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二章 百貨店にくる顧客に情緒をかき乱される俺の話なんだけど。(大林梓編)

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 セックスは、気を抜いていられるから好きだった。寝っ転がっていれば勝手に気持ち良くしてくれるし、男を組み敷いて主導権を得ることで優越感を満たしている器の小さい男の、必死な顔を見るのも嫌いじゃなかった。
 気持ちよくて、程よく疲れて、事後に世話を焼かれるのも好き。男相手に腰を振る相手を、己の演技で煽るのも好き。
 その筈だったのに、榊原とのセックスは大林の理解を超えていた。

「ぅ、や、やぁ、だ、やだ、あ、ぁっ…!」

 薄暗い室内に響くのは、涙に濡れた嬌声だ。それと、ぬちゅぬちゅと濡れた摩擦音。
 大林の知らないセックスに、先ほどから翻弄されて仕方がない。こんなに、自分の心境に余裕がないのが初めてで、気持ちいいのと、怖いのと、深みにハマってしまいそうな危うい感覚が、先ほどから己の全身を駆け回るのだ。

「気持ちよくて泣いてんの、」
「ゃ、み、みんな、やだ、へ、変、な、っ変な顔、してる、から、っ」
「でも、顔を隠されちゃキスできないだろ。」
「ぅあ、っ…りょ、うも、っ、き、きもひ、ん、んふ、…っ」

 大林が強請ったことで体勢を入れ替えられた後、尻の間に性器を挟まれた。
 やわやわとした指での刺激も好きだったが、榊原の性器を体は待っていた。ひくつくそこに擦り付けるようにして榊原が性感を煽る。何度も深く口付けられ赤くなった唇と、バカみたいに動きの鈍くなった舌が仕事を放棄して、うまく話すことが出来なかった。
 正面から体全体で押さえ込まれ、口の中を舐めるようにいやらしいキスをされながら、先ほどから何度も胸元を責められる。男の胸が、こんなに気持ちがいいものだとは思わなかった。榊原の両手によって、大林は胸を逸らされてる。大きな手が体を支え、指の股で挟まれた胸の突起を固くしこらせて感じいった。
 
「梓、ここ、」
「ひぅ、…っ」
「赤くなっててかわい。」

 意地悪な目つきが、大林を見つめる。榊原の濡れた舌先が、ゆっくりと目の前で己の胸の突起を舐め上げた。その唇で柔らかに喰むと、ちぅ、と緩く吸い付いた。

「んぁ、っ」
「ここと、こっち。どっちが好き。」

 榊原が甘やかすように濡れた目元に口付けると、そっと額を重ねた。
 眼差しだけで、火傷しそうだ。大林は、性器からトロトロと先走りを零しながら、胸の奥を甘く鳴かせる。鼻先が触れ合って、気恥ずかしくなって少しだけ俯く。目線の先には、開かされた足の間から時折見える。榊原の勃起した性器が、蕾に擦り付けられる度ちらりと見えるのが、視覚的な性感を煽った。

「そ、そこ、…も、ほし、…っ」
「ここに、ほしいの?」
「ん…っ、」

 大林が、震える声でねだる。榊原はその言葉の意図を理解していた。
 先ほどから、蕾を摩擦する性器は何度も先端を擽られている。下腹部に集まった血流が、忙しなく末端まで熱が行き渡るのだ。榊原は大林の言葉に答えるかのように、少しだけ堪えるような表情で微笑んだ。

「もっかい慣らすから、少し我慢できるか。」
「も、ぃや、だ…つら、い、入れて、ほし、」
「うん、でも梓は指でも可愛くなれるの、俺は知ってるから。」

 そんな、獰猛な顔をして何を言うのだと思った。
 大林の目の前ではこめかみに血管を浮かばせるほど、何かを堪えた榊原がゆっくりと体を離す。離れた体温が惜しくて、大林が手を伸ばそうとした時、榊原は抱えた細い両足を前に倒すようにして、己の肩口に乗せた。

「力抜いてな。」
「ぁ、や、ま、待って、あ、あ、あ、…っ!」

 ぬちゅ、と濡れた音が響く。細い足がびくんと跳ね上がると、榊原は身を屈めるようにして大林の蕾に舌を這わせた。

「なめ、ぁい、で…っき、きたな、ぁ、っ」
「ん、汚くない。」
「ひぅ、うっ…!ん、んぁ、あ、ア…」

 熱い舌と共に、節張った指がゆっくりと入ってきた。先程の戯れのような愛撫とは違う、指を一度含んだそこは熟れており、内壁は迎え入れるかのように容易く榊原の指を飲み込んだ。
 大林の熱い媚肉が絡みつくようにして吸い付いた。ここに性器を包まれたら、きっと気持ちがいいんだろう。榊原は、今度は内壁をやわやわと押し上げるようにしてほぐしていく。
 指先に当たったくるみ大の器官に触れると、指を含んだ蕾がわかりやすく吸い付いてきた。

「そ、そこ、ゃ、やだ、ぁあっ」
「やだって言われて、やめられるとでも思ってんの。」
「かぉ、こわ、ぃ、っ」
「それは、」

 ひぅ、と情けなくも甘ったれた声を漏らす大林に、榊原は苦笑いを浮かべた。だって、余裕がないのだ。今もこうして蕾を馴染ませて入るけれど、柔らかくこなれたそこが、力を入れずともゆっくりと榊原の指の侵入を許すのだ。
 目の前で、そんなうまそうに仕上がった体を前に、ここまで我慢していることについてまず評価してほしい。
 榊原の頬に、大林の手が添えられた。己の先走りと唾液で濡れた整った顔を、蕾から離すように押される。

「も、っもぅ、いい、から…」
「梓、覚えて」
「ん、…?」

 少しだけ掠れた榊原の声が、名前を呼んだ。柔らかな太腿を、大きな掌が支えるように持ち上げる。両足を広げられたまま、その腰を持ち上げるように顔のそばまで己の足を折り畳まれると、熱を持った己の性器がぽろんと揺れた。

「余裕なくなると、顔怖くなっちゃうの。お前しか知らないってことだから。」
「あ、っ、」
「つまりそんだけ、今まで我慢したってことだから。」

 がじ、と膝を甘噛みされ、艶然と微笑む。榊原の汗が、ゆっくりと男らしい首筋へと流れた。鍛え上げられた体は興奮で汗ばみ、その腹筋がしなやかに動く度に光沢を放った。
 重ね合わせるように近づいた下腹部、見事な体に視線を走らせるように俯いた先には、榊原の性器があった。

「っ…でか、」
「お前がここまで育てたんだよ。」
「それ、なんか意味がちが、っ」
「何も間違ってない。」
「ひゃ、ぁ、」

 まるで大きさを見せつけるように、大林の勃起した性器に擦り付けられた。己のものと違う、血管が浮かび、素肌よりも少しだけ色の濃いそれが、大林の性器と重なってその熱を押し付ける。これが奥まで入ったら、口から出てしまうんじゃないか。そんなことあるわけないのに、大林はそんなことを思った。
 見上げた上等な雄の顔、再び見比べるように榊原の性器へと目を向けると、小さく笑われた。

「そんなに見たいなら、見てなよ。俺が梓に挿れるとこ。」
「そ、そんないみ、じゃ、っ」
「ほら、下向いて。」
「ふ、ぅ…っ…」

 ぐっ、と榊原の体が近づいてきた。額に口付けられ、汗で光る首筋に小さく喉を鳴らす。割れた腹筋を目線でたどり、二人の隙間を繋げるかのように蕾に当てられた榊原の性器。その先端は熱く、ぱつんと張り詰めていた。

「ぁ、ほ、ほんと、に…?」
「抱くよ。」
「ぅあ、あ、ア、っぁ!ぁ、ああ、あっ」

 大林の薄い腹筋が震える。その熱で溶かされているんじゃないかと思うほど、性器はゆっくりと己の胎内へと沈み込んでいった。先端が含まれる、榊原の腹筋が引き絞られ、その輪郭が影で縁取られる。息を詰めた榊原の顔が己の首筋に埋まり。思わずその背中に腕を回した。

「ふぅ、う…ぁ、っ、ぁつ、ぃ…っ」
「や、すむ…?」
「へ、へい、き、」
「ん…、っ、なら、もうちょい、付き合って、」

 ちゅ、と可愛らしいリップ音を立てられて、こめかみに口付けられた。抱え上げられた足が、ゆっくりと折り畳まれる。そのまま尻が持ち上がると、榊原は一番太いところまで慎重に挿入をしていった。
 グニグニと性器を揉み込まれる。気をやってしまいそうなほどに具合がいい。榊原は、意識を持っていかれないように理性を繋ぎ止めたまま、大林の反応を窺うようにゆっくりと抜き差しをする。

「ま、まっ、て…っ、お、お腹、変、」
「痛い…?」
「ちが、ぅ、…っ、っぁ、し、しら、な、っ」
「は…、」

 榊原の性器を飲み込んだ薄い腹の内側では、今まで経験したことのないような痺れがその体を苛んでいた。前立腺を幹で押し潰され、狭い内壁がゆっくりと押し広げられていく。形を作り変えられるようなゆっくりとした動きに、大林の腹は小刻みに痙攣をしていた。
 榊原の腹筋に、プシュプシュと濡れたものが当たる。とろみを帯びながらも、少しだけサラリとしているそれが腹筋の筋を伝うのに気がつくと、ゆっくりと性器に手を伸ばした。

「ぁ、ああっに、にぎんぁ、っ」
「なにこれ、精液と、なんかさらさらしてる。」
「ひぅ、あ、っ…ゃ、さ、先っぽ、こす、んぁい、れ…っ」

少しだけカサついた親指が、開閉を繰り返しながら精液を吹きこぼす大林の先端を刺激する。指に吸い付かせるように悪戯をするものだから、ちゅくちゅくと音を立てられるたびに腰が跳ね、内壁で性器を締め付ける。

「でも、…っ、ここ、好き、だろ。」
「ぁ、は…っ、は、っ、はぁ、あ、あっ」
「ほら、また漏れた。っ…ああ、すげえ、」
「は、はふ、っ…ぅ、ぅあ、ゃ、ー…っ」

 榊原の手から、水が滴るほどに濡らしている大林のそこに、加虐心を煽られて仕方がない。揉み込まれるように刺激される性器で奥をついてやれば、溢れる量が増えるのだ。ぬめりを広げるかのように素肌を撫でる。濡れた指先で突起をいじると、ひゃあ、と可愛らしい声が漏れた。
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