずかに突き出た可愛い犬歯に触れる。くちゅ、と音を立てて唾液が弾けた。無意識にエルマーの指先をちゅうっと吸ったナナシに、エルマーは誉めるかのように腰を打ち付ける。
「きゃぅ、あっ!」
「煽んな、って」
「ひ、んぅあ、ああっ!ぁ、やら、ぁ、あっや、ま、まっへ、ひぅうっ!」
「またねえし、」
「ぃや、ああっ!イ、イっひゃ、から、ぁ、あーっ!あ、ああっぁ、あー…!」
「いいぜぇ、好きなだけ出せって、ほら、」
「ぅあ、あぁ、ひ、ンっ!ふぇ、あ、っい、いってぅ、あ、ぁあや、やああ!!」
内側で、ナナシの出したものの逃げ場がない。びちゃびちゃと跳ね返って、その感覚だけでも大変なのに、エルマーがばつばつと激しく腰を打ち付けるせいで、さっきから内壁がばかになったみたいに忙しい。強い刺激はいけない。ナナシは金色のお目目をとろめかせながら、唾液やら涙やら鼻水やら、シーツに染み込ませながら、キャンキャンと喘ぐ。
エルマーは、もう楽しくて仕方がなかった。気持ちがいいし、いやらしいし、ナナシがいつも以上に乱れてくれるから、もう持ち前の嫁への奉仕精神でガツガツと揺さぶる。履かせたオムツの隙間から、吸収しきれなかったものが内股を伝うのを見たらもうダメだった。
まるで体で押さえ込むようにして腰を打ち付けた。赤ちゃんの話す喃語のような喘ぎしかしなくなった可愛い己の雌の内壁を、エルマーは何度も執拗に摩擦し続けた。
「っア、や…べっ…も、イく、」
「ひ、ぅあ、あっも、い、イっへ、ぇえっ、お、しま、ぃいっ!や、ぁあ、あ、あっ!!」
もう辛いから、おしまいにして。泣きながら懇願するナナシの声に、エルマーが興奮して性器をぶわりと膨らませた。腰を振り下ろすような、そんな律動がさらに激しくなり、まるでねじ込むかのように押し広げられたナナシの子宮の中へと、激しく吹き上がった精液がビシャビシャと吐き出される。ナナシの広がった蕾と性器のわずかな隙間から、白いそれがはしたない音を立てて溢れる。互いに肩で呼吸をしながら、エルマーは味わうかのように数度腰をゆらめかせて最後の一滴まで吐き出すと、白い背中に張り付いた美しい銀髪を避けるかのようにナナシの首筋に手を這わせた。
「はあ…あ、すげ…っ…おい、平気、か…?」
「ひっく…うぅ…や…っ、ひぅ、うー…」
「気持ちくて、訳わかんなくなって泣いてんの?クソ可愛いな。」
背後から、エルマーの不穏な声が聞こえた。ナナシはヒクリと喉を震わせると、ゆるゆると首を振る。ちょっと待ってほしい。だって、もうこんなに激しく抱かれたのに、エルマーの性器がなぜだかむくりと硬さを取り戻したのだ。
「俺、連休なんだわ。」
「や、や、や…っ」
「うん、でもナナシが甘やかしてくれるって言ったろう?」
「い、…」
言ったかもしれない。エルマーの言葉に、ナナシの顔が青ざめる。もう駄目とか嫌だとか、こういう捕食者のような目をしたエルマーに言っても伝わらないのはわかっている。わかっているけども。
「ふぇ、あ、や…っ、お、ぉっきく…っ!も、やあ、あー…っ!!」
「ン、甘やかして…たっくさん。」
それはまさしく悪魔の囁きであった。迂闊にエルマーの口車に乗ってしまったせいで、結局ナナシはあの後三回ほど付き合わされた。気に入りのエプロンはベトベトのドロドロになってしまったし、乳首は腫れて、しばらくはインナーを着ないとダメになるまでいじり倒された。エルマーは貪欲だ。特に、ナナシが甘やかすとリミッターが外れるのだということを身をもって体験した。
その後、エルマーはナナシから初めて淡々と怒られた。
「える、へん。やだいってるのにたくさんいくないことする。しばらくえっちはしません。ふんだ。」
ナナシが性感からくる熱に浮かされた思考が徐々に明朗になってきて言われたこの言葉、しかも、エルマーが見たこともないくらいの無表情でいうものだから、さすがのエルマーも大いに動揺した。
「三日!?三日だよなあ?三日以上開けたことねえもんなあ!?」
「ふんだ!!!」
「あんなにヨガっ、嘘嘘マジで失言だったごめんって!!」
「やだあ!!ナナシにさわんないでえ!!えるのばかああ!!」
「ひゅ…っ!!!!!!!!」
本当は、抱きつかれると敏感になってるから辛いんだよ。そう言いたかったのだが、ナナシの語彙は元から少ない。エルマーは初めてナナシから拒否をされて息が止まったし、ナナシも初めて正しい躾けの方法を学んだ。エルマーとナナシが結婚してから、初めて本気でナナシがエルマーに対して怒った歴史的瞬間に、気がついているのはギンイロだけであったという。
「イヌモクワナイネ。」
優秀な精霊は一言だけそういうと、今日もサディンに構うべく、チャカチャカと足音を立てて朝のご挨拶へと向かうのであった。
…………………………………………………………
これはエルマーがグレイシスの采配で騎士団にぶち込まれて、特別指導教官として渋々働き始めた頃の話である。
「死にそう。」
端的にそう宣った旦那様は、どうやら仕事でストレスを抱えているらしい。週末の二連休前日、ヘロヘロになって帰ってきたエルマーが、開口一番にそんなことを言うものだから、ナナシはぐったりとするエルマーの頭をいい子いい子と優しく撫でてやる。
己の愛しきお嫁のナナシの腰にぎゅうぎゅうと抱きつき、頭の上にサディンの小さなあんよを感じながら、エルマーは力一杯深呼吸をした。
「なんっで剣の腕に毛が生えた程度の馬鹿野郎どもが騎士団なんて勤めてるんだあ。ああ、向っ腹が立つ。根性ねえから根をあげんのが早えくせに、意見だけは一丁前の馬鹿どもばかり。あんなん根性叩き直せってつったって伸びしろなんかどこにもねえわああああ!!!」
などと、ワンブレスで宣う。実はエルマー。慣れぬ教官の仕事を押し付けられた挙句、グレイシスからは徹底的にこき下ろして良いとゴーサインまでいただいていた。なので、振るい落としも兼ねてしっかりとこき下ろしてやろうと体力測定をしたらしい。演習場での鎧をつけたままのランニング、陣取り合戦、剣を使わぬ場合の戦闘術やら身体強化魔法の効率のいい行使の仕方などエルマーなりに頑張った。これはひとえに愛しき家族が過ごす国が平和なものになるように、騎士団が頑張ってもらわねばならないから。そんな、エルマーにしては珍しい人道的な心での配慮であったのだが、まあ、皆の憧れる第一騎士団様ご一行は流石の一言であった。
「なああああにが粗野な平民の喧嘩術だあああああその喧嘩術にてめえらがコテンパンにされてんじゃねえか!!」
ーエルマー教官、失礼ながら我々は騎士団の中でも花形。己の剣に信念は宿しても、貴方の剥き身の剣のような粗野な志は宿せませぬ。
などと団長様から言われた。そして、エルマーは笑顔でキレた。団長様の発言に同意しようとした馬鹿どもに、誰がここでのルールかを示すために、その金髪巻毛の牛のような睫毛をしたそいつの鎧を、その剥き身の粗野な剣で叩き割ってやったのだ。フルスイングで。
「はわあ…える、ぷんぷんなのう…」
「ぷんぷん通り過ぎてブンブンだあ!!」
「ぱ!」
「あああサディン、お前のやらけえあんよが恋しかったぜええ!!」
「きゃあーっ」
剣の使い方がなってないと面倒を見ている馬鹿どもからは泣きながら喚かれた。その粗野な男らしい掌がナナシの腰を抱き寄せる。サディンはようやく短い単語を話せるようになり、今が可愛い盛りであった。だから、なおさらエルマーには貴族の馬鹿どもに割く時間がない。可愛い息子と嫁の成長を、毎日目を皿のようにして脳内に刻み込まねばならないのだから。
「サディン、きょううさぎさんゆびさすしてぱぱっていったんだよう」
「マジで。」
「にゃ、」
「えるはねこさんじゃないよう。」
「ああああ可愛いいいいいい」
ふくふくとした頬をヘニャヘニャと緩ませて、ちんまいおててがエルマーの顎に触れる。つい可愛くて、その手をはむりと咥えれば、キャッキャとはしゃぐようにしてサディンが笑った。
「だああ、だめだ。俺汗臭えからシャワー浴びてくる。飯の支度ちょっと待っててくれ。」
「きょう、アリシアとごはんつくるした!だからだいじょうぶだよう!」
「なら速攻上がるわ。悪いけど着替えだけ持ってきてくんね?」
「はぁい。」
ワシワシとエルマーに頭を撫でられたナナシが、いい子のお返事を返す。サディンの頬と、ナナシの額にそれぞれ口付けを送ったエルマーが、重そうなブーツを脱いで、浴室に向かいながら豪快にシャツなどを脱いでいく。ナナシは、その男らしい背中をちろりと見てモニョりと口を緩ませた後、パタパタと尾を揺らしながら着替えを取りに寝室へ向かった。
くつくつと煮込まれたシチューと、お裾分けでもらったパン。そしてナナシが一生懸命潰したサディンの離乳食に、エルマーが買ってきた果物が綺麗にカットされて食卓に並ぶ。長い髪を雑に拭ったエルマーが、湿ったまま髪を一つにまとめる。後頭部で丸められた髪型は、一緒に暮らすようになってからは見慣れた。形のいい額と、エルマーの上等な顔立ちがしっかりと見えるので、ナナシはその髪型が大好きであった。まあ、口にはしないのだが。
「ん、帰ってきて嫁の手料理が食える幸せ…」
エルマーのリラックスした表情が、言葉以上に物語る。大きなお口でバクリと食らいつくパンは二個目であった。
「サディン、すききらいない、とてもいいこ。」
「おーおー、口の周りベッタベタにしてよく食うわあ。」
「はわ…スプーンはなすしてください…おてて、ベタベタ…」
「自分で食いてえんかな。ほら、」
ちんまい手で匙を握るサディンの手を優しく外すと、ナナシがエルマーから渡されたタオルで拭ってやる。自己主張と言わんばかりに匙を握るくせに、小さなお口を開けてご飯を催促するのだ。ナナシはちょっとだけ笑うと、そのお口に離乳食を含ませる。
「あ!」
「いっぱいもぐもぐ、とてもいいこ。ゆっくしたべるしてください。」
「ほれ、ナナシも。」
「あー…」
「ブフっ…くく、んぐっ…」
ナナシの分はエルマーが給仕する。これがやめられないのは、ナナシの口元にご飯を運ぶと、サディンも小さなお口を開けてエルマーを見るのだ。それが可愛くてやめられない。
無論ナナシは気がついていない。なのでこれはエルマーだけが見れる楽しみの一つであった。
食後に果実をいただいて、本日もしっかりと栄養を腹に蓄えた。出産してからしばらく母乳の時期があったので、ナナシには沢山のものを食わせるようになっていた。その甲斐あってかようやく一人前を食べきれるようになったナナシは、エルマーから見たら実にいやらしい体つきになった。まあ、今でも細いのだが、腰回りの肉付きと、太もも周りの心配な隙間が改善され、今はその柔らかな体を毎日でも堪能したいぐらいにはいい雌になった。
まさか食後のお茶を飲みながら、そんなはしたないことを考えているとは思わない。そんなナナシはご機嫌にお皿を洗いながら、ふんふんと鼻歌を歌っている。
「あのちいせえ尻からサディンが出てきたんだぜ。」
「ぱぱ!うー!」
「うーってなんだあ、可愛いなおい食っちまうぞ。」
「う、まー!」
「ままは今手が離せねえんだあ。」
サディンをお膝に乗せたエルマーが、下手くそなリボンが巻きつくエプロンによって強調されたナナシの細腰を見つめる。そういえば一昨日の夜に手形がつくほど鷲掴んでしまったのだが、もう具合はいいのだろうか。なんとなくそれが気になって、エルマーはサディンが強請ったことを口実に、ナナシの背後に立つ。
「う?」
「ままんとこ行きてえってよ。」
「もちっとまつしてください、おわたらだっこするね。」
「まー!うにゃあぁー…!」
片腕で抱かれたサディンが、ふにゃあと泣き出した。どうやら今すぐの抱っこを御所望らしい。ナナシは、はわぁ…と少しだけ慌てはしたが、エルマーが慣れたようにあやしだしたのを見て、さっさと終わらせることにしたらしい。手早く残りの皿を洗い終えると、エルマーから上手にサディンを受け取った。
「いいこ、ちゃんとまつする、できるのえらいこ。」
「皿拭いとくから、サディン寝かしつけてくれば?」
「うん、おむつですね。すっきししておやすみしようね」
「マジでか、任せちまって悪い。」
「ううん、たのしい。」
ひしりとナナシの細い首に抱きついて、ミャアミャアと泣くサディンに、ナナシは母性を刺激されるらしい、尾を揺らしながらサディンと共に奥の部屋へと消えていく。
全く実にできた嫁である。エルマーが出勤して帰ってくるまで、ナナシに育児を任せきりにしてしまっているのを悪いと思っている。なのでこうして家事は分担しているのだが、エルマーが心配した育児に悩んで精神的に弱るなんてこともなく、サディンの言いたいことはなんとなくわかるらしいナナシが、こうしてサディンと共に少しずつお母さんとして成長していくのだ。実に感慨深いものがある。
エルマーはそれが嬉しいながらも、あの甘えたで臆病で、泣き虫で可愛らしいナナシが薄れていくのは少しだけ寂しいと感じていた。まさかこれが親心かとも思ったのだが、ナナシは妻であって子供ではない。じゃあ何心だと悩んだのだが、単に頼られなくなって寂しいのだろうと自分で思い至って、一人で顔を赤らめた。
「サディン生まれてから、俺の方がガキになって言ってる気がすんだよなあ…。」
拭い終えた皿を重ねて、戸棚にしまい込む。手持ち無沙汰になったのでナナシがサディンと共に消えていった奥の部屋に足を運んだ。決して一人が寂しかったというわけではない。決して。
「ナナシ?」
ドアを静かに開けて、そっと部屋を覗き込む。薄暗い二人の寝室には、大きなうさぎのぬいぐるみとサディンの子供用のベットが置いてある。今はそのぬいぐるみの間にギンイロが丸くなって眠っており、ナナシは二人のベットの上でサディンと一緒に横になっていた。
「える、」
「ん、寝そう?」
「うん。」
ちんまい指を口に含みながら、潤んだ金色が微睡んでいた。ナナシの上等な尻尾を贅沢にもお布団がわりにして、二人の愛しき息子様はチュムチュムと指を吸う。ぽこんとしたお腹を天井に向け、おむつを変えてもらってすっきりとしたサディンが、実に満足そうな顔で目を瞑る。やがて小さな寝息が聞こえてくると、エルマーとナナシは顔を見合わせた。
「おやすみ俺の宝物。」
「ナナシも、」
起こさないように、二人で頬に口付ける。これも出産後に二人で行ってからは、息子の夢見がいいものであることを願うように、二人の日課になった。サディンは実にいい子だ。一度眠るとなかなか起きないこともあり、サディンが眠ると夫婦の時間になる。小さい体を優しくベビーベットに移す。どうやら何かを察したらしいギンイロがむくりと起き上がると、やれやれといわんばかりに部屋を出る。全く空気の読める出来た妖精である。エルマーは去り際のギンイロの尻をポンポンと叩いて礼を言うと、べしりと尾でお返事を返された。ほどほどにしろよと言われている気分である。
「よっと、」
「ぁわ…」
エルマーがベットに乗り上げると、ペタンと座っていたナナシをひょいと抱え上げた。エプロンはそのままに、まるで囲うようにあぐらの上に乗せ、後ろからナナシを抱きしめる。愛しい体温の匂いを楽しむように、首筋を鼻先でなぞった。
「える、おしごとがんばた、いいこ。」
「あー…、だめだってわかってんだけどよー…」
「う?」
「お前に育児任せちまってるし、あんま無理させたくねえんだけどさ。」
ナナシの頬に頬を重ねるようにして、エルマーが抱き込む。なんだか甘えているようで、少しだけ可愛い。ナナシはエルマーの頭をポンポンと撫でてやると、える、かぁいい。などとご機嫌に宣う。
「前みたいに、お前も甘えてくんねえと、寂しいっつーか。」
肩口に顔を埋める。子を出産してからのナナシは、優しいふんわりとした甘い香りがして、エルマーはその匂いが好きだった。
「頼っちまってる俺が言うの、変だけど…。頼ってほしいっつーか。たまにでいいから、前みてえに世話させてほしいっつーか。」
「える、ナナシあまやかしたいのう?」
「甘やかしたいし、されてえ。」
「はゎ…むつかしいこという…」
むん…と柔らかな唇をもにりとさせて、いい方法はないかと悩み始めたナナシに、エルマーは胸が甘く鳴いた。己の馬鹿みたいなおねだりにも、こうしてナナシは誠意を持って返そうとしてくれる。これを愛と言わずしてなんという。エルマーはちゅ、ちゅ、と可愛らしいリップ音を立てながら、その首筋に唇を落とすと、真剣な顔をして悩むナナシの服の裾から、するりと自制の効かぬ手を差し込む。
真剣に悩んでくれてありがとう。ナナシが考えてくれるその時間を、エルマーは有効活用させてもらうことにしたのだ。
「うん、ぅ…あ、えっと、い、いぃこする…?」
「うん。」
「ひ、んぅ…っ…える、まいに、ち…っ…が、がんばる…、えらいですね…」
「うん、もっと褒めてくれえ。」
「ひゃ、っ…はゎ…ぁ、んっ!」
がじ、と甘くうなじを噛む。エルマーの剣だこがついた硬い指が、優しくナナシの柔らかな腹を撫で上げて、ふくりと主張する胸の突起を指で挟む。ナナシははふはふと与えられる甘やかな刺激に身を震わせながら、シーツを撫でるように尾を揺らす。ナナシのエルマーが可愛い。はぐはぐと肩や首筋を甘噛みしながら服を弄るのだ。ナナシにはそれが、赤ちゃんが寂しさを埋めるように胸に触れるような、そんな感じに思えて仕方がない。
「ふぁ、っ…え、える、ぁ、っい、ぃこ…っ、いつも、かこいい、りっぱ…っ」
「俺の股間も立派になっちまった…。」
「はゎ…っ!」
ナナシの肩口に顔を埋めたエルマーが、獣が唸るような低い声でしょうもないことを宣う。ナナシの尻の下には確かにエルマーのご立派様が存在を主張しており、先ほどから尻の間にぐりぐりと押し付けられている。
「ぇ、えっちするのう…?」
「ん、抱きてえ。だめか?」
「うー…、」
だめかって聞くの、すごくずるい。ナナシは、エルマーの整った顔がお伺いするように表情を変化させるのに弱かった。いつの間にかあぐらの上に横向きに抱え上げられ、エプロンの下で器用にナナシの胸の頂を揉みながら、まるで迷子の子供みたいな顔でナナシを見つめる。薄暗い部屋にエルマーの金色の目がキラキラと輝く。その瞳は捕食者のそれなのに、声色はまるで寂しんぼのようだった。
「ご褒美くれよ、褒めてくれるほど偉いんだろう?」
エルマーの悪い部分が顔を出す。ナナシの言葉尻をとって、こうしてうまいこと自分のやりたいことに付き合わせようとするのだ。
「なあ、」
「ひぅ…っ…」
ナナシのふかふかのお耳の、内側の柔らかい部分をべろりと舐め上げられる。ぞぞぞ、と思考を奪う甘やかなざわめきが全身に広がると、もうだめだった。
「いい、よぅ…」
か細い声だった。顔を真っ赤にして、悪い大人の毒牙にかかる。エルマーはナナシの肯定に嬉しそうに顔を緩めると、その一呼吸を奪うように、深く口付けた。
だからって、これはないと思う。
「ふわぁーーー!!やああえるのばかああーーー!!」
ひぃん…っ、とナナシが情けない顔でグスグスと泣く。その抗議混じりの悲鳴は、エルマーが空間遮蔽の術を施したおかげで、サディンの安眠を妨げるようなことにはならなかった。
「甘やかして、甘えさせてくれんだろう。一度やってみたかったんだあ。すげえ可愛い。」
「うぅ、やあ…ひぃん…っ、え、えるのばか、これやだなの…っ!」
「なんでよ、すんげえ可愛いじゃねえの。」
かさりとした音がする。あの後、ナナシがエルマーのおねだりを肯定したばっかりに、ナナシの尻には尊厳を奪うようにオムツがつけられていた。しかも、獣人用を律儀に買って来ていたらしい。ナナシご自慢の豊かな尾も、締め付けもなく実に快適だ。
「いやあ、一度やってみたかったんだあ。ああ、クソ可愛いな。マジで。」
「ぬぐぅ!!」
「脱がねえ。ここん中ならいくらでも漏らして構わねえから、付き合って。な?」
「やぁあ!」
エルマーはナナシを押し倒した後、口付けで思考を鈍らせている間に履かせてみせたのだ。
おかげでナナシは自分がうっかりやでは済まないくらい鈍感だと言うのを、身をもって体験した。下半身がスースーする。必死で服の裾を伸ばして隠そうとするが、その存在感は到底隠せそうになかった。
一体どんな仕打ちだ。ナナシは口をつぐんで己の下肢を見る。確かにサディンの育児でトイレに間に合わなくなることも数度あったが、ほとんどがエルマーのいない時間帯だから、バレていないと思っていたのに。
ナナシは顔を真っ赤にしたまま、泣きそうな顔でエルマーを見上げると、その表情は実に無邪気で、少年のような顔をしていた。
「俺がこんなことすんのはお前だけだし、こんな姿みてえなって思うのはお前だけだもの。悪いけど我慢して付き合ってくれや。」
「ひぅ…っ!」
エルマーの大きな手のひらが、押し倒したナナシの胸を逸らす。服を脱がさずに晒した胸の頂に唇を寄せると、唇で挟むようにして吸い付いた。熱くて滑りを纏った舌が、押し潰すようにしてナナシの突起を刺激する。腰が震えて、自然と持ち上がってしまう。エルマーはその反応に満足そうにしながら、ぢぅ、と強く吸った。
「ふゎ、あっぁっ!」
「ん、気持ちい?」
「はぅ…や、ぬ、ぬぐぅ…っあっあっ」
「着てん方がやらしくていいやな。」
くつくつと喉奥で笑いながら、そんな変態くさいことを言う。エルマーの性器はボトム越しからもわかるくらいに生地を持ち上げていた。ナナシは、胸からくる甘やかな刺激に身を震わせながら、そっと下肢を膝で擦るように触れると、エルマーの金眼が輝いた。
「何手練れぶってんだ、エロくなったなあお前。」
「んぅ、っ…ふぁ…」
ぴるぴるとお耳を震わしながら、エルマーの意地悪な声に応える。金属の擦れあう音がして、ナナシのお膝に熱い性器が押し付けられると、ひくんと腰を跳ねさせた。
ぱつんと張り詰めた性器の先端から、じんわりと先走りが玉となって滲む。ナナシの痴態に興奮していることが目に見えてわかってしまうから、こうしてナナシも嫌がっている割には自尊心を満たしてしまう。可愛い、ナナシの大好きなエルマーが、己の欲を恥じらいもなく曝け出す。それが嬉しくて、つい素直な尾がパタパタと揺れてしまった。
「奥さんがえっちすぎて参っちまうわ。本当に、かわい。」
「ぇ、る…っ、さ、ゎってほし…」
「もちっと上でイけるように、がんばろうなあナナシ。」
「ふぇ…っ!」
かくん、と揺れてしまった腰を宥めるように撫でられたかと思えば、尾の付け根をぐりぐりと押される。背筋がざわめくほど気持ちが良くなって、末端まで神経が鋭敏になる。ビクビクと身を跳ねさせたナナシに笑うと、再びねとりと胸に舌を這わせた。
「ひゃ、ぅっや、な、なんでぇ…っ!」
「いいだろ、あーあー、こんなにえっろい形になっちまってまあ…」
「いゎな、ばかぁ…!!」
歯でかすめるようにして、そこを刺激する。エルマーの唾液が胸をくすぐるよう伝うだけで、ナナシはトロトロと先走りをこぼしてしまう。触ってほしい、触って沢山気持ち良くしてほしいのに、エルマーは意地悪だ。
「っぅうー…!」
「く、…お前…」
にゅくりと握りしめたのは、エルマーの性器だ。手を伸ばしてキュッと握ると、先走りを拭うかのように先端を擦った。唾液の糸を胸の頂と繋げたエルマーが、少しだけ悔しそうな顔で引き攣り笑みを浮かべる。その吐息は、熱い。
「な、ナナシもする…える、いじわるやだなの、いくないですね…っ」
「怒りながらちんこ握るじゃねえか。いいけど。」
わたわたと起き上がったナナシが、抗議をすべくエルマーの性器に指を絡める。どうやら奉仕をしてくれるらしい。ならば喜んでとエルマーが後ろを向くように言う。妙なやる気を見せると、ナナシは輪をかけて阿呆な子になる。ぶんぶんと尾を振りながら尻を向けると、ナナシが気付かぬうちにと足の間に身を入れ込んだ。互いの下半身が顔の前にくるこの体制を、エルマーは気に入っていた。
「んン…ふ、…」
「っあー…」
まるで湯船に浸かった時のような声を漏らしながら、ナナシの暖かな口内に包まれた感覚を楽しむ。余程昂っているらしい。ねとりとした唾液がぬるつく舌と絡まって、エルマーの先走りを追うように舐め上げる。口淫を教えてから、どんどんと上手くなっていく。純粋で無垢だったナナシを雌にさせたエルマーは、その成長っぷりに感慨深いものを感じながら、随分と可愛くなってしまったナナシの尻に口付けた。
「ン、んぅ、ふ…っふぁ、や、っ!」
「ほら、びびってねえで。気持ちくしてくれんだろ?」
「うぅ…ん、んふ…っ…ちゅ、ぁ、っ」
自分の格好を思い出したらしいが、もう遅い。エルマーは紙オムツごしにガジガジとナナシの袋の部分であろうそこを甘く歯を立てれば、腰を震わしながら反応する。薄い腹がひくんひくんと収縮するのを見入る限り、どうやらイきそうなようだった。
「んぃ、あっあっ、ぁー…っ…」
「おっと、」
ピコンと尾が跳ね上がり、ナナシの甘やかな声がエルマーの耳を楽しませる。手を添えたそこには、紙越しでもわかるほど張り詰めるナナシの性器が、ひくんひくんと跳ねていた。
「ふは、どっち?」
「う、ゃ…やだもん…、」
「イった?」
「うぅ…っ…」
ぐすぐすとべそをかきながら、ぺしょぺしょと性器を舐める。エルマーは腹筋に力を入れて起き上がると、ナナシの唇から性器が離れる。名残惜しそうに追いかけるそぶりをしたナナシの上半身を下げさせ、尻だけ持ち上げた状態にしてやれば、エルマーはゆっくりと後ろから覆いかぶさった。
「じれってえ、もう挿れさせて。」
「ぅん、っえ、ぇえー!」
「ただし、こうな。」
期待したのとなんか違う!ナナシは顔を真っ赤にして声をあげた。だって、エルマーはあろうことかナナシの尾の付け根部分のみを破って、そこだけ露出させたのだ。信じられない。ナナシはてっきり、もうこんな恥ずかしいのを脱がしてくれると思ったのに。ビ、ビリリ、と聞こえちゃいけない音を立ててそんなことをしくさったエルマーは、まるでこれがやりたかったといわんばかりに、熱い性器をナナシの蕾に擦り付ける。
「昂ってきた。」
「ば、ばかあ!えるのばかああ、あ、ぁっン…っぅ、うーっ…!」
「ばかっていうの、逆効果だぜナナシぃ…!」
心底楽しそうに、エルマーが声を跳ねさせる。欲と加虐をないまぜにした雄の声に、ナナシの性器はそれだけでピュクリと精を漏らしてしまう。蕾の淵をわずかに巻き込みながら、じゅぷ、と熱い性器が内壁を擦りながら侵入を果たす。エルマーの形に、ナナシのそこが押し広げられていくのだ。待ち望んでいた感覚に、ピンと立った尾はエルマーの顔を誉めるようにくすぐる。
「ぶっ、待て、毛ぇ口ん中に入った。」
「ぇる、ぅ…っ、き、もひ…ぃ、っ…」
「っあー…んとに、やらしくて参るぜったく…。」
がしりと掴んだ尾がこれ以上顔を撫でないように脇の下に挟み込む。薄い腹を大きな掌で撫でるように下腹部を押すと、ぐっと性器が茂みの縁を撫でるくらいまで入れ込んだ。
「ひっ、ぐ…!ンぁ、あ、ああー…!」
「んは…、ここ子宮…?なあ、あってる?」
「ぅあ、あ、ってぅ…あ、や、ぅうー…っ…」
「あ。」
エルマーの低く掠れた声が、ナナシのお耳をいじめるのだ。弱いところを舐められ、しびびびっと骨抜きにされると、ナナシは内股を震わしながら腰砕けになってしまった。
腰が落ちそうになるのを、エルマーの手が支えて止める。じんわりと触れたナナシの下肢の内側が熱くなり、ああ、漏らしたのだなあと理解した。
「ふぁ、あう…っ…」
「しといてよかったろ、おむつ。」
「ひぅ…っあ、ぁー…っ…」
「聞いてねえなあ、」
エルマーが可愛く笑っている。ナナシは腰が抜けるほど気持ちが良くて、おむつの中の熱い水流が、自分の性器を撫でるのにも反応してしまう。頭の中がかすみがかったように、何にも考えられなくなる。気持ちいいで沢山になって、ひくんと腰を跳ねさせるたびにエルマーの先端がコツンと子宮を押し上げる。
「ふぁ、ぅ…っ…ちっこ、あ、れちゃ…ひん…っ…」
「気持ちくなれて偉いなあ。ほうら、もっと俺に可愛いとこ見せてくんねえと。」
「ひ、ぅあ…っ」
エルマーの男らしい腕が、後ろから抱き締めるようにナナシの胸元に回った。指で舌を擦るようにナナシの口を開かせれば、その指先でわずかに突き出た可愛い犬歯に触れる。くちゅ、と音を立てて唾液が弾けた。無意識にエルマーの指先をちゅうっと吸ったナナシに、エルマーは誉めるかのように腰を打ち付ける。
「きゃぅ、あっ!」
「煽んな、って」
「ひ、んぅあ、ああっ!ぁ、やら、ぁ、あっや、ま、まっへ、ひぅうっ!」
「またねえし、」
「ぃや、ああっ!イ、イっひゃ、から、ぁ、あーっ!あ、ああっぁ、あー…!」
「いいぜぇ、好きなだけ出せって、ほら、」
「ぅあ、あぁ、ひ、ンっ!ふぇ、あ、っい、いってぅ、あ、ぁあや、やああ!!」
内側で、ナナシの出したものの逃げ場がない。びちゃびちゃと跳ね返って、その感覚だけでも大変なのに、エルマーがばつばつと激しく腰を打ち付けるせいで、さっきから内壁がばかになったみたいに忙しい。強い刺激はいけない。ナナシは金色のお目目をとろめかせながら、唾液やら涙やら鼻水やら、シーツに染み込ませながら、キャンキャンと喘ぐ。
エルマーは、もう楽しくて仕方がなかった。気持ちがいいし、いやらしいし、ナナシがいつも以上に乱れてくれるから、もう持ち前の嫁への奉仕精神でガツガツと揺さぶる。履かせたオムツの隙間から、吸収しきれなかったものが内股を伝うのを見たらもうダメだった。
まるで体で押さえ込むようにして腰を打ち付けた。赤ちゃんの話す喃語のような喘ぎしかしなくなった可愛い己の雌の内壁を、エルマーは何度も執拗に摩擦し続けた。
「っア、や…べっ…も、イく、」
「ひ、ぅあ、あっも、い、イっへ、ぇえっ、お、しま、ぃいっ!や、ぁあ、あ、あっ!!」
もう辛いから、おしまいにして。泣きながら懇願するナナシの声に、エルマーが興奮して性器をぶわりと膨らませた。腰を振り下ろすような、そんな律動がさらに激しくなり、まるでねじ込むかのように押し広げられたナナシの子宮の中へと、激しく吹き上がった精液がビシャビシャと吐き出される。ナナシの広がった蕾と性器のわずかな隙間から、白いそれがはしたない音を立てて溢れる。互いに肩で呼吸をしながら、エルマーは味わうかのように数度腰をゆらめかせて最後の一滴まで吐き出すと、白い背中に張り付いた美しい銀髪を避けるかのようにナナシの首筋に手を這わせた。
「はあ…あ、すげ…っ…おい、平気、か…?」
「ひっく…うぅ…や…っ、ひぅ、うー…」
「気持ちくて、訳わかんなくなって泣いてんの?クソ可愛いな。」
背後から、エルマーの不穏な声が聞こえた。ナナシはヒクリと喉を震わせると、ゆるゆると首を振る。ちょっと待ってほしい。だって、もうこんなに激しく抱かれたのに、エルマーの性器がなぜだかむくりと硬さを取り戻したのだ。
「俺、連休なんだわ。」
「や、や、や…っ」
「うん、でもナナシが甘やかしてくれるって言ったろう?」
「い、…」
言ったかもしれない。エルマーの言葉に、ナナシの顔が青ざめる。もう駄目とか嫌だとか、こういう捕食者のような目をしたエルマーに言っても伝わらないのはわかっている。わかっているけども。
「ふぇ、あ、や…っ、お、ぉっきく…っ!も、やあ、あー…っ!!」
「ン、甘やかして…たっくさん。」
それはまさしく悪魔の囁きであった。迂闊にエルマーの口車に乗ってしまったせいで、結局ナナシはあの後三回ほど付き合わされた。気に入りのエプロンはベトベトのドロドロになってしまったし、乳首は腫れて、しばらくはインナーを着ないとダメになるまでいじり倒された。エルマーは貪欲だ。特に、ナナシが甘やかすとリミッターが外れるのだということを身をもって体験した。
その後、エルマーはナナシから初めて淡々と怒られた。
「える、へん。やだいってるのにたくさんいくないことする。しばらくえっちはしません。ふんだ。」
ナナシが性感からくる熱に浮かされた思考が徐々に明朗になってきて言われたこの言葉、しかも、エルマーが見たこともないくらいの無表情でいうものだから、さすがのエルマーも大いに動揺した。
「三日!?三日だよなあ?三日以上開けたことねえもんなあ!?」
「ふんだ!!!」
「あんなにヨガっ、嘘嘘マジで失言だったごめんって!!」
「やだあ!!ナナシにさわんないでえ!!えるのばかああ!!」
「ひゅ…っ!!!!!!!!」
本当は、抱きつかれると敏感になってるから辛いんだよ。そう言いたかったのだが、ナナシの語彙は元から少ない。エルマーは初めてナナシから拒否をされて息が止まったし、ナナシも初めて正しい躾けの方法を学んだ。エルマーとナナシが結婚してから、初めて本気でナナシがエルマーに対して怒った歴史的瞬間に、気がついているのはギンイロだけであったという。
「イヌモクワナイネ。」
優秀な精霊は一言だけそういうと、今日もサディンに構うべく、チャカチャカと足音を立てて朝のご挨拶へと向かうのであった。
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