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ヤンキー、お山の総大将に拾われる~理不尽が俺に婚姻届押し付けてきた件について~
ホムセンという魔窟
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「そろそろストック無くなってきたなあ…。」
戸棚に顔を突っ込んだ天嘉がそんなことをいう。しゃがみ込んだ天嘉の腰にひっつき虫をしてお尻丸出しな琥珀は、ふくふくとした頬を背中に押しつけながら、何が楽しいのかキャラキャラと笑っていた。
「ないない?」
「こはのおむつ、あと一週間分しかないよ。どうしよっか。」
「はーくんおむつなくていいよぅ」
「外した時蘇芳の股におしっこしちゃっただろー。」
「たまたま!」
「あはは、どこで覚えてきたのその言葉。」
しゃがみ込んだ天嘉の膝にちんまいおててを乗せながら、よちよちと歩く。短い距離ならかけることだってできる。歩くのが疲れたと言って背中にお羽を出してパタパタ飛んでいた時は、天嘉は悲鳴を上げながら琥珀を捕まえたが。
「うちのこは君にはチャイルドロックもベビーゲートも効かねえもんなあ。」
「はーくんしゅごい?」
「しゅごいけど、お空飛ぶのは心臓に悪いからやめてくんない?」
「や!」
今日も元気にお断りをされた。蘇芳は親が飛び方を教えるうちから空を駆けるとは、実に有望な将来だと満足そうにしていたが、天嘉からしてみたら、落ちたら怖いの一言に尽きる。お外に行く時は小さな大根の形をしたリュックを背負うのだが、その葉の部分がリードになっているので、琥珀がぷよぷよと浮かんでいてもまだ安心である。
「おかしゃ、あっこ!」
「あっこね、はいはい。」
どうやらいい加減構えと抱っこを御所望らしい。小さな紅葉を見せつけるようにしてせがむ琥珀を抱き上げると、ぴょこぴょこと飾り羽根を揺らして喜ぶ。
「はーくん俺と一緒にホムセン行く?蘇芳もつれてさ。一緒におむつ買いにいこ。」
「おとしゃも?」
「うん、帰りにみんなのおやつも買ってさ。」
「いまわわやきたべぅ!」
「今川焼きな。」
じゃあ今川焼のためにもおむつ履いてくださーい。天嘉の言葉に元気よくお返事をすると、天嘉の手によって手早く支度を済まされる。お腹の高い位置までしっかり上げられると、琥珀はぴょんぴょんと跳ねながら元気よく通りかかったツルバミにタックルをかます。琥珀の一番のお友達である青蛙のツルバミは、ゲコゲコ言いながら相手をしてくれるから楽しいらしい。
「おやあ、新しいおしめをお召しになって、勇ましくていらっしゃる。
「はーくんおかしゃといっちょにほむせんいくのぅ」
「おや、ならばたい焼きを楽しみにしておりまする。」
「こはは今川焼派らしいぜ。」
「なんと!解釈違いでござりまする。」
ツルバミ曰く、たい焼きの尾っぽのカリカリを楽しみたいらしい。歯のない口でどうやって食感を感じているのかは疑問が残るところではあるが。
「して、蘇芳殿のところに向かわれるので?ならばこのツルバミ、お供いたしましょう。」
「おててくらさぃ」
「このツルバミのでよろしければ。」
琥珀もツルバミも、仲良くちんまいもの同士手を繋いで歩くものだから、天嘉のスマホの動画フォルダは今日も同じような動画が増えていく。ツルバミはまるで爺様のように、琥珀殿が可愛らしくていらっしゃるとデレデレと愛好を崩して愛でてくれるのだ。
「おや、これはめんこいなあ。」
「おとしゃーー!!」
「ゲロオオオ!」
まあ、蘇芳を見つけると文字通り飛んでいくので、引きずられるツルバミを見て毎回申し訳ないとは思うが。
「蘇芳、おむつないから買いに行きたいんだけど。」
「む、ならば外界だな。」
顔に琥珀をへばりつかせた蘇芳が、いくかと頷いてくれたので、少し重いものを買ってもいいだろう。天嘉は何を買おうか頭の中でリストアップしながらぽちぽちとスマホでメモをとる。待受は蘇芳と琥珀の同じ寝相だった時を写真に収めた時のものである。
「あ、ならジーンズ履けよ。蘇芳あれ似合うし。」
「あの股引きかあ…構わんが生地が硬いんだよなあ。」
天嘉は最近蘇芳を着飾らせるのにハマっていた。外界の紳士服セールの時にまとめて買った服を、その日の気分で天嘉が選んで着せるのだが、ただのカットソーにデニム姿でも素材がいいからかすこぶる似合う。ただし足元は下駄だが。
桐箪笥からポイポイと引っ張り出すようにきて行く服を取り出すと、琥珀を顔にしがみつかせたままの蘇芳の体に当てる。外界とは言っても田舎だ。都内のような華やかな商業ビル群などはない。だけどあまり行かないせいか、ホムセンに行くだけでも天嘉はデートだと思っている。
「うん、これがいい。ほら、琥珀は俺が抱っこしとくからさっさと着替えて。」
「糞掃衣のような股引きだなあ。」
「ダメージデニムって言うんだよ。フンゾウエって何。」
また蘇芳が訳のわからぬことを言っている。相変わらず聞きなれない言葉はスルーするのに限るのだ。ちなみに蘇芳の下着もボクサータイプのものにした。これはぶらぶらしないと気に入っているようだが、その薄布で覆われている下肢を見るたびに、天嘉は己の尻の心配をしてしまう。
「蘇芳の下着も新しいの買いに行く?」
「ぼくさーとやらは実にいい。そうだなあ、まあ、生地が伸びやすいものにしてくれると助かる。」
何がとは言わないが、押さえつけられると痛いのだと曰う旦那に、逆に生地が悲鳴を上げている気がすると思った。ひとまず買うものは決まったので、次は琥珀のお着替えだ。
着替えはツルバミがいそいそと用意してくれていた。天嘉が買った熊耳のフード付きのロンパースである。ツルバミはこれがカエルに見えるらしい。お揃いですなあと目を細めて笑っている。
琥珀をツルバミに任せた蘇芳が、天嘉の前で後ろ向きに腰を下ろす。長い髪を邪魔にならないように丸めてもらうためだ。
現代服に着替え、さらに男ぶりを増した蘇芳に満足そうに頷くと、今度は下駄じゃなくてスニーカーも慣れさせようと心に決めた。
戸棚に顔を突っ込んだ天嘉がそんなことをいう。しゃがみ込んだ天嘉の腰にひっつき虫をしてお尻丸出しな琥珀は、ふくふくとした頬を背中に押しつけながら、何が楽しいのかキャラキャラと笑っていた。
「ないない?」
「こはのおむつ、あと一週間分しかないよ。どうしよっか。」
「はーくんおむつなくていいよぅ」
「外した時蘇芳の股におしっこしちゃっただろー。」
「たまたま!」
「あはは、どこで覚えてきたのその言葉。」
しゃがみ込んだ天嘉の膝にちんまいおててを乗せながら、よちよちと歩く。短い距離ならかけることだってできる。歩くのが疲れたと言って背中にお羽を出してパタパタ飛んでいた時は、天嘉は悲鳴を上げながら琥珀を捕まえたが。
「うちのこは君にはチャイルドロックもベビーゲートも効かねえもんなあ。」
「はーくんしゅごい?」
「しゅごいけど、お空飛ぶのは心臓に悪いからやめてくんない?」
「や!」
今日も元気にお断りをされた。蘇芳は親が飛び方を教えるうちから空を駆けるとは、実に有望な将来だと満足そうにしていたが、天嘉からしてみたら、落ちたら怖いの一言に尽きる。お外に行く時は小さな大根の形をしたリュックを背負うのだが、その葉の部分がリードになっているので、琥珀がぷよぷよと浮かんでいてもまだ安心である。
「おかしゃ、あっこ!」
「あっこね、はいはい。」
どうやらいい加減構えと抱っこを御所望らしい。小さな紅葉を見せつけるようにしてせがむ琥珀を抱き上げると、ぴょこぴょこと飾り羽根を揺らして喜ぶ。
「はーくん俺と一緒にホムセン行く?蘇芳もつれてさ。一緒におむつ買いにいこ。」
「おとしゃも?」
「うん、帰りにみんなのおやつも買ってさ。」
「いまわわやきたべぅ!」
「今川焼きな。」
じゃあ今川焼のためにもおむつ履いてくださーい。天嘉の言葉に元気よくお返事をすると、天嘉の手によって手早く支度を済まされる。お腹の高い位置までしっかり上げられると、琥珀はぴょんぴょんと跳ねながら元気よく通りかかったツルバミにタックルをかます。琥珀の一番のお友達である青蛙のツルバミは、ゲコゲコ言いながら相手をしてくれるから楽しいらしい。
「おやあ、新しいおしめをお召しになって、勇ましくていらっしゃる。
「はーくんおかしゃといっちょにほむせんいくのぅ」
「おや、ならばたい焼きを楽しみにしておりまする。」
「こはは今川焼派らしいぜ。」
「なんと!解釈違いでござりまする。」
ツルバミ曰く、たい焼きの尾っぽのカリカリを楽しみたいらしい。歯のない口でどうやって食感を感じているのかは疑問が残るところではあるが。
「して、蘇芳殿のところに向かわれるので?ならばこのツルバミ、お供いたしましょう。」
「おててくらさぃ」
「このツルバミのでよろしければ。」
琥珀もツルバミも、仲良くちんまいもの同士手を繋いで歩くものだから、天嘉のスマホの動画フォルダは今日も同じような動画が増えていく。ツルバミはまるで爺様のように、琥珀殿が可愛らしくていらっしゃるとデレデレと愛好を崩して愛でてくれるのだ。
「おや、これはめんこいなあ。」
「おとしゃーー!!」
「ゲロオオオ!」
まあ、蘇芳を見つけると文字通り飛んでいくので、引きずられるツルバミを見て毎回申し訳ないとは思うが。
「蘇芳、おむつないから買いに行きたいんだけど。」
「む、ならば外界だな。」
顔に琥珀をへばりつかせた蘇芳が、いくかと頷いてくれたので、少し重いものを買ってもいいだろう。天嘉は何を買おうか頭の中でリストアップしながらぽちぽちとスマホでメモをとる。待受は蘇芳と琥珀の同じ寝相だった時を写真に収めた時のものである。
「あ、ならジーンズ履けよ。蘇芳あれ似合うし。」
「あの股引きかあ…構わんが生地が硬いんだよなあ。」
天嘉は最近蘇芳を着飾らせるのにハマっていた。外界の紳士服セールの時にまとめて買った服を、その日の気分で天嘉が選んで着せるのだが、ただのカットソーにデニム姿でも素材がいいからかすこぶる似合う。ただし足元は下駄だが。
桐箪笥からポイポイと引っ張り出すようにきて行く服を取り出すと、琥珀を顔にしがみつかせたままの蘇芳の体に当てる。外界とは言っても田舎だ。都内のような華やかな商業ビル群などはない。だけどあまり行かないせいか、ホムセンに行くだけでも天嘉はデートだと思っている。
「うん、これがいい。ほら、琥珀は俺が抱っこしとくからさっさと着替えて。」
「糞掃衣のような股引きだなあ。」
「ダメージデニムって言うんだよ。フンゾウエって何。」
また蘇芳が訳のわからぬことを言っている。相変わらず聞きなれない言葉はスルーするのに限るのだ。ちなみに蘇芳の下着もボクサータイプのものにした。これはぶらぶらしないと気に入っているようだが、その薄布で覆われている下肢を見るたびに、天嘉は己の尻の心配をしてしまう。
「蘇芳の下着も新しいの買いに行く?」
「ぼくさーとやらは実にいい。そうだなあ、まあ、生地が伸びやすいものにしてくれると助かる。」
何がとは言わないが、押さえつけられると痛いのだと曰う旦那に、逆に生地が悲鳴を上げている気がすると思った。ひとまず買うものは決まったので、次は琥珀のお着替えだ。
着替えはツルバミがいそいそと用意してくれていた。天嘉が買った熊耳のフード付きのロンパースである。ツルバミはこれがカエルに見えるらしい。お揃いですなあと目を細めて笑っている。
琥珀をツルバミに任せた蘇芳が、天嘉の前で後ろ向きに腰を下ろす。長い髪を邪魔にならないように丸めてもらうためだ。
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